閑話その10 その老人、鉄を切り裂く
ジジイ…無理すんな
ジジイ達の快進撃は止まらない…
止まらな…ない
そもそも警備がいない。
「罠か?」
「いや、違う…いや?分からん…流れがおかしい」
「裕也さんが読めないなんて珍しいじゃないの」
ジジイ達は足を止めることなく進む。
が行き止まりである。
壁は金属質で殴ってもヘコミすらしないだろう。
そうこれが普通のジジイなら。
「みんなちょっとこのハリボテの壁を切るから下がっててくれ」
裕也はくの字に曲がった鉄パイプを地面に置き腰にある刀を鞘から抜いた。
蒼白い刀身が露わになる。
「おお、久しぶりに見るなぁ」
「裕也さんお得意のアレですね」
「超高周波ブレード『マサムネ』を使ったサムライの一太刀」
「「「伝家の宝刀『斬鉄剣』!!!」」」
ジジイ達が声を揃えて今から必殺技が来る!
…みたいな空気を出したが裕也は動かなかった。
「あ、ちょっと待って充電してなかった…あっ、ちょっと傷ついてるし…研がないと」
ここに来て準備不足が露呈する。
使った後、そのまま倉庫の中に入れてしまっていたのだ。
「「ええ〜……」」
「マジかよ裕也さん…」
「ちょっとワクワクしたんだが……ワクワク返えせ」
ブーイングの嵐である。
「あーそこどけー」
ジジイの一人が工具を持ち出す
「分解するぞ」
「溶接部分を焼き切るか……」
「「おいバッテリーー!」」
準備不足が露呈する。
「持って来たぞ!」
「流石やっさん!好きだ!」
「いつも尻拭いありがとう!好きだ!」
「やっさんありがとう!好きだ!」
「やっさん、好きだ!」
「野郎になんかモテたくねぇよ!」
やっさんと呼ばれるジジイが表にあった車を解体してバッテリーを持ち出した。
「裕也さん、ほら。砥石だ。一応持って来たぞ。あと必要な道具諸々も」
「流石できる男は違うねぇ」
できる男“やっさん”は刃物を研ぐための道具一式も持って来ていた。
「なんで女ができなかったのか気になります」
「彼女さんにひどいことでもしたのかい?」
「いい人なんだけどねぇ」
「やめて。それ以上傷をえぐらないで…」
いい人“やっさん”……いい人、という評価でいつも終わってしまい女ができなかった悲しき男である。
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「よし、終わった」
裕也は研ぎ終わった刀を片手に立ち上がる。
周りのジジイやババアは水分補給をした後おにぎりを食べていた。
「お?裕也さん。やっと終わった?」
「あぁそうだよ。ちょっと試し切りするわ」
そういうと裕也は壁に向かって刀を一閃した。
壁には向こう側が見えるくらいの切り口ができていた
「後二回で穴が開くな」
「おい、いきなりやるなよ。みんなそれが見たくて待ってたんだぞ?」
「いやすまんすまん。
じゃもう一回やるぞ。そいっ」
「いやだから準備が」
裕也はもう一度刀を一閃する。
「おい!裕也さんが壁切ってるぞ!」
「切るなら切るって教えろ!見に行くから!」
「この自由人が!ちょっと待ってろ!」
しかし裕也さんは止まらない。
「ほいっと」
「ダァぁぁあああ!」
「ゆうやさぁぁぁああん」
「待ってろって言ったよな?な?」
三角形に壁はくり抜かれ開通した。
「ごめん。聞いてなかった」
「おいおい裕也さんや」
「もしかして…難聴?」
「もう歳だもんなぁ」
「いや、ほんと、すまん」
ジジイ達はそのまま歩いていく。
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「「「ひぃぃいい……」」」
「ち、チーフ?!なんかヤバイ人来てますけど?!」
「だいじょばないだいじよばない」
セカンドワールドオンライン開発室。
そこへ通じる道は厚さ60センチの合金の壁によって塞がれていた…はずだった。
だがどういうわけかその壁は切り取られ開通していた。
「なぁなぁあそこの壁には電磁バリアも貼ってあったはずだろう?」
「何者かによって配電盤をぶっ壊されたため無力化されました」
「脱出口は?」
「そもそも脱出口を装甲車で走って来て乗り込んだようなんですが?!」
ヤバイジジイ達が装甲車で通って来た道はそもそも彼らの脱出口だった。
「チーフ!しっかりしろ!」
「ん?なんだ?娘のお遊戯会が明日にあって…」
「お前の娘もう高校生だろ?!」
「え?妻が出産?!名前は凛が…」
バッシャーンっ!
チーフの頭を叩くものがいた。
「何やってる…あいつら…何?…知り合い?」
「痛…んん?なんだ中原か。どうした?」
チーフの頭を一斗缶の比較的柔らかい部分で叩いたのは中原だった。
「あのジジイ…私…知らない…チーフ…知り合い?」
「ん?ジジイ?……あっ裕也さんだぁ…だいじょぶ…だいじょぶだよ……多分」
「まさか…サムライ?!……モーション担当として是非お話しさせてください!新しいアーツ用モーションが思いつかなくて!」
とまぁそんなことをしていたら当然彼らはやってくるわけで
ご丁寧にドアを開けてその老人は現れた。
「早く銃使えるゲームくれ」
「そのためだけにカチコんで来たのか?!」
「え?そうだけど……逆に理由他になんかあった?」
「嘘だろ…はぁもういいよ……おーい最後の調整終わったかぁ?!」
「「終わりました!」」
そしてジジイ達はやっとの事でそのソフトを手にする。
「まだベータテストまえだからな!」
「どうせクローズベータは終わっとるだろ」
ジジイ達はそういうと帰ろうとしたが…
「あれ?裕也さん?」
「あ?……大地か…お前こんなところにどうしているんだ?」
そこにいる男性は佐藤裕太の父であり、
現役の軍人の中でも一番偉い人物である佐藤 大地その人である。
なぜ彼が偉くなったのかというと組織の腐敗を取り除いた結果一番偉い人物が彼だったというだけの話である。
「それはこっちのセリフですよぉぉおお!!
お義父さぁぁぁぁああああん!!!!!」
この佐藤大地という人物。
かなりの苦労人である。
その証拠に少し頭頂部が寂しくなっている。
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