第肆拾壱話 小隊本部強襲さる
やっと!!!!やっと再開であります!!!!!!
日本陸軍第2空挺小隊設定時刻 17:01
ホウマー島 大草原
日本空軍無人戦術輸送機CQ-1 付近
第2空挺小隊設営陣地
つい数分前まで、そよそよと藪が靡いているだけだったこの草原は、黒煙が立ち上る戦場と化していた。不時着した2機のCQ-1の周囲に即席の陣地を構築した第2空挺小隊は、突如として襲来してきた謎の航空勢力との交戦状態に入っていた。
「当てようと思うな。弾幕を張って、近付けなくするんだ!」
各分隊長の指示のもと、隊員は曳光弾を交えた89式小銃を上空に向け、3点バーストでぶっ放す。パパパ、と撃ち上げられた弾丸は目標に当たる事なく宙空を切る。しかしそれで良い。曳光弾を交えた弾丸はそれだけで威嚇になる。地上に向けて急降下して来ていた“ソイツ”は進路を変えて上昇する。
そして、それこそが彼らの狙いであった。
「あそこだ。キャリバーを撃ち込んでくれ!」
隊員の1人が16式機動戦闘車に駆け寄り、叫んだ。その天板には対空、対非装甲目標用にブローニング M2重機関銃が備え付けられていた。
「よし!」
ドドドドッ‼︎重機関銃の銃口から12.7×99㎜の鉄塊が放たれた。銃口初速は900m/sに迫る。上昇に転じ、速度の乗っていない航空目標などただの的に過ぎない。徹甲弾が表面を貫通し、焼夷弾がその周囲を燃やした。
ソイツ―――西洋の神話に出てくる、ドラゴンのような見た目をした敵―――は、血飛沫を上げながらそのまま地面へと墜落する。
「いいぞ、3体目だ!」
まさか口から粘着性の炎の塊を吐いてくるとは思わず―――奇襲された事も合わせて―――最初はどうなることかと肝を冷やしたが、存外何とかなる様だ。
敵は脆い。
このドラゴンのような飛行物体の背部には、何故か生身の人間が居た。どうやらその人間が飛行物体を操っている様で、その人間を撃ち殺してみると飛行物体の方も制御を失った様にあらぬ方向に向かって飛んで行く。
「よし、機首から出る炎にさえ気を付ければ、大した連中じゃ無いぞ。」
隊員の一人が、即席の土塁から小銃を撃ち上げながら言う。しかもその“炎”は、CQ-1の主翼に命中しても表面を焦げさせる程度の威力しかない。粘性の強い燃焼物なのか、火は自然鎮火はなかなかしないものの、はっきり言って人間が喰らわない限りこちらに被害は無い。
ドンドンドンッ!
数発の感覚でバースト射された重機関銃の弾丸が、また敵の龍を屠った。翼が千切れ、きりもみ状態に陥りながら地面に激突する。
「・・・第4分隊と通信回復!彼方も正体不明の勢力と交戦したようです。損害なし。」
「隊長たちもか!クソ、コイツら一体なんなんだ。何の通告もなしに攻撃して来やがって・・・!」
隊員の1人が悪態を吐く。
そう、彼の言う通りこの謎の航空戦力は、極相林の方角から姿を現わすや突然、彼ら第2空挺小隊に向かって急降下。炎を打ち出して攻撃してきたのだ。その奇襲を受け、数名が火傷を負った。命に別状こそ無かったが・・・。
しかも、我々に攻撃を仕掛けているのはこいつらだけでは無かった。つい先ほど、周囲を探索するために上げた小型の無人機がこちらに向かってくる黒装束の一団を発見していた。
数はおよそ100ほど・・・本当に連中は一体何者なんだ。
「正体不明の一団が到達するまで、あと10分ありません!如何しますか・・・⁉︎」
「どうするっても、増援の可能性は絶無、隊長らが加勢したところで焼け石に水だ・・・!どうもこうもあるか!交戦を続ける以外、何も出来ん・・・。」
―――それと、白旗を掲げれる様に準備しておけ・・・とも言った。その時の部下の顔は何かとんでもないモノを目の当たりにした様な物だったが、彼は気にしない。気にしている暇はない。
もしや、このまま祖国の土を踏むことも出来ず、ここで死に果ててしまうのではないか―――顔にこそ出さなかったものの、彼の頭の中はそんな考えが占め始めていた。それが、各々に対する対応をぞんざいな物にしていた。
だがそんな中でも、彼が無視できない物が入った。
『HQ、HQ!くそッ小隊本部!無事か⁉︎応答しろ!』
「隊長⁉︎こ、こちら小隊本部!どうしました⁉︎送れ!」
『よかった、まだそっちは無事だな!すぐにMCVを使える様にしておくんだ。恐竜みたいなデカい生物が一頭、そっちに突進していった。無人機で確認しろ!』
「は⁉︎はい!」
彼はすぐに良持が指定した方角に無人機を向かわせた。すると・・・
