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参肆話 そんな和服があってたまるか

 状況はかなり悪いです。

 ここにいるのは私とラネットさん、そしてキノサキさんの三人です。

 ですが、キノサキさんの手には二丁の銃が……

 私はとにかくラネットさんが危ないです。


 銃をこちらに向けていますが、指を引き金にかけていない状態でキノサキさんが問います。


「さあさあ選んで! 逃げるか、話すか、それとも戦うか!!」


 キノサキさんはこんな時でも訊いてきます。

 本当に私たちを殺すつもりはないのですね……

 でも……!


「別に逃げてもいいよ! 追うのは標的であってお前等じゃないからね」

「あんた……!」


 ラネットさん……待って……!


「あんたは……こんなことをして恥ずかしくないと思わないの!!」

「……はい?」


 いけ、ません……


「私はセーヴェって子供を殺したい人の気持ちは分からんし、あんたの考えていることは分からないわ。でもね……!」

「うん?」

「あんたには……護るべき人とかいないの!?」


 ラネットさん……!


「あんたにだって死なせたくない人の一人や二人はいるでしょ!? だったらわかるでしょ! あの子の……!」

「ラネットさん……いいの」


 お腹は……痛くはないです。

 耳は……まだ完全に治まっていません。

 しかし……


「私は……諦めません……!」

「…………!」


 この人は……話をして素直に引いてくれる人ではありません。

 ですから……!


「私は……あなたを倒して……」


 セーヴェさん……

 これ以上、不安になんかさせません……!


