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漆壱話 結局こうなりました

「あらためまして、僕はキッド。フリーの運び屋ッス!」

「ロ、ロビィ・クルールです……よろしくお願いします…………」

「デヴィッド。運び屋だ」


 快活、緊張、淡泊

 三者三様の自己紹介を受け、俺は心中真っ先にこう浮かんだ。


 濃いメンバーだな……


「……セヴェリーニだ」


 プラス、謎の子ども……いや、運び屋たちにとって依頼人から頼まれた相手だそうだが……であるセヴェリーニのデヴィッド以上に淡泊な自己紹介を得て、改めて新しく風精族シルフィに迷い込んだ人たちを見た。

 おそらく……俺達が帰ろうとして結局帰らなかった風精族シルフィの“月の口”に入って来たのだろう。


「まさか知らない内にこんな大所帯になるとは思わなかったッスね。しかも、ほぼ年の近い人間ばかりで驚きッスね!」

「う、うん……そ、そうだね…………」


 キッドが若干嬉しそうに言ってるが、ロビィの視線が一瞬だけキノサキに向けられている。

 言わないがもう一人混ざっているけどな。


「ん? どうかしたのかしら、白零君」

「いいや、なんでもない」


 穏やかそうに見えて、眼力で訴えかけるのはやめてくれ。

 それ以上に殺気を感じさせないんだらたちが悪い。


「(セ、セーヴェ君……ガ、ガンスロット=キノサキが怖いのなら、お、お願いするけど……)」

「(お前と一緒にするんじゃねえよ)」

「(ガーン!)」


 そっちもそっちでキノサキに対して訝しげな目を向けている。

 ……多分なんかあったんだな。よくよく考えたら運び屋と殺し屋が同時にこの世界に迷い込むなんて嫌な想像しかできない。


「おいおい、まだそんなこと言うの? まだこちらのヘルメスの事を、怖がっているの?」

「ヒャッハー! だったらすぐにでも逃げようか?」

「へぅ!? う、ううんそんなことはないって言うか……」


 さっきの小声が聞こえたのか、キノサキ達が思いっきり圧をかけてくる。そういうことすると余計安心できなくなるからやめなさい。

 とはいっても、こうして席を同じくしているのは向こうたちが自分たちだけで物事を解決したのか……


「キノサキさん、ヘルメスさん。ロビィさんを脅すよう話ことは言わないでください。信頼できなくなりますよ」


 千代がなにかしら介入をしたのかもしれない。その過程でこうして大人しくしているのも関係がありそうだ。

 とはいえ、自分がいない間に千代がそこまでしているとは少し考えにくいが……


「いやだねえクロチー。こちらが殺し屋である事実から眼をそらさない運び屋さんを、むしろ正しいことじゃないかな?」

「ヒャッハー! あまり自分の物差しで測らないことだぜ!」


 ……まだ完全に大人しくなったってわけではないようだが。


「母さん」

「もう、ラネットったらそんなに怖い顔をしなくても、抱き着いたりなんか……」

「いや、さっきから視線がセーヴェに釘付けだし、説得力がない。それに私は抱き着くなんて一言も言ってないわよ」


 アデルさん、いい加減に抑えてくださいよ。かわいければ何でもいいのですか。

 どんだけ守備範囲が広いのですか。


 すると、いい加減に本題を出してほしいのか、大きく咳払いをして粛々と促していく。


「それで、わざわざ大人数でここにきて用事は?」

「デヴィッドさん。杓子定規みたいに言わないッスよ」

「でで、でも……」


 すると、デヴィッドの一声でメンバーが静まった。怒っているわけではなさそうだが、不穏な空気を纏っていて、若干警戒心が入っている。

 まあ、初対面の上にメンバーがメンバーだからなあ……警戒するのも無理はないが……


「わかりました。私はロビィさん達にお願いと確認したいことがあってここに来ました」

「ほぅ……」


 それでも、大して動じず千代が楚々として居住まいを正すと、改めて話を切り出していく。

 まあ俺よりも千代の方が用事ありだそうだし、俺は黙って千代の言葉を聞いていた。


「実は私達、そう遅くならないうちにこの里を出ていくつもりです」

「え、そう……なの?」

「!?」


 ロビィは、少しだけ意外そうに驚きつつ、寂しそうに視線が少し下がった。

 セヴェリーニという子どもまで驚いている。なにかあるのか?


