参弐話 保険はしっかりとしよう。
時刻は昼。天気は晴れ。少々風が強めに吹いてきた、風精族領内でのこと。
殺し屋の片割れ、ヘルメスと風精族領地調査隊第六班班長のエイジットが交渉をしている一方、その近くの崖の中にてもう一人の殺し屋が岩肌に手をかけて登りながら愚痴っていた。
「ちぃぃぃ! ヘールメース……こちらを差し置いて随分と楽しそうじゃなぁぁぁぁぁいっ……」
殺し屋……キノサキは崖を登りながらも余裕で文句を言っていた。
今の彼の状態は不機嫌そのものである。
車が崖に落ちたあの夜、キノサキはヘルメスと共に崖の周囲を回り、降りるのに最適なポイントを見つけだした。
その後ヘルメスはそのまま待機させて、自分は崖の中にいるはずのあの車に会うために降りたのだ。
全ては依頼をこなす為……あの標的を殺すためだ。
なのに……目的の車はあったはずなのに肝心の標的はいなかった。
いや、標的だけではない。気づけばあの女もいなくなっている。
つまり自分は先ほどからずっと囮のみを追い続けていた。
この運び屋に一杯喰わされたと気が付いたのだ。
気が付かないのも無理はない。ロビィのあの脱出はあまりにも手際よく、なおかつ素早く行われたものであった。
その後の囮として逃げ続けた車も、囮だと悟らせないために手際よく、なおかつ時間と距離を稼いで逃げ続けたのだ。
彼ら運び屋は逃走に長けた者たちである。結局追いつかれてしまったとはいえ、ここまでくれば上々であろう。
逆に囮を掴まされた殺し屋は己の無力さを恥じずにはいられなかった。
そう思うと、とにかく彼は叫ばずにはいられなかった。
無理もない。折角リスクは承知で崖を一人で降りてまで追ったと言うのにそれが外れだという。
そして、ひとしきり叫んだあとも彼は諦めなかった。
とにかく彼は叫び終えた後、谷のように狭く挟んだ崖の岩肌に手をかけて上へ上へと目指していた。
なお……
「…………!」
「おや、またもお目覚めですか?」
ここにいるのはキノサキだけではなかった。
彼の背中には、ロープなどにより、雁字搦めに固定された、二人の青年……
「むぐぅ……!」
キッドとデヴィッドがいた。
デヴィッドは頭を打った時のままいまだに目を覚ましていない。
キッドは猿轡のせいで話せないにもかかわらず、必死に身をよじっている。
キノサキが崖を登ることを邪魔しているのである。
「……おいおい、またなのかよ」
一度目ではないのか、キノサキは鬱陶しそうに背中で暴れているキッドを五月蠅そうに窘める。
「ダメダメダメ! 死なせるわけにはいかなーい! お前は立派な標的への手がかりなんだから……」
「…………!」
なぜキノサキはわざわざ自分の邪魔をする運び屋を崖から上げようとするのか。
崖を降り、車を見つけたも標的がいないこの状況にキノサキは焦った。
いつ抜け出したかはわからないが、こいつら囮には相当距離が離されたと考えられる。
その上、先ほど通信のやり取りでヘルメスが言った通り、ここはいったいどこで、どんなところなのかは彼は知らない。
ただ、数日前の夜に正体不明の蜥蜴の集団と戦ったが、明らかにここは自分の知るところじゃないことはわかった。
ならば、見たことがない生き物が存在するこんなところ、相手も恐らく知らないのではないかと読んだ。
つまり、こんな右も左もわからないところで人数を分けるのは危険であり、故にそのような行動はしないと思った。
しかし、そんな彼の読みは外れた。その結果が先ほどの通りである。
そうなると不利になるのはキノサキたちである。
どこへ逃げたのかまったくわからない。探すにも範囲が広すぎるということである。
だが、一つだけ手がかりになるかもしれないものが残されている。
キッドとデヴィッドだ。
キノサキの記憶が正しければ、標的だけでなくもう一人、あの金髪の女がいない。
恐らく標的と共に車から脱出したのだろう。
ならばこの二人からなにかあの女……もとい近くにいるだろう標的へと近づけるチャンスになるかもしれない。