「……セーヴェさんを……護ります!」

「…………!」


 ラネットさん……そんなに心配な顔をしないでください。


「大丈夫。私はまだ動ける」

「クロチヨ……」


 私は改めてキノサキさんを見ます。

 その様子は……驚いています。


「……驚いたな。手加減したとはいえSBパンチをもろに当てたのに立てるなんてよ」

「えす……びー?」


 よく……解りませんけど……


「けど、これ以上こちらの業務を妨げるなら本気でやるよ」

「…………それでも、止めます!」


 私は気丈に立ち上がると、キノサキさんの聞こえないようラネットさんに小声で話しかけます。


「(ラネットさん……お願いがあるの)」

「(な、なによそのお願いって……)」


 うん。小声ですけどすっかり耳は聞こえるようになりました。


「(うん。実はね、キノサキさんの持っている武器、私の自動小銃おーとまちっくと同じ拳銃はんどがんなの)」

「(銃…………)」


 ラネットさんの前で発砲したことは何度もあります。

 故に銃の怖さはラネットさんも分かるようです。


「(それは確かに怖いけど、でもクロチヨだって危ないことに変わりはないじゃない)」

「(うん、そうだね。だからここでお願いなんだけど……)」

「(なに?)」


 私はラネットさんにお願い事を伝えました。

 すると……


「(あんた。それって本気?)」

「(え? 本気だよ)」

「(本気って…………!)」


 ラ、ラネットさん……顔が怖いのですが……


「(……まあいいわ。相手がその銃って危険な物取り扱ってるんだもの、むしろこれは安全……なの?)」

「(うん。銃は精密に作られた武器なんだけど、その分弱点も多いから……)」

「(わかったわ。まかせて)」


 ラネットさんが了承してくれました。

 あとは……


「キノサキさん」

「ん? 作戦会議は終わりかな? で、どう動くつもりで?」


 キノサキさんは今だ銃口を私に向け、しかしまだ引き金に指をかけていない状態で言います。

 私はキノサキさんに気づかれぬように服の中にあるものを用意して……


「こうします」


 私は右手に持った自動小銃おーとまちっくをキノサキさんに向けます。

 身体を半身に、片手でもう片手を包むように両手で構えます。


「……ホールドされた時はなんとなくだが……やっぱり拳銃なんだなそれ」

「はい」

「……しかも構え方が素人じゃねえ。芸者ガールかと思いきや発射ガールとはよ」

「…………」


 私は……自分の視線をキノサキさんに集中させます。


「キノサキさんは……二丁拳銃なんですね」

「そうだよ」

「いろいろと…………不便ですよ」


 私の後ろでラネットさんはなにかを唱えています。

 キノサキさんがそちらへ意識を向けないようにしなければ……


「ははは。心配ご無用。こちらは特別仕様なんでね」

「…………」


 キノサキさんは……もう大声で話しません。

 キノサキさんの視線が私の銃口に向けられています。


「で、どこを撃つの? 頭? ハート?」

「…………」


 そろそろですね……


「キノサキさん。私は人を……あなたを殺すことはしません」

「ほぅ……」


 服の中に用意したあるものは、袖からではなく裾から出て、足の甲の上へと落ちます。

 それを……


「だから……こうします!」


 それをキノサキさんに向かって蹴りだします。


「!?」


 服の中で用意し、足の上に落として蹴り出したものは……


「……弾倉マガジン!?」


 いいえ、違います。

 私は横へ跳ぶように伏せると同時に、蹴り上げたそれを撃ち抜きます。


 パン!


「!」


 すると……


 ドォン!


「ぐあぁ!?」


 撃ち抜かれた弾倉まがじんはキノサキさんの目の前で爆発しました。


「げ……芸者ガール!!」


 私が蹴りだしたのは弾倉マガジン型の小型爆弾です。

 銃で撃ち抜くなど強い刺激を与えない限り爆発しないのですが、威力は強力です。


 私は爆弾でキノサキさんが怯んだ隙に銃をキノサキさんに向けます。


「こいつ…………!」


 爆弾とはいえ、少し離れていたため軽傷のキノサキさんは左手の銃をこちらへ向けます。

 私は急いで銃を構え、左手の銃に向かって発砲します。


 パン! パン!


「!」

「!」


 向こうも……!

 私の弾とキノサキさんの弾が……


 キィン!


 当たった……?

 いえ、お互い衝突した……!


「てぇい!」


 キノサキさんが体勢を立て直して銃をこちらに……!

 いけません……!


「十二発……いや、十一発だ!」


 バンバンバンバンバン!!


「…………っ!」

「クロチヨ!」


 ……いけません。

 銃弾が……私の腕や脚の部分に……


「さて、これで一人は戦闘不能」


 けど……


「さてと、次は……」

「待ってください!」

「…………!?」


 大丈夫……当たり所がよかった。

 腕も脚も、動きます。


「クロチヨ! 大丈夫なのあんた!」

「ラネットさん、私は大丈夫です! 安心して続けてください!」

「ちょっと待て! お前、その服の中に何を仕込んでいる!?」


 キノサキさんが驚いて私の衣服を見ます。

 撃たれた後はありますけど、傷はありません。


「いえ、仕込んではいません」

「なに!?」

「これは、お母様が作り上げた特製の防護和服……」

「……まさか! 防護服ボディアーマーか!?」

「はい」


 和服は和服でも、たった一着しかないお母様が作った服です。


「よくわからないのですけど、刃物に強い特殊な繊維で編んで織り込み、さらに金属板も仕込んで、ついでに銃器も仕込めるように造られた和服です」

「……おいおい」


 確か、これを作ったお母様が言いました。

 えっと……『千代。こんな平和な国にも犯罪は絶えない。中には凶漢、怪漢、悪漢、痴漢、暴漢……男を意味する『漢』の字のみ使われるように、危険な男が多いのよ。だから……』って言っていました。

 だから任務の時にこれを着るのですが、正直ちょっと重たいです。


「……ねえ、クロチヨ」

「? なに?」

「その服作ったのってまさか……」

「うん。お母様」

「…………そう」

「?」


 ラネットさん、どうしたのでしょうか?


「……なるほど。SBパンチを喰らっても平気なのはそれが理由か」

「!」


 いけません、今はキノサキさんを止める時です。

 キノサキさんは銃をくるくる回しながら言います。


「道理で感触が硬いと思ったよ。けどまあ……」


 そして、銃をこちらに向けて構えます。


「全部……ってわけじゃないだろ?」

「…………!」


 ……確かにその通りです。

 全部を堅くしているわけではありません。


 ある程度余裕で動けるように一部は金属板がないのですが……


「ズバリ、防備が手薄なのは……」


 すると、キノサキさんの銃が私の……!?

 危ない!


「喰らい!」


 バン! ヒュ!


「……!」


 キノサキさんの狙いは私の右手です。

 ですが私はキノサキさんが発砲する前に素早く右手を下へ降ろしました。

 おかげで何とか当たらずに済みましたけど……


「……弱点は関節、露出している頭と手、あとは体の動きと衣服の動きでわかる」

「…………!」


 この人、射撃の狙いといい観察力といい、厄介です。


「あと五発!」

「!」


 撃たせません!

