6 狼といったら
結構落ち着いてきた。さっきの戦いで獲得した物を確認しよう。
倒した魔物は倒してから5分経過するか、戦闘が終了すると光の粒子となって消えていく。そして倒した者にドロップアイテムと経験値を与える。
ドロップアイテムは、インベントリに自動的に収納される。インベントリの容量は50マスあり、1マスに最大99個スタック出来る。ちなみに武器などの個別マスクデータがあるものはスタックができない。
まずはドロップアイテムを確認しよう。
<フォレストウルフの皮×1>
<フォレストウルフの肉×1>
<フォレストウルフの毒肉×2>
<フォレストウルフの牙×2>
お肉がドロップしている。しているのだが……。
毒使うと食べれなくなるのかよ!!
嘘でしょ!私の主力の毒を使って倒すことが出来ないなんて!
つまり、私の攻撃手段は綱糸を使って切るしかないということに……。
…………そういえばLvが上がってたな。確認しよう。現実逃避ではない。ただ、気になっただけだよ。うん。
名前:カンナ
種族:亜人種 アラクネ
ステータス
Lv:3
HP:400(+100)
MP:300(+50)
STR:40(+5)
DEX:35(+10)
VIT:10
AGI:60(+20)
INT:30(+5)
MND:10
LUK:30(+5)
スキル
[蜘蛛糸Lv1]
[蜘蛛毒Lv1]
[立体機動Lv1]
[分体Lv1]
[鑑定Lv1]
[梟の目Lv1]
[空間魔法Lv1]
SP10
AGIの上がり幅がすごい。なんでこんなに上がっているんだろう?特に走り回ったりしてないんだけど……。
ん?走り回る?……もしかして、蜘蛛の練習のために走り回ったりしてたからAGIがこんなに上がったのかな?
そう考えるとしっくりくる。糸を使ったからDEXも多めに上がったってことだもんね。
そういえば[罠作成Lv1]か取得可能になったって言ってたね。SPもLvがひとつ上がる事に5P貰えるみたいで、今は10Pある。取ってしまおう。
あれ?[気配察知Lv1]ってスキルも取れる。いつの間に…。
ログを確認したところ、おそらくフォレストウルフ達を発見した時に取得可能になったのだろう。
2つとも5Pで取れるので取ってしまおう。
[罠作成]はMPを使って自分のできる範囲の罠を一瞬で作ることが出来るみたい。ただ、ちゃんと想像してないとまともに機能しないようだ。私の場合、糸を張るだけだから機能も何も無いけどね。そしてリキャストが30分もある。ながい。まぁ、それでもかなり強力なスキルだろう。
[気配察知]はさっきやったようにしなくても、そこにいる、と分かる。不思議な感覚だと思う。
さて、確認も終わったことだし狩りの続きをしよう。ただ、このまま森に入ってフォレストウルフを狩っても今日中に奥に行って豚や牛を狩りに行くことはできないだろう。
なにかいい経験値の稼ぎ方はないかな……。
あ、そういえば狼と言ったら『あれ』するよね?それなら……ふふふ、いいこと思いついた!
いた!フォレストウルフだ。今回も3匹のようだ。基本的に3匹で行動しているのかな?
まず、この3匹を粘糸で動けなくする。AGIが上がったからか、思ったより簡単に巻き付けられた。
さて、動けずにただ殺されるのを待つだけの狼さんよ。どうする?『あれ』をするしかないのではー?
フォレストウルフは私を睨みつけ、上を向き、空へと吠えた。
オォォォォォン!!!
来た!狼といったらこれ!『仲間を呼ぶ』!ほら、気配察知で他の狼がこっちに来るのが……は?多くない?
私が想像してたのは多くても10匹くらいだと思ってたのに!これは少なくても50匹以上はいるよ!!
どうしよう!と、とりあえず!
