第四話 アーシャルバー代理
「ユーコ!!!終わった?お昼御飯にしましょ。」
「もうそんな時間?あとちょっとで終わるから待って。」
私がこの世界にきて、ほぼ一年近くたった。ここはヴィーリンガルート国の首都クロウィグ。
言葉は、相撲部屋の力士が完璧な日本語を話すのと同じように、必要に迫られることと、その言語にどっぷりつかることによって日常会話に困らない程度話せるようになった。
ホームシックで毎晩泣いてた私をやさしく慰めててくれたのは相部屋の三人だった。事あるごとにものを指さして固有名詞を聞いたりする私に、三人は根気強く付き合って文字も教えてくれた。
こちらに持ってきた勉強のノートを途中から単語と文法、ここの常識を書きとめるためのモノにかえた。
言葉がわかるようになると、色んなことがわかるようになる。そしてわかったことは、ここでの私の仕事は給仕担当のメイドだということ。この世界は意外にも民主制で、トップのアーシャルバー(大統領や首相のようなもの)は良い政治をしていれば選ばれてから死ぬまで王様のような暮らしをおくれるが、国民が許せないほどの政治的失敗または独裁をした場合は国民投票や意見交換により処罰が下される。ほかの役職も投票によって決められる。
因みに、ラグは神武官長補佐という役職で結構偉い。神武官とは、この国の神様であるバルーダを祭る神官であり神殿直属の兵士のことだ。
ラグに何故私を助けたのか聞くと、クリンの森の入口で遊んでいた子供が誰か倒れているということで、地方神殿を視察した帰りのラグたちに知らせたらしい。そこで倒れてたのが私で、見たことない民族だったけど、ボロボロで可哀そうだということで連れて帰ってくれたらしい。
またギルはメイド長だ。しかもギルは日本の歴で数えると、250才というつわものだ。
あんなに美人なのに。
ここの食べ物にも苦労した。味は大丈夫なのだが、いかせん見た目が怖い。体も慣れなくて、お腹を壊したりもした。
唯一のすくいは水が地球と変わらないこと。
でも重力も少し地球より弱いらしく、私はここでは力持ちだ。場所によっては、物凄く酸素が多くて呼吸しやすいところもあるが、少ないところもありそこでは窒息死に気をつけなければならない。
「ねぇユーコ聞いた?ヘイロネア国がまたなんかやらかしてきそうだって噂よ。」
「ヘイロネアが?確か昔もあそこはいろいろ仕掛けてきたのよね。」
「そうなの!!私たちを卑しい化けものだって!悪の国だとかいっていっつも攻め込んでくるの。自分たちは正義で美しく賢いのだとか何とか言っちゃうのよ。笑えるわ。姿かたちの違う私たちを排斥して領土を広げたいだけなのよ!!」
食堂でルーベルとビスルというパンに似たものを食べながら話す。ルーベルは興奮しているのか猫に似た尻尾をシャーっとけば立たせている。・・・可愛い。モテるはずだ。灰色の髪が魅力的だわ。
「聞いてるの?ユーコ!!」
「聞いてるよ。」
ヘイロネアという国の人にはあったことはないが、私と似ているらしい。
また、自分たちと姿かたちの違う人々を差別しており、自分たちが至高の存在であると信じて疑わないらしい。
「戦争になるのかしら?私の国は戦争のない国だったから不安だわ。」
「ん~過去に何度も戦ってるからね。しかも勝敗は五分五分。私たちはここでゆっくり過ごしていたいだけなのに、彼らの国の邪魔もするつもりもないのになんで毎回毎回ちょっかい出すかしら。」
「もしそうなったら俺たちが守ってやるからだ丈夫だ。安心しな。」
訓練が終わった豚っぽい頭の兵士さんが話に割り込んできた。
「じゃー任せたわよ兵隊さん。」
「ルーベルちゃんに言われたんじゃ頑張るしかないってもんよ。それより、美人と可愛い子が二人並ぶと壮観だねぇ!!」
「おだてても何も出ないわよ。でも褒めてくれて有難う。」
私がそう言うと兵隊さんはデレデレした顔をしながら去って行った。
黒豚系のひとだったから顔の赤さとかはわからなかったけど、あれは絶対照れてた。