「―――いました!何だこいつは・・・⁉︎恐竜みたいな・・・あっ、画像を端末と共有します!」
無人機を操る隊員は携帯端末の画面を操作し、小隊員全員の持っている携帯端末に画像を伝送する。衛星通信システムは使えないが、16式機動戦闘車二型の優れた戦術情報共通認識能力を利用してやれば、時間はかかるが出来ないことではない。
そして自身の端末に送られてきた画像を見て、彼は驚愕する。
「おぉ・・・何だこいつは。ハゲたトリケラトプスみたいだな・・・。」
随分と酷い物言いだったが、実際彼の目にしたものはそう形容すべきものだった。しかし―――
「6足歩行か?どういう生き物なんだコイツは。」
画像の中では、極相林の中から現れてきたソイツは6つの足をワサワサと動かしながら現れたように見える。その事が彼の眉に皺を寄せることとなった。
少なくとも、彼の記憶の中に6足歩行の大型生物はいない。6足歩行と言えば昆虫だ。だがとにかく、コイツが我々第2空挺小隊にとって脅威であるのは間違いない。コイツは真っ直ぐこちらに向かってきていて、しかもその図体は目測6m以上はある。
つまり、象よりもデカい恐竜の様な奴が我々に向かって突進して来ているという事だ。非常にまずい。歩兵だけでは火力不足の可能性がある。隊長の言ったとおり、16式機動戦闘車の火力支援が望ましいのだが、おいそれとここから16式機動戦闘車を向かわせることは出来なかった。
「また来たぞ!撃て撃て!」
第1分隊の陣取る場所に、空からドラゴンの様な敵が迫る。分隊長が射撃を命じるやパパパッ、と幾筋もの光の束が上空から飛来したドラゴンの様な敵に放たれる。殆どは命中しないか弾かれるが、幾つかの弾丸はそのドラゴンの背に跨る人に命中し、アッサリと生命を刈り取った。
「避けろ!」
分隊長の号令一下、蜘蛛の子を散らすように分隊員がその場から離れる。直後、バウ!と独特の音を発しながらドラゴンの口から炎が吹き出され、直前まで第1分隊の居た場所に着弾する。敵は、地面との接触を避けるために文字通り翼を翻し上昇に転ずる―――
「ようし、撃てっ!」
すると今度は16式機動戦闘車のM2重機関銃が火を噴く。ドドドッ、ドドドドッ!曳光弾を交えた銃弾は上昇に際し速度の落ちた敵の無防備な背中を抉り、貫いた。
ギアアッ―――
断末魔の叫びだろうか。
事切れたドラゴンの様な敵はそのまま重力に引かれ落ちてゆき、ドジャッ、と地表にその亡骸を晒した。
◆
同 上空
「くそっ、また堕とされた!何者なんだ奴らは⁉︎」「奴ら、蛮族じゃないのか⁉︎」
黒煙がもうもうと上がる戦場の空で、彼らの怒号が飛ぶ。
彼ら―――カラブリァン皇国陸軍・派遣軍ホウマー島陸上制圧竜騎士団―――は、今までに相対したことのない敵に狼狽する。
たかが数十人程度の地上の敵に、我々竜騎士が―――ワイバーンが、いいように撃墜されている事実に、彼らは憤慨していた。
しかし地上からの攻撃でワイバーンが堕とされるなどと言うことは、彼らが全く経験したことのないものであって、その事について彼らが現下の情動に駆られるのは致し方のないことではあった。
そも、彼ら竜騎士団がこんな辺境の島の、それも超端っこの古戦場でこんな対地任務に駆り出されているのは、今からおよそ数時間前―――陸軍の島周巡回竜騎部隊が、ホウマー島の東端で発見した“謎の巨大怪鳥”に端を発する。
その謎の巨大怪鳥は突然に島の東端に現れるや、あろうことか巡回竜騎隊の追撃を振り切ってしまった―――聞いたところによると、速度差が圧倒的過ぎた―――そうだ。
そしてそれを叩き潰すべく(東からやって来たので、他の列強の可能性もあったが他の列強が態々こんな辺境の島に来るはずがないので、軍上層部は“敵”と判断した)捜索を開始し、ようやっと見つけ出したのが彼らの目下にある敵ということである。
彼らがこの上空に到着して最初に目にしたのは、抉られたように凹んだ地面である。
ここは、カラブリァン皇国軍がホウマー島の現地住民と戦闘を繰り広げた戦場のひとつで、彼も当時、此処の大空を愛騎を駆り飛んでいた。その時はあんな地面が抉れたような跡はなかったのである。
つまり、あの怪鳥はここに不時着したのだ。“龍の可能性もあるので十分注意せよ”と言われていたが、地に堕ちた龍など脅威ではない・・・何より奴には一切、魔法を使っている気配はなかった―――つまりアレらは龍などではない。
その周囲に見えるいくつかの人影―――巨大怪鳥、魔法の痕跡無し・・・それらから導き出される答えはただ一つ―――やつらは、西部世界の蛮族!