そう思いキノサキは車内にあった荷物用のロープを使い、二人を自分の身体に固定して、一緒に崖を登っているのだった。
男二人を背負って絶壁を登るのは危険な行動ではあるが、車を落とすために岩石を持ち上げていたことがあったため、力に関しては問題なかった。
もっとも、重さはそのまま三人分なので、別の意味で危険を孕みながら登っているのだった。
現在、デヴィッドはあの時のまま目を覚まさず、キッドも全身を固定され動けない。
余計なことは言わせないか、それとも自殺防止のためか、猿轡も噛まされているのだった。
「…………!」
キッドは自分の置かれた状況に悔しく歯噛みした。
セーヴェは逃がした。自分たちも必死に必死に逃げ続けた。
結果崖に落ちたけど、ここまでくれば上々だと思った。
が、甘かった。
この男はオートバイなしの、自分の体一つでこの崖を降りてきたのだ。
その後、強制的に車を開けられ、セーヴェがここにいない事に気づかれてしまった。
その時点でセーヴェを諦めるかと思いきやそうではない。
この男は自分とデヴィッドを使い、標的である標的をあぶりだすつもりだ。
もちろんロビィは自分たちのためにセーヴェを差し出すようなまねはしない。
だが、もしセーヴェを安全な場所に置いたとして、ロビィは今度は自分たちを探しに行くのだろう。
もしそうなったら最悪だ。
今度はロビィの命まで危ぶまれる可能性が起こる。
確かに自分たちの第一優先は運びの対象であるセーヴェである。
だが、仲間の命もまた大事であることに違いない。
故に、今横にいるデヴィッドも、助けに来るであろうロビィも死なせたくはない。
どうすればいいのか。
なぜこうなったか。
どうするべきか。
なにを間違えたのか。
今起こってしまった状況と今後どうすればいいのかという二つの思考に混乱していた。
そうしている間に、キノサキは背中から伝わるほんのわずかな震えに高めの声を出す。
「ふっふっふ――――――っ!! もしかして殺されそうで怖い?」
こんな時でもふざけ、なおかつ的外れの指摘をするキノサキ。
その言葉に再びキッドは苛立ち、その感情が背中から伝わったキノサキが
「でも大・丈・夫! 依頼に入らない不必要な殺しはしない主義なんだからね!」
「…………!」
「まったくぅ~、お前も、もう片方の男も、こちらの邪魔をしないで素直に標的を殺らせればいいのに~!」
何を白々しい、とキッドは思い、怒りを含めた目で自分を背負う殺し屋を睨む。
と、彼は気づく
「…………!?」
「殺し屋が言うのはなんだけど……命は粗末にするなよ」
本当にどの口がそれを言う、と呆れてしまいそうだがこの時キッドはそう思わなかった。
目の前にあるキノサキの顔は、いつも叫んでいる時の顔とは少し違っていた。
なにが、と言われるとよくわからないが……
「さ~て!」
「!?」
が、すぐに元の自分に戻ったキノサキは、崖を登っている最中なのに頭に着けた機械のゴーグルとヘッドフォンをくっつけたようなものの耳当ての方に意識を集中していた。
「今日のヘルメス君は情報からして羽っ娘たちとのきゃっきゃうふふな話し合~い!」
……ヘルメスが言ったのは『羽っ子』であり『羽っ娘』ではない。
それに相手は『子』ではなく大人の男である。
が、事実とは違う上に変に聞き違えたキノサキは無駄にワクワクしながら、もう一方の殺し屋の会話を盗み聞いている。
「さて、ど~んな話し合いになるやら……」
キノサキは素手で崖に昇りつつも耳当てからヘルメスの会話を聴くという器用なことをするのだった。
2
『ヒャッハー! なるほど、ここは幻界ってところであり、君たちも二足歩行ヤモリもこの世界の住人ってことなのか!』
『そうだ。それぞれ風精族と火蛇族と呼ぶ』
「…………」
本当にエイジットさんが話しているのは自動二輪車なんでしょうか?
だとしたらすごいです。どんな自動二輪車なんでしょうか?
