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異界にはためく旭日旗  作者: お猿プロダクション
序章 終わりの始まり
39/54

第参拾壱話 発射

ようやく、よーーーーーうやく、日本vs異世界勢の本格戦闘開始!

まぁ正規戦じゃ無いんだけども。

 



 ――ドッガアァァアッッ‼︎


「クリフさんッッ―――――‼︎⁉︎」

 大空に響く絶叫と爆音!

 それに伴う混乱はしかし、既にフェンス達だけが共有するものでは無くなっていた。


「隊長ッ⁉︎」「今のはなんだ!」「爆発したのか⁉︎」「敵騎か!」「狼狽えるな。隊形を崩すなッ!」「他の部隊は大丈夫なのか⁉︎」



 突如として咲いた黒い爆煙の華・・・・そこから、幾つかの何かが、先程までの勢いもそのままに煙の花弁から飛び出した。

「・・・!」

 何かの事故だった?無事なのか・・・?その光景を見て、誰もがそう思い、そして疑わなかった。

 しかしそんな儚い思いは、次の瞬間に無情にも切り裂かれる。

 黒煙から飛び出した筈のそれは、煙を纏いながら2つ・・・3つ・・・と、見る間に分解していた。

(・・・・ッ‼︎)

 脳裏に浮かぶのはフェンスに限らず、この場の誰もが感じた、ある結論。

 その結論は、そのあと直ぐに決定づけられた。


 べちャっ


「ぅわッ⁉︎」


「ステナっ!大丈夫か⁉︎」

「・・・うん、でもコレ・・・・ッ⁉︎」


 ぬ る ゥ


 生温い・・・赤い液体。これは―――


 血・・・っ‼︎‼︎⁉︎


「――――ッッ‼︎」

 それが意味するものとは、即ち。

 まさか⁉︎


「クリフさ・・・ッッ⁉︎」

 レイが悲鳴に似た声をあげ、形貌の良い顔引き攣らせる。その視線の先を、フェンスならずとも誰しもが追い、そして驚愕する。

 煙を飛び出したい幾つかの何かは、スプライス・クリフ。彼女そのものではあった。しかし、幾つかに分かれて・・・・つまり、その肢体はバラバラとなっていたのだ。

 レイが見つけたのは上半身。直ぐに、残りの半身と愛騎(バーディゴ)も、慣性の勢いを失って、煙を晴らしている様が直ぐに見つかった―――他の黒煙に包まれた者も、同じ末路を辿っていた。

 あの“ヘルメサ”の隊長も、また。


「・・・・・ッ‼︎」


 あまりに一瞬、そして突然の出来事に、全ての人間が絶句する。

「な、な、な・・・・っ!」

 あまりの出来事についていけず、混乱に陥りそうな者も居た。しかし、彼らの多くは自身が混乱に陥ちる前に、更に巨大な者による混乱に巻き込まれる。


 その者とはワイバーン。・・・つまり彼ら自身の乗騎だった。


 実のところ、ワイバーンと言うのは概して臆病な性格であった。そも、ワイバーン達の持っている、魔力干渉波を打ち出し、魔力を含む物体から跳ね返った魔力を感じる事による長距離周囲認識能力は、獲物や他のワイバーンを見つける為だけでなく、“空”と言う自身と同じ世界を生きる“ドラゴン”という天敵から逃れる為のものでもあった。

「くっ、コラ!止めないかッ!」

 その中の一体のワイバーンが、主人の制止も目にくれず勝手に口腔へ仄かに光る火球を生成し始めてしまう。

 何がどうなっている・・・・・⁉︎そんな得体の知れない恐怖が、そのワイバーンを間違った方向に走らせ、何処へ飛んで行くやらも分からない炎弾を打ち出してしまう・・・・!


  が、その直前。


(―――アレは・・・⁉︎)


 フェンスの視界が一瞬、スローになる。・・・色は失せ、音も聞こえず、狭まった世界で、彼は“何か”を見た。


 羽の生えた、棒・・・いや柱?


