表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
68/91

陸参話 夜道が安全じゃないのは暗いからだろうか

というわけですこし昔話

 中学時代、俺は夜の時間にはまったく寝られなかった。

 夢の中で、ボロボロの姿になったあいつが見えたからだ。

 見えるのに、手が届くのに、あいつが傷ついているしかなくて、動こうにも動けない。

 そしてボロボロになって、それで見ているだけの俺に憎悪の目を向けてなにか言う。


『――――――――――!』


 いったい何を言っているのか聞こえないし。もしかしたら聞くに耐えない言葉かしれない。

 それなのに、嫌でもあいつがなにを言いたいのかわかってしまうのだ。

 そして目を覚ます。


 だから夜は寝られない。一種の強迫観念となってジクジクと首の後ろを刺していくように、痛みのようなものが広がっていく。

 そのせいで俺はいつも、夜中に外へ出るのだ。


 目的もなくただ早く明けてほしいと、そう願いつつふらふらと足を動かしていた。

 それをほぼ毎晩まともに眠れた日など少なく、寝不足ばかりが続いていた。


 用心棒を志してからもずっとこんな悪夢が続くのかと思った。


 しかしある日、俺は数人の男が一人の少女を取り囲んでいる様子が見えた。

 和服姿の少女がなんの危機感も感じられない表情で男たちの話を聞いている。

 それに対して男たちは所々嫌な笑みを浮かべてはそれを隠すように、少女に気安く話しかけている。


 この時の少女は自分の身に危機が迫っていることに気づいていない。もしかしたらここで自分が入るのは早合点かもしれないし、お節介かもしれない。

 しかし、見ない振りをする気は初めからなかった。

 ただ、こういう事をする度にあいつの言葉が頭の中をちらついてきたから、それで必要以上に関わろうとはせず、無事を確認するだけでそこから去ろうとした。

 そう頭で考えつつ、俺は少女の所へと歩いていった。

 それが……


『だったら俺と一緒に来ないか? 俺んとこはビルに住んでいるんだが、部屋が空いていてな。それに仕事場もあるからよかったら働けるように所ちょ……上の人にお願いする』

『いいですよ。あなたについていきます』


 奇しくもそれが後の相棒、千代との出会いだった。



          2



 それにしても、予想外だ。

 まさか夜回りしていたら変わった少女がついてくることになるとは全く思わなかった。

 いや、放ってもいいんだけどなんとなく放ってちゃいけないような気がした。


「ところでお前なんでそんなに離れて歩いているんだ」


 俺達は目的地のために道を歩いているのだが、三咲さんはなぜか俺から七歩ぐらい離れて俺に付いて来ている。

 そんなに離れていると話しづらいんだが……


「すいません。実はお母様がおっしゃっていたことなのですが……」

「お母様?」


 それって確かもうすでに亡くなっていた三咲さんの……

 そうか。世の中はいろいろと危険なことがあるから、娘が心配で少し心がけるように……


「『千代。己の身を守るためならば己のそばに他人を置いてはならない。最低でも七歩程は離れて歩け』とおっしゃってました」

「…………」


 ……それ、満員電車とか人ごみとかまず無理だろ。

 それはもう潔癖と言われてもおかしくない距離だ。


「なぜ七歩?」

「離れた人が突如振り向いてこちらに迫って来ても対処できる距離だからです」

「…………」


 意外と考えられているなその言いつけ。

 全然共感できないことだけど。


「あのさ、そんなこと言っても話とかするのにいろいろと困ることがあるだろ」


 そう言いながら俺は回れ右をして三咲さんの所へと歩いて近づく。


「…………だめ」

「おい」


 しかし、俺が一歩ずつ歩くごとに三咲さんも一歩ずつ身を引いていく。

 明確に逃げるという意思は感じられないものの、まるで反射のように当たり前に避けていく様子が、少しだけがっかりする感じを引き起こしていった。

 ……こんなに人を避けるんじゃこの先いろいろと面倒だろ。

 そう思い、今度は少し素早く三咲さんに近づいて少し肩をたたく程度に手を伸ばし……


「だめ」

「!」


 ヒュ!