 私は左の袖から出したあるものをキノサキさんに向かって投げます。

 それは……


「! また弾倉マガジンみたいな爆弾か!」


 私は構わずに投げ出したものに向かって発砲します。


 パン!


「…………ちっ!」


 爆発を恐れてキノサキさんは後ろへと退避しました。

 それと同時に私の放った弾が投げ出したものを撃ち抜きます。

 そして……


「……!? 爆発しない……!?」


 キノサキさんにほんの少し隙ができます。

 今です!


 パンパンパンパン!


「! しまった!」


 私の放った弾はそれぞれ二つずつキノサキさんの両手に飛んでいきます。

 結果は……


「ぐあぁ!」


 右手は当たりませんでしたが、左の回転式拳銃りぼるばーが弾かれました。


「…………! ダミーか!」

「はい!」


 先ほど出したのは弾倉型爆弾ではなく普通の弾倉です。

 一度喰らいましたし、次も本物かと思ったのですね。


「小癪な!!」


 キノサキさんが右手の銃を私に向けるのですが……


「それまでよ! 【砂の嵐(サンディスターム)】!!」

「!?」


 ラネットさん……!

 間に合ったのですね!


 ゴォォォォォオオオオオオオオオオオオオ!!


「また……!」


 ラネットさんが起こした小さな砂嵐がキノサキさんを中心に巻き上がります。


「そろそろです……!」


 私は銃を自動小銃おーとまちっくから麻酔銃へと切り替え、砂嵐に巻き込まれぬようにキノサキさんの背後へ回ります。

 そして……


「大丈夫です。気づいていません」


 慎重にかつ速攻で……!

 背後に……!


「そんな同じ手が……!」

「!?」


 え…………!?

 なんで砂嵐の中なのに正確にこっちを……


「通用するかぁぁぁぁぁあああああああああああああああああ!!」

「!」


 いけません。

 キノサキさんの拳が……!


 ゴッ……!


「…………っ!」


 キノサキさんが再びお腹を殴ろうとしましたけど、何とか両腕で防ぐことができました。

 ですが、


「離れろぉ!!」

「!」


 片腕一つで私は飛ばされてしまいました。

 そのせいでまたキノサキさんと離れてしまいます。


「…………きゃ!?」


 う……うまく着地ができませんでした……

 幸い腕は……ちょっと痛いですけど無事です。

 ですが……


「まったく……さっきまでは良かったものの最後のは駄目だな」


 ……不意打ちは失敗してしまいました。

 キノサキさんがつまらなさそうに言います。


「ピクシーガールがもう一度なぞの砂嵐起こして隙を作り、攻撃を当てるのはいいが……」


 そう言うとキノサキさんの回転式拳銃りぼるばーがこちらへ向きます。


「いくらなんでも同じ手は通用しない。それに視界を封じればそれでいいなど、嘗めすぎだ」


 私も……なんとか立ち上がって、麻酔銃を構えてキノサキさんへ向けます。


「ほう……早撃ちか? それともまた爆弾か?」


 ……再びまずい状況です。

 いいえ、やることはやりました。あとは……


「妙な動きをするな、ピクシーガール!」

「!」


 キノサキさんのもう片手の銃はありませんが牽制するように言います。

 そして再度私へ視線を向けます。


「諦めろ。お前らのような、殺しはだめーって言いそうな無垢な御嬢さんに、殺し屋は止められん」

「…………嫌です」


 諦めきれません……!

 護るって言ったから……!