 人より一回り小さいその空飛ぶ柱の様なものが、その何もかもスローになった筈の世界で、一つだけ。氷の面を滑る様に、するすると進んでいた。


 瞬間、視界が戻り、全ての物の動きも元に戻った。・・・だが、あの柱の様なものは見失っていた。


 だが、彼は。


 そしてソレが飛んでゆく先を、彼は見てしまっていた。


 ――シュバアアァッ・・・!


 “あの”音っ⁉︎


「・・・――ッ!」


 危ないッ‼︎


 そう言おうとした彼の声はしかし、喉を通過する前に、更なる大音量によって掻き消される。


 ドッダァアァァン‼︎


「・・・・・‼︎」

 さっきと同じ・・・クリフ達の命を奪った爆発。

 その黒煙が晴れる頃には、何かに引き裂かれた様に寸断されたワイバーンの亡骸と、同じく寸断された竜騎士の焼け焦げた身体が宙を待っていた。


「何がっ・・・」

 起きているんだ?その言葉が彼の口から溢れそうになった直後、新たな脅威が、彼らを襲った。



 ◆◇◆◇◆


 数分前 海上

 高度約300m

 日本陸軍 AH-1SJ 戦闘ヘリ小隊 “タイタン”


 海上で重複するローター音は、その行き脚を早めることはあっても遅らせることはなかった。そのローター音の正体・・・日本海軍第一演習艦隊旗艦『大和』に搭載されていた日本陸軍第6対戦車ヘリコプター隊 AH-1SJ 4機は、時速280km前後の高速度で邁進していた。

『“ブラックホール”、こちら“タイタン1”。送れ。』

『こちら“ブラックホール”、“タイタン1”どうした?送れ。』

 このコールサイン“ブラックホール”を名乗る者は、遡ること十数分前に彼ら“タイタン」隊に先立って『大和』を離艦し、いち早く現場空域上空に滞空、警戒監視を続けている日本陸軍の偵察ヘリ、OH-2『ニンジャ』だった。

『ニンジャ』は、それ単体で陸軍が希求した偵察ヘリとしての性能を十二分に発揮するが、持ち前の高い情報処理能力をいい事に、前型よりも探知距離が大きく伸長された100式JAEP(改)を搭載すれば、攻撃ヘリ部隊の管制機としても利用できる。

 まさに、他に悟られる事なく敵情を監視しそれを味方に伝え、更に味方の攻撃を支援する・・・名実ともに“忍者(ニンジャ)”となるのだ。


『我の周囲に脅威は存在するか?』

『―――貴隊の周囲に脅威は存在しない。そのまま進行を続けよ。』

 かの『ニンジャ』にかかれば、“タイタン”各機の周囲に限らず、これから“タイタン”が通過するであろう経路上、またその周囲に脅威目標が存在するのか否か・・・それを確かめることも容易かった。

 数秒のうちに周辺空域を走査し、脅威のない旨を伝えていた。

『了解した。通信終わり(オーバー)。』

 ・・・しかしその通信のやり取りを聞いていても、果たして本当に自身の周りに敵となる者はいないのか?探知漏れは無いのか?・・・・と、そんな取り留めのない思考が頭を過る――

「・・・・。」

 が、そんな自身の考えを打ち伏せ、機体の状態を示す機器と報告を信じてこそのパイロットでは無いか?