と、私は考え事をしながら石から伝わる声に集中していると、隣でロビィさんが震えていることがわかりました。
「ロビィさん? 大丈夫ですか?」
「あ……う、ん…………」
ロビィさん……顔が青いままです。
エイジットさんだけではありません。
「キッド君も……デヴィッドさんも……追手に捕まっている。どうすれば……」
私は震えているロビィさんの手を握ります。
一瞬だけ驚きましたけど少しだけ震えが収まりました。
話は続きます。
『本機がここに来たのはその“月の口”という摩訶不思議な入り口に吸い込まれたからだね!』
『ああ、心当たりはあるか?』
『ヒャッハー。ありありだぜ!』
『そうか……ならばここに来たばかりで起こった出来事は覚えているかね?』
『ヒャッハー。あの時の事か?』
あの時……風精族さんの里が襲われてきた時の事ですね。
ラネットさんの話だと……
「移動する途中で火蛇族さんの大軍にぶつかり、そして、そのまま絡まれたせいで思いっきり暴れたことでしたね」
「ええ、そうよ。そのせいで大軍のほとんどは追手の迷い子に負傷させられたということよ」
ロビィさんの写真からして多分武器は……銃。
だとしたら相当危険ですね。
『ヒャッハー。暴れすぎて怪我をさせたことなら詫びるぜ』
『いや、そうじゃない。君たちには我々の里へ同行してもらいたいのだ』
『ヒャッハー。なぜ?』
『君たちはまだこのあたりの事について何も知らない。もしこのまま何も知らないままだといろいろと大変なことになる』
『ヒャッハー、そりゃあそうだろうな。二足歩行ヤモリとかドラゴンとか見るからに危ないからね。なんせ本機たちは全くの初対面のくせに絡まれたからねぇ』
……私も火蛇族さんに初めて会ってそうそう連れ去ろうとしていました。
『それに君たちって言い方、キノサキの事も知っているな』
『あれだけ派手に暴れれば強く印象に残るだろう?』
『ヒャッハー、違いない』
なんだか普通に会話しているようですけど、緊張感のようなものが伝わります。
『ヒャッハー! じゃあじゃああなたたち風精族と言う羽っ子たちが、迷子になった本機たちを保護してくれるってことだね!』
『そうだ』
大きな声で言う追手に対してエイジットさんは淡々と言います。
『じゃあさ、ひとつ前に訊いていいかな。ヒャッハー』
『なに?』
『ヒャッハー。そんなに難しいことないさ』
訊きたいことってもしかして……
『ヒャッハー。その里とやらにあの子も保護したのか?』
『なに?』
『人間の子供、セヴェリーニと言う名前の茶髪の子供さ。ヒャッハー』
『…………』
……やはり、そうですね。
相手が調査隊とわかるとロビィさん達のことも訊きだします。
対して……
『……いや、知らんがなんのことだ?』
『ヒャッハー。ストレートすぎたかな? いやー本機たちがここへ来る前に、でかい車が来なかったか?』
『でかい車? ああ。そいつのことも現在捜索であるのだが……』
エイジットさんが不自然な声を出さずに嘘を言います。
声しか聞こえませんから表情は分かりませんけど……
『ヒャッハー。そうか、それなら別にいい。だったら本機たちは君たちについて行くぜ』
「え?」
あれ? ついて行くって……
随分と簡単に決めましたね……
『ほう、決断が速いな』
『ヒャッハー。本機は現状かなり不利な位置であることを悟っているからね。藁でも羽でも掴んで見せるさ』
……よかったです。
とにかく危険なことは起きないようですね。
『ヒャッハー。ところでさあ……』
『ん?』
『…………(ガチャ!)』
…………え?
今の音は…………
『班長?』
『班長!?』
え? え?
ど、どうしたのでしょうか……?
『お前……どういいうつもりだ……!』
『……結局君たちはセヴェリーニという小僧を匿っているんだね。ヒャッハー』
『!』
え…………!?
『ヒャッハー。ポーカーフェイスを気取っても無駄だよ! 心は嘘をついても、体は正直!』
『…………!?』
まさか……
「気づかれた……!?」
「そ、そんな……!」
どうして……!