「もう!ユーコはホント罪作りね。」
「・・・ねぇ、ルー。さっきの人の言葉の中でわからない単語があったんだけど。ほめてくれてたのは雰囲気でわかったわ。」
「何がわからなかった?」
「サグ、サグラーベ?だったかな。ええっとそんな感じの・・・」
「あぁ!!サグリーブね。サグリーブ。意味はね・・・ん~、凄い景色みたいな時に使うかな。」
「サ・グ・リー・ブ。凄い景色などを見たときに使用っと。よし!メモった。ありがとね。」
ポケットからメモ用紙を出して、ルーベルが教えてくれた意味を書きとる。こうしないと忘れてしまうからだ。特に名詞ならわかりやすいが、形容詞や助詞副詞などはなんと言っているのか理解するのがかなり難しい。
食堂で遅めの食事をすますと、午後の仕事に戻る。給仕といっても様々な雑用をしないといけないのだ。
毎日一生懸命働いて、仲間とおしゃべりして泥のように眠る日々を繰り返した。
最近では、家族の顔さえ思い出せそうにない。
忘れたくないのに忘れてしまう。それが何より怖かった。夜の眠る前や一人になると、向こうの世界のことを思い返してしまうので、わざと必死に働いて体を疲れさせて眠りについた。
神殿の鐘が物凄い勢いで鳴り続ける。
ヘイロネア軍が、後1日ほどでこちらにつくらしい。城の中ではみんな慌ただしく走り回っている。
「どういうことだ!!城に向かっているだと!!しかもあと一日ほどで着くだなんて!!
牛頭のザーナ将軍が焦ったように机を叩く。会議室の中は重い空気に包まれていた。
「奴ら、こちらの食料が尽きるまで待つつもりですよ。長期戦のために、しこたま食料と武器を持ってきているらしいとの報告です。アーシャルバー、ご決断を。」
みんなの視線が年老いた犬顔のアーシャルバーへと向かう。
彼は国民にやさしい政治を行うとして選ばれたが、戦ではその優しさは仇となる。
「・・・・・・・・・今まで幾度となくヘイロネアとは剣を交えてきた。多くの者たちを失った。家族、友人と愛する者たちをな。わたしはもう誰も失いたくないのだ。だから戦は避けたい。それに兵が足らん。」
「ではいかがなさるおつもりで・・・。」
「城に籠り、被害を最小限におさえよう。城壁がある程度は守ってくれよう。」
「ですが、それでは長い時間もちません。奴らは長期戦のつもりですよ。我々には不利です。」
私は会議室で、幹部たちの話しを聞きながら水を給仕しまわった。
こういう場合って歴史の知識とか役に立たないかしら。何かあったかな。
「あのぉ~、少しよろしいでしょうか?」
「なんだ!!今は勝つか負けるか、生きるか死ぬかがかかってるんだぞ!!」
「城に籠ってしまうということは、城を囲まれるということですよね。そう言う場合は、えぇっと防御設備、備蓄物資とか?をして、士気が高く適切な数の兵を有すれば、大軍をもってしても陥落させるのは非常に困難だ。というのを聞いたことがあります。」
「そんなことはわかっている!!給仕の使用人である戦の素人が口出しするな!!」
「今まで・・・えっとなんて言うんだろ。お城に籠って戦うことなんですけど・・・。」
「ええい!そんな言葉はない!!それよりさっきからお前はなんなのだ!出てゆけ!!」
どうやら籠城という概念はまだないらしい。しかも将軍に思いっきり怒鳴られる。
「お待ちを、将軍。話を聞くくらいよろしいでしょう。・・・お前、何か策でもあると?」
宰相に近い役割の、ムーバミンさんがはなしかけてくる。
「そういうのを私の国では『籠城』っていうんですけど、今までその経験は?」
「我が国建国の歴史の中では一度もない。ここまで奴らが攻めてくるのは初めてだ。今までは別の場所で戦ってきたが、それがどうした。」
「少しお待ちください!!」
そう言うと一礼して、廊下へ飛び出る。向かうのは自分の部屋。
確か日本史のノートに、時と場所と場合に応じた色んな戦法を書いていたはず。その中に籠城についても載ってたと思う。過去の戦争内容や、執政についても細かく書いた記憶がある。