「なに!?」


 俺が差し出した右手首を三咲さんが掴むと、それを引き離すどころか逆に引っ張って自分の元に引き寄せた。

 そして急に腕を引かれてつっかえたもう片方の腕を俺の背中に回して抱き寄せると……


 ガチャ!


「!」


 今、背中に何か突きつけられ……!


「うわっ!?」

「あっ!」


 俺は片足を後ろへと、背中に回した三咲さんの腕を蹴り上げた。

 それと同時にもう片足の膝を曲げて抱擁を抜けると、後ろへと跳んで距離を取った。

 距離をとっても相手は追撃してこない事に安堵しつつ、心を落ち着けようと必死に呼吸する。


「あ、ごめんなさい……」

「…………!」


 さっき、背中に何か細くて硬いものを突きつけられていたのは、たぶん俺の背中に回した手になにか持っていて、しかもそれを背中の左側に突きつけていた。

 しかし、さっきまでなにも持っていなかったはずなのもそうだが、背中に突きつけられたのが、刃物なんて感触じゃない。

 疑惑を感じつつも顔を上げて三咲さんを見ると……


「お前……!?」


 三咲さんが、とんでもない物を持っている……!

 そんなの本とかフィクションの話でしか見たことがない。少なくとも日常生活を送る上ではそんなもの見ることはまったくないはずだ。

 それなのに……


「お前それ……セーラー服以上に似合わない代物だぞ……」

「?」


 ……なんで三咲さんの手には、拳銃が握られているんだ。

 おもちゃ……だよな?


「それ本物?」

「え、偽物があるの?」


 そう言いつつ三咲さんは拳銃からマガジンを外し、中の弾丸を見せる。

 おい、BB弾じゃなくて完全に金属製じゃねえか!

 おかしい! 夜道に偶然会った和服姿の少女が拳銃を所持していたなんてどこのフィクションなんだよ!


「お前、それどこで手に入れたの?」

「これですか? これはお母様から譲り受けたものですよ」

「お母様?」


 なぜここでお母様が出てくるんだ?

 お母様って何者?


「『千代、卑劣な男に負けてはだめ。だから非力なあなたでも勝てる方法を教えてあげるわ』と」

「…………」


 ……それって、まさか。

 さっき俺がお節介にも行ってしまった時を思い出す。


「なあ、もし俺が助けに入らないままさっきの男たちがお前に無理に迫ってきたらどうするんだ?」

「え? そうですね……」


 三咲さんは深く考える様子もなくあっさりと答える。


「もしも私にひどいことをするのでしたら、やっぱりこれで……」

「いや、もういい。わかった」


 いったいどこから出したのか、もう片方の手にも拳銃が握られており、余計に物騒に感じられる。


 俺はわかった。

 この女の子はもしかしなくてもかなりやばい人なのだと。

 そして見つけたのが俺だというのも、不幸中の幸いというか適材適所というか、どうにも言えない妙な気分だ。


 もしかしたら僕一人では手に負えないかも知れない。

 とんでもない爆弾を引き当てたような複雑な気分になりつつ、目的地へと案内した。



          2



「よし、着いたぞ」

「ここは……」


 と、言う訳で目的地。

『金斬身刀流剣術道場』とまだ新しく書かれたばかりの看板が確実に目につくほど目立つこの大掛かりな道場。

 ほんの少し前まで頼りなさ気に見えた道場だが、今ではなかなか頼りがいのある姿に見える。


「俺の家だ」

「大きい道場ですね」

「……ほんの少し前まで廃れかけてたけど、親父が頑張ったおかげで少し立て直してきたところだ」


 しかし予定が狂ってしまった。

 あの時俺はこいつに事務所のビルに住んでいると言ったが、正確には少し違うんだ。


「あれ? たしか先ほど言ってましたのは……」

「ごめん。ビル閉じてた」


 そう言えば俺まだ中学生だから半分実家通いなんだ。

 まだ事務所開いてなかったよ。

 ……あれ? じゃあわざわざ俺の家に連れて行く必要なくね?


