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Myth  作者: 詞葉
Myth 外伝
82/83

Myth ~Ragnarok~〈Yggdrasill〉

『始まった、ね』


 世界の一部を支える樹の元で、一人、中世的な雰囲気を持つ者が呟いた。


『君が望んだ結末じゃないけど、怒らないであげてね。それだけ、君が大切なんだ』


 それは、座り込むもう一人に話しかけた。けれど、返事はない。


 座っているのは少女だった。

 胸を紅く濡らし、もう二度と目を開けない少女。だが、その顔には綺麗な微笑が刻まれている。まるで、愛しい者に向けたような微笑。


『ハデス神が、君の魂が離れる時間を遅くしてくれてる。君は、僕が見つからないように隠してる。だから、安心して良いよ』


 それは、誰よりも慈しむように少女を見、もう一方。遥か遠くを見やった。


『魂が近くで、しかも同時期に肉体から離れれば、それだけ転生した時傍にいる確率が高くなる。僕は、これぐらいしかできないからね』


 少女の頭をなで、フッと笑う。


『彼が戻ってくるまで、ちゃんと守るよ』


 周りの自然達が、それに向かって声をかける。


『死んじゃうよ』

『燃やされちゃうよ』


と。


『良いんだ。僕じゃ、彼らと共存できなかった。僕の存在が、ずっと彼を苦しめてた。これぐらいは、甘んじて受けないとね』


 楽しそうに、穏やかにそう言うと、それは少し高く舞い上がった。

 少女の体も、少し上の枝に乗せてやる。


『見届けよう。そして、次に会ったら、笑って、抱きしめてあげてね』


 遠くからはぜる炎の群れ。それに対するようにある光の群れ。

 もうすぐ、一つの終焉が訪れる。

 それを見届けるのは、この世界の始まりからを見てきた、たった一本の――


『さあ、己の望むままに。全ては、この僕が……世界樹ユグドラシルが見届けよう』




 闇の世界に広く響く角笛の音。

 終焉の物語が、今、始まる。


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