「私達、元の世界に帰りたい気持ちはありますが、そのまえに他の種族の里に用があります。ですから、このままロビィさん達とはお別れになるのですが……」


 もしも、と千代は仮定を付け加えたうえで自らの要求を述べる。

 それは可能ならばどうかという、用心棒としての提案であると同時に、千代自身の心情もほんの少し表れているように聞こえた。


「ロビィさん達も何かしらの目的でこの里を出てしまうのなら…………よろしければ私たちと一緒に行きませんか?」」

「三咲さん、と……」


 魅力的に聞こえたか、ロビィとセヴェリーニは少しだけ口元が上がるのが見えた。

 なるほどね。

 正直言うと人数が多すぎても考えものだけど、相手は皆違う世界から来た人間だ。

 この世界で何をしようとその人の自由ではあるが、目的が一致する以上協力をしない理由はない。

 故に、千代からはあくまで提案。それを決めるのは向こう側の方だ。


「キッド君……」

「魅力的な案ではあるッスが、デヴィッドさんの意見次第ッス。僕たちの中で一番決定権があるのはデヴィッドさんですし、そうでないにしてもまだ怪我の事もあるッスから」

「そうか……」


 デヴィッドさんがほんの数秒だけ考えるそぶりを見せたが、すぐに迷う様子もなく口を開いた。


「――――――」


 デヴィッドさんはゆっくりと答えを出した。

 俺達はそれを静かに聞くと、それ以上はあまり追及しなかった。



          2



 次の日の朝は、予定よりも早く目を覚ました。

 たいしてない荷造りの準備も終えて、俺達はラネットの家の居間に集合した。

 なお、相変わらずキノサキと夜はラネットの家ではないどこかで夜を明かした。まったく、アウトドアな連中だ。


「あら……もう行ってしまうのですね」


 アデルさんが、語気を弱めて名残惜しそうしている。

 まだまだ話したりないことがありそうだし、確かにもう少しだけこの里に留まりたいという気もする。

 けど、あんまりじっとしてはいられない。早いところ目的も達成したいところだ。


「すいません。けど、もう会えないと言う訳じゃありませんから、そんなに寂しそうにしないでください」

「あまり長居しすぎるわけにもいきませんから」

「それはそうかもしれないけどねえ……」


 さすがにそれだけじゃ簡単には割り切れないだろう。

 けれど、これ以上困った顔はすることなく、すぐに笑みを浮かべるとこちらに……


「折角の娘の友人だし、もうちょっとなにかお話でもしないかしら? 昔、いろいろあったラネットの可愛いいお話とかあるんだけれど……」


 ……いきなり近づいてきてなにか小声で話しかけてくるんだが、全部聴き取り終える前にラネットが俺の腕を掴んで強制的に引き剥がした。


「ハクレイ。母さんの話は無視して、さっさと行くよ」

「あ、待って! ああん、娘が冷たい……」


 ……ばっさりしているな。

 まあ一見冷たい様子だけど、アデルさんも本気で悲しんでいるわけじゃない。ちょっとした冗談のようなものだろう。

 荷物の確認を終えて玄関から外へ出ると、ラネットは身をひるがえして玄関先の母親に、


「それじゃあ母さん。行ってくるから」

「ええ、行ってらっしゃい。体に気を付けてね」


 軽く一言だけあいさつをすると、向こうも軽く手を振って送り出してくれた。

 そのやり取りだけで、親子としての信頼感が見えた。

 ……青江所長は、今の俺たちの事をどう思っているのだろうか。

 ふと、そう考えていつつも、俺達は風精族シルフィの里を出た。

 俺にとってはまだそんなになじみ深いところではないのだが、それ故に離れるには少しだけ惜しく感じてしまった。


「大丈夫よ。またここに来れることはあるんだから」

「そうだな……」


 察したのか励ましの言葉を掛けてくれた。

 と言うか、当たり前のように一緒についていくような空気を出しているけど……


「ラネット、お前はいいのか? 里でいろいろとやることはあると思うんだが……」


 一応、調査隊? ってところで働いていると聞いたんだが。


「大丈夫よ。隊長……私の上司に話して、少しだけ長い休暇をもらったわ」

