閑話11 その老人達、帰る
セカンドワールドオンラインの運営本部。
どういうわけかそこへと続く鉄の塊である扉は切り抜かれ完全武装したジジイ達〈老人会〉と軍のお偉いさんである佐藤大地率いる戦闘部隊〈ハゲ予備軍〉が永田チーフ達と相対していた。
「えっと……佐藤さん?」
「はい!何ですかチーフ!」
「ちがーう!お前じゃない!」
永田チーフの呼びかけに応えたのは佐藤大地ではなく、運営側の佐藤さんだ。
佐藤違いである。
「気を取り直して…大地さん。今日は何の御用で?」
「銃を使ったゲームを作れと言った御用で?」
「ゲーム性を取り除いたリアルなゲームを作れと言った御用で?」
「銃声と硝煙の香織漂う世界を作れと言った御用で?」
「許可……くれ」
もはやそれ以外は受け付けないと言った剣幕で変人と変態の集まりはまくし立てる。
銃を持った軍隊の方が目の前にいたとしても欲を優先する変人と変態の圧力、それは凄かった。
「あぁ…はい、そうですね。出来るだけ現実に近い物理法則で銃を使った戦闘訓練が出来るようなものであれば作ってもいいですよ。もちろん15歳以上に限りますからね」
「18歳以上にしなくていいのか?」
「え?血のエフェクトとかないでしょ?」
「……はい、ナイデスヨ。モンダイアリマセンネ」
18歳以上限定にすると少しではあるが売り上げが落ちる。
それを危惧したのでゲーム内で特定の条件が満たされると倫理コードが解除されるのを変人と変態達は黙っていたのだった。
「あぁ…もう帰るわ。ちょっと疲れた。皆帰るぞ」
「あ、大地さん。表の雑魚達の処分は任せるぞ」
「すいませんね…老体には響くものでして…」
「あぁ永田さん。後で私たちに最新のソフトを送ってくれよ」
ジジイ達は飲んでいた緑茶と饅頭がなくなると飽きたのか帰っていった。
ぶち抜いた鉄の扉を丁寧に塞いで。
「……相変わらず自由ですねぇ。お義父さんは…はぁ……また後処理…後処理に続く後処理…」
「……結構苦労してるんだな」
「はぁ……許可は出します…後でそのソフトを軍部の本部宛に300ほど送ってください。後本体もお願いします。代金は入金しておきますので……では私は後処理があるのでこれで……」
そう言って佐藤大地率いるハゲ予備軍もとい軍部の精鋭達は引き返していく。
その佐藤大地の裾を掴むものがいた。
「……待って…これを使うといい…今回は特別…お試し」
「中原…それは…失礼なんじゃないか?」
中原が佐藤大地に渡したものはスグハエールV(育毛剤)だった。
「ありがたくいただきます」
「うわっ…大地さんずるい」
「後で使い心地聞かせてくださいよ」
「それ何円するんですか?」
「うるさいなぁ。さっさと帰れ!しっしっ!」
永田チーフの限界がきた。
主に眠気の。
チーフはいつのまにか寝袋に入っていた。
「では失礼します」
軍部の精鋭達は今度こそ引き返していった。
「お、おい道が塞がってるぞ?!」
「工兵!工兵はいないか?!」
「とりあえず押せば向こう側に倒れるはずだ」
どうやらジジイ達が塞いだ鉄の塊が邪魔になっているようだ
「よし押すぞ!」
「「「「せーの」」」」
三角形に切り抜かれた鉄の塊は倒れることなくそのまま奥にずれていった。
そして半分ほど鉄の塊をずらしてだところで扉がガタガタと揺れ始めた。
「扉開けまーす!付近にいる方は潰されないようご注意くださーい!」
藤井の明るい声が響く。
その声に反応した殆どがすぐに扉近くから離れる。
そして扉は左右に勢いよく開いた。
すると一瞬ではあるが鉄の塊が宙に浮く。
扉から離れなかったエリート三人の足の小指が犠牲になった。
「足が!足が痛てぇ!」
「誰かぁ!足を!俺の足をどうにかしてくれ!」
「衛生兵!衛生兵!」
「誰か治療してやってくれ……はぁ。どうしてこうも面倒ごとが…この育毛剤効くといいなぁ…」
ギャーギャー騒ぎながらも軍部の精鋭達は帰っていった。
「じゃあ最終調整は終わったことだし飲みに行くか!」
「チーフ!チーフ起きてくださーい!」
「後12時間…」
「…じゃあチーフ抜きで行くぞ」
「宴だ!宴だ!」
「私…残る…デバッグする」
「ありがとう!中原頼む!」
「じゃあいつものところに予約入れとくよ」
「森田さんアザっす!」




