↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
リヨンの高校生たちの群像劇  作者: Red Baron
プロローグ
PR
1/96

硝子窓の向こうの光

ルイ・ル=グラン高等学校、リヨン分校の教室。午後のやわらかな日差しが窓ガラス越しに差し込み、アンドレ・ランベールの暗いブラウンの髪を、かすかに赤く染め上げていた。

机に肘をつき、アンドレは誰にも気づかれないように小さくため息をついた。新学期が始まってから数週間。セコンデ(高校一年生)の新しい環境にも、周りの生徒たちはすっかり馴染み、楽しげなグループを作っている。しかし、アンドレはその輪に加わることができずにいた。

(もし話しかけて、変に思われたらどうしよう……)

彼の心を縛りつけているのは、口を開くたびに顔を覗かせるベルギー訛りだった。フランス生まれの同級生たちの滑らかな響きと比べると、自分のイントネーションはどこかぎこちなく感じられる。馬鹿にされたり、からかわれたりするのが怖くて、結局いつも必要最低限の言葉しか発せられずにいた。174センチという年齢の割に高い身長と引き締まった体格のせいで、周囲からは「近寄りがたい無口なやつ」と思われているのかもしれない。

授業の悩みも重なっていた。得意な数学や物理なら、言葉の壁を越えて数式と論理だけでトップクラスの点数を取れる。だが、フランス語の文学講義や歴史・地理の授業となると途端に行き詰まった。深く複雑なテキストの読解や、自分の解釈を堂々と論述することが求められる時間は、彼にとって苦痛でしかなかった。今日も机の上には、びっしりと赤字で注釈が入ったフランス語の課題プリントが広げられている。

その時だった。

「ねえ、その課題の3番……君はどう解いた?」

突然、頭の上から軽やかな声が降ってきた。

アンドレが驚いて顔を上げると、灰色がかったヘーゼルの瞳の前に、ノートを抱えた一人の同級生が立っていた。屈託のない笑顔を浮かべ、アンドレのノートを興味深そうに覗き込んでいる。

アンドレの心臓が、トクンと跳ねた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。