君となら戦いと、その先へも
生まれた時から共にあった二人が、
すべてを捨てて逃げる物語です。
主従であり、家族であり、相棒である二人が、
王国の追手から逃れながら、自分たちの未来を掴もうとする。
追われる日々の中で、それでも二人は小さな幸せを見つけていく。
そんな儚くも温かい逃避行の物語を、どうか楽しんでいただければ幸いです。
隣国に入ってて三日が経った。
僕たちはその間、旅に必要な物資を揃え、この国の情報や僕たちの事件に関する情報を集めた。
そして明日、もう国の中にはいないと判断した国王が率いる軍隊がここに到着することが分かった。
軍には探知魔法の使い手がいる。
一度会ったことがあるが、10キロ離れた敵の位置がわかるといっていた。
もしほんとなら大きな脅威だ。
だからもうこの町にとどまるわけにはいかない。
もし今日中に街を出なければ明日にはあの世だ。
そうなるわけにはいかない。
そう思って僕たちはこの町を出ることにし、今町の門に向かっている。
大通りを歩いていると、肉屋のおじさんが声をかけてきた。
その肉屋は、それはそれはおいしいハンバーグを銀貨1枚で提供してくれるすばらしいお店だ。
もし今日この町を出るのでなければ近いうちにまた訪れていただろう。
「二人とも、もう行くのかい?明日には隣の国の軍隊が来るらしいよ。それはそれは大軍なのだと。見なくていいのかい?」
大軍…か。
きっと僕たちをとらえることが目的だろう。
「ええ、僕たちはあまりそういうものには惹かれないので。」
「そうかい。気をつけるんだよ。最近は盗賊もふえているからねえ。」
盗賊と大軍だとわけがちがう。
僕たちはその大軍に追われているんだ。
そんなの大軍のほうが怖いに決まってるだろ。
「ご忠告ありがとう。気を付けます。」
僕は表情を繕ってそういった。
「ラナ、いくぞ。」
「はい!!シオン様。」
大通りを抜け、町の外れにある古い街門をくぐる。
軍が来るのは明日のはずなのに町のほうがさわがしい。
嫌な予感が、背筋を冷たく撫でた。
「ラナ、止まれ」
「え……?」
僕はラナの手を引き、道の脇の茂みに飛び込む。
次の瞬間――
地面が震えた。
「……馬の足音。しかも、かなりの数だ」
ラナが息を呑む。
「まさか、もう……?いくらなんでもはやすぎます」
旗が見えた。
赤い獅子の紋章――僕たちの国の象徴だ。
「探知魔法の使い手がいるって言ってただろ。僕たちの位置を、もう掴まれたんだ」
「もしかしたらすでに囲まれているかもしれない。」
ここら辺にいるのはわかっているが細かくはわからない、とかならいいんだが。
馬の列が止まり、隊長らしき男が前に出る。
「レオニダス・カイエン・シオン騎士爵!そしてセトラート・クイン・ララテナ!そこにいるのは分かっている!出てこい!」
捕まったら――殺される。
ラナの肩が震える。
僕はそっとその手を握った。
「大丈夫だ。まだ終わりじゃない」
「も…もちろんです!」
ラナが決意したような顔で僕に合図を送る。
僕たちは茂みから姿を現した。
隊長が僕たちを見るなり、口元を歪めた。
「やはりいたか。お前たちを拘束する。抵抗すれば――」
「抵抗するに決まってるだろ」
僕は一歩前に出て、魔法陣を展開する。
「願いよ、輪となりて世界に刻まれよ。我が祈りに応じ、道を描け。」
ラナも僕の横に並び、同じように展開する。
「なんだ…こいつらの魔力は…隊長、いやそれ以上だ…・」
兵士たちがざわつく。
「ひるむな!捕まえろ!」
「シオン様……」
「戦うしかない。ここで捕まったら終わりだ」
「でも」
「殺すのはだめだ、本当に犯罪者になってしまう。」
「ええ、わかってます。」
隊長が斧を振り下ろす。
「構えろ!二人を逃がすな!」
兵士たちが一斉に武器を構えた。
「隊長さん、あんた一年前ぐらいに僕に稽古をつけてくれたよな。もう攻撃パターンは研究済みだ!」
僕はそういいながら横によけ、後ろに下がる。
ラナが小さく息を吸う。
「シオン様……私、やります」
ラナの瞳が強く輝く。
「光魔法――ミラージュ・フェザー」
無数の光の羽が舞い、僕たちの姿を包む。
兵士たちが目を細め、ざわつく。
混乱している兵士もいるようだ。
「幻影か?! 位置が……!」
僕はその隙に地面へ手をつき、魔力を叩き込む。
「風魔法――ウィンドランス」
鋭い風の槍が地面をえぐり、兵士たちの足元を崩す。
馬が驚き、隊列が乱れた。
「今だ、ラナ!」
「はいっ!」
僕たちは森の奥へ駆け込む。
背後から怒号が響く。
「追え!絶対に逃がすな!」
「追いつかれてたまるかよ。」
木々をすり抜け、枝を避けながら走る。
「シオン様、あれを使います。」
「わかった。」
「大迷宮魔法、迷える子羊たちの戯れ。」
大迷宮魔法はエルフの魔法だ。
故に小細工に強い。
だが――
「シオン様、前!」
ラナが指さす方をみると、そこには別の部隊が待ち構えていた。
「……挟み撃ちか」
ラナが僕の腕を掴む。
「どうしますか……!」
僕は深く息を吸い、ラナの手を握り返した。
僕たちは同時に魔法を放つ。
「炎魔法、フレイムバースト!」
「光魔法、ホーリーブリンク!」
炎と光が交差し、視界が白く染まる。
兵士たちの叫び声が遠ざかり、僕たちはその隙間をすり抜けた。
森を抜け、夜の草原へ飛び出す。
「……はぁ……はぁ……逃げ切れた、か……?」
「シオン様……!」
ラナが僕の腕にしがみつく。
その手は震えていたが、温かかった。
夜風が吹き、遠くで軍の喚声が響く。
よかった、逃げ切れた。
「もうこの町にはいられないな。」
「ええ、次の町をめざしましょう。」
「確かあいつの探知魔法は地面にマナを張り巡らして探知するものだった。空をとんでいれば見つからないと思う。」
「ラナ、姿を消す魔法は使えるか?」
「ええ、詠唱の副作用で周りに霧ができますが。」
「問題ない。頼む!」
「霞魔法、霞纏い!」
じゃあ僕は空を飛ぶ魔法を…
「風魔法、蒼羽。」
背中に風の羽がつき、地面は霧でおおわれ、そして僕たちはその場をあとにした。
読んでくださりありがとうございます!
才能があるのに自由がない二人が、
それでも一緒に生きようとする物語を書きたくて始めました。
次回もよろしくお願いします。




