君となら、エルフたちのもとへでも。
生まれた時から共にあった二人が、
すべてを捨てて逃げる物語です。
主従であり、家族であり、相棒である二人が、
王国の追手から逃れながら、自分たちの未来を掴もうとする。
追われる日々の中で、それでも二人は小さな幸せを見つけていく、
そんな儚くも温かい逃避行の物語を、どうか楽しんでいただければ幸いです。
また、国名が決まったので今話から使いたいと思います。
少し混乱するかもしれませんが、どうぞよろしくお願いします。
「逃げたはいいものの、これからどうしようか。」
僕たちは兄に謀反の罪を着せられ、アルヴェリア王国に入った。
しかしフォルセリア王国軍は僕たちがアルヴェリア王国に逃げたと気づき、僕たちを追ってこちらの国にはいってきた。
そして僕たちは町で王国軍と遭遇した。
隠れたが見つかって交戦し、なんとか撒いて、今に至る。
僕たちは世界と戦っているのである。
三日三晩走り続けて、疲れていないはずがない。
僕らは安心して眠れる場所を求めていた。
「シオン様、エルフの村などどうでしょう。」
「なぜエルフなんだ?」
「レオニダス家は古くから、エルフと深い繋がりがあります。」
そういえばそんな話をじいやから聞いていたかもしれない。
「さらに、エルフは基本人間との関係を断っています。」
「だが、僕たちを謀反人として追っているのもレオニダス家である兄だ。受け入れてもらえるだろうか。」
「エルフは人の嘘を見分ける魔道具をもっています。それを使って確かめてもらいばいいのです。」
「なるほど。ならそうしよう。ラナ、移動速度強化バフかけてくれ。最短ルートでいくぞ。」
「わかりました。ステータスアップ!」
ラナの手元に空色の魔法陣が浮かび、僕の足元で光る。
「ありがとう、体が軽くなったよ。行こう。」
「いえ、ありがとうございます!」
そこから1時間ほど走ったところに、エルフの村はあった。
山のふもとにある池の中島につくられた村だ。
「止まれ人間。何者だ。」
「こんにちは、レオニダス・カイエン・シオンです。以後お見知りおきを。」
「レオニダス…シオン...?どこかで聞いた名前だな。」
やはりエルフ村まで伝わっていたか。
「レオニダス家の三男です。」
「ああそうだ、思い出した。」
「拘束魔法、封鎖!」
問答無用で襲ってくるのかよ。
これは─結界魔法の一種か。
「ラナ!」
「だめです、解除できません!」
「お前たちは軍に引き渡す。」
「は…話を一度聞いてください!!」
「僕たちはそんなことしてないんです!」
「犯罪者に貸す耳などない。どうせならここで殺してもいいのだぞ?」
「くっ」
「こい、足だけ解除してやる。抵抗したら命はないと思え。」
ここは従うしかないのだろう。
***
僕たちは村のはずれにある小牢屋にいれられた。
光が射さず、じめじめしている、古びた牢屋だ。
なんとか脱出できないかと方法を模索したが、見つからなかった。
古びているというのに蟻の入り込む隙間もない。
そこは人通りが少なく、助けてもらえる望みも少ない。
普通は絶望だった─だが、僕たちは諦めていなかった。
太陽が牢屋から見えなくなったころ、昼食が運ばれてきた。
パン2つと少しばかりの燻製肉だ。
後ろにもう一人いた。
「アレックス殿、これが例の二人です。」
まってたぜ、アレックス。
「や、やあ。」
アレックスは宝石がフリーマーケットで売られているのを見つけたかのような顔で言った。
「おっ天才といわれた二人が捕まるなんて、珍しいねえ。」
「やっぱりお前かアレックス。」
彼はセロイアル・セブ・アレックス。
「お前、やっぱり暇なのか?」
「俺はただ自由に生きてるだけさ。」
「はいはい、で、何の用だ?」
