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茶色いノート  作者: ふりまじん
魔法の呪文

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作者、幽霊作家をかたる2


「とにかく、時代はこっちに向いてきたの。いい、時影、これからはモキュメンタリーなのよ。」

と、作者は自信満々に言った。

「はい。それが何か?」

私にはよく分からなかった。私の作者は金鉱を探すのが好きなのです。そして、その宝の地図ばかりを増やしてそのまま放置するのです。

「それがって、いやね。ノリが悪いわ。いい?とにかく、私、変な話の展開で何だか物語がストップするじゃない?」

「はい。」

「でも、それって、結構、面白い展開でもあると思うのよ。」

「え?ええ。」

「だから、今回は『幽霊作家』の裏話も使えるって事じゃない。モキュメンタリーなんだもん。」

作者は興奮気味にいう。私は作り笑いと、一呼吸をおいてデザートをとりに行く。


そのような裏話は、毎回話しをしているし、何より、本編を何とかしたほうがいいのでは、と、言ったら、作者は怒ってしまうのでしょうか?


ゲームに例えるなら、イベント前の分岐の選択のような気がしてきました。


作者の執筆中の『幽霊作家』は、江戸川乱歩の『悪霊』の期間の謎を追うというテーマで作られました。

『悪霊』の世界ではなく、乱歩の出版社の編集をしている文月という人物が未完で止まった『悪霊』の解決編を作り出す、止まった小説の犯人探しをする。という、何とも斬新なミステリーです。


このテーマは、わりと良かった気がします。『悪霊』の出版は1933年とあと数年で100周年ですし、2025年は明智小五郎デビュー100周年でした。

そして、読者もついてくださった作品でした。


では、なぜ、物語が止まったのか。


この辺りには、色々な、実在する物語をモデルにした為に湧いてくる問題があるのです。多分、この辺りを何か短編にでもしたいのでしょうが、うまく行くのでしょうか。


デザートのいちごは少し多めに盛りましょうか。

レアチーズケーキには国産レモンを使った甘いジュレをたっぷりとかけて。


何としても、作者のやる気を膨らませないといけません。そして、その気力を本編に向けなくては!

それでなくても、やることが多くて、最近は私のところにもあまり来ていただけないのですから。

でも、ここで物語に人気が生まれれば、作者はきっと小説を書く情熱を取りもどしてくださるに違いありません。

その為には、間違っても、変な方向に話が進まないように、軌道修正が出来ないといけないのです。


飲み物はアッサムを。

アッサムはインドのアッサム平原で収穫される茶葉で、3月から11月まで収穫されます。コクと強い香りがミルクと合わせても負けないところからミルクティーに向いていると言われています。

本日は英国のミルクティーで楽しみましょう。ミルクを先入の少し甘い飲み物に。


「いい?時代はモキュメンタリーなの。モキュメンタリーなんだから、今回エントリー出来なかった色々なエピソードをここで披露してもいいと思うのっ。」

作者はアッサムの甘い香りに甘やかされて少しドヤりながら言いました。

「モキュメンタリー。つまり?」と、わざと質問形式で作者を見ました。作者は自分に説明を求められてように少しギョッとして目を開きました。まあ、この辺で許しましょう。「つまり、本当にありそうな、嘘の話を作る、ということですよね?」

私の説明に作者は少しホッとしたように目を細めて、そこから話始めた。

「そうよ。うん。なんか、それっぽい話、そういうのがトレンドなんでしょ?だから、『幽霊作家』の色々を、私が迷った不思議な話を書けると思ったの。ああ、本当だったら、一部を完結してもう、2部を書いてるハズだったんだから。」

作者は悔しそうに言った。

「それは、モキュメンタリーではなく、愚痴 というのではありませんか?そういうものをホラーファンは望んでいないと思いますが。」

私の言葉に作者は私を見て呆れたようにため息をつく。

「時影、わかってないわね…これはいつもの私の未完ではないのよ。これは江戸川乱歩の未完なのよ。どうしても書けませんと謝った、乱歩が完敗した屈辱の物語なの!

それはさ、読者だって、色々と文句はあると思うわよ?

何にしても、完結編 直前で筆を折ったんだもの。推理小説好きは欲求不満で発狂したくなるわ。

でも、書いてるほうだって、こういう完敗は嫌だったと思うの。

私ですら嫌なんだから、あの江戸川乱歩の名前でコレを言うのは屈辱だったと思うのよ。」

作者は真面目な顔で私を見た。作者の顔を見ながら、私は共に重ねた執筆活動を思い出して少し切なくなる。

そう、何度も作品を止める事になってはいますが、それをいいとは思ってはいないのです。 そういう性格の人なら、こんな後日談なんて恥ずかしい話を発表するわけがないのです。

「そうかもしれません。」

そう言って、アッサムを口にする。甘く、懐かしさのある渋い香りが心を包みます。

「そうよ。私も、初めの一回は、偶然だと思ったけれど、今回、2回目の解決編前の一時中断は、やはり、何か、呪いのようなものを感じずにいられないわ。」

作者の言葉に、気持ちが少し冷静に戻るのを感じました。

確かにホラーで心機一転、やり直したいのは分かりますが、だからと言って、呪い なんて言い出すとは。

「呪い?それはありません。何故なら、この『悪霊』という作品は、プロの作家が解決編を追加して書籍化しているのですから。」

そうです。この『悪霊』のエピソードは令和の現在でも語られる乱歩作品の有名なエピソードなのです。この物語の解明に取り組んだミステリファンは多数いるハズなのです。

「それはね。いると思うわよ。心霊スポットだっていつでも幽霊に会えるわけじゃないし、そこで恋が始まる事だってあるわ。

そういう、よその話はいいのよ。コレは私の体験談なんだから。

とにかく、私は解決編前まで辿り着くと、なんか書けなくなるってことが続いてるという事と、

初めのボツった解決編の話、そして、ホラーイベントに間に合わなかった一部の解決編の話。そして、そこからの2部の話をするんだから。」

作者は叫ぶ。

「それは、つまり、宣伝、ではありませんか?」

私の言葉に作者は固まった。そして、少し赤面してから一言。

「違うわ。」

と、つぶやいて、マシンガントークを始める。

ああ、なんと心地よい時間でしょうか。必死で話す作者の赤面顔。私を説得させようと必死で話すその意地らしい様子…ああ、現在、作者は私の事だけを見つめているのです。

攻撃的な話し方も、こうして聞いていると、まるで音楽のように聞こえてきます。

モーツァルトの『トルコ行進曲』のような、それとも、この曲にインスパイヤーを与えたと言われる

『ジェッディンデデン』の方が似合いますでしょうか。

なんと、甘美な春の夜なのでしょう?

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