 加藤は自身にそう言い聞かせる。―――だがそれでも、コレクティブレバーを握り締める彼の手から緊張の震えが取れることはなかった。

 HMD越しに映る景色に、何も変わるところはない。ただただ、海面の煌めきと青空を埋め尽くす白い雲が、どんどん後方へと流されて行くのみ。・・・であるが、何処かいつも飛ぶ空と違う。

 陸と海の違いはあれど・・・・これ程にも、空とは・・・雲の影は、海面の煌めきは、不気味なものだったろうか?その人間の目が届かぬところに、何かが潜んでいるような気がしてならない。

「・・・なにか見えるんですか?」

「ん⁉︎いや・・・。」

 ずっと外を見続けている加藤を訝しげにでも思ったか、前席から老士田が首を捻らせ尋ねてきた。何で見えたんだ・・・・という疑問はコックピットの外に投げ捨てて、加藤は適当な返事をした。実際、何が見えるわけでもない。

「――案外、ビビってんのかも。」

「はあ・・・?」

 普段からの加藤からは考え難い返答であったか、老士田は素っ頓狂な声を上げる。

「演習で何度も経験した筈の空が、気味悪く感じるんだよ・・・こんなんじゃあ、演習中デカイ面向けてた連中に笑われちまうよ。」

「そうですか。でも、ヘリは陸戦兵器ですから、そんなに上空を心配するのは御門違いじゃ無いんですかね?それに、海軍さんが目を光らせてくれる限りは、戦闘機が来ようがミサイルが来ようが、全部叩き落してくれるはずですよ。」

「・・・。」

 確かに、老士田の言っていることに間違いは無い。

 ここから後方数十kmには、有力な対空戦闘能力を有する第一演習艦隊の主力艦隊が存在する。但しこれらの艦艇は個艦防空、僚艦防空の能力程度だ。老士田の言っているのは、その更に後方・・・・・巡洋艦『矢矧』と共に臨時第一補給戦隊を護る、ミサイル駆逐艦『響』の事だった。

『響』型ミサイル駆逐艦のネームシップである『響』は、日本海軍の駆逐艦で唯一、イージスシステムを搭載した駆逐艦で、その対空戦闘能力は他の駆逐艦はもとより、巡洋艦でさえもその一線を画する。

 同じくイージスシステムを搭載した『摩耶』型防空巡洋艦のうち、様々な関係の末イージスシステムではなく国産の対空戦闘システムを搭載した5~8番艦の補助と、駆逐艦隊の防空能力底上げのために建造された『響』型は、最大射程100kmを超える長距離対空ミサイルS(スタンダード)M(ミサイル)-2と、最大探知距離200km以上、数百の目標を同時追尾し、その中から脅威度の高さを自動的に選定、数十の目標と同時交戦を可能とするイージスシステムのレーダー“AN/SPY-1(v)”の恩恵により艦隊防空の傘を提供することができた。

 この『響』の探知距離、射程距離いずれにも、彼ら“タイタン”隊は存在していた。(無いとは思うが)シースキミングする対空ミサイルでも来ない限り、空への監視の目は十全だ。

 直下に対空ミサイルを担いだ船がいても、この高度であれば目視で発見できようし、いざとなればこのAH-1SJのセンサーでも感知できる。

 だが・・・

「何故だ?」

「は?」

 ポツリと呟くように言った加藤に、老士田は首を傾ける。・・・計器やモニタの影で良くは見えないが、彼が首を傾げたのは分かった。

 根っからの海軍嫌いである加藤には、果たして海軍(連中)がそこまでするのか、してくれるのか、甚だ疑問であった。

「そこまで海軍を信用できるか?」

「加藤中尉は信用出来ないので?」

 返答はコンマ数秒。

 まるで加藤がそう言う事を予測していた様な素早さだった―――――実際、彼は予測していた。

「陸海軍の垣根はあっても、互いに“日本軍”と言う組織に属する人間、同じ日本人。信用云々では無く、当然では無いでしょうか。」

「・・・・。」

「―――んまぁそれに、任務上そんな事(・・・・)あり得ませんよ!」

 だから、そんな変な事考えなくても良いと思いますよ?

