ファッション会議
同じ時間帯の教室での朝、クロエ・ド・モンフォール、エロワーズ・ベルナール、ジュリエット・ロランの三人は、何やら真剣な表情を突き合わせていた。
話題の中心にあるのは、昨日の放課後にイザベル(アンドレの姉)から直接誘われた、今度の日曜日に彼女の行きつけのカフェで開かれる「女子会」のことだった。大人の魅力溢れるイザベルと過ごす特別なカフェデートに向け、三人は「当日はどんな服装で行くべきか」という一大事について話し合っていたのだ。
ジュリエットが明るいハニーブラウンの団子ヘアーを揺らしながら、膝の上に広げた一冊の雑誌を指差した。
「ねえ、これ見て! この雑誌、昨日同じ寮生で隣のクラスのベアトリス・ロシュフォールちゃんから借りたの。『今時のフレンチ・シックなカフェスタイル』の特集が載っててすごく参考になるよって貸してくれたんだぁ」
その言葉に、金髪の縦ロールを優雅に揺らす社長令嬢のクロエが、上品に紅茶のカップをソーサーに置きながらフッと微笑んだ。
「あら、ベアトリスさんといえば、昨日お会いしたあの凛とした佇まいの素敵な方ですわね。彼女が選んだ雑誌なら、きっと洗練されたコーディネートが載っているに違いありませんわ。どれどれ……」
クロエが優雅に覗き込むと、隣では艶やかな黒髪ワンレン・ボブが特徴のエロワーズが、腕を組んでクールな視線を雑誌のページに向けた。
「ふうん……確かに、どれも甘すぎなくて大人っぽいスタイリングが多いわね。でも、イザベルさんは普段からすごく洗練されていてお洒落だし、子供っぽすぎず、かといって気張りすぎない『抜け感』が一番難しいところよ」
雑誌のページには、洗練されたジャケットスタイルから、上品なワンピース、程よくカジュアルダウンしたトレンドの装いまで、様々なコーディネートがずらりと並んでいる。
「そうなの! ベアトリスちゃんに借りたこの雑誌を見れば見るほど、どれも素敵すぎて迷っちゃうんだよねぇ……!」
ジュリエットはハニーブラウンの団子ヘアーをぽんと抑えながら、悩ましげに頬を膨らませた。
「この淡いベージュのトレンチコートに、ローファーを合わせるスタイルも大人っぽくて捨てがたいし……でも、こちらの花柄のヴィンテージ風ワンピースで少しガーリーに攻めるのも可愛い気がするの。クロエならどっちがいいと思う?」
クロエは縦ロールの毛先を指先でくるくると巻きながら、少しだけ顎に手を当ててお高くとまった――けれどどこか楽しげな口調で答えた。
「そうですわね……トレンチコートスタイルは非常に知的で洗練された印象を与えますし、イザベル様の洗練された雰囲気にぴったりですわ。ですが、可愛らしさを少しプラスするなら、ワンピースの選択も捨てがたいですわね……うーん、悩ましいですわ……」
エロワーズはそんな二人の様子をクールに眺めながら、自分の艶やかな黒髪のボブを軽くかき上げてフッと小さく笑った。
「ふふ、二人ともそんなに悩んでちゃ、日曜日に間に合わないわよ。……ちなみに私は、少しシックなワントーンコーデで行こうと思ってるの。イザベルさんと並んでも浮かないようにね」
「えっ、エロワーズはもう決めたの!? ずるいよ、私も早く決めないと!」
ジュリエットが慌てて雑誌のページをパタパタとめくり直し、クロエも「わたくしも負けていられませんわね」と優雅に微笑む。
日曜日の女子会に向けたおしゃれな作戦会議は、華やかな笑い声とともに、授業が始まるまでは、まだまだ続きそうだった。