「というか、家に帰らないのか? ここまで言っておいてアレだけど」

「うーん……金斬さんの言っている事務所って、今は開いてないのですね」

「そうだな。あれだけ大口言っておいて恥ずかしい」


 あのビルの上住居者募集中だからもしかしたらと思ったけどいかんせんタイミングが悪すぎた。

 せっかくの住居仲間ができるところなのにな。


「……あの家は、少し居心地が悪く感じます」

「……そうか。わかった」


 そういって俺は道場横の母屋の玄関前に移動し、静かに引き戸を開ける。

 いつもより早く戻ってくることになったな。

 そしてその後ろを躊躇いなくついてくる三咲さん。


「……というかお前少しは警戒しろよ」

「?」


 こいつ拳銃所持しているくせにこういうところはそんなに警戒しないんだな。

 拳銃所持しない癖にって日本語初めて使ったし。


 さすがに親父は就寝中か。まあ、もう深夜に回りだした時間だしな。

 慎重に音を立てないよう靴を脱いで玄関に上がる。


「お邪魔します」

「律儀にあいさつしなくてもいいよ」


 三咲さんも雪駄を脱いでゆっくりと玄関を上がった。

 親父が就寝中だから静かなために、なんか変に緊張する。


 正直もう子どもはとっくに寝る時間だし、事務所が閉まっている以上早く明日に備えて眠りたいとこだが、そのまえに


「飲み物はいるか?」

「え? いえ、結構です。もうこのまま就寝に入りたいところですので」

「わかった」


 確かに俺ももうそろそろ眠りたい頃だ。

 明日は土曜。事務所に軽く顔を出す日だ。まだ正式な活動は認められない故に軽い事務ぐらいしかやらない。

 その時にこの子を連れて行こう。何か問題がなければそこの住居を使えるんだ。

 いったいどういう訳ありなのかも、青江さんに頼んで調べてみよう。


「ここを使ってくれ」


 さて、二階に上がった俺達はそこである一室の扉を開ける。

 扉を開けると、八畳ほどの広さの部屋が目に入る。

 障子とタンスと机。それ以外の者はあまりなく、必要な時以外は全て引き出しとタンスにしまっている簡素な所だ。

 ちなみにこの家は新居じゃなくて親父の両親から継いだものだから、結構年季がある。

 掃除はしているから不衛生ではない。


「ここは俺の祖母の部屋だ。本来は母親の部屋だけど今はいないからここで寝泊まりしてくれ」


 そう言いつつ、引き戸を開けて布団を取出し、畳の上に敷いて準備をする。


 ちなみに親父は子どもの頃から使っている自室で寝ている。

 で、俺は祖父がいた部屋を俺の部屋として改造して使っているという事だ。


「金斬さんはここで寝ないのですか?」

「俺には俺の部屋がある。困ったことがあったら来てくれ。廊下の突き当たりにある扉を開ければいいだけだからな」


 そう言い、もう用はないので部屋を出る。

 あ、いや。これだけは言っておかなくちゃ。


「それと朝起きたら、親父に鉢合わせると面倒だから静かに動いてくれ」

「? はい、わかりました」


 親父は今、俺の事をかなり心配している。

 もうすでに数か月前に受けたあの日の出来事、親父の説教は今でも心に残っている。

 その上で俺が用心棒の事務所に出入りしていることを俺は親父に報告した。


 親父は危険とかまだ早いとか言いたかったけど、あんまり深く追求しては来なかった。

 俺は親父の願うとおりに生きているのだろうか。親父はこんな俺を見て引き戻そうと思っているのだろうか。


 いや、今は悩んでいるよりも早く明日に備えて寝るとするか。

 ……けどその前にやることがある。


「今日は嫌な汗を掻いたな……」


 正直、三咲さんに何かしようとした男たちを相手にしたときもそうだが、実際に拳銃を突きつけられた時の嫌な汗が忘れられない。

 ひとつ気分を変えるために、一旦シャワーを浴びて眠ることにした。

 そう思い、音をたてないように注意をしつつ脱衣所兼洗面所のある所へと静かに歩いて行った。



          3



 おい! いったいどうしたんだ! おい……!