 続けられた言葉に、加藤は返す言葉を持たない。

 海軍を毛嫌いするのに、これといって理由を持たず、ただ漠然と「海軍はいけ好かない」と思っているだけだったからだ。

 ―――微妙な沈黙が訪れ、メインローターが空気を打ち付ける音だけがコックピットにいやに響いた。

『相談は終わったか、加藤中尉?』

「「いッッ―――――‼︎⁉︎」」

 突然に鼓膜を震わせた隊長機からの通信に、2人は息を合わせた様に驚いた。

 ――さっきの会話を聞かれた・・・⁉︎

 流石に、上官に聞かれて良い内容では無い。

『加藤中尉、間も無く作戦空域だ。貴様が海軍さんに何の恨みでもあるのかはどうでも良いが、今は任務遂行に傾注せよ。・・・いいか。今、助けを求める者に応え、そして救ってやれるのは俺たちだけだ。そこに陸海軍も関係ない、俺たちは“日本軍”だ。その事を忘れるなよ。』

「―――了。」

 ・・・通信が終わり、加藤は一息ついて、前に向き直る。

 さっきの、『陸海軍も関係ない、俺たちは“日本軍”だ。』という言葉は、加藤にとってある種、魔法の言葉の様に彼の頭に入ってきた。

 言外に“陸軍も海軍も忘れろ”と言っている様に感じられたそれは、実際に彼に、その海軍への嫌意識を薄れさせている。

「各機とのデータ・リンク、準備よろし。」

「!」

 老士田がわざとらしく大きな声で言う・・・見えはしないが、彼がニヤと笑った気がした。

 それと同時に、再び隊長機からの入電・・・今回は、編隊全機に向けてのものだ。

『全機、電波管制解除。リンク62に接続せよ。』

 リンク62―――日本海軍にて、艦艇と搭載ヘリ間のデータ・リンク・システムに使われていたリンク60を発展させた、2015年度から配備が進められている全軍多数同時情報共有システムだ。10年以内に主要実働隊への普及を目指しており、陸軍では彼ら第六対戦車ヘリコプター隊の所属する北部方面航空団へ最初に配備された。

 加藤が第六対戦車ヘリコプター隊に入ってややしてから、配備されていた。彼にとってみれば、すでに馴染みの深いシステムとなっている。

 このリンク62が配備されてから、日本陸海空軍間の運用、行動はより一層円滑なものとなり、作戦の精度、確度ともに大きく上がっている。

『こちら“ブラックホール”・・・全隊にデータを送る。』

「接続・・・データ来ました。」

 黒一辺倒だった眼前の多用途ディスプレイに青色の光が灯るや、いっきにその光の面積を広げる。そこには、彼我の位置関係、後方にある艦隊や先行して偵察に飛んだOH-2との距離、作戦空域までの距離などが克明に示されていた。

 そして、それに伴って動画も転送されてくる。・・・・いや、ただ単に転送という言葉は正しくあるまい。OH-2は、(初期型、未改修機はその限りではないが)有効なC4Iシステムを利用して、自身のとらえている映像をリアルタイムで友軍に送られるのだ。

