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ネコミミよ、この世界のしるべとなれ  作者: 金子ふみよ
第四章

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カトゥン、参戦する

 満身創痍。いくら装甲に身を包まれているとはいえ、一方的な攻撃を受け続ければ、バトルスーツ姿でさえそのくらいは容易に見て取れる。

「しぶといな。が、そろそろ反撃をしてこないと、本当に死んでしまうぞ」

 膝をつく春日大に、位置的にも声質的にも上から目線のビクチャー。元部隊長様に忠告されなくてもそれくらい分かる。身体が悲鳴を上げるとはこれまで何度なく聞いたことがあるが、本当に体の節々が、内臓が、そして頭の中が「ヤバい!」と金切り声をあげるのを、今まさに春日大は体験しているのだ。

 重々しく、どうにかこうにか立ち上がった春日大は、

「アルティメット・フォームってどう成るか、もっとちゃんと見とけばよかった」

 力なくつぶやいた。

「覚悟が、整った、という意味でよいかな」

 ビクチャーは拳を引き、それはまさに気をためるとかエネルギー弾の準備をしているとかそういう類の姿勢である。

 今まさにその拳が突き出されそうなその瞬間。ビクチャーは後頭部に衝撃を受け体制を崩した。立て直して見れば、

「背子様、お待たせしました」

 息を切らしたイトラスが春日大の前に立っていた。しかし、反撃を続けて仕掛ける様子はない。なぜなら、イトラスも春日大に負けず劣らず満身創痍だからである。

「その姿で何ができる」

 ビクチャーは首を鳴らして、構え直す。確かにそのとおりである。

「イトラス、悪いな。どうやらお前の期待には応えられないみたいだ」

「違います、背子様。こいつが異常なんです。ミミまで」

 忌々しそうにビクチャーの頭部をにらんだ。

「最後の会話は堪能できたかな」

 拳を鳴らすビクチャー。力があろうがなかろうが構えなければならない。それがイヌミミをつける戦士としてのせめてもの姿勢であり、眷属としての役割である。

「待て!」

 この場に現れるには一人しかいない。いや、後から追って来る者も一人。

「大人しく寝ていればいいものを」

「ダイ、待たせたな」

 元隊長の助言にまるで反応はせず、通常姿のカトゥンは颯爽としている。が、

「遅えよ」

「そんな言い方はなかろう。私だって、私だって」

 涙目にさえなりそうないじけ方である。

「背子様の姿を見よ。察せよ。メスネコ」

「労いを言える状態じゃねえんだよ」

 率直なイトラスをやんわりと翻訳した春日大。

「ならば致し方ない。ダイ、休んでいろ」

 お言葉に甘えるどころか、休んだとて今のビクチャーを制される手段に皆目見当がつかないのだから、どうしろというのか。春日大の心境を察しているのか、イトラスは肩をすくめて、明らかにカトゥンに向かってため息を吐いた。

「その前にお前はまず変身をしろ」

 仕方ないので春日大はカトゥンに助言をしてビクチャーに突っかかって行った。

「援護します」

 イングロードは薙刀を振るって三日月状の光を連射する。それをかいくぐるビクチャーの懐に入り拳を打ち込む春日大。

「効かんな」

 ビクチャーは春日大の腹部に膝を打ち込んで屈ませると、跳躍。イングロードの間合いに入る。イングロードは反撃の暇なく、パンチを喰らって吹っ飛ばされてしまった。

「イングロード! クソ」

 カトゥンはネコミミを取り出して頭部に付ける。しかし、負傷のせいかスムーズさがない。その間にビクチャーは春日大の目前にまたも跳躍。

「さっきの続きだ」

 エネルギーの塊なのかほのかに光る拳を春日大に振り下ろした。

「ま、……だ」

 伏した春日大の変身が解けた。

「ヘンシン!」

 ビクチャーへ走るカトゥン。格闘に持ち込むが、強化されたビクチャーにはまったく有効ではない。

「強い、一体」

「まだ気付かないのか、ほらよく見ろ」

 カトゥンが放った拳を握り、力任せにその身事放った。体を回転させ無事に着地したカトゥンは目を見開いた。

「四つ耳、だと」

 驚嘆が本当に今さらである。

「そうか! ダイがいくらなんでもあれだけ負傷していたのは、そういう……いや、しかし、可能なのか、ネコミミを二つ着けるなんて」

 可能も何もすでにビクチャーは装着しているわけだし、春日大の身体の状態に気付いていたのなら、それこそ労ってやれよって話だ。

「それはデイザンのもの。なんてことを。今、デイザンは」

 もはやそんなことを言っている場合ではないのだ。

「デイザンは大丈夫。室長が診ている」

「そうか、ならば安心だな」

 だからそんなことを言っている場合では本当にない。自分たちの身も危険にさらされているのだ。

「よし、安心して戦えるな」

 イングロードは戸惑い、イトラスが頭を抱え、ウキヨが細い目でにらんだ。


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