「[罠作成]!!」
私を中心に半径10mの位置から30mまで粘糸で覆った。かなり細いので気付かずに突っ込んでくるはずだ。そうなれば引っかかって動けなくなるはず。先頭の方だけになるだろうけど、無いよりはマシだ。ただ、MPを半分くらい使った……。まぁ他に使う所は無いからいいけど……。
今のうちに、さっき捕まえたフォレストウルフ3匹の首に綱糸を巻き、思いっきり引っ張った。すると、少しの抵抗でフォレストウルフ達の首が飛んだ。
おお、想像以上に切れ味がいい……。
死体が消えないので、こちらに向かってきているフォレストウルフ達とは既に戦闘扱いになっているらしい。そして、たとえ5分経過して消滅しても、経験値とドロップアイテムは戦闘終了まで獲得できない。つまり、このLv3の状態とまま50匹以上のフォレストウルフを相手にしなくてはならない。
まともに戦えば、まず勝ち目はない。
だが、私は蜘蛛だ。まともになんて戦わない。絶対に負けてたまるか!
見えてきた。目で見えるだけでも30匹はいる。気配察知には60匹程の数がいると反応している。
それが全方位から来るのである。一周まわって感動するね。
あっちが到着するまで、蜘蛛を使って糸の包囲網の足元に綱糸を設置した。足を傷つければ動けない。これで少しはマシになるはずだ。
そして、流石にこの質量差で毒を使わずに戦うのは厳しいので、私は中心から毒を飛ばす。
[蜘蛛糸]の[射出]で[蜘蛛毒]を飛ばすことが出来たのだ。なんとなく試しただけだったけど、上手くいってよかった。
だけど、おそらくそれでも完全に止めることは出来ないだろう。もし、糸を抜けてきたら、その時は綱糸や毒を使って接近戦をしなければいけない。
ぶっつけ本番だが、やってやる!
先頭のフォレストウルフが糸にかかり、それに続くように後続のフォレストウルフ達も続々と絡まっていく。
動きの止まったフォレストウルフは蜘蛛を使い止めを刺す。
そして、私はできる限り後方を狙い毒を放つ。
それでも数が多いため、フォレストウルフ達は止まらない。味方が次々と殺られているにも構わずに、まっすぐと私の方へ向かってくる。
そして1匹がついに包囲網を抜け、私に襲いかかってくる。
だが私は、襲いかかってくるくるフォレストウルフの攻撃を避け、綱糸で首を落とす。
やっぱり、私の方がAGIがある。これなら一気に来ない限り、いける!
そう考えたので次々とくるフォレストウルフ達を、できる限り1対1になるように糸を配置しながら動く。
糸を張り、攻撃を避けて、首を落とす。張り、避け、落とす、張り、避け、落とす。
そうしている間に最初に設置した糸はほとんど無くなってきたが、数がかなり減ってきたので、これなら何とかなりそうだ。
そう思っていたのに。
オォォォォォン!!!
!?まだ呼ぶの…!
遠くから50匹程のフォレストウルフが近づいてきているのが分かった。
とりあえず糸を貼り直さないと!
蜘蛛を使い、粘糸を張って包囲網を作る。だが、最初の包囲網と比べると範囲も狭く、糸も少ない。
それでもやるしかない!
考える。全体をみて、フォレストウルフ達の動きを予測する。
そして集中力が極限まで高まり、世界が色を失い、音が消え、時が遅くなる。
フォレストウルフの動きを読み、最低限の動きで躱し、首を落とす。
四方からフォレストウルフが一斉に飛びかかってくる。それを、上に飛び避ける。そして、回転しながら毒を撒き散らす。糸に足をかけ、空いている場所に飛ぶ。その勢いのままフォレストウルフに突っ込み首を落とす。蜘蛛の方でも、毒を撒き、隙を見て首を落とす。
辺り一面が血と毒の匂いが充満する頃、フォレストウルフも残りも残り1匹となっていた。
そして最後のフォレストウルフに止めを刺した。
「終わったー!!」
残りのHPを見ると、1割程しかなかった。
初期装備でポーションがあったのを思い出し、インベントリから初級HPポーションを取り出し、飲んで全回復させる。
そして、世界に色が戻ってきて、気づいてしまう。
まだ、魔物が消えていないことに。