奴ら西部世界の蛮族どもはいずれ我が東部世界の―――東部同盟が滅ぼすべき敵である。そして、魔法を持たぬものどもが、我々竜騎士隊に敵うわけがない(一体どうやって友軍の追撃を振り切ったのか、何故ここにいるのかと言う疑問は残るが)。そういう訳で、意気揚々、確実戦果を期して全隊に攻撃を命じ―――
――――――・・・
―――結果このザマである。
初撃の奇襲には成功した。突然の、上空からワイバーンの圧倒的な魔法攻撃―――魔力火炎弾(火球)に蛮族らしく慌てふためいていた。
しかし、効果はそれだけであった。
初撃を与えて以降、蛮族どもは生意気にも反撃を行ってきた。最初は何をしてきたのか分かりかねたが、それが連中からの反撃だと理解した時、今度は彼らが慌てふためく番だった。
地上からワイバーンを攻撃してくるなど、彼らにとっては前代未聞の事件だったからである。
混乱から立ち直るはいいものの、その後はちまちまと反復攻撃を繰り返すのみ。そして反復攻撃を繰り返す合間にも、敵は攻撃するワイバーンを撃墜していた。しかもあろうことか、敵の攻撃は―――原理は全く不明だが―――ワイバーンの頑丈な鱗を貫いていた。
背面に乗騎している竜騎士は無事なのに、突然ワイバーンの方が事切れたように高度を落とし、墜落してしまうことがあったのた。
つまり、ワイバーンが絶命してしまったという事だ。敵の攻撃によって・・・如何なる剣戟をも弾き、熟練の槍士の刺突も貫き通さないワイバーンの鱗が、破られているのである!
恐ろしい事態である。そんな事はあってはならない。
しかし!そんな悪夢も、間も無く終わりを告げるだろう。
先ほど彼らは、魔念でタラスク2頭を中心とする陸戦龍騎士団の2個騎士隊がこの先戦闘に介入することを知った。あの巨大な怪鳥を仕留めるには、カラブリァン皇国軍の通常軍では最高クラスの火力を誇るタラスクが必要だと、司令部も感じたのであろう。
彼はタラスクの到着まで、攻撃を散発的に繰り返すことを部下に命じた。つまりは急降下からの必中を期した攻撃ではなく、上空から火球を撃ち下ろすだけの攻撃である。
誉ある竜騎士隊としては苦渋・・・否、苦痛とも言うる判断だったが、この際致し方がない。上空から敵が殲滅されゆく様を、ゆっくり眺めるとしよう。
◆◇◆◇◆
日本陸軍第2空挺小隊設定時刻 17:10
極相林内
このままこの森の中で立ち往生していても埒があかないので、分隊は一旦本部への帰還を期した。しかしその道中、象よりもデカく、そして遥かにブサイクな恐竜の様な生物が小隊本部のある方向へ進撃してゆく様を彼らは見た。
良持はすぐさまこの事を小隊本部に伝えたが、彼らには既に新しい脅威が迫っていた。
モ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ッ゛ッ゛‼︎‼︎
何と彼らの後方から、先ほど目撃した巨大ブサイクな生物が現れたのである!
