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異界にはためく旭日旗  作者: お猿プロダクション
序章 終わりの始まり
35/54

第弐拾漆話 民間人救護作戦立案

今回はやや密度が低いです。

 

 

 ???

 第1演習艦隊旗艦『大和』

 艦橋直下 司令塔


「緊急通信だと・・・・⁉︎」

 只でさえ広いとは言えない司令塔内が俄に喧騒に包まれ、余計に圧迫感が増した様に感じられた。

 緊急通信。―――それは、海岸局、船舶局、航空局等の各局が、遭難通信に次ぐ優先度を持って取り扱われるべき非常通信だった。それは無線局運用規則第93条に曰く、これ若しくは緊急信号を受信した時は、遭難通信を行う場合を除いて、その通信が自局に関係のないことを確認するまでの間、継続してその緊急通信を受信しなければならない・・・のであった。

 勿論、軍艦やその哨戒機は通信局ではないが、それは緊急通信を出すほどの危急の事態に見舞われている者を見捨てる理由にはならない。

 ―――その上、 不謹慎ととられるかも知れないだろうが、これは彼らにとってある種喜ばしい事態でもあった。漁船―――つまり民間船舶―――の緊急通信。それは彼ら以外にも船舶が存在するという他ならぬ証左であり、彼らが永遠の孤独でなど無いことを示すものだったからだ。

 しかし、その事実にホッとしている場合ではない事も、彼らはまた理解していた。

「直ちに、その緊急通信に応答する。状況を詳しく報させ、場合によっては此方も行動する旨を伝えなさい。」

 伊藤がそう言うのに、さほど時間を要さなかった。


 ◆◇◆◇◆


 数分後


 同 第1演習艦隊 前方20km

 400m上空

 SH-3C『南斗』 コードネーム“MG”


『―――デー、メーデー、メーデー!こちらは『第三北海丸』、『第三北海丸』、『第三北海丸』!メーデー『第三北海丸』、現在位置不明、太陽は東にあり。現在謎の船団及び飛行生物から襲撃を受け乗員数名負傷、船体に損傷!乗船人数は23名、直ちに救助を求む――――――』

 彼らが直面しているらしい切迫した状況を、その声色からだけでも察せられた。

 漁船『第三北海丸』は遡る事十数分前に、謎の船団及び飛行“生物”に遭遇し、襲撃を受けて居るらしかった。

 謎の船団は海賊船だろうか。それにしても、飛行“生物”というのは何だろうか―――?

 何れにせよ、彼らが火急の危機に瀕しているという事は間違い無いようであった。だが救援に向かうにしても、自座標が不明、というのでは助けに行こうにも行けないのであった。

「『第三北海丸』、こちら日本海軍第1演習艦隊哨戒機、コードネーム“MG”。以降周波数を統一する。・・・貴船の救援に向かいたいが、位置が分からない。もう少し詳細に座標を送られたい。」

『GPSが壊れている・・・現在の――ズンンッ――を、は分からない・・・!上空に――ドォッ――が居る!レーダーで捉えられないか⁉︎』

 所々ノイズと思われる雑音が入るが、彼の言わんとしている事はしっかりとパイロット達に通じていた。

「分かった。―――電探士。レーダーを起動させ、周辺海域を走査しろ。」

「了。」

 SH-3Cに搭載されたレーダーが起動し、周辺捜索を開始する。

 その捜索範囲は高度にもよるが、実に180km以上。艦隊の空飛ぶレーダーサイトとしての機能を今発揮せんとしていた。

 電探士がレーダーのコンソールに向き合う。かつての『南斗』ならば、背筋を曲げたきつい姿勢でそうしなければならなかったが、今の『南斗』は旧来の機体よりも機内スペースが拡充されており、背筋を伸ばした楽な姿勢で出来るようになっていた。

「・・・感あり!距離40浬に艦影。数・・・8・・・10・・・なお増加中。更に上空に約20機の飛行物体あり!」

「緊急通信の送られてきた方角と一致します。」

「―――‼︎」

 機長は驚愕した。

 たった一隻の漁船に、それだけの不審船―――恐らくは海賊船か―――と航空機がタカっていると言うのか⁉︎

「通信士!直ぐに先方へ、許可が下り次第直ちに救援に向かう旨伝えてくれ。」

「はっ!」

 10以上の数から成ると思われる船団と航空機から、民間漁船たったの1隻では逃れられないに違いない。直ちに救援を向かわせ、助け出さねばならない。

「次は艦隊に繋いでくれ。直ちに救援の要ありと認む、だ。」


 ◆◇◆◇◆


 第1演習艦隊旗艦『大和』

 艦橋


『レーダーから判断するに、漁船『第三北海丸』と思われる船舶の周囲を18隻から成る海賊と思われる船団が取り囲む様に行動しており、上空に小型機が約20機存在しています。』

