閑話 赤羽先輩と中学生活
どうもすいません、また俺です。
皆さん元気ですか?
俺は今死にたい気分です。
先日後輩に格好つけて、ドヤ顔で「お前は空っぽじゃない」なんて言って調子に乗ってました。
そうだよねー
空っぽなのは俺だもんねー
赤面ものだ!
何てブーメラン!しかも自分で投げて、相手に当たらず自分に当たる。
俺は自分のベットの上で、もだえながら転げまわった。
俺は恥ずかしながら、二歳年下の後輩、友田遊人に嫉妬している
あいつは何でもできた。自信があった腕力で勝てず。勉強は教えてもらい。交友関係も広い。
俺は、俺が思っていた以上に何にも出来なかった・・・
そしてその何にもできない空っぽの男、それが俺、赤羽恭弥(空気)である。
ここから先を読むのをオススメはしない。
この先は俺の恥の物語だ。
飛ばすことを進める。
どうなるか気になるならオチだけ言うぞ。
俺が卒業する。
さあ満足したか?
飛ばしてくれ。
・・・はぁ~・・・そんなに見たいのか
じゃあ続きを始めよう。
◇◇◇
俺は昨日の事が尾を引き、重い足取りで学校へ行き、自分の教室へ向かった。
自分の席が分からない俺は、適当に空いてる席へと座った。
「・・・赤羽君」
あ?クラスのおさげの女子が俺に話しかけてきた「ひっ」と怯えてた、こんな空っぽの俺にビビるなよ・・・
「赤羽君の席はあっち・・・」
とビビりながらおさげの女子(以下おさげ)は空いている席を指さした、俺は「すまない」と一言詫びて示された席へと場所を移した。
周りが少し騒めいたが、俺にはそれに係る気力がない。俺はいつものように料理の本を開いて読んだ。
軽い空気(空っぽ)のような俺は、クラスでも空気である。空気の俺に誰も話しかけてこない。でもそれの方が今は落ち着けた、今まで教室に居るのが嫌だったが、今は自分のクラスの方が安心する。
それでも時間は過ぎていく、放課後、俺はいつも友田がいる教室へ行くのが気が重かった。
どんな顔して会えば分からない・・・
「・・・先輩どうしました?」
出会って一発目で言われた
「にゃ!?にゃにがだ!?バカ野郎!!?」
噛んだ、恥ずかしい、死にたい
友田は俺の顔を見ながら首を捻っていた。
俺は自分の中にある感情を言葉にしようと、何も考えず話していた。
「お、お前は・・・お前が出来ないことを誰か別の奴が上手くやれたらどうする?」
バカか俺は!?こいつがへこんでたのは、じーさんと自分を比べてたからじゃねえか!?
自分の頭の悪さが嫌になりつつ、俺は慌てて訂正しようとした。
「出来るようになるまで勉強します。」
友田は気にしてなさそうに言った。
「勉強しても出来ないかもしれません。でもやってみないと、それが出来るかどうかも分かりません。それに、もしできたら嬉しいじゃないですか。」
「・・・俺は、・・・俺はバカだからよ、何をやっても上手くできねえし。今まで勉強なんてしてこなかったから、やり方すらわからねえよ・・・」
情けない・・・俺はとことん情けない・・・今まで逃げていたツケが。家から、学校から、俺自身から、逃げていたツケが一気に返済を迫られた気分だ。
「・・・今してるじゃないですか?勉強。」
ん?きょとんとした顔の友田を見ながら俺もきょとんとした顔している。
・・・ああ、そうだった、してるな勉強
「分からなければ聞いて、自分でも考えて、やってみる」
今やってることでいいのか?そんな事でいいのか?
何だか体が楽になってきた。重い体が。さっきまでとは違う、本当の軽い空気みたいに。
「それに先輩は、頭悪くはないですよ。」
ん?
「数学だけですが、この一か月で中二の範囲終わりました。・・・ので、この一週間で、先輩のクラスの授業に、追いつきたいと思います。」ニコッ
は?友田は笑いながら言い放った。
その笑顔の後ろの黒いオーラは今でも忘れられない。
◇◇◇
友田と出会い季節が変りはじめ。
学校では試験がはじまった時に事件は起こった。
思えば事件の始まりなんてものは、何気ない日常。俺がクラスメイトと話すようになった日からなのだろう
きっかけは、俺がいつものように料理本を読んでいた時。「さすがにいい加減美味い飯が食いたい」と思い、近くにいた女子たちが料理の話をしてるのを幸いに、聞いてみることにした。
「なあ、簡単に作れる料理って何だ?」
俺にビビる女達、この間話したおさげもいた。やはり俺の事が怖いかと、諦めようかと思った時、おさげは「・・・生姜焼き」と言った。聞いてみると分量間違えても、それなりのものが出来るということ。そうか、俺は「ありがとう」と感謝の言葉をかけたら目をそらされた。
自分の席に着いたら後ろで「・・・顔」「・え・お」「か・・・い」と、小さい声が聞こえた。やはり怖いのか、怖がらせるのは悪いと思い、これからは話しかけないようにしようと思った。翌日同じように本を読んでたら、俺におさげは何かと話しかけてくれるようになった。
よく分からん。
そんな事がきっかけ。
俺は少しづつクラスにとけこんだ。
でも事件は起きる、試験と聞いてなにを思い浮かべる?
ヒントは「テスト」「成績」「不良」だ
答えは単純だろ?でもそんな単純な答えを導いた教師がいた、それが事件だ。
◇◇◇
「貴様!カンニングしただろう!!」
これが教師のセリフである。
年のころは三十過ぎ、細身で、眼鏡をかけ、髪を七三に分けた男が、俺のクラスの担任の数学教師である。
そして、肩で息をしながら廊下で俺に詰め寄りながらの、第一声が不正の訴え。
前から何かと、いちゃもん付ける教師であったが、廊下で言うことではない。
ぎゃあぎゃあ、うるさい教師をいつものように聞き流してると。俺の不正の話から、自分の目を掛けていた他の生徒の方が優秀だとか。クラスの女子に色目を使ってる。とか違う話をしだした。要するに、俺の方がいい成績を取ったのが気に入らないのだろう。
最後に「貴様と一緒にいる、一年が学年主任と結託して、不正をしたんじゃないか!!」と言った瞬間俺はキレた。俺を疑うのはいいが、友田が疑われるのが許せなかった。
殴りかかろうとした時、周りにいた野次馬の中に友田がいた。
友田はただ黙って俺を見ていた。まっすぐに。
俺は拳を下げると、きつく唇を噛んだ。友田を、友田の信頼を、裏切りたくなかった。
殴られると思っていた教師は、俺を見ながらビビりつつ文句を言っていたが、この後来た学年主任のタヌキに連れていかれた。
◇◇◇
俺はあの後、学校を早退(自主的に)し足の面も向くままに歩いてた。たどり着いたのが、友田とケンカした河原だった。俺はそこに腰を据え、ボーと考え事をしていた。
考えていたのは、放課後の勉強会の事。なぜ殴らなかった事。そして友田の事。
いつの間にか、友田が来て俺の横に座りながら「さぼりましたね先輩」と苦笑していた。
「悪い」と謝りながら俺は、友田に今まで考えた答えを言った。さっき考えていた事が全て繋がる答えを言った。
「なあ友田、俺と友達になってくれ。」
俺はこいつと対等の友達になりたかったんだ。
続きます