「なんで?」


 いろいろと立場のある彼女が、俺達のような“迷い子”と付いていくことに、割に合わないと言うかそこまですることなのかと、思えてしまうのだが……


「なんでってそれは、あんた達のことを心配に思うからよ。少し前だって、あんなふうに怪我なんかして……」


 ラネットは俺から少しだけ目線を外しつつ、声だけははっきりとし、本当に俺を心配していることが伝わっていく。


「だったら少しはあんた達の力になりたいって、そう思っただけよ。里の事も大事だけど、あんた達の事だって、いろいろと恩があるんだから」

「…………そうか」


 そう言い切ったラネットの表情に、どこにも違いはない。本当に、俺たちの力になりたいのか……

 ……なんか、不思議と嬉しく思えてしまう。


「零ちゃん、ラネットさん。早く行かないの?」

「白髪ねぎ! 早く来ないと荷物当番だぜ!」

「ほら、クロチヨが呼んでるからさっさと行くわよ」

「……わかった」


 若干キノサキをスルーするラネットの背中を見て、俺は同時に心配していることがある。

 さっきラネットが言っていたこと、もちろん嘘じゃないことはわかる。しかし、自覚しているかどうかはわからないけど、それだけが理由じゃないって俺にはそう思える。

 だって……


「白零君。さっさと来なさいよ。まったくあたしに無理矢理付き合わせているくせに遅れないでよね」

「あんただって、散々人に探させたり待たせたり始端だから文句言わない」

「ヒャッハー! 

「まったくだぜ。と言うかラッちゃん、こちらのためにわざわざ休暇取るなんて、案外物好きなんだから」

「言っておくけどあんたがこうして外に出ているのは特別に許されていることだからね。それに、ハクレイやクロチヨを思ってのことで、あんたたちのことを思っては断じてないから勘違いしないで」

「あら? ラネットちゃん、あたしは?」

「……まだあんたのことはよくわからないから保留」

「うふふ、素直じゃないんだから」

「……クロチー。心なしかラッちゃんってこちらに冷たい気がするんだけど、気のせいかな?」

「ヒャッハ、珍しくキノサキが気にしてるぜ!」

「そうですね。ラネットさん、いくらキノサキさんでももう少し歩み寄ったらどうですか? 少し声が大きくて近寄りがたそうな人でも本当はまだ…………あれ、キノサキさん?」

「……………………」

「……そうねクロチヨ。少しだけ考えておくわ」

「ヒャッハー! なんか余計な言葉のせいでキノサキが無言の無表情となっている!」

「白零君。せっかくだから腕組んで歩こうよ…………長旅でくたびれそうだし」

「おい、今くたびれそうって言った? 俺を杖代わりにしようとしていない?」

「ちょっと、歩きづらそうだからそんなにくっつかない」

「そうだ夜。歩きづらいから……」

「(スッ)だれのこと? 白零君?」

「昼江。歩きづらいから離れろ」

「そうよ。離れなさいよ」

「えー、どうしてあなたがそんなに怒るのかな?」

「…………っ!」

「…………ふふふっ」


 ……あんまり心配することでもないな。

 いや、こんな面子だとどうにも正直不安しかない気もする。けど、


「零ちゃん、もしかして楽しみにしている?」

「ん…………そうだな」


 俺はほんのちょっとだけ、この世界に対して好奇心のようなものが湧き上がってくる感じがした。



          3



「けど、いいんスか? あの人たちに付いて行っても問題ないとは思うんスが」

「キッド。いくら奴が大人しくなったとしても、まだ完全に信用できるわけではない。用心棒だが何だか知らないが、車もない状態で同行するのはリスクばかりでしかない」

「それはそうッスが……」


 昨夜、運び屋たちは白零の申し出を断った。

 俺達は君たちについて行かない。俺達は俺達でやるべきことがあるのだと。

 そう結論を出したデヴィッドの顔は仕事人としての顔だ。同じ人間である以上協力したい気持ちもないわけではない。しかし、かつて自分たちを追いまわした殺し屋が同行していることを差し引いても、彼にはこの里を出られない理由があるのだ。

