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壱壱話 大事なのは理由じゃない、安請け合いをしないことだ

 フランスの田舎のような感じの村に到着早々、村長に会いに行かなくてはならない。

 もう夕方になっちゃったけど、急いでいる。文句を言う暇がない。

 そんなこんなでラネットが中央の建物に入りしばらくして案内された。

 現在、その村長が来るまで待機中である。

 ちなみに俺の汚れたジャージはそのままではだめなので脱いで半袖の格好になっている。


「そろそろ来るわ。気を引き締めて」

「わかった」


 そして…


 ガチャ


 と、ドアを開け、現れたのは……


「君たちが客人だな。久しぶりだな、ラネット殿」

「はい。ご無沙汰しております」

「そう硬くなるな」


 現れたのは四~五十代のおじさんだった。

 豪華そうだが、ありすぎる感じがしない服装。

 背中には身の丈ほどのかなり大きい羽があった。

 どうやらこの人が村長のようだ……


「おや、人間の子かね。初めまして。私はオーリエ村の村長、ディオン・オーリエだ。よろしく」

「俺は金斬かなぎり白零はくれいという名前です。よろしくお願いします」

「私は三咲さんざき黒千代くろちよと申します。以後、よしなに」

「ほう、二人ともいい名前だ。大事にしなさい」


 はっはっは、と笑うディオンさん

 どうやら人当たりの柔らかい性格なようだ。


「さて、ラネット殿。本日はどのような用件で?」

「はい、それですが……」


 ラネットは昨日盗み聞きした蜥蜴男たちの会話を含んで話した。


「なんと……! 火蛇族サラマンドラが明日攻めてくるなんぞ信じられない話ではあるが……」

「しかし、事実であります」


 まあ、まとめるとこうだ。


・明日に火蛇族サラマンドラがこの村に攻めてくる。

・本来は国境の砦の者たちが気が付いたら連絡するものの全滅されているので火蛇族サラマンドラが潜んでいるのを知られていなかった。(ただし、里は砦の者たちとは連絡が取れていないので不審には思っていた)

・なお、このような事態はそうそうあり得ない。なぜならば……


「そもそも、火蛇族サラマンドラがこちらに攻めてくる事自体そうないのだ」

「なぜですか? 種族最大の武装国家なのでは……」


 千代はそう言ってくるが俺はある考えに至った。


「同盟だからってことですか」

「そうだ、我々、風精族シルフィ水妖族オンディーヌは一つ一つだと火蛇族サラマンドラには勝てない。しかし、二つの種族が合わされば話はべつだ」


 なるほど、抑止力ってことか。

 風精族シルフィ水妖族オンディーヌも平和で自ら戦おうとはしないしな。

 けど……


「しかし、今回は国境砦の者を連絡さえも行かせずに全滅させたのです。こんなこと普通は不可能。もしそれができるとするなら近いうちになにか強力な兵士ができたという事です」