『瞼の動き、体温、その他、一瞬だけ見るからに反応があった。不意に訊かれればそうなるのは無理はないがね。ヒャッハー』
そんなの……機械で測らないとわからいんじゃ……
あ、でも自動二輪車は機械だから……
『ヒャッハー。それに本機だけここにいるのを見て、キノサキがいないことに疑問を抱かないのはミスだったな』
『ぐっ…………!』
『それだと、いろいろと矛盾するからさっ!』
まずいです。
このままだと、エイジットさんは……!
『改めて訊くぜ。その里とやらにセヴェリーニという小僧はいるな。ヒャッハー』
『…………!』
『まあ、答えても答えなくてもその反応を見れば丸わかりさ! ヒャッハー!』
こうなったら……
せめて私だけでも……
「待って! クロチヨ!」
ラネットさん……!
どうして……
『ぐあああああああああああああ!!』
『班長!?』
エイジットさん!?
「そんな……そんなっ!!」
「え?」
あれ、ロビィさん……!?
「ちょ、ちょっと!」
「あ、ロビィさん! 待ってください!」
もう耐えられないのでしょうか、ロビィさんが……エイジットさんの元へ行くつもりです。
いけません……!
「ラネットさん!」
「ちょっと待って! もう少し……!」
「!?」
なにを……
「……よし! クロチヨ、行くよ!」
「うん!」
エイジットさんに言われたことを破ってしまいますが……
「ロビィさん、待ってください!」
私とラネットさんはロビィさんの後を追ってエイジットさんの元へ行きました。
3
『ヒャッハー! 本機の考えていることが正しければこのあとすぐだよ!』
「本当か!? ならば急がなくては!!」
一方、崖の中の方ではもうそろそろ地上にたどり着くところで、キノサキは崖を登りながらも器用に耳当ての通信からヘルメスの声を聴いていた。
『これより本機は里へ向かう。キノサキ、任せたぞ!』
「やー! まっかせーなさーい!」
そのやり取りを最後に通信を切り、キノサキは速度を上げて崖を登る。
「…………」
その背後で様子みたキッドはなにか嫌な予感をし、どういうことだと問い詰めるような視線を向けた。
キノサキは背後からの視線に気づく。
「…………!」
「んんん? お前、何話してんだこいつはって顔だね?」
キノサキは崖を登りつつ、自分ではなくヘルメスが立てた推測を述べた。
「かーんたーんな話! おそらく君のだいーじな仲間がここへここへやってきているんだね!」
「…………!?」
「そう、おそらく標的は安全地帯に置いて、自分だけでもお前等を助けに行こうと……」
敵である男のいう事に耳を貸さないつもりのキッドではあったが、ロビィという人間を知っているため否定できなかった。
ロビィはなにかと臆病であり、逃げ足が速いのも、喋りが弱々しいのもそのせいである。
しかし、臆病であるのは自分の事だけではなく、キッドやデヴィッドに対してでもある。
大事な仲間を失う事にも臆病な人なのである。
そのためにも仲間の命を助けるためなら、無茶だってする人なのだ。
矛盾しているようにも聞こえるが彼女にとって大事なのは自分とキッドたちと、あともう一つなのである。
故にキノサキの言葉は無視できないものであった。
「いいねいいね。わざわざ標的の事を知っている子がこんな虎の穴にまでやってくるんだからよぉ」
「…………!」
いかん、とキッドは思う。
セーヴェを安全な所に置いたはいいがここはいったいどこなのか自分たちでもわからないことだ。
もしここで自分たち三人が共倒れになってしまったらセーヴェは正体不明の地で独りになってしまう。
いくら殺し屋から護ったとしてもそれはそれで違う意味で護れなくなる。
そうなってしまったら……
嫌な予感を感じたキッドの、恐怖の感情が伝わったのか、逆にキノサキは明るい声で言う。
「はははのは! 大丈夫大丈夫! こちらはね、不必要な殺しはしない主義なの。だから君の仲間は命は落とさないつもりだから安心しろ!」
「…………」
だが、そんなこと言われても安心はできない。
なぜならこいつは容赦なく無反動砲を放ったり、設置型爆弾を爆発させたり、挙句の果てには岩石投げをし
ていた奴だ。
いったいこの言葉のどこに信じる根拠があると、
「まあ、もっとも……」
そう思っていた瞬間、キッドはキノサキの顔を見て戦慄する。
「こちらが殺し屋だとわかってて邪魔するのなら話は別だけどね」
「…………!?」
「ま、欠損ぐらいは覚悟しろってんだ」
今のキノサキの顔は本気の顔だった。
気休めでもおためごかしでもない、本気で有言実行する気であると。
つまり、先ほどの発言も本当であるとキッドは悟った。
そして……
「…………!」
キッドは願った。
ロビィ。自分たちに構わず逃げろ、と
こいつには刃向かわず逃げ続けろ、とも
だが、言葉も出せないこの状況ではそんなのは全く意味のない願いであった。
4
「ど、どういう事……?」
「なんで……なんでなのよ……」
あの後、私やラネットさんはロビィさんに追いついて、そのままエイジットさんの元へ走ったのですが……
「エイジット班長や……皆が……」
「いない…………!?」
なぜなの……?
