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21  ソフィア・マクラミ男爵令嬢4

登場人物がややこしいので関係図載せときます。


《既存のゲームの組み合わせ》


王太子アラン×婚約者スカーレット

騎士団ロン×幼馴染ヨハナ

化学教師ホアン×再従兄妹アリシア

女たらしシド×義妹ソフィア

???×ヒロイン カレン


《プログラマーがくっつけようとしている組み合わせ》


王太子アラン×アリシア(ホアンの相手)

騎士団ロン×ソフィア(シドの相手)

化学教師ホアン×ヨハナ(ロンの相手)

女たらしシド×スカーレット(アランの相手)

義兄レオルド×カレン


*1部→5部→7部→10部→14部→18部→21部の順番がソフィアルートの時系列です。

 ソフィアは目覚めると、身支度を整えて階下へ下りた。昨日、シドに長年の思いの丈をぶつけたが「ふーん。こんなものなのね」という妙に凪いた気持ちでいた。シドに対面したら、何か感情が動くかもしれないが、少なくとも今は逃げも隠れもせず堂々としていよう、と思っていた。

 食堂へ入ると、既に両親は揃っており、メイドがせわしなく朝食を運んでいる。ソフィアも挨拶して席についた。シドの姿はない。遅刻ギリギリの時間で起きてくるのは、毎朝のことだ。わざとゆっくり食事を取ってシドを待つのがソフィアの日課だった。でも、本当は朝から忙しないのは嫌だった。シドと一緒の馬車で通学したいから、仕方なく甘んじていただけだ。けれど、もう今日からは違う。

 ソフィアは爽やかな朝の会話を両親と交わしながら、ほどよく時間を掛けて食事を終えると、


「お義兄様、まだ起きて来ないみたいだから先に出掛けます」


 と告げた。母は驚いた顔をしたが何か言うより先に、義父が口を開いた。


「あぁ、それがいい。あいつは毎朝毎朝ソフィアちゃんを待たせて迷惑かけているからな。シドを待っていると遅刻してしまうよ」


 元々現状を気にしてくれている義父は、ソフィアとシドにそれぞれ通学用の馬車を用意してくれている。前はありがた迷惑に思っていたけれど、今日は心から感謝したい。


「有難うございます。では、行って参ります」


 ソフィアは、残りの紅茶を飲み干すとにっこり微笑んで屋敷を出た。




 教室に入ると人はまばらだった。

 ソフィアは席に着くと一限目の授業の用意をして教科書を広げた。

 再来週には学期末試験がある。入学して最初の定期考査では、義父がシドに勉強を見てやるように頼んでくれて、試験一週間前から放課後に教えてもらっていた。シドは不思議と成績は良かった。義父がシドの素行の悪さに口を出さないのは、その辺に理由がある。ソフィアは、今回もまた教えてもらうつもりだったから、シドの前で恥をかかないように毎日の授業を真面目に受けていた。本末転倒だが、今となっては良かった。多分、一人でもどうにかなる。

 ソフィアがペラペラと教科書を捲ったあと、なんとなく顔を上げるとカレンが教室に入ってくるのが見えた。


(昨日のお礼言わないと)


 ソフィアはカレンの席まで歩み寄り、


「お早うございます。昨日は有難うございます。とても楽しかったわ。タルトとても美味しくて、家族も喜んでいました」


 と座っているカレンに微笑んで告げた。カレンが顔を上げる。花が咲くみたいに笑顔になったのを見て、ソフィアはドキリとした。これまでシドの周囲にいる令嬢達は、敵意を向けてくるか、或いは優越感を持って見下すような態度だった。しかし、カレンは対極にいるみたいに物凄く感じがいい。シドが、数多の令嬢の中からカレンを選ぶ理由がなんとなくわかる気がした。


「とんでもないです! ソフィア様に来ていただけて、うちの両親も喜んでいましたから!」


 カレンは立ち上がって言った。けれど、一瞬、間をおいて視線を逸らすと「あ、失礼しました。では、また」と急にそっけなくなった。ソフィアは困惑したけれど、カレンが席に座り教科書を読み始めたので、


