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異界にはためく旭日旗  作者: お猿プロダクション
序章 終わりの始まり
40/54

第参拾弐話 龍vs毒蛇 上

今月最初にして最後の投稿だと思いまふ((


遅くなりました…

 



 混乱は、極限に達しようとしていた・・・突然に襲来した爆発による殺戮は、なお拡大している。

 クリフ達に続き犠牲となったのは、ワイバーンの錯乱を抑えきれなかった竜騎士達だった。

 混乱に陥ったワイバーンが、主人の制止を無視して勝手に口腔へと魔力を収束させる・・・次第に炎の輪郭を持った球形になり―――それを撃ち出す前に爆炎に包まれ、永遠の眠りを遂げる。

 そうして、被害は加速度的に増加の一途を辿っている。

 しかし、その最中にあっても、古参やフェンスなど一部の竜騎士達は冷静だった。

「ワイバーンを落ち着かせるんだ!絶対に炎弾を作らせるな‼︎」

 僅か1分にも満たぬ間に、彼らは認識していた・・・“炎弾を作った騎から殺られている”という事に。

 だが、彼らがその事実に気づく間に、10騎以上の味方が何者かによる何らかの攻撃によって撃墜されてしまっていた。そして更に、彼らがそれに気づいた所で、彼らの動向が逐一モニターされている事に変わりはない。


 ◆

 同刻

 日本陸軍 AH-1SJ 戦闘ヘリ小隊 “タイタン”


 赤外線画像誘導(IIR)であるATAS blockⅡ Jによる攻撃は出来なくなったものの、何もAH-1SJの攻撃手段はミサイルだけではない。

『全機、2機1組に散開!敵航空隊を撹乱せよ・・・!』

『『『了‼︎』』』

 命令一下、4機のAH-1SJ は瞬く間に散開、2機1組の編隊に切り替わり、時速250kmへ加速―――同時に機首を上げ、敵航空隊に対して優位位置をとりに行く。

 ミサイルを2発放ったお陰か、先程までよりも微妙に機体の動きが軽快になった気がする。

(・・・。)

 コレクティブレバーを引く手に、緊張は無い。これから、恐らくは日本陸軍初となる、対戦車ヘリコプターによる空中戦(・・・)を繰り広げようとしているというのに―――。

『老士田、前は頼んだぞ・・・!』

『任せて下さい!』

 実際に機体を動かすのは加藤だ。が、機首ターレットの機関砲―――M197―――を操作し射撃するのは射撃手(ガンナー)である老士田の役割・・・二人三脚、息を合わせて機体を操らなければならない。

 しかし、それに対する不安もない。何故なら彼とは、もう年単位での付き合いだ。以心伝心というやつだろう、こういう時、彼が何を考えようとしているか大体分かるものだ。


 上昇すること、数分・・・。



現在高度(フライトレベル)2000(20)フィート・・・我これより、突撃する・・・!』

 グッ・・・!

 コレクティブレバーを押し込み、機は急降下の姿勢となる・・・その態勢をとった4機全てのM197は、既に目標を見定めていた―――。


 ◆


 同刻


「・・・!上方ッ、何か居る‼︎」

「「「――――――ッッ‼︎‼︎」」」

 最早、誰が言ったのかは分からないが、その一斉には、皆の首を反射的に真上に向かせるだけの力と説得力を帯びていた。全員が目を細め、空を見上げる。

(―――何処だ⁉︎)

 その1人でもあったフェンスは、焦りながらも灰色の色彩に囲まれた瞳孔を泳がせ、異変を探す。

 ・・・!