 だがその生々しい中継映像は、まず間違いなく気分の良いものではない。

「―――こいつは・・・!」

「・・・・!」


 ◆


 同刻

 後方 数十km 海上

 日本海軍 第1演習艦隊 旗艦『大和』

 CIC


「“ブラックホール”からの映像中継です。」

 前面を覆う、1つで畳1枚分にもなる4つの大型ディスプレイの一角が色を変え、先行して偵察に飛んだ“ブラックホール”からの映像に切り替わる。

「これは・・・!」

「「「・・・!」」」

 そこに移された映像は、およそ鮮明に写っているとは言い難く、風が強いのか時たま映像は乱れ、揺れていた。

 だがしかし、それを差し引いてもなお、余りある衝撃をこの映像を見ている人間に与えるであろうことを、ここCICに居る者ならずとも感じたに違いあるまい。

 そこに写し出されていたのは、燃える海、そして海中に半分近くその身を没したそれが示すことは即ち―――――・・・

「―――チィッッ‼︎」

 日谷気少佐が舌打ちなのか何か分からない声を上げるや、乱暴気味にマイクをもぎ取り、インカムを押し叫んだ。

「艦長!直ちに“敵艦隊”へのSSMによる攻撃を具申します・・・!」

『日谷気少佐ッ、何を言っているんだ!そんな事をすれば漁船を巻き添えに』

「漁船『第三北海丸』は撃沈された‼︎現在確認できる船は全て敵です!」

『なッ・・・・⁉︎』

 マイク越しにも、蔵斗の喫驚が伝わってくるようだった。

「早く敵を撃破しなければ、『第三北海丸』の乗員が危険に晒されます・・・!」

『っ・・・・!』

 逡巡――――――

「艦長っ・・・・!」

『却下だ・・・!』

「⁉︎」

 何故だ⁉︎―――日谷気の頭を駆け巡る、焦りにも似た感覚。 ここで奴らを叩かなければ、『第三北海丸』の乗員が人質に取られたり、危害を加えらる可能性があるのに―――!

「しかし艦長!もし、人質にでも取られもしたら・・・!」

『何故お前はすでに乗員が収容され(・・・・・・・・・・)ている可能性(・・・・・・)を考えない⁉︎もしそうなら、船ごと粉微塵にしかねないんだぞ・・・‼︎』

「くっ・・・!」

 そう言われてしまっては、日谷気も言い返すことができない。彼はディスプレイを睨む。

 この映像はたしかに“今”起きていることだ。しかし、OH-2が現場空域に到達してからこっち、『漁船が沈められた』という報告はない。つまりは、OH-2が到達する前に、すでに『第三北海丸』は撃沈させられていたのだろう。

 少なく見積もっても、沈んでから10分は経過しているのではないか。それほど時間が経過していると、すでに何人かは船に収容可能性が否定できない。

『予定通り、ヘリ部隊と共同して行動する・・・いいな。』

「・・・了解・・・。」

 渋々といった感じで日谷気はマイクを置いた。


 ◆


 同 艦橋


「取り乱して申し訳ありません・・・。既に『第三北海丸』は沈没しているようです。乗員が不審船―――いえ、海上武装強盗船団(・・・・・・・・)に囚われている可能性が高いと考えられます。」

 マイクを置き、蔵斗は伊藤中将へ向き直る。伊藤はというと、先程から変わらず頬杖をつきながら外の海面を眺めていた。

「う〜ん・・・。」

 少しの間、考え込むように唸り、言った。

「後続の艦載ヘリ隊による攻撃は控えた方がいいね。その代わり―――」


 ◆◇◆◇◆


 数分後

 AH-1SJ 戦闘ヘリ小隊 “タイタン”


「前方、雲の切れ目から黒煙が見えます・・・!」

「ああ・・・。」

 その様は加藤も確認していた。

 ずいぶん低い雲のせいで視界は良いものではなかったが、その雲の切れ目から、黒々とした煙が立ち上っているのが、既に見えた。更に―――

「約30機程の航空機もあります。こいつら軍隊じゃないのか?」

 “ブラックホール”とのデータ・リンクによって、彼らの探知外にある筈の、敵機と思しき光点をHMDは映し出していた。IFFには応答せず、海軍が無線で何度か呼びかけたらしいが、何の反応もなかったという。

 確かに、30もの航空機を用意できるのは、軍隊くらいしか彼らには思い浮かばない。しかも、海面には多数の船が遊弋しているという。


 ―――いや、軍隊じゃんこいつら。


 そう、誰もが思ったのに違いない。当の加藤でさえ、そう思ったものだった。

 だが彼らが何であろうが、何処かの軍隊であろうが、彼ら“タイタン”隊のすべき事に変更はない。

 もしも何処かの国の公的機関としても、IFFに応答せず、無線にも応えず、更には他国の漁船を襲いあまつさえ撃沈するなど・・・非は間違いなくあっちにあるのだ。我々が臆する必要は、皆無・・・・!(もっとも、国際問題などな我々が考えるべきものでは無いだろうが。)

