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ネコミミよ、この世界のしるべとなれ  作者: 金子ふみよ
第三章

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早朝の呼び出し

 翌朝、春日大は日の出を少し過ぎて目を覚ました。イトラスが何度注意してもベッドにもぐりこんできて、やはりまだ眠ったままになっている。昨日の大人しさは夕食後にはすっかり回復したのは安心になったものだ。

 朝食後にはまた修練と実験や研究に加わる。憂鬱ではないが、気が重くないと言ったうそになる。「どうしてイヌミミを俺が?」という疑問がどうしても拭い去れないからだ。それにともなうウキヨから聞いた内容からくる重圧というか、プレッシャーというか、ストレス。とはいえ、ノータッチでいられないのもまた事実だった。帰郷のため。アグレッシブにはなれないかもしれないが、せめてポジティブになろうとは何度も言い聞かせていることだった。

 気を取り直してと言うわけでもないのだが、体を起こそうと背伸びをした。吐く息がもう少しでいっぱいという瞬間、

「背子様、来る」

 脱兎ではないのだが、それくらいの勢いで寝ていたはずのイトラスが突進してきた。もはやラグビーの強豪チームのスクラムでさえ瓦解させられるタックルとなってしまった。むせる春日大。彼にしてみれば、来たのはイトラスであり、他の何が来るかさえいぶかしい。

「来る、背子様」

 悲壮感はないのだが必死さはある。この早朝に来ると言えば、朝の鍛錬とか言い出しそうなカトゥンなのだが、

「あのメスネコが」

 どんぴしゃだった。しかし、それならばイトラスが血相を欠く必要はない。むしろ敵愾心をあらわにした方が通常モードだ。いや、それよりも、

「なあ、そろそろそういう呼び方は良くないってことは気を付けた方がいいな」

 躾なければならない。春日大にイトラスをペットとか児童とか思う節はない。ないのだが、いささか感情先行のこの獣人がピコライト国の社会で過ごすためにはいくらかの常識くらいは教えなければならないと頭を悩ませていたのだ。地球人の日本人が。

 寝室、と言っても客間だが、ドアが二度激しく叩かれたかと思った次の瞬間

「ダイ、急げ」

 応答を待つ間もなく、案の定女騎士様が遠慮なくドアを開けた。しかも、要件の詳細を言うことさえも省いて急かしてきた。イトラスを見れば、実に嫌そうな表情になっている。通常なら、カトゥンに二言三言嫌味を言うはずなのだが、

「どこに行けばいいんだ?」

 何を急いでいるかを尋ねている暇があったら、さっさと着替えろ、というか着替えを手伝いそうなカトゥンにはこう言うのが正解である。

「私についてまいれ」

 まったく現代的ではない表現を異世界で聞くとは思ってもみなかったが、そう余裕をぶっこいている場合ではない。ちゃんと急いでいる様子を見せなければ女騎士が何をしでかしてくることやら。イトラスも大人しいので、今のうちに取り掛かった方がいいようである。

 慌ただしい朝になった。


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