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13:私vs私

何か叫びながら、こちらへ向って駆け出すセザールさんとゴルジフさん、それに騎士達。


メイド長と同じ仕草でメイド達が頭を下げる。


「お嬢様、ご武運を」


その言葉と共に目の前の扉が閉まる。


目を閉じ命じる、一瞬で漆黒に染まる魔王のローブ。


するするとフードからクロが抜け出し、尻尾を私の髪に絡ませながら肩に立つ。


背後に気配が出現する。これは、なかなか...


振り向く。


自分に対する表現として正しいのかは不明だが、神秘的な、超然としたモノがそこに佇み、何の感情も無くこちらを見ている。


綺麗なお人形さんみたい。誰に言われたのか忘れてしまったけど、赤と白の神秘的な服を纏うその姿は不意にその言葉を思い出させる。


私が鑑定してくる。そう、ただ自身の体が朽ちるのを受け入れながら私が私を鑑定してくる。

「リン」

「うん」

「戦うまでも無い、か」

「そうみたいだね」

まず、鑑定してきている私には、自分を確実に蝕んでいる魔王のローブが無い。


クロがいない。


鑑定が魔眼ではない。


ほとんどコピー出来ていないのだ。


迷宮が、コピーしきれなかった私を使い、私を分析してきている。


魔眼を発動し、私を()る。


--------------------------------------------------------------------

名前:――

スキル:(特殊)鑑定

    (技) 隠密5、罠解除1

    (魔法)召喚魔法(式神)、空間魔法5

        炎魔法2、氷魔法4、雷魔法5、鉄魔法3

        光魔法、闇魔法5

    (自動)HP回復、MP回復、クリティカル

        魔法耐性、統率4


装備:聖魔の糸:HP回復、MP回復

   陰陽浄衣:魔法耐性

   ウサギの尻尾:クリティカル

--------------------------------------------------------------------


ユニークスキルの言語翻訳、アイテムボックス、魔眼が無く換わりに鑑定がある。

装備は、魔王のローブが再現できていない。そのため状態異常耐性が付与されていない。死の波動で急速に朽ちているのはこれが主な原因か。


あと、聖魔の糸も強化した+5がない。これはもしかしたら、そこまでコピーしないということかもしれない。

まったく同じ自分には、たまたましか勝てないかもしれないけど、強化分がコピーされていない自分になら確実に勝てるかも...この辺りが攻略のキモかもしれない。


あの私は、糸を操れるのだろうか? ふと、そう思ってしまう。

「リン、足りないのだ」

「なにがさ?」

私の考えを読んだ様にクロが(ささや)く。

「わかっているのだろう?」

「そうしたら、今日で終わらないよ?」

肩からこちらを見つめるクロと視線を合わす。

「かまわんのだ!」

「何も手に入れられないかもしれないよ?」

「かまわんのだ!」

「負けるかもよ?」

「ありえんのだ!」

クロのおでこに私のおでこをあてる。ふふ...



私が朽ち果て、豪奢な宝箱が出現する。



宝箱を開ける。

「リン、開けていいのか?」

「えー、やっぱり確認だけはしないと、このまま迷宮クリアになる可能性もあるんだしさ」

目の前にスキルの一覧が表示された。

「お、選択式か」

「だねー、どんなスキルがあるか見てみよう」

「うむ!」


魔眼を発動し、表示されるスキルを写しながら見ていく。これは瞬間記憶能力みたいなもの、ここで全ての考察が出来るわけではないので表示されたスキル全てを憶えておき、その表示の並びなどからスキルの関連性などを後からクロと考える。

「あ、忍術あったよ」

「いらーん、我が欲しいのは超忍術なのだー」

「あ、錬金だ」

「これを覚えるとカーサ不要説が浮上するな!」

「えー、カーサは友達だから必要だよ」

「そうだな、大事な下僕だしな!」


「結構色々あるね」

「うむ、ユニークスキルの劣化版みたいなのも多いな」

「うん、多分これって極めるとユニークスキル化する元のスキルなんじゃないかなあ」

「そういう考えもあるな」

「ほらこの死霊魔法とか、ネクロマンサーだっけ? お化けとか呼び出すあれでしょ、多分これを極めれば召喚魔法(死霊)とかになるんじゃない?」

「使い魔は腐ったネコか?」

「それはちょっと嫌だなあ、骨のネコじゃない?」

「微妙だな」

「だね」

骨を撫でても仕様が無い。クロの綺麗な毛並の頭を撫でる。


飽きてきたのか、クロが座りこんだ私のひざの上に移動して丸くなる。

スキル一覧を操作していない手でクロの丸くなった背中を撫でると気持ちよさそうに喉をごろごろと鳴らす。


最後まで見たが、確かにユニークスキルは無かった。宝箱と共にスキルの一覧も段々と薄くなり、消えていく。


はたしてどうなるか、確か迷宮クリアでボス部屋の扉は開かなくなり、扉の前に脱出用の転移魔法陣がでるんだっけか、私はそこにある魔法陣で脱出か。


…………

……


扉が開く。

「クロ、再戦出来るみたいだよ」

「すやぁ~」

まあいいか、寝息を喋るクロ君を灰色に戻したローブのフードにしまう。


飛び込んでくるセザールさん。

「無事かぁぁ!?」

「あー、はい無事です。ご心配をかけました」

「ウ、ウムウ」

怒ろうとしたけど身分が上の私を怒れないジレンマに言葉を詰まらせるセザールさん。

「お嬢様、お時間が掛かりましたが、何か問題が発生したのでしょうか?」

「え、別に、普通の魔物が出て倒しただけだよ」

「レアボスではなかったのか?」

「うん、ほら、レアボス倒したらこの扉開かないでしょ?」

「ム! 確かに」

「しかしお嬢様、脱出用魔法陣がありませんが」

鋭い! メイド長さん鋭い!

「あー、ちょっと休憩してたら消えちゃって」

「はあ、そうなんですか」

「うん、そうなんです」

メイド長さんは私の絶対的な味方設定がしてあるので、そうといえば無条件で納得する。


「じゃあ、このままレアボスが出るまで連戦するんで」

「は?」

「へ?」

まあ、レアボス出ても今回のスキル一覧と表示されるスキルに差異がある場合は継続するけどね。


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