「白零君……」


 いったい誰がこんなことを……


「……どうしてなの?」


 え……


「何であたしはこんなにもボロボロなの……?」


 それは……


「何であたしはこんなにも辱められてるのに助けに来てくれなかったの……?」


 い、いや……あの……


「……護るって言ったじゃない!!」


 ……!


「あなたが護らなかったせいで……よるは……夜は……!」


 『夜』……!? じゃあ今のお前は……!


「…………!」


 待ってくれ! 俺はただ……


「……あなたがなんと言おうと、もう夜は出てこないわよ!」


 ……!? そんな……


「夜はあなたを信じていた! あたしだってあなたを信じていた! それなのに……あなたは……あなたは……!」


 待ってくれ! 昼江ひるえ


「嘘つき!」


 …………!


「護るって言ったら……最後まで護りなさいよ……!」


 ……ごめん……夜……ごめん……!


「……もう謝っても……夜は…………う……うう…………」


 う……う、うわあああああああああああああ!!!



          4



「…………っ!?」


 …………!

 …………俺の部屋だ。教室じゃない。

 ……………………夢か。


「くそっ。なんでいつもあんな夢を見てしまうんだ……」


 昼江……いつの言葉や視線が、嫌でも頭の中にこびりつく。

 やめてくれ。そんな風に俺を責めないでくれ。そんな目で見ないでくれ。

 そんな憎しみを向けないでくれ……!


「金斬さん」

「!」


 後ろから誰かの声が聞こえる。

 と言うかこの声はどう聞いても……


「お前……なんで寝てないんだ」


 三咲さんが俺の背後……というか俺の枕元に正座で座り、俺の顔を眺めている。

 もちろんさっきの和服姿じゃない。肌襦袢姿だ。初めて見たよ。

 母親の部屋で寝ていたはずなのにどうしてここにいる。


「すいません。いつもはお母様の横で眠ってましたので、金斬さんの寝顔を見たかったのです」

「文章の前後が繋がってないぞ」

「それよりも金斬さん。さきほどなにか苦しそうにしていましたけど、大丈夫ですか?」

「……大丈夫だ。別に病気でもなんでもない」


 ……いや、正直これは発作と言うべきか……自分でもよくわからない。

 それなのにやはり寝られない。こんな夢ばかり見て俺は何を望んでいるのだ?


「お母様が言ってました。『寝苦しくてつらい人にはそばで寝ているのよ』と、よくお母様がそばで寝ていました」

「…………」


 ……お前いい歳して親と一緒に寝るのか。


「お母様は私が一緒じゃないとうまく寝られないのです」

「母親の方かよ」


 どんだけ娘可愛いんだよその母親。

 いや、拳銃を持たせるほどだし、いったいどんな深い事情があるんだ?

 まあ、どちらにしろそんなつもりはない。


「別にいい。お前に隣で寝られるほど寝苦しくないから」

「そう、ですか? わかりました」


 そう言って三咲さんは頭を軽く会釈するように下げると、さらに近づいて俺の布団をまくり中へ……


「おい! 別にいいって言ったのになんで入ってくるんだよ!」

「いえ、知らないところに一人で眠るのは不安ですので、一緒にお願いします」

「結局お前が一緒に寝たいんかよ!」


 というか知らない場所で寝るのが不安なのはわかるけど、俺も一応知らない人だぞ?