顔面が潰れたように平らだ。三角形に近い口腔からは、実に数センチはあるだろう鋭い牙を、いくつか見て取ることができた。
「くそっ!」
殿を務める良持は時おり向き直っては小銃弾を撃ち込むが、全く効果が無い。バキンバキン!と金属音のようなものを上げながら、5.56㎜弾はあらぬ方向へ吹っ飛んでいってしまう。
「どういう顔面してやがるんだアイツ!」
良持はそう悪態を吐きながら、20発のマガジン丸々一本撃ち切ってしまった。舌打ちをしながら踵を返し、マガジンを換装しながら走り始める。
「三嶋ッ!」
「え⁉︎はっ!」
良持は自身の部下を呼ぶ。三嶋は今現在、この分隊で最強の火力を有しているのだ。
「もうすぐ森を抜ける。その直前で、カールグスタフM4を使う!貴様は先に行って射撃準備を整えろ!」
「り、了解!」
万が一のために、三嶋と一緒に沢田も先に行かせた。気を失ったままのナキアを抱えている沢田は、この撤退行軍には正直邪魔である。
残った8人は交互に小銃を撃ち放ち、弾幕を作る。小銃から繰り出される弾幕の濃さなどたかが知れているが、やらないよりはマシだった。
銃弾を弾き返しながらブサイクな巨大生物はこちらに走ってくるが、時折、目の近くに着弾すると怯んだように動きが鈍くなる。やはり生物である以上眼球は弱点のようなのだ。眼に命中しないか、何ていう期待を織り交ぜつつ、射撃を繰り返す。
「むっ!」
2つ目のマガジンを打ち切った時、良持は気づいた。
実弾入りのマガジンがあと僅かだ。残りは、非致死性のゴム弾―――ここで良持は思い切った命令を出した。
「全員、現在のマガジンを撃ち切ったらゴム弾に切り替えろ!どうせ奴に実弾は効かん。これ以上高い弾薬をくれてやる義理は無い!」
1発100何十円とする弾丸をこれ以上無駄撃ちにできない、どうせ効かないのならゴム弾でも同じだろうという事だ。
すると、バキンバキン!と金属音に似た音を立てながら弾丸を弾いていた巨大生物は、バチンバチン!と何かに引っ叩かれる様な音を立てながら迫ってくるようになった。
そうして暫く走ると、森の出口が見えてきた。彼らが巨大生物からここまで逃げおおせれたのは、ひとえにこの森の木々があのブサイク生物の進行を妨げているからに過ぎない。森を過ぎれば、良持らは瞬く間に追いつかれて踏み潰されるだろう。
だがそれを防ぐための、最後の砦を彼らは用意していた。
◆
「来た来た来ましたよ!」
三嶋がカールグスタフM4を構えながら叫ぶ。射線上にまだ分隊員や隊長の良持がいるため撃てないが、指はいつでも引き金を弾ける様にスタンバイしてある。
「落ち着いて、ようく狙うんだ。後ろには誰もいないからな、後方爆風は気にしないでいいぞ!」
とは言うが、全員が森をを抜けて来るタイミング=後方爆風の範囲内に入る、なので結局右方確認は欠かせない。
「良し、耳栓つけるぞ。」
無反動砲の射撃音はかなりのもので、聴覚を保護するため射撃時に耳栓を付ける事となっている。射手の三嶋と装填手の沢田はそれぞれ耳栓を装着した。ナキアは気を失っている上に既に沢田が耳栓を付けておいたので平気だ。
「〜〜!」
「!」
森の中から、突然とも思える勢いで分隊員と良持が飛び出て来た。注視していたとはいえ、突然森の中から現れたように見えてしまった。それだけ迷彩服の性能が高いという事だ。
「ーーっ!」
なんか叫んでるが耳栓をしているので正直何も聞こえない。
「後方確認!」
そうやって叫んで、三嶋は自身の背後を振り返る。誰もいない。クルップ式と呼ばれる方式の無反動砲であるカールグスタフは、発射時にそれと同等の運動エネルギーを持つガスを噴射させて反動を軽減する。つまり後ろに誰かがいると最悪殺傷される危険があるのだ。
視界の端にチラッと映る隊員はいたが、皆軒並み伏せて耳を塞いでいる。これならガスの被害を受ける心配はない。
「後方安全確認よォーし!」
言って、照準器を覗き込む。照準器の拡大された景色の向こうでは、件のブサイク巨大生物が今にも目前に現れそうな勢いで突進して来ていた。
「うぉっキメェ。」
ボソッと悪態をこぼすが聞いているものはいない。
沢田が砲弾を装填し、砲尾を閉鎖する。カールグスタフM4はノズルのみで尾栓が無い。
バチコン!
と割りかし強い勢いで鉄帽を引っ叩かれる。発射準備完了の意だ。同時に、発射の衝撃に備えて(ナキアを脇に抱えたまま)沢田は三嶋の腰に張り付いた。
ブサイクな顔面は照準器一杯に迫っている。ぶっちゃけこれ以上見たく無い!
「どこの誰に命令さてたか知らないが、喧嘩ふっかけて来たのはそっちなんだからなっ‼︎」
発射レバーをグッと引きしぼるや、轟音と閃光と共に砲弾が砲口から吐き出された。
月に一回!何か投稿したいです!!!!