「二人がたちが捕まったと聞いてさ、でも二人はそんなことしないだろう?いや、しないと信じてる。」
あたりまえだ。
「するるわけないだろ」
「知ってる。」
じゃあなんで聞いたんだよ。
「なんかむかついてきた。」
「まあまあ、ここから出たいだろう?」
「もちろん」
「なら助けてやる。」
うーんやっぱむかつく。
「ありがとう。」
「無理してまで言わなくてもいいぞ。」
彼はエルフの方をむいて諭すように言った。
「聞いてくれ、こいつら二人は謀反をする奴ではない。おれはガキのころからこいつらと育った。だから一番よくわかっている…と思う。お前たちが持っている魔道具をつかえばわかるはずだ。まずは話だけでも聞いてあげてくれないか。」
エルフは気まずそうな顔で牢のカギを開けた。
「出ろ。もし嘘だったりしたら…アレックス、お前も牢屋行きだぞ。」
アレックスは笑いながら言った。
「大陸最大の商会長にそんなことしたら、君たち死ぬよ~」
エルフの顔がこわばる。
「冗談さ。さ、行こうよ三人とも。」
なんでこんなやつが商会長になれるんだ。
さっき拘束された門を通り、広場で着いた。
なんだなんだと村のエルフが集まってきた。
牢の鍵版をしていたエルフが言った。
「村長、先ほど捕らえた二人なのですが、アレックスどのが弁護されたのでいったん牢から出しました。あの魔道具で、真偽を確かめてください。」
エルフの寿命は1000年ほどだという。
村長はちゃんと老人の姿をしていた。
きっと800は過ぎているのだろう。
「お前たち、名前は。」
ズシン、と言葉がのしかかる。
これが800年の重さ…。
「私はレオニダス家が3男、レオニダス・カイエン・シオンです。そして彼女は、私付きのメイド、ララテナです。」
「今王国軍におわれているという者たちだな。」
「はい。」
「反応なし、か。どうやら本当のようだな。」
はっとして後ろを振り返ると、そこにはいつのまにか魔道具が置かれていた。
「なぜ追われている。」
「これは私たちの推測でしかないのですが、自分より先に爵位を授かった私が気に入らなかったのでしょう。私たちに無実の罪をかけました。」
魔道具は反応なし。
僕は胸をなでおろした。
「これも本当のようだ。」
「そうか、無罪だったのか。すまないことをした。」
「いえ、捕まってしまうのは当然のことでしょう。」
「代わりと言っては何だが、なにか一つお前の望む通りに動こう。」
「ありがとうございます。」
「また、王国軍が来るまでここに滞在することを許可する。さらに我々の全勢力をもって共に戦うことを誓おう。」
「なにもそこまで…」
「我はレオニダス家を信用していた。そんな汚れたことをするやつがいるとは思っていなかった。だからシオン、そなたは我々の排除対象だった。しかし無実だと分かった。そして我々の排除対象はそなたの兄となった。」
「弟をだまし、陥れ、そして国のためだといい他国へまで追ってくるような卑怯者に、エルフの怖さを教えてやる。
「心強いです。ありがとうございます。」
そしてアレックスも言った。
「シオン、ラナ、二人は絶対俺が護る。アレックス商会長のなにかけて。」
横を見ると、ラナが涙を流していた。
「あ…ありがとうございますう!もう、怖くて怖くて…」
そんなに怖かったのか。
「二人とも、今我々が行ったことは必ず守ろう。今夜は安心して眠れ。また明日話し合おう。皆の者、二人に寝床と食事を用意してやれ。」
その言葉を合図に、宿屋と料理人らしきエルフは自分の家に向かった。
なんか、すごい波乱万丈な一日だったな。
読んでくださりありがとうございます!
才能があるのに自由がない二人が、
それでも一緒に生きようとする物語を書きたくて始めました。
次回もよろしくお願いします。