「諦めません。セーヴェさんは私たちが護ります!」

「……そうかよ」


 キノサキさんは残念そうに言うと、指が動きだし引き金に掛けられます。

 発砲される……


「今度こそは正確に当てる。んま、銃創一つでご寛仁を……」

「クロチヨ!」


 ……ように思えましたが。


「…………!? なんだ!」


 キノサキさんの指が力を入れているのですが、回転式拳銃りぼるばーの引き金が引けません。

 ということは……


「成功したのですね……」

「……なにをした!!」


 よかった……

 キノサキさんは何度も引き金を引こうとしていますが、引き金が全く動きません。

 でも気は抜けません。


自動小銃おーとまちっく回転式拳銃りぼるばーもどの銃も,みんなみんな強いけど、でもそれは精密な造りをしているから……」

「……? ……まさか!?」


 どうやら気が付いたようです。

 キノサキさんは使えなくなった回転式拳銃りぼるばーの細部などを見つつ、気づいたことを言います。


「さっきピクシーガールが起こした砂嵐はまさか……!?」

「はい。キノサキさんの銃を使えなくすることです」


 一度目は銃を出していませんでしたけど、二度目は銃を出していましたからうまくいきました。


 銃は強力な分、精密なつくりをしています。

 回転式拳銃りぼるばーの場合、比較的構造は簡単ですけどそれでもつくりは精密です。

 引き金(トリガー)円筒しりんだー撃鉄はんまー、雷管など、さまざまな部品を組み立てて創り上げています。

 もしもそこにラネットさんの精霊術で激しい砂塵を起こしたら……


「…………芸者ガール…………!」


 キノサキさん……


「芸者ガァ――――――――――ル――――――――――ッッ!!」


 キノサキさんが大声で叫んでいるが構いません。

 私は麻酔銃をキノサキさんに向けて発射しました。


 バン! ドスッ!


「…………!」


 放たれた麻酔弾はキノサキさんの露出した首に当たりました。

 そして……


「おの……れ…………」


 キノサキさんは立ったまま静かになりました。


「…………」

「…………」


 当たった……のですね……

 ということは……


「クロチヨ!」

「!」


 ラネットさん……

 心配させてしまいましたね……


「クロチヨ! 大丈夫!?」

「ラネットさん、私は大丈夫。でも、心配かけてごめん」

「まったくよ! あんたの出した提案、本当にうまくいくかどうか不安だったわよ!」


 正直、銃を持った相手にこんな開けた所では心配が多いです。

 ですが逆に言えば銃さえなんとかできればあとは大丈夫かと思ったので……


「そんなことよりあいつは!?」


 あいつ……キノサキさんですね。


「キノサキさんなら……」

「…………!」


 私が指を指した方をみたラネットさんは驚きに目を開いています。

 指を指した先、キノサキさんが体をのけぞらせて立ったままちっとも動きません。


「クロチヨ、なにを……?」

「彼の首元に麻酔弾を撃ち込みました」

「麻酔……」

「うん。撃たれたら眠ってしまう弾」


 撃ちこんだ場所は首ですので少々危ないと思います。

 普通ならこれで動かなくなるのですが……


「…………」

「…………」

「…………」


 ……終わってください。

 ここで終わってくれないと……


「……なかなかやるじゃないか」

「「!?」」


 …………え!?


「構えといい、正確に首に当てるといい、変な防護服といい、ホントお前はなんなんだ?」

「なぜ…………!?」


 彼の首には……麻酔が刺さったままです……!

 効いているはずなのにどうして……!?


「くっくっく……見た目は温室育ちのお嬢様風で、その実やることが過激だねぇ……」

「なぜ……効かないのですか……!?」

「クロチヨ! 今のは当たったんじゃないの!?」

「当たったはずです! 確かに当たったはずなのですが……!?」


 さすがに首はやりすぎたのかと思ったのですが、そんなことは関係ないかのように動いています。


「けど実弾じゃなくて麻酔銃なんてもん使っちゃ……まだまだ詰めが甘い」

「…………質問に答えてください」


 ひとまず落ち着いて静かに麻酔銃を構えます。

 一方キノサキさんは銃を向けられているのに落ち着いた様子です。


「なーに、ちょろーっとこちらは特異な体でね」

「…………?」

「特異……?」


 体質……ですか……?

 でも麻酔が効かない体質なんて……


「まあいい。こちらに勇敢に立ち向かっただけではなく、その上一撃を当てたことに敬意を表し、教えてやろう」

「…………?」


 教えるっていったい何を……?


「それでは、へぇぇぇぇぇええええええええええええええん、しん!!」

「「!?」」


 すると、キノサキさんはなぜか使えなくなった回転式拳銃りぼるばーを置いて、その後自分の服に手を伸ばし……?


「…………!?」

「え!? ちょ、ちょっと!?」


 服を……脱ぎ始めまています……!?

 突然の行動にラネットさんが顔を赤くします。


「な、なにをしているのよあんた!?」

「なにって、こちらの正体を教えるだけだよ」

「正体って……………………!?」


 え…………?