 仕事上、大人たちは仕方のないことだと割り切っている。しかし、納得がいかない者も一人だけいる。


「…………」


 デヴィッドと話し合う傍ら、彼が横目で向ける視線の先には、一人で黙々と本を読んでいる少年の姿がある。

 しかし、気分は優れない様子だ。体調が悪いというわけではない。機嫌が悪いと言う意味で。

 ロビィが、怖い物を見ているように怯えながら、デヴィッドにかろうじて抗議の声を挙げるが、


「で、でも……セーヴェ君、あきらかに不機嫌だよ…………」

「ロビィ。俺達運び屋の目的は、目的の人物を目的の場所に運ぶことだ。ただでさえ時間をかけすぎている以上、一刻でも早く目的地に運ばなくてはならない」

「……そ、そうだね」


 彼の言葉に、納得するしかなかった。

 セーヴェを目的地にまで連れて行くように頼んだのは、彼の両親だ。

 その理由は殺し屋から逃れるため、安全地帯まで連れて行ってもらうためだ。


「しかし、幻界ここはある意味安全な場所だ。ガンスロット=キノサキを雇った人間がセーヴェの生存を確認できない以上、ここに留まることも悪いことではない」


 だが、逆にそう言う意味では、幻界はある意味目的に適した場所である。

 ただ、やはりこの世界自体も安全とは言い難い。そう簡単に連れまわしていい問題ではないのだ。

 乗り物を乗り回して暴れる凶暴な殺し屋の事を除いても、だ。


「とはいえ戻るにしろ留まるにしろ、アシである車が動かない以上どちらにしても動けない」

「そッスね。風精族シルフィの人たちからは、修理してくれる以上少しだけ言う事を聞かないといけない状態ッスからねえ」

「ね、燃料も残り少ないし……そこは三咲さん達に、お使いを頼んだから」


 キノサキに散々追われ、酷使してしまった結果、自慢の特性キャンピングカーから燃料はほとんど残っていない。

 その為、一種の保険として白零達には土精族ノームに行くついでに頼んでいる。もっとも、当てはないし確実と言う訳でもない為、やはり最終手段として車を捨てるか、

 それとも可能か不可能か、燃料を必要としないようこの世界の技術力で改造するよう頼み込むか……


「そ、それで……キッド君は風精族シルフィの人からなにか、お、お使いを頼まれたの?」

「いんや、それはまだ考え中ッス。修理に関しては前向きな検討中の様ッス」


 数々の技術を詰め込んだ人間界のキャンピングカーは、風精族シルフィにとって捨てておくには惜しい物の塊だ。

 交換条件付きとはいえ、必ず修理をしてくれるとキッドは見込む。あとは、自分たちに何を要求してくるかはこれからの検討次第だ。それまではとにかくじっと待つ以上の事はない。

