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夜明けのソラの契承者 封印楽園都市  作者: やたか なつき
封印楽園都市 一章「学園」

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2-1-3

 誰が? 何故?

 カノンは、そんな疑問を覚えなかった。

心当たりがないからではない。

心当たりなど、幾らでもあり、特定することなどできはしない。

それ故に、考えても意味がない。

 カノンは、傾けるべきことを理解している。

それは、この場を如何に、やり過ごすかであった。

 心拍を整え、周囲を窺う。

そこには、ただ静かな夜があった。

攻撃してきた者の姿は、視えない。

「まずい、わね」

 カノンの才能は、戦闘に特化したものではない。

身体が人並み外れているかといえば、全くそうではない。

標的として捕捉された時点で終わる。

そう自覚していたからこそ、カノンは細心の注意を払い生きてきた。

 いざとなれば、諦めればいい。

カノンは、そう考えてきた。

だが、それは、一人であればの話だ。

今は、一人ではない。

 シリンがいる。

何とかして、守らなければならない。

どうにかして、逃さなければならない。

無関係の者が犠牲になることは、カノンの正義に反する。

 カノンは、シリンを一瞥する。

まだ何も気づいていないのか、身構えるカノンの様子に、

シリンは不思議そうに首を傾げていた。

「守るから」

 カノンは、言い聞かせるように言葉にし、砕けた化粧煉瓦に視線をやる。

その痕跡を凝視した。

世界から色が消えていく。

それは力の発動を示す兆候だった。

「遠くなければ」

 軌道を辿る。

全てが視えるわけではない。

離れれば、離れるほど、霞がかかっていく。

だが、幸いなことに、視えた。

 遠くはない。

遠いが、境界の中にいる。

カノンの瞳は、小さな敵の姿を捉えていた。

だが、そこまでだった。

「あっ」

 不可視の刃。

既に、追撃は放たれていた。

空を裂く音が近づいてくる。

カノンに為す術はない。

身体が動かない。

 軌道が交錯した。

 瞬間、風が吹き、高い音が響いた。

不可視の壁、或いは、強く振るわれた何か。

それが投擲された刃を打ち払っていた。

 カノンは、何が起きたのか、理解できなかった。

ただ、そこにある、シリンの姿に、言葉を忘れた。

脚を開き、片手を地面につき、瞳は闇を鋭く射抜いている。

豹の如き、その姿は、美しく、そして、強さを感じさせた。

 風が吹く。

刃が踊る。

三度、放たれた攻撃が、二人を襲う。

だが一蹴される。

 シリンが腕を振るうと応じるように、不可視の壁が凶刃を払う。

攻撃の余波が、その威力を誇示するように、歩道に敷き詰められた化粧煉瓦を刻み砕いていく。

「来て」

 シリンが手を伸ばし、カノンが手を繋ぐ。

シリンに手を引かれ、カノンは跳んだ。

刃が追い縋ろうとするが、躱され、払われる。

ただ、透んだ音が、夜に響いていく。

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