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Myth  作者: 詞葉
Myth 本編
39/83

終章(2)

「何か、変な感じよね。自分のお墓の前に立ってるなんて」

「うん。でも、ちゃんと来たかったし」


 セルリア達の前には、一つの墓。西洋風にローマ字で名を彫ってある。

『SETSUKA OUMI』と『TSUKIHA OUMI』の二つの名が。


 孤児院を営む夫妻が、二人とも同じ墓に入れてくれていた。そしてその前にはチューリップの花束が二つ。


「私達の誕生花だね。誰かな?」

「孤児院の子と、佳枝達じゃないかな。あたし達が好きなの皆知ってるし」


 二人はそのまましばし墓を眺めた。そして、いきなり二人同時に頭を下げる。


「ごめんね!」

「ごめん!」


 口から出たのもまた、同じ謝罪の言葉。


「え、何で?」

「そっちこそ」

「あ、だってまだ謝ってなかったなって」

「あたしもよ。やっぱ双子って考えること同じなのかしら」


 そう言って見つめ合っていると、どちらからともなく耐え切れず吹き出した。アースガルドと変わらない青空の下に、二人の楽しそうな笑い声が響く。


「私、セロシアに嫌われちゃうかと思ってたのに……」

「そんなわけないでしょ。大事な片割れよ。あたしこそ、セルリアがあたしから離れるんじゃないかって」

「それこそ絶対にないよ。セロシアは私のたった一人の半身だもの」

「んもう、だからセルリア好き!」


 ガバッと抱きついてきたセロシアを、セルリアは笑いながら受け止める。キャイキャイとそのままじゃれ合って、二人はもう一度、自分達の墓に目を向けた。


「青海雪花と青海月花ではなくなるけれど」

「あたし達は、ずっと一緒にいられるわ」


 住む場所が変わっても、会う回数が減っても、別々の道を進んでも、双子であることに変わりはないし、お互いが大事に思っていることも何も変わらないから。

 二人は手を繋いで、笑顔で頷きあう。

 どんなに長い間生き続けても、この絆だけは変わらない。変えない。そんな意味を込めて、笑った。


「さ、そろそろ時間だよね」

「そうね~。でも心配しなくていいと思うわよ。ねえ、そこの後ろに隠れてる二人!」


 ビシッとセロシアの指差す方向。そこにある木の陰に、非常に目立つ金と黒の男がいた。


「ロ、ロキ様。ヘイムダル様まで!」

「やっほ~」

「まぁたつけて来ましたね!」

「お前らを二人でミッドガルドに行かせると、ろくなことが起こらん」

「なっ!」


 バチバチと火花を散らす妹を見て、セルリアはどうにかならないかと考える。その時、一つ思いついたことがあった。

 セロシアにはまだ報告していない、とても大事で誇らしいこと。


「あのね、セロシア。私セロシアに見てほしいことがあるの」

「なに?」

「えへへ、実はね」


 誇らしげな笑顔でセルリアはロキの隣に移動する。そして、何の躊躇いもなく彼の手を握った。それを見たセロシアの顔が、電流に打たれたかのように固まる。


「どう? ロキ様に触れるようになったの。ヘイムダル様はまだ無理だけど、前よりは近づけるようになったし。進歩したでしょ?」

「頑張ったね、セルリア」


 こちらもさも当たり前のように頭をなでるロキ。その行動に、セロシアの顔はムンクの叫びようになる。隣にいたヘイムダルが少し離れた。


「ダ、ダメダメ! それは絶対にダメェ!」

「え?」


 ものすごい勢いで首を振るセロシアに、セルリアは首を傾げた。

 自分の進歩を喜んでもらえると思っていただけに、少し悲しい。


「それは『セルリアがロキ様に触れるようになった』んじゃんなくて『ロキ様がセルリアに触れるようになった』って言うのよ!」

「え? 同じじゃないの?」

「違う、大きく違う!」

「うん、言い得て妙だよね」


 そう言いながら、ロキはセルリアを後ろから抱きしめる。さすがにセルリアも真っ赤になって暴れた。


「ロ、ロキ様、またこんなことっ。放してください!」

「また? 今『また』って言った!? セルリアから離れなさい、この変態神っ。あんたには絶対セルリアは渡さん。近づけさせん!」


 セルリアをロキから引き剥がし、怒髪天をつくような怒りでセロシアは叫んだ。だが彼はそれも面白そうに見ているだけ。


「う~ん、そうは言っても家は別だよ。夜とか来れないよね」

「時刻を強調するなっ。ヘイムダル様、引越し。引越ししましょう。ロキ様んとこに!」

「阿呆か」

「なんで『馬鹿』だけじゃなくて『阿呆』まで覚えてるんですか!」


 暴れるセロシアと、その襟首を掴むヘイムダル。セロシアをからかって遊ぶロキ。

 それは、今までセルリアの日常にはなかった風景だ。


 変わってしまった周りの世界。もう戻れない日常。それが寂しくないといえば嘘になる。

 代わりに手に入れた場所は、今までと何もかも違い、慣れるのにも時間はかかるだろう。

 それでも、そこで生きている人が抱えるものは自分ととても似ていて、泣いたり笑ったり、苦しんだり喜んだりすることも同じだから。


 だから、この世界で新しい何かを紡いでいきたい、とセルリアは思う。


「賑やかだねぇ」

「そうですね」

「こら、セルリアに近づくなぁ!」


 人間ではない、神という不思議な存在を交えた、新しい世界で――


これにて『Myth』完結でございます!!

途中からずいぶん間が空いてしまったりと、読みに来てくださっていた方には本当に申し訳ありませんでした。

神様と人間のお話、いかがだったでしょうか?

少しでも楽しんでいただければ幸いです!


これで本編は完結ですが、『Myth』はなぜか友人と話してた時の盛り上がりでできた本当に大長編で書いた場合のエンディングがあります。

『Myth』は選択肢によってエンディングの変わるゲームのような感覚だったので、《True End》と《Bad End》っぽいもののダイジェスト版があるのです(笑)

そちらの方もロキ視点の過去編と合わせて出していくつもりなので、良ければまた見に来てください!


それでは、長らくのお付き合いありがとうございました!!

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