日本史の先生が戦法オタクで授業に関係ないが教えていて、軍事史好き仲間とウィキペディアにも書き込んだりしているらしい。てか、あの人たちがほとんど書き込んでるんじゃないだろうか。一回見てみたけど、授業で喋ってたこととおんなじこと書いてたし・・・。
自分としても面白かったのでノートに作っていたメモ欄に、全部書き込んでいたのだ。それがこんな所で役立とうとは思わなかったが。
「ハァハァハァ・・・日本史ノート。机の中に・・・・あった!!でもこの世界で通用するのかしら。」
とにかくやってみなければわからない。ノートの中身を確認して、籠城について書いたページを探す。
籠城の文字を見つけると、また会議室へと走り出す。
「ハァハァハァハァ・・・・遅そく・・・なって・・・すみま・・・ハァ・・せ・・ん。」
会議室につくと、説明のため荒い息を整える。給仕の友達が、水をコップに注いでくれた。
それにお礼をいって、渇いた喉を潤した。
「で策はなんだ?そんなものあるのか?」
将軍が息を荒げながら聞いてくる。
「あの、その、籠城戦を行う場合は・・・えっと・・・まず、自分たちの状況を知るために得になること損になることを説明します。籠城して私たちあるメリットは・・・」
「待て、『めりっと』とはなんだ?」
宰相が不思議な顔で聞いてくる。
私は会議室の円形テーブルに近づくと大きめの声でノートの内容を翻訳しながら話した。
「メリットとは得することという意味です。話の続きですが、我々の籠城による徳は、立てこもる城の構造や兵の士気にもよりますが、守る側・・・守備側ですね。守備側は攻撃側の数分の一の兵力でも拮抗できるため、極端な兵力差がある場合や支城などで相手側を足止めする必要がある場合には有効だということです。また、長期戦になった場合には多勢である攻撃側の兵站確保が困難となり、撤退、事実上の敗戦ですね。それに追い込まれる場合もあります。」
「大体予測できる程度だな。」
「最後まで一応聞いてください将軍。」
「な、何だと!!私は将軍だぞ!仮にも軍を預かっている私に向ってなんてことを!!」
この人頑固すぎる。頭が固いというのか。話ぐらい最後まで大人しく聞いてくれ。
「ハァ~。・・・続けても?」
宰相に伺うとウンとうなずいて、「気にせず続けなさい。」と言われた。
将軍がまだ何か言っているが、この際無視だ。
「我々にとって損なことは、えぇっと・・・数ヶ月~数年にわたる長期間の兵糧攻めを受けた場合には物資の・・・足りなくなること・・・ん~欠乏だ!物資の欠乏や・・・飢え?あっ!飢餓か・・・飢餓に陥り、城主の自決による開城などの結末を迎える場合も過去の戦では多かったそうです。こうした場合を想定して、城には深井戸や食糧となる樹木を植え、籠城を意識した構造を採っているものも珍しくなかった、ともありますね。そういうものは・・・ありませんよね。籠城初めてだし。」
「いくつか果実や木の実が生る植物などは植えられているが・・・それだけでは城下町の民たちを城にかくまったら足りんだろうな。」
宰相が困ったように言う。
「それが全てではありません、宰相様。気を落とさずに。続きはっと・・・また、攻撃側によって包囲されている関係上、包囲の外との連絡が取り難くいため、援軍と呼応しての反撃は受動的にならざるを得ません。しかも、攻撃側が守備側を包囲してなお侵攻に必要充分な兵力を残していた場合、籠城する戦力は遊兵と化す恐れがあります。・・・我が国に、同盟関係や友好関係にある国は?」
「何カ国かあるにはあるが、他国の戦争に関わると自国の危機にもつながる可能性があるからのう。・・・はたして援軍として来てくれるだろうか。」
アーシャルバーがうつむき加減でつぶやく。他の役職の幹部たちもそれにつられるように頭をうつ向かせる。