「お前等ただのガールじゃないな。褒めてやるよ」

「「!?」」


 キノサキさんが上の服を脱ぎ終えました。

 しかしそこにあったのは肌色の身体ではありません。


「なによ、これ…………!?」

「…………!?」


 黒…………!?

 褐色どころではありません。本当に真っ黒……!?


「さてさて~」


 キノサキさんは今度は下の方を脱ぎ始めます。

 私もラネットさんも、露わになった上半身に目が行って、止めている場合ではありません。

 そして……


「はい。脱衣完了! ついでに偽装解除」

「「…………!?」」


 これはいったい……!


「…………!?」

「…………!?」


 私も……ラネットさんも……言葉が出ません。

 服を全部脱いで露わになったキノサキさんの身体はとても異様です。


 首から下が褐色どころではない真っ黒な体です。

 その上、肌の感じが何だか無機質な物のように見えます。

 気が付けば手首から先の手の部分もいつの間にか黒くなってて……

 そして……


「……機械?」


 キノサキさんの真っ黒な体中に、灰色の機械のようなものが取り付けられています。

 所々傷跡のようなものがありますが……


「そう。一部の生理機能も生殖機能もない、完全合成添加物さ」

「……あんた……いったいなんなのよ……!?」


 ラネットさんが先ほど赤かった顔が今度は青くなってキノサキさんを見ます。


「おうおうおう、やっぱりこれのことが気になるようだね」


 ……これ?

 キノサキさん、自分の事を『これ』と形容しています……


「これは、強靭な機械の身体に、柔軟な人間の思考をもつ存在……」


 …………?


「そうさ、これは改造人間サイボーグってやつさ」

「「…………!?」」


 改造……人間……!?


「ふっふっふ……そうさ……殺し屋、ガンスロット・キノサキとは……機械が人体の九割を占める! 改・造・人・間・なのだぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああ!!」

「「…………!」」


 ということは……


「麻酔が効かないのは……!?」

「ま、そう言う仕様だったからね。わかった?」


 わかったもなにも、理解できません……!

 何でそんなことができるのとか、そんな体で平気なのでしょうかとか……

 いろいろと思う事はあるのですが……


「まーそれにしてもやってくれたな」

「!」


 キノサキさんが、もう自分の事は紹介しないで砂を詰められた回転式拳銃りぼるばーを掲げています。


「まさかファンタジーに拳銃が敗けてしまうなんてな」


 今のキノサキさんは銃を持たず、素手のままです。

 すると、先ほど不気味にキノサキさんを見ていたラネットさんが強く出て……


「……あんたはもう終わりよ。見た所もう武器はないようだし、その体がなんなのか知らないけど、素手で銃には勝てないんでしょ?」

「…………降参してください」


 ラネットさんに続くようにキノサキさんに退くように言います。

 すると、


「……それはどうかな」

「なに?」


 キノサキさんが嘆息をすると、手に持った回転式拳銃りぼるばーを握り……


 バキンッ!


「「!?」」


 潰した……!?


SBサァァァァイボォォォォォォグパァァァァァァァァンチ!!」


 ドゴォ!!


「「…………!?」」


 地面が……

 抉れた…………!?


「な、なによその馬鹿力……!?」


 ラネットさんも驚いていますけど……

 私も驚きを隠せません……


「……言っておくがこの身体は形こそ人だが、見た目からは想像できないほどの馬力と腕力を持つ」

「…………!」


 ……この人、たぶん拳銃じゃ止まらない……

 私は自動小銃おーとまちっくを仕舞い、短機関銃さぶましんがんを取り出して構えます。


「……今度は本物です」

「だろうな。麻酔が効かないと気づかれてしまったようだしな」


 銃を向けられても、なお冷静です。

 なぜなのでしょうか……?


「はぁ……できればこんな手は使いたくなかったんだけどな……」

「?」


 するとキノサキさんの身体がゆらりと揺れ、顔を下に向けます。

 ……? なにを……


「『…………製造個……型陸戦式……モード移行。聴神経……開放』」

「?」


 え、え?

 何を……


「『……嗅神経、視神経、動眼神経、滑車神経、三叉神経、外転神経、顔面神経、内耳神経、舌咽神経、迷走神経、副神経、舌下神経…………第一脳神経から第十二脳神経まで、全回路開放……』」

「クロチヨ。こいつはいったい何を……?」

「…………?」


 もしかして……

 その変わった体で何かを……


「『反射神経、運動神経、感覚神経、共に……加速する』」

「…………」

「…………」


 ……なんなのでしょうか。

 なにか先ほどとは様子が違う感じがします。


「さてと…………」

「……なによ」

「…………」


 ……特に銃を持ち出したりとかしません。

 でしたらなにを…………?


