第2話 ぬか喜び
カイト「俺は告白じゃなくて、『マオ』の体を作ってもらうようお願いしにきたんだ」
ユキノ「そういえば、言っていたね。『アリスとマオの意識が切り替わる』――って」
それはドラの捜索を再開した時の俺の言葉だった。
カイト「その……説明が難しいんだけど……。王都に来て直ぐの頃にアリスが倒れて……目が覚めたら『マオ』っていう別の誰かがアリスの中にいて、時折……っていうか、ここ最近はマオの方が『表』に出ているんだ」
ユキノ「……その間、アリスさんの意識は?」
カイト「しっかり残っている。でも、その逆……アリスが表に出ている間はマオの意識は無い。だから、アリスは出来るだけマオの方に体を譲っているんだ」
ユキノ「ルナくんとベルくんとは少し違うようだね。彼女たちは常に二人分の意識……お互いがお互いの行動を把握できているし、会話も可能だからね」
カイト「あっ、そうなんだ。……でも、そうだよな。そうじゃなかったら、あんなスムーズに意識を切り替えられないよな」
俺はルナとベルが羨ましくなった。
アリスとマオはお互いに会話できないことを悲しんでいたから……。
カイト「ああ、そうだった! マオの存在に気付いたのはルナとベルなんだ。それまで俺たちはアリスのことを記憶喪失だと思っていて……」
ユキノ「マオくんは自分が生まれる前の記憶は無しと……。その『マオ』という名前は誰がつけたんだい?」
カイト「それはマオ本人だよ。ルナとベルが名前を聞いたんだ」
ユキノ「その場にカイトくんはいなかったのかい?」
カイト「ちょっと、色々あって……」
その時の俺は魔法クラスの女子寮に侵入した罪で捕まっていた。
ちなみに、レイは魔法クラスの生徒に連れていかれて強制的に交流を深めさせられた。
レイ(回想)『もう勘弁だよ……』
当時のげっそりしたレイの姿が頭に浮かんだ。
ユキノ「そうか……うん。事情は把握したよ。……それで、マオくんの体を作って欲しんだよね?」
カイト「そうなんだ。ドラの体を作ってあげたユキノなら、マオの体も作れるんじゃないかと思って……」
ドラはユキノのメイドでは今は俺と同じ一般クラスの生徒だ。
そんなドラの体を作ってあげたのは他でもないユキノだった。
ユキノ「了解した。私がマオくんの体を作ってあげよう」
カイト「ありがとう。恩に着るよ」
俺が心から安堵する。
マオ(妄想)『アリスさん!』
アリス(妄想)『マオちゃん……うふふ』
俺は横並びになって一緒に歩くマオとアリスの姿を妄想する。
二人は楽しそうに会話をする。
――そして、それはただの妄想から現実になる。
カイト「……本当にありがとう。なんてお礼を言えばいいか……」
俺の目から涙が零れ落ちた。
もちろん、嬉し涙だ。
ユキノ「その……嬉しがっているところ悪いんだが……。マオくんを新しい体に移すことは現状だと無理だ」
ユキノが申し訳なそうな顔をしながら言った。
カイト「えっ」
その言葉の意味を理解できず、俺は驚いた表情のまま固まってしまった……。