『全機、攻撃用意―――!』

「・・・!」

 理性から出る驚愕とは裏腹に、身体は何らその驚愕に反応する事なく、今までやって来た(・・・・・・・・)手順通り(・・・・)に指を動かしていた。訓練、演習、シュミレーターを通して、これまで四肢にこれでもかと言うほどに叩き込んで来た、諸動作。

 そうだ、今更何を驚く事があるのか。

 いずれはこうなる事くらい、分かっていたではないか・・・もっとも、初めての攻撃の相手が航空機とは夢にも思っていなかったが・・・。

『全機、武器使用制限解除(ウェポンズフリー)!』

 隊長機の命令と同時に、加藤は液晶パネルを操作。全火器を即時展開可能な状態にする。

 同時に、HMDに映されていた光点が、赤色の枠となる。・・・この機体のコンピュータが、彼らを“敵”と認識した瞬間だった。


 彼我の距離は既に5kmを切っている―――。


 この機体のスタブウィングに搭載されている対空ミサイル、ATAS blockⅡ Jの有効射程には入っているが・・・。

「・・・?」

 ロックオン出来ない・・・⁉︎

(赤外線を出さない、新手のステルス機か!)

 だがそう思った最中、加藤は彼らの妙な動きを見る。敵の7、8機ばかりが突然、急降下したのだ。

 ―――しまった、気づかれたか⁉︎

 だがそう思うのは早計だった様だ。

 急降下した敵は海面数十mの低高度で降下をやめ、上昇に転じた。

(―――!)

 しかし、その一連の――それも数秒程度の間――流れの中で、恐らくは意図せずして晒した敵の弱点を彼らは見逃さない。

(ロックオン・・・!)

 どの様な行動はまったく分かりはしないが、あの一連の行動をするときだけ、ミサイルのシーカーが敵を捉える・・・それが分かれば、最早十分であった。

「隊長・・・!」

『ああ。“タイタン1”より全機、スティンガー発射用意!』

 4機のAH-1SJの編隊はその速度を保ったまま、しかし一矢乱れる事なく、その攻撃の準備を終えていた。

 あとは、敵が攻撃チャンスを晒すのを待つ・・・。

 くるくると敵を示す光点の群が円を描く。

 ―――どうもむず痒い時間が続く。味方のレーダーにはこうして捕らえられていると言うのに、赤外線画像誘導(IIR)であるATAS blockⅡ Jのシーカーは敵をロック出来ない。

 まったく、レーダーも赤外線も関係なくミサイルがロックできれば・・・とは思うが、ミサイルの用途上無理だろうな、と加藤は嘆息気味に目を細めた。

「・・・・。」



 ―――――チ。



「・・・‼︎」

 HMDの光点の変化・・・同時にミサイルのシーカーが目標を捉えたことを示す僅かな電子音―――!それと共に、加藤の身体に電気に似た緊張が走った!



『全機っ!ミサイル、撃てェ‼︎』


発射(ファイア)ッ!」


 復唱するまでもない。

 コレクティブレバーのスイッチを押す。同時に左右のスタブウィング下に取り付けられている四角いミサイルランチャーから、バスッ!と音を立ててミサイル本体が飛び出した。数mほど離れたところでロケットモーターを点火、超音速まで加速する―――!


「命中まで、後――・・・」


 HMDに映る敵機の光点はミサイルを放たれた事に気付いた様子はない。

 5kmという距離は、超音速で飛来するミサイルにとってさほどの距離ではない。マッハ2以上のスピードで迫るATAS block Ⅱ Jは、ものの10秒もせぬ内に敵へと突っ込んでゆく。


「2、1・・・。」


 ―――パッ、パパッ、パッ


 HMDに表示された命中までの予想秒数を示す数字が“0”になると同時に、前方で4つの光が瞬いた。

 替わりに光点のうち4つが消え、“kill”の文字。


「―――命中!」




 ―――――空戦は、こうして始まりを告げた。










 




 否、殺戮か?


第三北海丸の下り、違和感なく描けたかな・・・?

まぁこうでもしないと戦わせられないし、アレも出来ないし・・・・

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