たしかに場所はあっているはずです。間違いはありません。
なのに、なぜ……
「それはよぉ! へェェェェェルメェェェェェスがうまくお前等から切り離したからなんだよ!」
「「「!?」」」
な……なんなのでしょうか?
今、ちょっと変わった声が聞こえたような……
「…………!?」
「ロビィ……どうしたの?」
「ロビィさん……?」
まさか…………!
「大事な指揮官が乗せられ、『里へ行く』発言から走り出すヘルメス。どうすればいいかわからない羽っ子たちは混乱したまま気絶した指揮官を乗せ里へ向かったヘルメスを追ったのさ」
先ほどの声はどうも、崖の中から聞こえてくるようです。
それにさっきの発言は……!
「お前の事だからたった一人で助けにはいかない。標的が留守番中の子守役が必要なように、おそらくいくつか協力者かなんかで助けに行くんだろうなと思った」
……まずいことになりました。
まさかこんな形で分断……しかも暴かれてしまうなんて……!
「ん~ま! 所詮はバイク、とかなんとかで油断した?」
それと同時にだんだんと人が近付いてくる感じがします。
「おかしいと思わな~い? 内緒話ってのは堂々と大声ではやらないんだぜ?」
今、気になることを言われましたがそれどころではありません。
「ロビィさん。しっかりして!」
「う、ん…………!」
ロビィさんは何とか気力を持って立ち上がります。
「ヘールメスは優秀な機械でよぉ、機械ゆえに殺気なんて感じないんでさぁ!」
……さきほどから支離滅裂な喋り声がだんだんと近づいていき、そして……
「と、いうわけでぇ……」
ガシッ!
「「「!」」」
とうとう中から手が出てきて、崖の先の所を掴み……
「とうっ!!」
一気に跳ぶように崖から人が現れました。
いったいどうやって跳んだのでしょうか、私たちの上へと跳んだ何かは、私たちの目の前に着地しました。
そして、着地したなにかはゆっくりと顔を上げます。
「……初めての方は初めまして、さっきまで会っていたならお久しぶり……」
「…………!」
現れたのは一人の男の子でした。
野戦服に頭に着けたよくわからないものあ写真で見た通りです。
しかし、なによりも驚きなのは……
「キッド君……デヴィッドさん…………!?」
男の子は背中に頑丈そうな縄で二人の男の人を縛って、背負っています。
と、いうことは……
「ロビィさん、この人が……」
「うん…………!」
ロビィさん?
あれ? もしかして……
「ガンスロット・キノサキ…………!」
「……ご名答…………」
怒って、いる……?
「ロビィ……大丈夫なの?」
「……うん、心配しないで」
「ロビィさん……」
えっと……
この状況、どうすれば……
「……クロチヨ」
「なに? ラネットさん?」
「向こうの方は心配しないで。一応隊長に連絡はしたし、第六班だってそう簡単に出し抜かれるような人たちじゃないわ」
「え?」
「だから……信じて」
ラネットさん……
「……ロビィ」
「な、に?」
「向こうの事は向こうに任せて、今は仲間を助けることに集中して!」
「はい!」
ラネットさんも、ロビィさんも、やる気のようです。
数が分断されてまずい状況の中、私たちはせめて目的の仲間を助けるべく、気を引き締めて相手を見ました。
「ふふふ、女が三人で姦しい……」
この人……
いったい何を考えているのかよくわかりません。
そんな不透明な顔をして、私たちを見ていました。




