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ネコミミよ、この世界のしるべとなれ  作者: 金子ふみよ
第四章

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元ネコミミ部隊長、さらにネコミミをつける

 一進一退の攻防の結果、春日大もビクチャーも肩で息をし、距離を作った。

「隙あり!」

 木陰から跳躍一つ。ビクチャーの背後へイトラスが飛びかかった。が、

「眷属ならダイの側にいたまえ」

 裏拳で弾き飛ばしてしまった。

「イトラス!」

 春日大の呼びかけにも応答しない。意識を失ってしまっていたのだ。

「余興にしてはあっさりとしていたな」

「なに?」

「いや失礼。けれど、そろそろ打開策を講じた方がいい、君もそう思うだろ」

「そりゃな」

 とはいうもの、春日大には隠している爪の自覚なない。

 ――この国のことだから、なんか秘めたる隠し技的な必殺技が放送コードギリギリの境界線であるはず、きっと……

 ピコライトにマスメディアがないことを失念しているわけではないのだが、そんな風に思うのは自らの実力では及ばない相手に対抗するための淡い願望のせいだった。なにせ、ビクチャーはああは言うものの、春日大には分かっていた。本気をまだ出していないと。そもそも相手は一国の精鋭部隊の隊長を務めたほどである。消防隊に一日体験授業どころかボーイスカウトを経験したこともなく、こちらで素人に毛が生えたほどのしか訓練をしてないのだ。かろうじてそれを助長させていたのはまさに誰もがうらやましがっていたイヌミミのおかげなのである。かといって、「いや、もう俺引き出しないわ」などとは言えない。一方的にボコられて終了である。それこそ、二次元的展開として瀕死状態から覚醒したらパワーアップネタを搭載したネコミミ部隊の参上を今や遅しと待っている所でもあるのだ。

「それに君は俺を侮っているのか、本気じゃないだろ」

 心外もいいところ、完全に買いかぶっている。

「イヌミミがこの程度の訳がないだろ。遠慮しているなら、いらぬ遠慮だ。だから」

 もしかしたらイヌミミには確かにビクチャーが言うところのこの程度以上があるのかもしれないが、春日大にはそれを引き出すために合言葉もジェスチャーも、日本における二次元の元ネタも見当がつかない。せめて情報通に入れ知恵をもらいたいのに、さっきからウキヨの姿が見えなくなっている。またはイヌミミに関する伝承を聞き出そうにも眷属たるイトラスはまだ失神中である。

しかも、ビクチャーの秘策とやらに春日大は息を飲んでしまった。

ビクチャーの手元にはネコミミが握られていたのである。模造品ではない。すでに春日大はそれを見たことがあった。

「デイザンのネコミミだ。さてどうなるかな」

 ビクチャーは模造ネコミミで変身した状態の頭部にデイザンのネコミミをつけ、

「ヘンシン」

 すでに化身しているにもかかわらず、クールに言いやがった。ところが、まったくクールでない悶えをビクチャーはし出した。呻き声がおぞましくもある。それでも必死に堪えた結果、四肢から徐々に変化しだしていった。この間に攻撃しない春日大は一体何をしているんだ、なんてことは外野だからこそ言えることであり、それはある意味でお約束と言えばお約束である。

「待たせたな」

 などとしているから、すっかりビクチャーは更なる変化を遂げてしまった。四つ耳のネコミミ戦士。

「いや待ってはないが。どーすっかな」

 もう見た目完全に最終形態の強さ半端ない感じがしている。装飾華美でもなければ、ごてごてした何に使うんだか知れないデザインもない。あまりにスタイリッシュすぎているのだ。

「行くぞ」

 と言われても、

「ああもう!」

 投げやりの肉弾戦にもちこむしかない。しかし、パンチ力も桁違いになっていて、一発喰らっただけで何歩も後退してしまう。しかもさっきまでそれなりにダメージを与えられていたはずなのに、ビクチャーは防御すらしなくなりまともに春日大のパンチを受ける。その胸部ときたらまさに鉄板を通り越して、もはや何かの合金である。

「くっそ、痛えなあ、もう」

 愚痴しか出ないが投げ出すわけにはいかない。

「本気で来なければ命はないぞ。それとも、なるほど。まだ本領を出す方法が分からないのか。それならば協力してやろう」

 さっきよりも鋭く強力なパンチの雨が春日大を打ちつけた。


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