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壱零話 初めての村は緊張するか?

何で“拾”ではなく“壱零”かって?

仮に21話があったとして“弐拾壱話”より“弐壱話”が読みやすいから?

「千代! 大丈夫か!?」


 蜥蜴男を無力化した俺は無事を確認するために駆け寄った。

 そこには……


「零ちゃん! 私は大丈夫だよ」

「人間! 無事だったのか!」


 そこには特に怪我のない千代や風精族シルフィの女の子がいた。


「お前等、蜥蜴に襲われて大丈夫なのか?」

「それは……」

「私がいたから大丈夫でしたよ」


 ん?

 この声は……!


「白零殿もご無事でなによりだ」

「レイラさん!?」


 なぜかレイラさんがいた。


「どうしてレイラさんがここに!?」

「最近、風精族シルフィから連絡が来ないので不審に思ったリュンピ様が確認するために私を遣わしたのだ」

「そうなのか……」

「レイラさんが私たちを助けたおかげよ」


 言われてみると、足元には蜥蜴男たちが皆気絶して倒れていた。


「とりあえず、どういうことか説明してもらえないか、白零殿」

「おう、わかった」


 俺はレイラさんに先ほどの蜥蜴男たちの会話を説明した。



        2



「……なんと、火蛇族サラマンドラ風精族シルフィを襲撃するだと……!」

「ああ、連絡係ももう全滅しとるようだし決行は明日だと言ってた」

「そんな……」


 レイラさんも驚いていたが風精族シルフィの女の子も驚いていた。


「あの、あなたはいっただれなのですか?」

「わ、私は……」


 千代に問いかけられた少女は不安げにレイラさんの方を見た。


「大丈夫だ。この人間の者たちは信用できる。私が保証しよう」

「そ、そう。では……」


 少女は改めて名乗った。


「私は風精族シルフィのラネットよ。先ほどは助けてくれて……ありがとう」

「いいってことよ。俺の名は金斬かなぎり白零はくれい。もちろん人間だ」

「私は三咲さんざき黒千代くろちよ。以後良しなに」

「カナギリハクレイにサンザキクロチヨね」


 さて、自己紹介が済んだところで……


「それでお前は何で火蛇族サラマンドラに追われてたんだ?」

「実は……」


 ラネットは話そうか少し迷ったが、やがて口を開いた。


「私は、風精族シルフィの領地の事を調べる調査隊に属しているわ。それで近頃異変が起きているもしれないと調査をしに里を出たのよ」

「異変?」

「そうよ。私は族長から最近、国境警備の奴らから連絡が来ないから調べてこいと言われた。それで、私を含め、五人で調査に行ったところ……」

火蛇族サラマンドラに出くわしたってことか」

「そうよ。でも火蛇族サラマンドラだけじゃなかったわ」

「え?」

「後、他に人間がいたのよ。しかも奴隷じゃない人間が」

「人間が?」


 俺達と同じ“迷い子”か?

 そりゃあ不思議そうだがそれの何が…


「その人間はとても強かったわ。私の仲間、ゲイルが近づいただけで見えないくらい速く、ゲイルを斬り殺したのよ」

「なに!? ゲイル殿はたしか風精族シルフィの中で相当の強い者だったはず! それを人間が斬り殺しただと!?」

「そうよ。決して油断はしていなかった。全速力で行ったゲイルを…」


 ラネットは悔しそうに言った。


「なんだったのよあいつは。人間が出せる速度じゃない。人間であんなに強いのは初めてよ!」

「ラネット殿…」


 仲間が殺されたのだろう、ラネットは本当に辛そうに言った。


「そのあとは、ほかの三人が足止めをしているうちに里に危機を知らせることになったの」


 え……だったら……


「ちょ、ちょっと待てよ!? だったらその三人も助けなくちゃ……!」

「無理よ! それじゃあ何のために私は逃げたの? 役目はこなさないとだめなのよ!」

「……そうだな、すまん」


 役目、か……


「あたしはこのことを里に伝えるために全力で走ったけど、他の火蛇族サラマンドラに見つかっちゃって…。それで必死に逃げてきて、でも捕まっちゃってもうだめかって時に…」

