部活
ここは、なんてことない田舎でも都会でもない町。そこにぽつんとある高校。そこに俺はいつも通っている。学校は好きじゃない。ただ、部活は好きだった。
きーんこーんかーんこーん
今日もチャイムが終わりを告げる。自由な時間の始まり。おれはチャイムの音とほぼ同時に教室を出る。そしてもうひとつ上の階にある部室へ向かった。
「おー、今日も早いねぇ。」
「先輩もはやいっすね。」
「今日は鍵開け当番だからな。」
ひとつ上の先輩が鍵を開けた瞬間俺は部室に飛びこんだ。
部室の中には数えきれないほどのギター、ベース、そしてドラムやキーボード等たくさんの楽器があった。
そう、俺は軽音楽部に入ったんだ。15歳、中学3年生のときにたまたま楽器屋でみた真っ赤なストラトギターのかっこよさに衝撃を受けた。音楽のことなんて何も知らない。でも、ギターを弾きたい。その想いだけが強かった。だから軽音楽部のある高校をわざわざ選んで入った。
「ほんっとにお前は1日中ギター触ってるよな。」
「ほっといてください。この時間がいちばん幸せなんです。」
おれは部活が始まってから終わるまでの約2時間、永遠に一人でギターを弾いている。じゃかじゃかコードを掻き鳴らしたり、1音1音メロディーを弾いたりするだけ。他の人たちはバンドを組んでセッションしたりもしてるのだが。おれはギターを弾けさえすればなんでもよかった。むしろ誰かと合わせるのは得意じゃない。一人でやってるほうが楽だ。だけど、
「今日も一人で。ほんと何しにきてんだよこいつ。」
「ほんとよね。やめちゃえばいいのに。」
そう陰口を言われることもざらだった。おれもそう思う。なのになぜだかやめられなかった。ギターを弾ける環境が部活じゃなければ無いというのもひとつだったけど、それ以上に、何かがおれが部活をやめるのを引き留めていた。それが何かはわからない。
「どけよ。」
不意におれの体を揺らした。誰だ。振り向くと軽音楽部いちの図体の持ち主、郷田がいた。
「いっつもいっつも邪魔なんだよ。」
彼はみた目通り力任せのドラムをするので本人のストレス発散のためにやってるんじゃないかと思う。
普段はこんなこと気にせずいられた。でも今日は違った。理由はない。なぜか今日は周りの目がいちいち気になった。心の中がもやもやする。俺は気がつけば彼を殴っていた。
「なにすんだよ!」
「いやー、邪魔だったもんで。」
おれは郷田を挑発した。彼は思った通り挑発にのった。
「ぶっころす!」
郷田が殴り返そうとこちらに向かってくる。