 太陽―――青空の中燦々と煌めき、今も自分たちに向かって、暖かさと光を届けてくれる星・・・その光の円のすぐ側に、別の何かが光るのを彼は見逃さなかった。

「居た・・・っ!」

 かっ、と目を開いた。瞳孔を刺す強烈な光の奔流に目が痛み出すが、最早彼にそんな事はどうでも良かった。

 だんだんと定まる輪郭・・・細長い胴体に、小さな翼のようなものが生えた翼竜―――?彼にはそう見えた。

 同時に、空気を叩くような事が聞こえてくる。

 バタタタタタ・・・・・

「なんだ・・・?」

 こんなに音を立てて、奴は一体何を企んでいるんだ?

 目を細め、フェンスはその物体を睨む・・・だが、彼に残された猶予はそれで一杯だった。


 ゥヴヴーーーン・・・・・ッ!!


「⁉︎」


 突如として向きを変え、それはこちらに向かって突っ込んでくる。それも1つでは無い・・・・2、3・・・4つだ!

 あれ程に(まるで見つけて下さいと言わんばかりに)忙しく音を立てて何をしようとして居るのかは、やはり皆目見当もつかないが、フェンスに限らずここに居る竜騎士達は、“アレ”から明らかな害意を感じた。

「全員、小隊ごとに散開せよ!」

 生き残った飛竜第1制空小隊“ヘルメサ”の副隊長が指示を飛ばした。

「散開ッ!」

 狙いを容易に絞らせないために、残った20数騎は各々の小隊ごとに散開する。4騎前後の小隊は降下、上昇、様々な動きを繰り返し、敵の攻撃の手を逃れる・・・だが本来、このような防御的な機動(・・・・・)追い詰められて居る側(・・・・・・・・)のする事。カラブリァン皇国が建国されてからというもの、古今東西攻めては勝ち、攻めては勝ちの連戦連勝を繰り返していた彼らの多くにとって、この行動は屈辱ですらあった。

「クソが・・・!舐めるなァッ‼︎」

 1つの小隊が降下から、急に上昇へと転じた。

「・・・っ!待て!高度を上げるな‼︎」

 “ヘルメサ”の副隊長が制止をかけるが、彼らはそれに従う事はなかった。

 高度を上げるというのは、それだけ位置エネルギーは大きくなるが、それに反比例して運動エネルギーを急激に失う。

 主に羽ばたくことによって揚力を得るワイバーンには失速(ストール)という現象なほぼ関係ないことだが、それでも運動エネルギーを失うことによって機動力は格段に落ちる。

 上から狙われる身にとって、上昇し逆撃に転じようというのは愚の骨頂であった。

 そんな初歩的且つ当たり前な事は、実戦経験が皆無に等しいフェンス達ですら分かっていた事だというのに、彼らの心中は、理性よりもプライドが上回ってしまっていた・・・。




 ――――――故に、最初にバラバラにされた。



「な・・・⁉︎」


 一瞬、ガラス片が瞬いた様な、僅かな光が奴から煌めき、無数の光の弾が噴き出されたのを、フェンス達は目撃した―――ほぼ同時に、その光弾によって彼らは四肢を捥がれ、身体を穿かれ、挙句ワイバーンですら身体中に風穴を作らされる場面をも―――それも、4騎共にほとんど同時に。


 ―――バルァララララッ!!


「「「・・・⁉︎」」」

 遅れて大海原に木霊(こだま)する、何か猛獣の雄叫びの様な音―――あの光弾は魔法では無い。魔法を使えば、竜騎士ならば分かる。・・・で、あるならば・・・

「物理攻撃だというの・・・⁉︎」

 リーベが驚愕の表情もそのままに、見上げた双眸を見開いた。

 あんなものを食らってはひとたまりも無い・・・しかも魔法を使っていないとなれば、なおの事凶悪だ。

 しかし、最早彼らに逃げ道は無かった。

「くっ・・・!」

 目前にまで迫る、視界を覆い尽くす一面の蒼――――海面だ。

 高度250リム(約300m)からの降下では、ほんの数十秒もせぬ内に海面へ到達してしまう。


「全騎ッ、上しぼッ―――⁉︎」


 ダララララッ‼︎


 言い終わる前に、“ヘルメサ”の副隊長は光弾に包まれ粉微塵となる。海面との激烈且つ死滅的なキスを回避しようと、敵に対する投影面積が大きくしてしまった事が失策と言えば失策だが、そんな事は彼ら全員に言えた。


 ダララララッ、バルァララララッ‼︎


 重複する何かの音が、光弾という死の息吹となって竜騎士達を襲う。

 ドッ、バンバンッ!