「行くぜぇぇぇぇえええええええええええええええええ!!」

「「!?」」


 キノサキさんがこっちに突っ込んで来ます。

 それも速い!


「ちょ、ちょっと!?」

「…………!」


 仕方がありません!


 パララララララララララ!


 私は突っ込んでくるキノサキさんに向けて銃を連射します。


「はっ!!」

「!?」


 横に躱した……!?

 それも発砲した後で……!?


「なぜ……!」


 私は照準を直して連射します。


 バラララララララララ…………!


「当たるかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

「!?」


 全弾、キノサキさんが横にずれて回避されています。

 なんで……当たらないの……!?


「そしてぇ!」

「!」


 キノサキさんがもうこんなに近く……!

 このままでは……


「【風障壁バリエヴェント】」

「ドヴァア!?」


 !?

 キノサキさんが見えない壁にぶつかったみたいに……


「クロチヨ! 離れるわよ!」

「ラネットさん……!」


 私はラネットさんに手を引かれてキノサキさんから離れます。


「ラネットさん、今のは……」

「空気の壁みたいなものよ! あの速さで壁に思いっきりぶつかれば身体にかなりのダメージが来るわ! でも…………!」


 ラネットさん?

 なんだか息が荒い……


「さすがに結構連発したから……もう、私も限界が近いわ……! これ以上は集中できない。だから……!」

「待てよ……!」

「「!」」


 壁にぶつかって倒れたキノサキさんが、もう起き上がりだします……!

 多少よろけていてもまだ動けそうです。


「そんな……いくらなんでも早すぎる……!」

「はっはっはー! 耐久力も抜群! 火砲だって少しは平気!」

「「!?」」


 火砲は平気って……!

 それじゃあ拳銃なんて最初から……!


「さてと、どうあってもお前等は退かないようだけど改めて訊く」


 キノサキさんが……自分の身体を指さして言います。


改造人間こいつの身体を見ても……同じことが言えるか?」

「!」


 そして、キノサキさんが再びこちらへ来ます!

 速いです、逃げ切れません!

 でしたら……


「ラネットさん、逃げてください!」

「な、何言ってるのよクロチヨ!」

「私はこれ以上ラネットさんに負担を掛けられません。だから……」


 せめてラネットさんは巻き込ませたりしません。

 私はラネットさんより前に出ます。


「早く……逃げてください!」

「クロチヨ……!」


 たぶんこの銃ではキノサキさんには通用しません……

 でしたら……


「これを……!」


 右袖から出した散弾銃しょっとがんを出すや否やすぐに、前に向けて発砲します。


 パァァァァン……!


「ジャァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアンプ!!」

「!?」


 跳んで避けた……!?

 それもあんなに高く……!


「さて、覚悟はできているか芸者ガール!」

「あうっ!」

「クロチヨ!!」


 落ちてきたキノサキさんが私の上に伸し掛かって……!

 お、重い……です……!


「そんなもの持っちゃだ・め・よ!」

「うあっ!!」


 散弾銃しょっとがんが……

 もう、だめです。もう目の前に……


「さて降参して話すなら今の内だ。本気を出せばそんな服など意味はない」


 …………嫌です。

 私も……用心棒の端くれです。

 せめて…………!


「……いいえ、降参しません!」

「そうか……」


 すると、キノサキさんが私の前で拳を振り上げます。

 あんな強い拳で殴られたらきっと……

 ……ラネットさん、御免なさい…………


「やめて! 私の友達を傷つけないで!!」

「!」


 ラネットさん……

 私の事を友達って……


SBサイボーグ…………!」

「…………!」


 ……ありがとう。でも、ごめんね。

 ……セーヴェさん、ラネットさん、ロビィさん……


「パァァァァァァァァァァァァァンチ!!」


 零ちゃん……

 ごめんね…………


「クロチヨォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオッッ!!」


 私……

 自分を……護れなかったよ…………

 ごめんね…………!








 ゴッ…………!

さて、突然ですか……!

次回の投稿がなんと……十月です。

詳しくは活動報告を

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