「俺達が来たってことか」

「そうよ」


 ラネットはこちらを見てこう言った。


「あの時は本当にありがとう。あんた、人間にしては強いのね」

「なぁに、用心棒ってのは強いもんよ」

「……? さっきから用心棒って言ってるけどそれって何?」

「ああ、それはな…」


 俺が言おうとしたところだったが……


「あ、やっぱいいわ。話をするならまずは村にに着いてからよ。ただでさえ時間がないのだから」

「ああー……」


 まあそうだな急がなきゃな。

 ……ん、村?


「ラネット、村ってのはいったい……?」

「ああ、それはね。それぞれの種族の集落は村と里とに分かれているのよ。それで領地内で重要な役割を持つのが里。その末端となる集落が村よ」


 首都と田舎のようなものか。


「もし、火蛇族サラマンドラが攻めてくるのなら、まずは里よりも拠点となる村を攻めるわ」

「そうか……!」


 確かに遠征には兵糧とかが必要だ。里を攻めるのなら大軍が要るし、その分準備も多い。


「決行が明日なのなら、今から里に行っては里から村までの救援は間に合わないし。せめて先に村の住人達に里へ避難するよう言っておかなくてはならないのよ」

「待ってくれ、その村には衛兵はいないのか?」

「いるわよ」


 だったらそいつらには……


「だけど、火蛇族サラマンドラは種族最大の武装国家よ。正直、相手にならないわ」

「だめか……」

「本来なら国境砦の者が、近づいただけでも警戒するよう、連絡が来るはずよ」


 しかし今回は連絡係ごと倒されたから届いていない、と。


「可能なのか、そんなこと?」

「不可能よ。そんなの、気づかれないうちに近づいて全滅させることなのよ」


 まるで潜入だな。と、思っていることにレイラさんが……


「ところで、村へ行くのは解ったがこいつらはどうするのだ?」


 レイラさんはは地面に倒れ、気絶している蜥蜴男を指した。

 ラネットは疑問に答えた。


「それなら私に任せて、精霊術を使うわ」

「「?」」


 またもや精霊術だ、

 なんなのか後でラネットに聞いてみよう。


「……。…。……。………。……」


 ラネットは何かを唱えだすと……


「【空気の封箱(ボアッタエア)】!」


 すると、


「「!」」


 風が吹き、蜥蜴男たちに纏わりつくと蜥蜴男たちが宙に浮かんでそのまま滞空しているのであった。


「レイラ。頼みがあるの」

「なんだ」

「本来なら私が里へ行って報告しないといけないわ。でもこうなってしまうと、村へ行って避難勧告をしないといけない。それができるのは同じ風精族シルフィの私だけ。だから、報告書と手紙を書くからこいつら連れて代わりに里へ行ってくれないか」

