硝子窓の向こうの光
ルイ・ル=グラン高等学校、リヨン分校の教室。午後のやわらかな日差しが窓ガラス越しに差し込み、アンドレ・ランベールの暗いブラウンの髪を、かすかに赤く染め上げていた。
机に肘をつき、アンドレは誰にも気づかれないように小さくため息をついた。新学期が始まってから数週間。セコンデ(高校一年生)の新しい環境にも、周りの生徒たちはすっかり馴染み、楽しげなグループを作っている。しかし、アンドレはその輪に加わることができずにいた。
(もし話しかけて、変に思われたらどうしよう……)
彼の心を縛りつけているのは、口を開くたびに顔を覗かせるベルギー訛りだった。フランス生まれの同級生たちの滑らかな響きと比べると、自分のイントネーションはどこかぎこちなく感じられる。馬鹿にされたり、からかわれたりするのが怖くて、結局いつも必要最低限の言葉しか発せられずにいた。174センチという年齢の割に高い身長と引き締まった体格のせいで、周囲からは「近寄りがたい無口なやつ」と思われているのかもしれない。
授業の悩みも重なっていた。得意な数学や物理なら、言葉の壁を越えて数式と論理だけでトップクラスの点数を取れる。だが、フランス語の文学講義や歴史・地理の授業となると途端に行き詰まった。深く複雑なテキストの読解や、自分の解釈を堂々と論述することが求められる時間は、彼にとって苦痛でしかなかった。今日も机の上には、びっしりと赤字で注釈が入ったフランス語の課題プリントが広げられている。
その時だった。
「ねえ、その課題の3番……君はどう解いた?」
突然、頭の上から軽やかな声が降ってきた。
アンドレが驚いて顔を上げると、灰色がかったヘーゼルの瞳の前に、ノートを抱えた一人の同級生が立っていた。屈託のない笑顔を浮かべ、アンドレのノートを興味深そうに覗き込んでいる。
アンドレの心臓が、トクンと跳ねた。