「やってみないとわかりません。とにかく使者を派遣しましょう。援軍がだめなら物資の支援をしてくれるように頼みましょう。秘密のトンネルを掘ってそこから運び込んで耐えましょう。」
「こんな小娘の言うことをお聞きなさるおつもりですかアーシャルバー!!立て篭もるなど、生易しい気持ちではいけません!!」
将軍がそう言うのに続いて、他の幹部たちもそうだそうだと続く。
「一つの国といっても広いのだぞ。我々の考えが足らなかったミスで、まだ召集はしておらんから各村や町に連絡を回して男たちを集めるだけで最低1週間はかかるぞ。後一日で敵軍がこちらに付くというのに無理なはなしだ。首都の男たちだけでは対抗するのに少なすぎる。」
宰相が悔しそうに言うと、誰もが口を閉じた。
「籠るしかないと?」
「の、ようだな。・・・娘、どうしたらよいのだ。」
「はい。まずはなにより準備からです。食料、水、武器、消耗品その他の必需品を十分備蓄する。 それから・・・城壁など城の修繕、強化する。そのための材料確保も。 その材料が確保できたら、周辺の木々などを伐採し、敵軍に対して破城槌や燃料に使える木材などの確保を困難にさせる。 防御するのに必要、十分な守備兵を集める。これはどうしようもないので仕方がないですね。 主君や友好国に援軍を要請する。これも使者の方に頑張っていただきましょう。」
「わかった。手配させよう。」
アーシャルバーが大きくうなずいてくれた。
「・・・・・・・・具体的にはどういう戦い方をすればいい?」
意外にも将軍が話しかけてきた。
「その前に一つ。ヘイロネアは過去に他国対して城まで攻めに来たことは?」
「いや、普通戦というのは宣戦布告をして、どこの国にも属していないような場所で行う。この世界でこんな戦は初めてだ。・・・奴ら、我々を滅ぼすために当り前の戦争の礼儀さへ無視したようだ。我々が奴らに何をしたというのか、姿形が違うだけだというのに・・・。」
将軍は忌々しげにつぶやくとまた机をたたいた。
「それなら前もって準備していたのでしょうね。私の国とは違う攻め方で来るかもしれませんが、彼らも城をおとすのは初めてでしょう。慣れていないのでこちらにも勝機はあります。攻撃には・・・ええと火をつけた・・こう細い棒の先に切れるものをつけて、糸の付いた反り返った棒の力でビューンと飛ばす兵器の名前・・・ 」
専門用語は名前がわからなくて困る。
「矢のことか?糸の付いた棒は弓だ。」
「それをそう言うのですか。その矢に火をつけたものをうたれれば消火し、城壁が破損すれば臨時の補修や衝撃を弱めるための緩衝材となるものを設置する。敵が接近してくれば、矢、石弓、あ~・・・石を投げる機械などで攻撃し、えぇ?これなんていうのよ・・・城壁に兵士を送り込んだり、城壁の上から攻撃できるようにした移動できるやぐらが接近してくれば、その破壊を試み、城壁をよじ登ってくれば、石や材木、高温の液体などを上から落とす。トンネルに対しては、城側からもトンネルを掘り、敵を追い払って埋め戻す。
城内の構造を複雑にし、武者隠しや落とし穴などを設置して、侵入した敵を罠にはめる。 ・・・これは城の構造自体かえなきゃならないから戦争のあとにでも考えましょう。え~っとそれから・・・城壁などを多層化し、外周の城壁や城門が突破されても内壁などによって・・・本丸ってなんていうのかしら・・・中枢?への敵軍の進入を防ぐ。 これも今後の課題ですね。他は・・・なになに・・・唯一能動的な戦法は、城から小部隊が突撃する・・・突然攻撃しにくるって単語なんだっけ・・・あっ!思い出した!・・・奇襲、夜襲で、これは相手の隙を突いて城側が場所と時間を選ぶことができるため有効だ。小部隊のため敵に与える損害は限られており、戦局には大きな影響は及ぼさないが、攻城側に恐怖心を与え城側の士気を上げるのに役立ち、長期の籠城には欠かせなかった。しかし、突撃部隊が帰還する時に攻城側に付け入られる危険性がある。以上です!!」