 CICの報告を受け、蔵斗は直ぐにでも救援を実現するため伊藤に艦対艦誘導弾(SSM)による攻撃を具申したが、

「もしこれが漁船でなかったらどうするのかね。精々50m前後の漁船にミサイルでも当ててみたまえ。跡形も無く吹き飛ぶだろう。それに、たかだか不審船相手にミサイル(SSM)を使った時の費用対効果というのを考えてみたまえ。」

 と一蹴されてしまった。

 伊藤がここで敢えて“海賊船”と言わなかったのは、この船舶が軍艦、公船舶の可能性が拭えず、まだ日本の排他的経済水域(EEZ)を出ておらず、公海上では無い為だった。(国際法上、公海上での犯罪で無ければ海賊とされない。この場合、“海上武装強盗”と言う方が正しい)

 確かにこれが漁船という保証はない。数分前までどれが漁船なのかは無線電波などから割り出して分かっていたのだが、数分前にその通信電波かー途絶してしまい、それすら分からなくなっていた。通信用のマストがやられたか、それとも・・・。

 だが何れにしても至急に救援に向かわなければならない事は変わりは無い。

 伊藤は徐に口を開いた。

「―――確か、陸軍さんのヘリを載せていたはずだね?」

「あ、はい。陸軍のAH-1SJが4機、本演習へ参加しておりますが・・・。」


 AH-1SJ・・・それは日本陸軍の運用する、対戦車ヘリコプター―――否、戦闘ヘリコプターと言うべきだろうか―――だった。


 旧来の国産対戦車ヘリコプターAH(J)-1『(ハヤブサ)』と初期のAH-1S『コブラ』を代替する為に、そして高性能だが同時に高価に過ぎたAH(J)-2『鐘馗(しょうき)』の補填分として、1999年に開発された。『コブラ改』とも呼称されるこの機体だったが、その実“AH-1Sに似た全く別の機体”であった。

 胴体部はアルミ合金と複合材料で構成されているが、スタブウィングなどを含めた各所に炭素繊維強化プラスチックを多用しており、軽量化に一躍買っている。

 機体は、12.7㎜級の重機関銃弾の直撃に耐え、メインローターとテールローターはロシアの代表的な自走対空機関砲であった、ZSU-23-4『シルカ』に計4門搭載されている、AZP-85 23mm機関砲の直撃に耐えることが出来る構造になっていて、直撃でさえなければ現在ロシアで使われている2K22 『ツングースカ』の2A38 30mm機関砲にも耐える事が出来る。

 機体形状も空力的に極めて洗練され、大出力を誇る国産ガスタービンエンジンも相まって時速280kmを超える巡航速度を手にし、機動力、ペイロードも大幅に上昇したのだった。

 更に、メインローター基部にドーナツ状に配置されたJN/APG-1 射撃管制・指揮ミリ波レーダーを搭載し、同時多目的な戦闘が可能な能力を提供していた。さらにこのJN/APG-1といいのは優れもので、自身も機動しながらも2〜4つの目標を同時追尾、戦闘を可能としている(ちなみに、メインローターに阻まれ真上が探知できない弱点を孕んでいるが、ヘリが真下なら兎も角真上から攻撃される事などほぼあり得ない為、問題にはされていない)。また、スタブウィング両端に『100式統合型先進電子戦ポッド』、通称100式JAEP(Joint Advanced Electronic fight Pod)を搭載し、あらゆる電子戦への対応が可能となっている。更にこれはECM装置を兼ねるだけで無く、強力な管制レーダーとしても機能し、動目標を約8km、停止目標なら約4〜5kmの補足距離を持っており、80以上の目標を自動で探知、その分類や位置、戦術的優先性を判別しモニターに表示、8以上の目標と同時交戦可能な能力を与える。


 余談だが、これを改良した『100式統合型先進電子戦ポッド(改)』(100式JAEP改)はAH(J)-2やOH-2『ニンジャ』にも搭載が可能。


 FRIL(前方監視型赤外線)装置をコックピットの側面に配置しており、そこから得られた映像をHMDのバイザーに投影し、ほぼ前方全面の明瞭な視界を提供することもできる。

 無段階で20倍のズームが可能な高性能低光量カラーTVも備えており遠距離での目標の識別、認識も可能で、複数目標の自動追尾もできた。動目標で2〜4目標、静止目標で10目標以上の追尾が可能となっており、この面ではAH(J)-2乙型を上回っている。

 更に、上記の高い性能を駆使して敵のヘリコプターを駆逐可能な程の空対空戦闘能力を備え、機機首ターレットのM197 20㎜機関砲で対空、対地射撃を行い、空対空ミサイルをも搭載できる。