 激しく何かが打つかり、弾ける様な音を残して、瞬く間に4騎が撃ち落とされてしまった。


「各個に散開!敵との格闘戦に持ち込めェ!」


 誰が言ったか・・・そんな事も分からない程に彼らは混乱し、追い詰められていたが、その状況にあって尚、冷静な者はいたのだった。

「コンのぉッ・・・‼︎」

 最初に動いたのはステナだった。

 持ち前の細かい操縦技術を活かし、海面を舐める様にワイバーンを飛ばす・・・他の者も、概ね同じ行動を取っていた。

「らァッ!」


 ぐっっ‼︎と手綱を目一杯引き、ワイバーンを急上昇させる。

 この時の竜騎士に掛かる負荷は相当な筈だが、ステナはそれをものともしなかった。―――敵騎は気づいていないのか、相変わらず2騎1組で他の竜騎士達を追っている・・・凄まじい連携だと、フェンスは敵ながら舌を巻いた。

 どちらかの組が攻撃していると、別の組がそれをフォローし、背後の占有を許さない。その逆も然り。・・・だがステナは、そのフォローしている敵騎の背後に着いたのだ。激しく機動している敵騎の後背を占有し続けるのは簡単では無い。

 ステナに続きリーベも、敵騎の背後を占有する位置に着く。

 背後の彼女らに気づいたか、追撃をしていた敵騎は急激に向きを変えてステナ達の追撃を阻まんとした・・だが、それこそが彼女達の罠だった。


「いけェッ!」


 直上!

 降下して逃げていなかった別の味方が太陽を背に、逆落としに攻撃する―――!魔力の収束を示す、橙色の輝き!それは、最早敵騎の避けられない距離でのこと。

()ったッ‼︎)

 誰もが確信する。

 あの距離まで詰められれば、たとえ気づいていようと、何も出来まい。



 その筈だった。



 だが、奴はそれを覆した・・・覆してしまった。

 突然に敵騎の小さな翼に抱えられていた長方形の箱が炎を噴き、何かを打ち出した―――打ち出された“それ”は、常識では考えられない様な挙動で真上に向かい、そのまま降下攻撃を仕掛けようとした味方を食い破り、爆発。

 空に残された黒煙から、引き裂かれた味方が2、3つほど落ちてくるのに、時間はかからなかった。


「「「・・・‼︎」」」


 絶句―――


 ・・・・・・・・・・・


「くッ・・・そぉっ!」

 ステナが沈黙を打ち破り、敵騎へと脇目も振らず突撃する。

「っ!待ちなさいステナ‼︎無茶よっ・・・!」

 リーベが制止しようとワイバーンを駆るが、

「リーベッ!前に出るなァッッ‼︎‼︎」


「え」


 馬車と同じ様に、ワイバーンは急には止まれない。地に足のついている馬と違い、抵抗の少ない空中にいるから尚更だった。


 ドッ、ドドドバン‼︎


 炸裂する光弾!

 首の中程から上をほぼ失い即死したワイバーンは、主人を背に乗せたまま海面へと真っ逆さまに落ちていった。

「リーベェーーーッ‼︎」

 彼女を助けようとフェンスも乗騎の翼を翻すが、

「フェンス!行っちゃダメ‼︎」

「っ!」

 すんでの所で耳朶を打った声にフェンスは従い、翻した翼を一回転させて体制を直す。そこへ、ヒュゴゥ!と音を立てて光弾が通り過ぎた・・・あのまま進んでいたら間違い無く自分も吹き飛ばされていた・・・!