「えぇ、では」


 と返して自席へ戻った。

 カレンは特進クラスの授業をいくつか取っている。編入試験の成績もかなり良かったと噂になっていた。定期考査のため、朝の時間は勉強に充てているのかもしれない。邪魔して悪かったかしら、とソフィアは申し訳なく思って、自分も再び教科書を広げた。



 


 昼休みになると、ソフィアは、いつもならシドの教室まで行って共に昼食を食べる。シドを慕う他の女生徒達と共に。しかし、本日は一人で食堂へ訪れた。最初は、がやがやと賑わっている中にひとりぼっちでいることが恥ずかしかったけれど、案外同じような人間も多くいるようで、途中からは気にならなくなった。いくつか並んだ長テーブルのうち、真ん中に一つ空いていた席に腰掛けて、一番空いている店で購入した「本日のランチ」を食べていると、


「ロン! こっち空いているぞ」


 と突然後ろの席の男が声を張り上げた。ソフィアはびっくりして思わず視線を向けた。が、すぐに顔を伏せた。ロン・サーフォンが女生徒と一緒にいる姿が見えたので、咄嗟に体が動いてしまった。


(思い出したわ。生徒会のヨハナ様!)


 天使様は否定したが、ロンと幼馴染の令嬢との噂は何度も聞いたことがある。今顔を見て、はっきり思い出した。バークマン侯爵家の令嬢で美人で才女として有名なヨハナ様だ。しかし、爵位を笠に着て子爵家であるロンに言い寄って迷惑がられているとかなんとか、ひどい言われようだった。噂は嘘か本当か。ソフィアはロンと目が合わないようにチラチラと二人の様子を確認した。一見しただけではわからないが、少なくとも表面上は仲は良さそうに見えた。


「ここ空いてますよ」


 さっきの男とは違う女性の声が聞こえて、二人がどんどん近づいて来るので、ソフィアは顔を隠すように俯いた。ロンが自分の斜め後ろに、その更に斜め向かいにヨハナが座ったのを背中で感じて、余計に緊張が走った。背後のテーブルの会話が否応なく聞こえてくる。


(なにこれ……)


 クレアとかいう女生徒が、明らかにヨハナを貶めようとしている。ランドンという男とヨハナがまるで何かあるような口ぶりだ。ランドンがそれを注意すると、今度は被害者面を始めた。ソフィア自身も、シドの取り巻きの女の子達にやられるから、嫌がらせであることはよくわかる。だが、もっと最悪なのは、


「ヨハナもランドンも、もうそのくらいにしてやれ」


 ロンが女生徒を庇ったことだ。


(もうそのくらいにしてやれって、失礼なのは元々相手の方でしょ)


 ソフィアは納得いかない思いを抱えて、関係ないのに文句の一つでも言ってやりたくなった。しかし、ヨハナが「えぇ、そうね。もういいわ」と存外冷静に返したので毒気を抜かれた。自分ならシドに窘められたら、こんな風に余裕のある返答はできない。謝罪して俯くだけだ。それで周囲の女生徒に更に嘲笑されるのがいつものパターンだった。


(素敵だわ……!)


 ソフィアは、ヨハナがクレアを歯牙にも掛けていないことに、賞賛の気持ちでいっぱいになった。一体どんな人なのか、改めて顔を見たくなった。丁度食事が終わったこともあり、ソフィアは食堂を出て行くどさくさに紛れて、ヨハナを確認することにした。入学式で生徒会のメンバーの紹介の時に、見た記憶はある。艶やかな黒髪に白い肌が印象的な知的美人だと思った。ソフィアはゆっくり立ち上がり、不自然にならない程度に振り向いて、ちらりとヨハナを見つめた。にこやかに笑っていて、前見た時とは雰囲気が全然違った。


(可愛らしい人!)