 白零達の誘いは多少の魅力はあるものの、自分たちの役目を忘れてしまったら元も子もない。

 とはいえ、それでも四方八方から圧し掛かってくる空気を何とか和らげようと、キッドは内心必死に言葉を探す。


「まあとにかく、車が直れば彼らに追いつけるッスから、それまでの辛抱ッスよ」

「……別に、そんなんじゃない」


 セーヴェのふてくされた返事を聞いて、ますます不安を増していくロビィ。

 仕事としてあまりこれ以上甘いことは言えないがそれでもどうにかしたいと、せめてロビィは早く車が直るか、白零達が無事に戻ってくるように祈り続けていった。



          4



「大丈ォォォ夫!! またスポットライトが当たる日が来るかもしれないんだから、希望を持てよ!!」

「……いきなり叫ぶんじゃないわよ」

「なにをいってるのかしら」

「零ちゃん。キノサキさんが仰っているのって……」

「千代、気にしたら負けだ。無視しろ」

「ヒャッハー! みんな冷たい反応だぜ!」


 と、いう訳で出発してから数日は経った。

 途中、特になにも目立ったようなことはなく、移動と村への寄り道を繰り返し、俺達は風精族シルフィ火蛇族サラマンドラと次々と領地を越えていった。

 そして……


「ここが……土精族ノームの領地……」

「話に聞くけど、私もここに来るのは初めてだわ」

「わぁ……ここが…………」


 目の前に広がった光景は、とにかく見渡す限りの山と谷が連なった壮大な感じの大地が続いている。

 風精族シルフィのような木々も川もない。火蛇族サラマンドラのように溶岩などの火の気もない。

 それに火蛇族サラマンドラのような荒れた大地を囲むような連山とは違って、こっちは平らな地面など何処にもない。極端に言えば坂ばっかりだ。

 それに、木も全くないし、火の気もしない。まるで鉱山というかそんなイメージが浮かんでくる。


「なんだか……静かな所ですね」

「そうねえ。火蛇族サラマンドラのような燻った熱気もないし、風精族シルフィのどこか吹く風の動きもない。ほんとうに静かな所だわ」


 新しい世界の姿に千代も夜も、感慨深くつぶやいている。

 それにしても随分静かだな……

 いや、物音がしないとかそう言う意味だけじゃない。どこか生き物とかの気配と言うか、なんかそんな感覚がこの広大な山と谷からは感じられないからだ。

 視覚的にも、聴覚的にも、なんかしらの感覚的にも、だ。


土精族ノームは地上よりも地中に住んでいることが多いわ。もっとも、地上に全く顔を出さないってことはないんだけど、里に行くまでは必ずと言っていいほど会うことはないと思うわ」

「だからと言って、こんな道らしい道もないままどうやって進めばいいんだよ」


 しかし、火蛇族サラマンドラは火山ばっかりだから近づかない方がよかったけど、今の場所からどこに進めば里にたどり着けるのか全く分からない。

 こんなにも高低差の激しい場所故に、視界のほとんどが埋まるから何にも見えない。


「問題ないわよ。ここに来る前に調査隊の資料からここの地理は頭に叩き込んだわ。大体どの方角を進めばわかるわ」

「ヘェェェルメェェェス! これってかなり走りにくいところじゃないか!」

「ヒャッハー! 斜面だろうと走れないわけじゃないが、結構厳しいことになるじゃないか!」


 ラネットが自信満々に言う途中でキノサキとヘルメスが不満そうに叫んでいるが無視。

 するとラネットは少しだけ目を伏せてなにか集中したようになると、目を開けてどこかしらの方角を指でさした。なにをやっているんだ?

 少しすると、ラネットが確信を持ったように……


「大丈夫よ。風の流れからして、方角はあっちの方が正しいわ」

「え、お前そんなことができるのか?」


 そんな描写今初めて見たぞ。

 しかも風なんて、そんな些細にしか感じられないんだが……


「風はいろいろな事象を読み取れるのよ。調査隊の隊長は風一つで天気や対象との距離を測っていたし、その日の運勢だってわかるって言ってたわね」

「最後はただの占いじゃん」


 とにかく、改めて風精族シルフィ……いや、ラネットがすごいなと感心した。

 時々忘れそうだけどこいつは調査隊だったかな。


「ハクレイ。今なにか失礼なことを考えなかった?」

「気のせいだ」

「白零君!」


 と、見渡すのに飽きたのか夜が大声で呼びかけてきた。


「あんまり長く待たせないでさっさといきましょうよ」

「ああ、悪い。早くしないと日が暮れてしまうな」


 夜の呼びかけに応じて、俺達はラネットが示した方向へと足を運べた。

 ラネットの勧めでこの土地に来たが、果たして本当に刀を作ってくれるのだろうか。

 というかそもそも俺達あんまり手持ちはないんだが、そこはどうしようか……


「……………」


 ……行く先、せめて友好的でありますように。

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