 そこはいいのかよ。


「やめろ。言っておくが俺の寝相は悪い方だ。朝起きたら親父が物言わぬ何かになってそばに寝転がっていたんだからな」

「大丈夫です。私もよくお母様の寝技に巻き込まれかけて、危うく骨折寸前になったこともありましたから」

「どんな寝相だよ!?」


 どんな母親だよ! むしろ逆に気になって来たぞその母親!

 ……ったく、いろいろとおかしすぎるぞこの娘。


「お前さ、俺を警戒して七歩も離れてたんじゃないのかよ。どうしてこんな時だけ接近してもいいんだ」

「え? それは……」


 三咲さんが少しだけ頭を捻るようにして考えていると、その小さな口からかすかに理由が……


「お母様の言葉にありませんでしたので」

「は?」


 ……今のって、どういうこと…………?


「いえ、金斬さんがひどい人でしたらここまで親切にはしません。ですのでそばにいても大丈夫だと思います」

「……ずいぶん俺を高く買っているようだな」


 つまり俺程度なら問題ないってことか? まったく、ことごとく論破しやがって。


「もしひどいことをしたらそれはそれで返してもいいと思います」


 ……さっき聞こえたのは間違いか?


「すいません。少々不安ですのでお願いします」

「…………ったく」


 ……早く寝たいのにこれ以上ごたごたと問答していられないな。


「わかった、入ってこい。……どうなっても知らないぞ」

「あ……はい! ありがとうございます」


 渋々俺は了承し、俺は自分の隣を空けた。

 その中に三咲さんが入る。


「言っておくけど早く寝るから質問とか余計なことは言うな」

「はい。おやすみなさい」

「……おやすみなさい」


 思いのほか素直に聴いてくれた。

 あまり変な気が起きないよう、俺は三咲さんに背を向けて瞼を閉じる。そして三咲さんは俺がそばにいることに安心したかのように俺の背中に自分の体を付けておとなしくなった。

 離れろって言いたいところだけど、もう言葉を出すことにもどうでもよくなってきた。

 そしてすぐに背後から寝息が聞こえ、小さく上下する背中が俺の背中から伝わった。背中越しに彼女の体は思ったよりは少し小さく感じられた。


「……なんだよ、これ」


 妙なことだ。昼江の夢を見るのが嫌で逃げるように外へ出たら妙な女の子をひとり連れ帰ってしまった。




 この少女はなにも知らなさすぎる。こいつに話しかけてきた男たちに対して危機感が感じられず、そして今俺のそばで眠っている。

 そのくせ俺からは七歩離れる。母親の言いつけから男性を警戒……しているようでどこか甘えたがりな感じがする。


 もしかしてこの少女は寂しがり屋なのか、それでやりたくもないことを無理やりやらせてやりたいことをやらせないような、そんな閉鎖的な環境でずっと育ってきたのだろうか。

 虐待? いや、おかしな言動はあるものの情緒は安定しているようだし、傷ついているようには見えない。

 それなのに行動に矛盾がある。言いつけを守る、自分の思うように動く、そんな姿がちぐはぐと映る。

 いったいこの子は何を望んで行動しているんだ?

 それに……


「あの時の俺はなにを考えていたんだ……」


 そもそもなぜ俺はこの少女についてこないかって言ったんだ?

 親がいない。友がいない。頼れる人がいない。一人だから外へ出た。だから帰りたくない。そんな理由が羅列されても、もっと大人に頼ると言った方法があるはずだ。

 ……拳銃所持だなんてイレギュラーすぎるイレギュラーを置いても、だ。


 ……それは明日になって実際に事務所に連れていったらわかることなのかもしれない。

 そう考えていると、ふと思いだしたかのようにあの光景が思い浮かんだ。


『白零君!』

『……白零君』


 ……なぜだ?

 変のベクトルが違うのに、なぜ昼江と夜に初めて会った時を思いだす。

 もしかしたらまた俺は、同じ事を思っているのだろうか。


 就寝時特有にいろいろな思いが頭の中を回りながら、僕の意識はだんだんと落ちていった。

 不思議とその時だけは、あの悪夢を見ないまま夜が明けた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