 こちらに背を向けているクレアの顔はわからないが、ヨハナに勝てるものなど何もないだろうに、とソフィアは思った。多分、調子づかせているのは全てロンの発言のせいだ。


(ロン様って、シドと同じで外面が良いタイプなのね)


 天使様には申し訳ないが、ロンが運命の相手なんてお断りだ、と強く思った。ソフィアはがっかりしながら、


(ヨハナ様か……)


 ともう一度だけヨハナにちらっと視線を流し、静かに食堂を後にした。




 放課後を告げるベルが鳴る。通常授業は十五時で終了する。特進クラスや騎士科はここから追加授業と鍛錬がある。ソフィアは普通科の生徒のため、帰る準備をして教室を出た。一緒に帰りたくて、急いでシドを迎えに二年の校舎へ行く必要もないし、ゆっくり迎えの馬車の待つ停車場へ向かった。

 停車場は爵位ごとに決まっていて、男爵家のソフィアに充てがわれているのは学校から少し離れた場所だった。

 とぼとぼと学校の門を潜ってしばらく歩いたところで、


「ソフィア様!」


 と呼び止められ、振り向くとカレンが駆けてくる。ソフィアは驚いて目を見張った。


「どうなさったの?」


 走って追いかけてくるほど急ぎの用事が自分にあるとは思えなかったし、声を掛けるなら教室でも機会はあったはずだ。


「いえ、あの……実は今日の昼食の時に、アラン殿下とスカーレット様に、ソフィア様が昨日うちへ来てくださった話をしてしまって……それで、今度、スカーレット様主催でランチ会をすることになって……よろしければソフィア様もご一緒していただけませんか」

「え?」

「ごめんなさい! 勝手にお友達だって言っちゃったから……」


 友達、という単語がソフィアにはピンと来なかった。もうずっとそんなものはいなかった。


―― 嫌われているのがわからないのかしら? シドもはっきり断ればいいのに!

―― 仕方ないだろ。親父には逆らえないんだから。


 多分、あの時からずっと。


「いえ、そんなことは……」


 と答えたものの、ソフィアは煙の輪郭を探すみたいにぼんやりした気持ちだった。他に何か言わなければ、と


「わざわざそれを言うために追いかけてきてくださったの?」


 と付け加えた。授業が終わった後、しばらく教室にいた。急いでシドを迎えに行かなかったから。目が合うと、カレンが戸惑った顔をした。嫌な感じに取られただろうか。余計なことを言って失敗した、とソフィアは思った。しかし、


「あ、いえ、教室はちょっとまずいかなって……」

「まずい?」

「わたし、イライザ様に嫌われているでしょ? ソフィア様まで目をつけられたら困るから」


 カレンが苦笑いで言った。ソフィアは朝のカレンの素っ気ない態度を思い出した。あれはそういう意図だったのか、と腑に落ちた。同時に、自分にこんな風に気遣ってもらう価値があるかな、と胸の奥がざわざわ揺れた。だって、イライザに嫌がらせされていることを知っていた。上手く立ち居振る舞えないカレンが悪いと思っていた。取り巻きになって這いつくばれと言われて、それを拒否しただけなのに。


「……ごめんなさい」

「え?」

「でも、そんなの平気だわ」

「え、でも……」

「そもそもわたし、誰とも仲良くないし、仲間外れにされたら二人でいればいいのよ」


 ソフィアは、今更、掌を返すようなことを言う自分が少し後ろ暗かった。でも、わざわざ「貴女を馬鹿にしていたのよ」などと伝える必要もないとも思った。だって、今からは違うから。もう二度と。絶対に。何もかも変えるのだ。


「有難う!」


 カレンがまるで子供みたいに笑うので、つられてソフィアも笑った。


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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。嬉しいです!! 女の子たちがどんどん前向きに生きていく姿はキラキラしてます
更新ありがとうございます!! ずっと待ってましたー!!
続きをありがとうございます! 更新ずっと待ってました!! なんだか女の子同士でどんどん輪が広がりつつありますねー。 そして、ロンははたから聞いててもやっぱりなしか〜。 今まで鈍感でノンデリなだけで特…
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