Myth ~Ragnarok~〈Yggdrasill〉
『始まった、ね』
世界の一部を支える樹の元で、一人、中世的な雰囲気を持つ者が呟いた。
『君が望んだ結末じゃないけど、怒らないであげてね。それだけ、君が大切なんだ』
それは、座り込むもう一人に話しかけた。けれど、返事はない。
座っているのは少女だった。
胸を紅く濡らし、もう二度と目を開けない少女。だが、その顔には綺麗な微笑が刻まれている。まるで、愛しい者に向けたような微笑。
『ハデス神が、君の魂が離れる時間を遅くしてくれてる。君は、僕が見つからないように隠してる。だから、安心して良いよ』
それは、誰よりも慈しむように少女を見、もう一方。遥か遠くを見やった。
『魂が近くで、しかも同時期に肉体から離れれば、それだけ転生した時傍にいる確率が高くなる。僕は、これぐらいしかできないからね』
少女の頭をなで、フッと笑う。
『彼が戻ってくるまで、ちゃんと守るよ』
周りの自然達が、それに向かって声をかける。
『死んじゃうよ』
『燃やされちゃうよ』
と。
『良いんだ。僕じゃ、彼らと共存できなかった。僕の存在が、ずっと彼を苦しめてた。これぐらいは、甘んじて受けないとね』
楽しそうに、穏やかにそう言うと、それは少し高く舞い上がった。
少女の体も、少し上の枝に乗せてやる。
『見届けよう。そして、次に会ったら、笑って、抱きしめてあげてね』
遠くからはぜる炎の群れ。それに対するようにある光の群れ。
もうすぐ、一つの終焉が訪れる。
それを見届けるのは、この世界の始まりからを見てきた、たった一本の――
『さあ、己の望むままに。全ては、この僕が……世界樹ユグドラシルが見届けよう』
闇の世界に広く響く角笛の音。
終焉の物語が、今、始まる。