何とか翻訳し終わる。いっぱいいっぱいだったから、ちゃんと伝わっただろうか心配だ。
「ティラスラ書記官。ちゃんと書きとめたか?」
「はい、アーシャルバー。」
「うむ。よろしい。・・・ところで、娘。そなた名はなんと申す。」
アーシャルバーに名前を聞かれ、この国の最大の敬意の示し方である、片ひざをたてて名乗る。
「アーシャルバー、私の名前はユーコ。ユーコ・タカダと申します。」
「そうか、ユーコというのか。お前は異国人だったな。そのような知識はどこで?」
「我らが世界には、子どもたちは学ぶ権利と義務がございます。そのため、学問など様々なことを同じ年頃の者たちと共に学ぶところがございます。こちらで言う、グラダスのようなものです。全国民の子供たちがその教育機関に入る必要があるということでグラダスとは違いますが。そこで学びました。」
「・・・なるほど。お前には学があるのだな・・・お前は私などより知識もあり、先ほどのやり取りからどうやら指導力も決断力もあるようだな・・・」
そういうとアーシャルバーは黙り込んで思案しはじめた。そして会議室にいるみんなに、これは決定事項だとでも言うようにきっぱりと宣言した。
「ユーコ・タカダに、私アーシャルバーは全権限をゆだねることにする!この戦の間は、ユーコの命は絶対だ。私の命だと思え!・・・ユーコよ、お前をアーシャルバー代理とする。心して臨め。」
会議室がいっせいにシーンとなると、次々と反対意見が飛び交いだした。
私自身もびっくりしすぎて動けなかった。
「アーシャルバー!何を酔狂なことを!自分が何を言っているのかわかっておいでですか?」
「あぁ、もちろんわかっているとも。だがな、皆よく考えてみてくれ。我らのように、このような戦の知識がないものが指揮をとるよりも、ユーコのように知識があるものが指揮をとった方がよいに決まっておろう?あのものは先ほど的確な判断を下し、我らの持たぬ知識をも披露した。これほどの適任はおるまい・・・」
「ですが!・・・そうです!このものからあらかじめ戦についての知識を得ればよいのです。」
「それは戦のあとじゃ。戦とは生き物だ。どんなことがきっかけで戦況がかわるかわからん。そんな時に、このものから得た知識をまとめた紙とにらめっこするつもりか?瞬時の判断が大切なのに?」
アーシャルバーのこの一言で、みんな黙ってしまった。反論の余地がないのだ。
アーシャルバーはぐるっと会議室のメンバーの顔を見回しながら言った。
「よし、これで決まりだな。」
「いえいえいえいえ!!!!ちょっと待って下さい!勝手に決めないでください!!私には無理です!!」
「もう決まったことだ。この国を守れるのにはお前の知識が必要だ。私も、もちろんここにいる者たちもお前を支える。何も一人で何でもかんでも考えて決めろといっているわけではない。お前の力を借りたいだけだ。」
ここでなんとか拒否しないと、ヒトの命が私の一言で左右されてしまう。そんなこと、一年前まで高校生だった私には無理だ。
「ですが、私には無理です。人の上に立つ仕事もほとんど体験したことがありませんし・・・なにより、人の生き死に実際関わったことのない私は恐ろしくて仕方ないのです。自分の判断で何人殺すかわからない・・・私にとっても戦争は紙の上のお話なんです・・・」
「・・・確かにお前の言うとおりだな・・・私個人としてはお前のような娘にこのようにキツイ判断をさせる仕事に就かせるのは絶対に反対だ。だが私はヴィーリンガルート国アーシャルバーだ。お前個人よりも多くの国民のためにうごく。これは命令だユーコよ。アーシャルバー代理となれ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・はい。ご命令承ります。」
国のトップにお願いではなく命令されてそれを実行しなければ反逆。となると私はこの国で生きていけなくなる。
この命令を受けるしか私にはなかったのである。