「れ、レイ・・・ありがとう・・・。」

「礼なんかいらない。それよりも、目の前の敵に集中してっ・・・!」

 厳しい口調でフェンスを咎める彼女は必死だった。

「でも、リーベが・・・!」

「あの女が簡単に死ぬわけないでしょ・・・貴方が信じてあげない(・・・・・・・・)でどうする(・・・・)の!フェンス!」

「ッ・・・!」

 叱咤され、ようやく目が覚めたかの様にフェンスは頭を振った。

(そうだ・・・。)

 俺が彼女を信じてやれないでどうするんだ・・・!

 彼女の事は一先ずおいといて、まずは自分が生き残る方法を考えなければ・・・ここで死んでしまっては、リーベが生きていてもそうでなくても、彼女に合わせる顔がない。

「レイ!」

「何?」

「ステナを援護しよう。俺のサポートを頼む!」

 返事をするまでもない。一人であの敵に挑む仲間を見捨てておけるものか。

「分かった・・・!」


 彼らに続いて他の竜騎士達も、戦意を新たにする―――


 ◆


 同刻

 日本陸軍 AH-1SJ 戦闘ヘリ小隊 “タイタン”


『ちっ!・・・すまない“タイタン4”!間に入られた!』

『“タイタン4”!背後を取られている。回避しろ(ブレイク)!』

「くそ!」

 そんな事は百も承知だ。

 AH-1SJ のメインローター部に配されているJN/APG-1は、確実に自らの後背を陣取る敵機を捉え、それを光点としてMFDへと表示していた。

 まるでギリシア神話にでも出てくるドラゴンのような奇怪な姿をしたその敵機は、航空機として見ればかなりの機動力を持っている。戦闘機どころではない。おそらく、第一次大戦頃の複葉戦闘機並みの旋回能力ではないか?

 フットバーとコレクティブレバーを駆使して、何とか敵機を引き剥がそうとするが、なかなか相手も巧い。“タイタン3”の射線に此方が入るように、且つ自分は此方を常に射界に捉えている。しかも、その“タイタン3”も、別の2機の敵機に阻まれ動きを制限させられていた。

 こうなれば、やや危険だが覚悟を決めねばならない。

「老士田!」

「はい!」

 加藤は相棒の名を呼び、確かめる。

「タイミングを合わせてくれ―――頼んだぞ・・・!」

「―――任せて下さい。」

 落ち着いた口調で老士田は返した。この言葉に、加藤は全幅の信頼を寄せていた。


「“タイタン3”!此方“タイタン4”・・・我の機動に合わせ、周囲の敵機を引き離してくれ。」

 加藤機を援護する筈の“タイタン3”は、その射線もさることながら、直後から入った他の敵機の妨害に忙殺されていた。隊長機達もまた同様で、1機、2機と戦果を挙げさえすれど、いかんせん数の差が邪魔をして、加藤機の援護に回れなかった。

 加藤の意図を察した“タイタン3”の機長は「ふっ」と小笑し、

『“タイタン3”、了解した。しくじってぶつかるなよ!』

 そう返した。


 直後から“タイタン3”の挙動が変わる。

 加藤機から敵機を引き離すのではなく、これ以上加藤機に敵機を寄せ付けない様にしたのだ。


 自身の機の周囲から敵機が離れたのを確認・・・残るは、彼を追っている1機のみ。


「ようし。見てろよ・・・!」

 加藤はコレクティブレバーを強く握り、自らの後背を陣取る敵機に向かって、そう言った。


如何でしたでしょうか?と言うかヘリはあんな戦い方をしてくれるんでしょうか実際・・・。

さて次回は(多分)挿絵付きでございます。最低でも月一更新はしますので気長にお待ちくださいorz

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