「強力な兵士、か……」


 いったいそれは……


「何はともあれ、かなりまずい状況だ。水妖族オンディーヌや里の者が動けない以上、急いで避難しないといけない」

「正直に言うと火蛇族さらまんどらさんには勝てないのですか?」


 千代はそう聞くと……


「かなり厳しいのだ。ただでさえ厄介なほど強い武装国家であるからな。かなりの大軍が来るはずだ。その上救援はなしときた」


 まったくもって厄介だな……

 ……だったら。


「少し確認していいですか?」

「なんだね?」

「大軍でここに来ると言っていましたよね」

「ああ、そのはずだ」


 ならば……


「そうですか。では、ここにいる衛兵では攻めてくる火蛇族サラマンドラには対抗できない、と」

「そうだ。だから無理をして戦う必要はない。村の者には申し訳ないがここは大人しく里の方へ避難したほうがいい。ラネット殿、どうか手を貸してくれませぬか」

「……わかりました」

「……………」


 大軍で攻めてくる、か……

 つまりはそれなりの……


「……零ちゃん?」


 ……やってみる価値はあるな。

 俺はある考えに至った。

 それはとても無茶だと思える方法だった。



      2



 村長のディオンさんとの会談を終え、外に出た時の事。


「ちょっとハクレイ。あんた、なにか隠してない?」

「え?」


 ディオンさんの家を出てそうそうラネットに問い詰められていた。


「……なんのことだ」

「とぼけないで。あんた、さっき妙なことを企んでいる顔をしていたわ」

「どんな顔だよ」


 ポーカーフェイスには自信はあったんだが……


「じゃあ零ちゃん、やっぱりこの村を……」

「ああ……千代もか……」


 まあ、さすがに解りやすいかな。


「答えなさい。あんた、また無茶をする気なの?」

「い、いや……それは……」


 まあたしかに無茶な事だな。

 けど、やるしかない。

 そのうえ、攻めてくるのは明日だ。時間がない。


「……そうだよ。この村に来る前に火蛇族サラマンドラの大軍の大将さんに会ってくるんだよ」


 大軍ならある程度指揮系統が必要だ。

 だったらそこの指揮者である大将を叩けば……!


「零ちゃん。やっぱりこの村を護るんだね」

「ああそうだ」


 どんな無茶をしても護る者は護る。

 それが、用心棒だからだ。


「ちょっと待ってよ! あんたって正気なの!?」

「ラネット……」


 と、ラネットが入り込んできた。


「ラネットさん……」

「言っとくけどさっきの奴らとはまた違うのよ! あんた等は人間にしては強いけど、いくらなんでもそんなことは……!」

「大丈夫だ、ラネット」


 確かにそんな危険なことしなくてもいい。

 しかし……


「ラネット。このまま素直に火蛇族あいつらにこの村を明け渡されていいのか?」

「!?」

「ここの村の人たちは平和に暮らしているのだ。そんな人たちに急に村を離れろって言えるか?」

「けど、そうしないとこの村は……!」

「大丈夫だ」


 俺は断言しよう。


「奴らにこの村には一歩も踏み入れねえ」

「……何であんたはそこまでするの?」


 まあそうだな。

 まだ滞在もしていない村にやることじゃないな普通。

 まあ、だけど……


「それは俺達が……」


 見捨てたくはないんだから。


「用心棒だからだ」


 たとえ会ってたった一日の者でも。


「用心棒……」

「そうだ。どんなものからでも護る。この村も村の人も全部護る」

「……クロチヨはどうなのよ。あんたはこんな無茶をしていいの?」

「私? 私は……」


 千代は迷う素振りもなく答えた。


「だってこの村の人たちは悪い人じゃないんでしょ。だったら勝手に村を奪われたくはないよ」

「クロチヨ…………」


 するとラネットは……


「はあ……仕方がないわね。ただし、私も連れて行ってよ」

「は? なんで。別にそこまでは……」

「いいのよ。あんたには助けてもらった借りがあるし、それにね」

「なんだ?」

「放っとけないのよ」


 正直連れて行っては欲しくないが彼女の術があれば……


「わかった、頼むわ」

「決して一人で無茶はしないでよ。それが最低限の条件よ」

「ありがとう。お前には本当に感謝する」

「……! いいわ、気にしないで。今度は私がハクレイを護るんだから」


 と、ここでラネットはもう一度ディオンさんの家へと向かった。


「ハクレイ。私、もう一度ディオンさんの所へ行って説得するわ」

「説得?」

「ええ、避難した後でも宿が使えるようにね。あんたたち、宿無しで夜を越えるのは辛いでしょ」

「いや、別に野宿ぐらい……」

「駄目よ。せめて、あんた達が準備する所は最低限確保するわ」


 そう言ってラネットは行こうとしたが……


「ちょっと待って」

「ん? なによ」

「ついでにこの後買い物につきあってくれないか?」

「はあ? なんでよ」

「買ってほしいものがあるからだが、いいか?」

「え? 何を買うつもりなの?」

「ちょっと待て。千代」

「なに?」

「いいか………」


 俺は千代にラネットに買ってほしいものを言う。


「俺はこの後見て回りたいところがある。ラネットは説得をした後、千代とで買い物へ行ってくれ」

「わかった」

「ええ!? あんたはどうするのよ!」

「だからちょっと見回りたいとこがあるから」

「だったら私が案内を……」

「いや、俺だけで行く。お前らは買いたいものを買っとけ。内容は千代に伝えたから」

「はあ……」

「そうだな……一時間後にここへ集合。その後三人で宿に泊まる。わかったか?」

「うん。わかったわ」

「なんか釈然としないけど……わかったわ」

「よし……」


 そんじゃ、頑張りましょうか。

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