「……わかった。代わりに私が行こう」

「ありがとう」


 そして、報告書と手紙を書き終えレイラさんに渡した。


「さあ、村へ行きましょ」


 こうして俺と千代とラネットは急遽ルート変更で村へ、レイラさんはラネットの代わりに里へと行くことになったのだった。

 ちなみに、宙に浮いた気絶したままの蜥蜴男は空中を漂いつつ、レイラさんについていったのであった。


「……………」

「……………」


 その様子に俺達は呆然としていた。


「……零ちゃん」

「……なんだ?」

「やっぱりここって不思議な所だね」


 何を今さら、と思ったが俺もまた幻界の不思議さを再認知したのであった。

 とにかく俺達は少々急ぎ気味で風精族シルフィの里へと向かったのであった。



          3



 そして、急ぐために平原を歩き続けたところ……


「はあ……はあ……はあ……」

「大丈夫? ハクレイ」

「なんの、これしき!」


 言っておくが興奮ではない。疲れているのだ。

 なんせ歩いて、戦って、急いで、歩き続けてと休憩なしではきつい。

 さらには……


「ごめんね零ちゃん。私が体力がないばかりに……」

「いいんだよ。こういう時はしっかり甘えろ」

「だらしないわねハクレイ。強い人間ならこの程度で息上げないでよ」


 おまえは羽で浮遊してるから楽そうじゃん。

 ってかラネット。何時の間に白零って名前で呼んでるんだ。


 俺は千代をおぶさって歩いていた。

 なにせ千代は腕力は(銃が扱えるから)あるが体力はそんなになかった。

 その上千代は先ほどの戦いで足を捻ったようだ。隠そうとしたがバレバレだ。

 だから俺は千代をおぶっているのだが……


「………重い」

「ちょっとハクレイ! レディに対して失礼じゃない!」


 そんなこと言われても重いんだよ!

 別に千代自体は重くはない! 寧ろ軽いくらいだ!

 けど大量の銃器を所持しているから重いのは当然なんだよ!

 しかも、背中の感触が銃器でゴツゴツしているため結構痛いし!


「ごめんね、零ちゃん。今降りるから」

「いい。こういう時は安静にしてろ」

「でも……」

「大丈夫だから」

「……わかった」

「………もう……」

「?」


 やれやれ、大丈夫か?

 ま、いい運動には……ならないか。

 ちなみに背中の刀は外しており千代が持っている。 


「……人間は精霊術が使えないから不便よね」


 ……精霊術、か。


「ラネット」

「なに? ハクレイ」

「その“精霊術”ってのはなんだ?説明してくれないか?」

「そうね、わかったわ」


 俺は興味を持って聞いた。


「精霊術ってのは幻界の特定の種族のみに扱える不可思議な現象を起こす術の事を指すのよ」

「不可思議って魔法のようなものか?」

「魔法? よくわからないけど、つまり水を出したり、風を吹かせたり、火を起こしたりするなど、さまざまなことができるのよ」


 はあ~、ずいぶんファンタジーだなこれ。


「あの、特定の種族ってなんなのですか? 使えない種族もいるのですか?」

「ええ。使えるのは水妖族オンディーヌに私の風精族シルフィ、さっき戦った火蛇族サラマンドラ、あとは地人族ノーム屍霊族アンデットの五つね」

「じゃあ精霊術が使えない獣人族こぼるとさんや鳥人族ほーくまんさんは他より不利なのですか?」

「それは違うわクロチヨ。彼らは精霊術は使えないけど純粋に高い身体能力を誇るから、精霊術なしでも十分強いのよ」

「へ~」


 そんな力関係なのか。


「また、精霊術は使用する本人の精神状態に深く関与しまうわ。つまり、疲労していたり精神が不安定な時は使えないの」


 なるほどな。ただでは使えないと言う訳だ。


「本当は速く移動できる術があるんだけど、蜥蜴男あいつらの拘束を維持してるだけでもうそんな力は残ってないの」

「……そうか。羽で浮遊して楽そうだなと思っててすまない」

「え? ああ大丈夫よ。たしかに術をかけ続けるのは疲れるけど、あんたほどじゃないわ。……それにもうそろそろよ!」


 お、もうそろそろか?


「見えてきたわ。あれよ」

「あれが……」

風精族シルフィの村……」


 見えてきた村は西洋風の建造物があり、畑もたくさんあって地面が緑色に茂っていた。

 それはフランスののどかな田舎にやって来たみたいだった。


「なんで的確に仏蘭西ふらんすなの? 欧羅巴よーろっぱじゃないの?」


 いや、何でもかんでもヨーロッパで一括りにすると抗議が来そうだから。

 それに、明確な違いもあるんだぜ。街並みはもちろん料理とか。


「ようこそ。オーリエ村へ」


 俺と千代はこの大陸に来て初めての村に来たのであった。

同じヨーロッパでもドイツとイギリスじゃあ雰囲気的にも違いそうだし。

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