 海上での運用すらも想定されており、4枚のブレードには半自動の折り畳み機構が備わっていて、空母、強襲揚陸艦だけで無く通常の駆逐艦、巡洋艦での運用もある程度容易なものたらしめていた。


 今回の演習では、そのAH-1SJが4機参加。今はこの戦艦『大和』腹中の巨大な格納庫の中で、その翼を休めている。

「「「!」」」

 その時、伊藤の脳裏に思い描いていた事を皆が理解する。

 今回の演習の目的の一つに“有事における陸軍ヘリ海上運用訓練”がある。この運用訓練には陸軍のヘリだけでなく、海軍のヘリも参加し、海上での陸海軍ヘリ部隊の統合運用方法の確立なども視野に入れていた。

 ―――つまり。

「陸海軍の統合ヘリ戦闘団を編成し、即応力を持って漁船の救援に当たる、と言う事ですな?」

 傍らに立つ武塔参謀長が言った。その言葉に伊藤は頷く。

「そう言う事だ・・・陸軍さんにも協力を要請し、直ちに救援作戦の草案を立案せよ。」

「了解・・・!」

 武塔はいつになく力強く言う。久方振りの作戦立案に腕かなっている様子であった。

「それと、艦長。」

 真剣な表情もそのままに、伊藤は蔵斗に振り返る。

「はっ!」

「艦の武器使用制限は私の権限を持って全て解除。この旨各艦にも伝達してくれたまえ。」

「了解しました。―――しかし、それでは長官のお立場が・・・。」

 いくら海上武装強盗と言う無法者とは言え、相手はたかだか一般船舶に毛が生えた程度の武力しか持たないはずの言わば海のゴロツキ。軍艦が全力を出すような相手では無い。

 しかも日本のEEZ内とは言え、軍艦が全力発揮となればそれに伴うコストやリスクもバカにならない上、万が一関係の無い船舶が被害を受けた場合、責任の一切は艦隊の責任者である伊藤に向けられる。(こう言った自体に本来対処するのは、海上保安庁か沿岸戦闘群だ。海軍の正規の艦隊がする事ではない。海上保安官か、沿岸戦闘群海賊対処隊員が共に乗船していれば話は別だが・・・。)

 蔵斗はその事を案じた訳だった、が―――

「問題ない。いざという時は、私が全部責任を負おう。」

 彼は一切動じていない様子だった。

「国民の生命及び財産が危機に瀕しているなか、今それを助け出せる能力と余裕があるのは、我々だけだ。それに、今現在我々は本土との通信手段を断たれている。本土(うえ)からの指示が望めない以上、我々(現場)の判断で行動するべきでもある。・・・違うかね?」

 逆に、諭すように蔵斗に問いかけてきた。

「いえ・・・。」

「よろしい。他の者も、異論は無いな。」

 言って、伊藤は艦橋の面々を見渡す。―――もっとも、武塔をはじめとした参謀クラスの人間は作戦を考えるために艦橋を後にしており、艦隊司令官たる伊藤に面と向かって物を言える人間は殆どいないのであったが。


 ◆


 数分後


 武塔らが作戦立案をまとめ伊藤に立案し、今はその概要の大まかな説明に入っていた。


「イ案とロ案の艦隊行動にはさして大きな違いはありません。イ案では駆逐艦隊は『大和』の陸軍ヘリ部隊の発艦を待って全速で当該海域に航行する。ロ案なら駆逐艦隊も艦載ヘリを全て発艦させ、それを持って当該海域に航行する・・・と言う事です。」

「・・・ではイ案の場合、駆逐艦隊の艦載ヘリはどうするのかね?」

 伊藤が指摘する。それに武塔が答えた。

「該当海域には何かしらの航空戦力が存在が事前のレーダーによる索敵で判明しています。イ案の場合、陸軍ヘリ部隊が航空優勢の確保を終えた後に発艦、海上武装強盗の船舶を掃討します。ですからロ案は、陸軍ヘリ部隊の航空優勢が確保される前に該当海域に突入する事になるので、即応性は高いですが、リスクも高い案です。」

「ふむ・・・・。」

 伊藤は顎に手を当て考え込んだ。

 がものの1分もしないうちに、彼は選択を決めた。

「―――ロ案で行く。」

「「「!」」」

「リスクは確かにあるだろうが、それよりも早く、彼らを助け出せねばならない・・・ヘリ部隊の搭乗員には多少のリスクに目を瞑ってもらう他ない・・・。」

 伊藤は何処か詫びているように言った。

「作戦開始時刻は標準時刻で0835。それと、0820までに搭乗員を格納庫に集めてくれ。私直々に作戦の概要を説明する。」

「は!」

次回更新は来月の中頃になりそうです・・・orz]

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