第三話 お城にて
恐竜に揺られ森を抜けると、一面人工的な畑が広がってきた。その向こうに大きな西洋系の城がある。
城は大きな城壁にかこまれていて、石の関係だろうか城は全体的に黒っぽい。
恐らく、城壁内は城下町が広がっているのだろう。
「城に向かっているのね。」
しばらく恐竜に揺られていると巨大な門の前についた。門の前には猿に似た動物の顔の人と、爬虫類のような顔の人が甲冑をきて警備をしていた。
私たちが目の前に来ると、片ひざを立てて挨拶した。これは敬礼のようなものなんだろう。
そのうちのサル顔の人にラグが何か板のようなものを見せると、どうぞというように門の横にある小さい扉から通してくれた。
中はやっぱり町になっていておとぎ話のモンスターたちが大集合という感じだった。
でもやっていることは人間と何ら変わりない。子供は元気に走り回り、大人たちも忙しそうに働いている。
そう言えば、外の畑でもたくさんの人たちが働いていた。
街並みも西洋風だ。でも素材が黒いものが多く使われているためと町の人たちの姿とで、かなり怖いというかダークな雰囲気だ。
しばらく進むと町の中心地に来たのだろう。ものすごくにぎやかなのが遠目でもわかる。
市場を開いてるようだ。中東あたりのバザールに似ている。
売ってるものは様々だが、正直食べ物は結構グロテスクな見た目をしていてギョッとした。それに自分たちの顔に似ているのに、ここの人たちよく食べれるな。
ここで暮らすならあれを食べなくちゃいけないに、大丈夫か私。
市場を恐竜に乗ったまま突き抜けるのはかなり邪魔になっている。
それでも時間をゆっくりかけて市場を出る。
市場を抜けると少し閑静な、高級感がでている町並みに入る。
そこを通ると、城門が張り巡らされた一帯に出る。城下町を囲う門と、城を囲う門の二重構造のようだ。
門の周りは水が張られたお堀がある。そこに一本の橋がかかっており、城壁の門へと続いている。
そこにまた、二人の警備兵?が立っている。
その二人の前までつくと、さっきの門でもやったようにラグが板のようなものを見せ、それを見た二人は片ひざをたてひざまづく。
もしかしてラグ達って偉い?
城内はゴシック的な雰囲気を醸し出している。
魔王城みたい。
そのままあれよあれよというままに、ある一室につれてこられた。執務室のようなところだ。
中には何人かが働いていたが、私たちが中に入るとヤギ頭の人が近づいてきた。
ラグとヤギ頭何か話している。そのあとヤギ頭は私を上から下までジーっと見ると、ついてこいというように顎をクイっとしゃくる。
不安になってラグを見上げるが、大丈夫だというように微笑んで背中をポンっとかるく押された。
ラグが何か手配してくれたのなら心配はないんだろう。
決心してコクンとうなずくとヤギ頭についてゆく。
廊下を進んでいくと、また部屋に連れて行かれた。部屋にはお揃いのメイド服のようなユニフォームに身を包んだ女性たちが大勢いた。何人かは女性かどうかわからなかったけど・・・。
ヤギさんが中に入るとすぐに、まっ白い肌に真っ赤な髪以外は普通に人間にみえるお色気美人さんがやってきた。
また二人が話しはじめ、美人さんが私の周りをグルッと見て回る。少し緊張してピンと背筋を伸ばすと、美人さんはほほ笑みヤギさんにまた話し始めた。
話が終わるとヤギさんはでいき、美人さんは私に向き直ると話し始めた。だけど言葉はわからないから困った顔をしていると、美人さんは少し思案した後自分を指さしてギルバーダといった。だけどギルとも言っているので、そう呼べということだろう。私も自分を指さしてユーコだと伝えた。
美人さんにそこの女性たちと同じ服を着させられた。
これはもしかしなくても、この城でメイドさん的なことをしろということなのだろうか。
着替えた後はまた移動で、城内を抜けて宿舎のようなところにきた。ギルが扉をノックすると、ワニのような頭をした人が出てきた。私がびっくりして固まったのを、不思議そうな顔をして見られた。
中に入れられると、十畳ほどの広さの部屋に二段ベットが二つ、その奥に小さな机とイスが二つ。そして大きなタンスが壁にズラッと並んでいた。
すでに三人住んでいるらしく、さっきのワニ顔の子と猫のような耳の付いたかわいい女の子、ラグのような緑の肌を持った女の子の三人だ。みんな私とおそろいの服を着ている。
どうやらギルが三人に自分を紹介しているようだ。ところどころユーコと自分の名前が聞こえる。
三人は私に向かってそれぞれ自己紹介をしはじめた。あらかじめギルから私が言葉をわからないことを聞かされていたのか、自分を指さして短く自分の名前だけを告げてきた。
上からガルサ、ルーベル、シェイラーというらしい。
私も通じないとわかっていながらも日本語であいさつすることにした。
「はじめまして、高田優子と申します。ご迷惑をお掛けすると思いますがよろしくお願いします。」
そう言ってぺこりと頭を下げる。
そうすると彼女たちは、ニコニコ笑い私に色々話しかけてきた。
どうやら私は受け入れてもらえたらしい。