ジィちゃん参っ戦☆
とうとうお昼の虎が暴れ出す
俺たちはコロシアムの中に入っていく
通路は石造りのようで触ったらひんやりしていて気持ちがよかった
階段を上がり観客席のところに出る
まだ歓声は聞こえてきていないので、試合は始まっていないらしい。
構造としては野球場がモチーフだろうか
そう悠長に構えていたのがいけなかった。
というか宿探しが遅すぎたのだろう。観客席のいい席は全て埋まっており、後ろの方に空きが点在しているという状況になっていた。
参加者が戦うリングは直径70メートル高さ5メートルの円柱の上にさらに直径60メートル高さ1メートルの円柱がのったかたちをしている。そして観客席との間には5メートルの隙間がありその下は剣山になっている。ちなみに観客席はリングより4メートル高い。
で前の席だと手前に来た選手?と呼ぼうか。彼らが戦っているのを見ることができるが後ろの方だと観客が邪魔でよく見えないのだ。賭けで勝つため見に来ているのにうちの祖父である裕也なら絶対でるし優勝間違い無いだろうから誰に賭けるか悩まなくて済むなぁと思っている自分がいる。
そう、そんな予感がする。
賭けは各観客席の椅子の前に設置されているパネルからするらしいが本戦の開始までしか賭けることはできないようなので注意したい
1vs1 の予選が始まった
予選なので5分でどちらかが倒れるか5分経った時点でのHP残量が多い方の勝ちというルールだった
やはりソロだと人が多いから早く回さなければいけないのだろう
しかし5分というのはとても短いと思う。
これでは本来「待ち」を主流にしている人でも攻めなければならないから本戦で「印象が違う!」なんてことが起きそうな気がする
アナウンスが響き渡る
『Aブロック予選一回戦 「ユーヤvsサクライ」がはじまります。では…レディーGO!』
裕也?聞き間違いか?
でもやってるなんて家じゃ一言も言ってないのにな。やってるなら言ってくれればいいのに。
ユーヤと呼ばれたプレイヤーは白髪で緑の和服という見た目に加え、長めの両刃剣を正眼の構えから動かさずに待っていた
刀だったらサムライだったよと家に帰ったら伝えてあげよう
相手は動かないジィちゃんに対して少しイライラしているようだ
未だにジィちゃんは動かない。でも右足をトントンと地面に叩きつけているところからするに現実に帰ったら今日の夕食は何を作ろうかと考えているのだろう。あれはそういうクセだ。
3分経過
相手はジリジリ寄っていくがそこまで警戒しなくていい。ジィちゃんの間合いはまだ違うから。
でも、あと5歩進んだら気を抜いた瞬間死ぬだろうね。気を抜かなくても死ぬという不条理なんだけど
1歩
ジィちゃんの右足が止まる。
献立は決まったようだ。だが悪いなジィちゃん。
今日の夕食は肉じゃがに味噌汁、それに加えて小松菜のおひたしを作ろうと俺の中で決まっているんだ。あとメインは鯖の照り焼き。
2歩
3歩
ジィちゃんはゆっくりと小さく一歩踏み出す
4歩
それと同時にジィちゃんも小さく一歩
5歩
ジィちゃんはまたゆっくりと小さく一歩踏み出す
それを見て相手は槍で刺そうと思ったのか少し走った。
がその時には負けが決定していた。
すれ違い様に首を切られていたのである。
相手からはジィちゃんが踏み込んだ瞬間に消えたように見えたことだろう。まぁ実際はただ鋭く踏み込んだだけなのだが。スキルでもなんでも無い技つまりプレイヤースキルのみでジィちゃんは勝った。多分彼が一番チートだと思います。
勝利アナウンスが流れユーヤと呼ばれたプレイヤーが退場する時バッチリ目が合ってしまった。
すると彼は何やらニヤニヤして去って行った。
明日まで猶予はあるのだがユーヤに俺は全額賭けて鍛冶ギルドに行くことにした
「今の人すごかったね。ユウ」
「すまん。あれ多分身内だわ。というか確実」
「身内って誰?」
「俺のジィちゃん。佐藤 裕也」
「「剣神⁈ラストサムライ⁈」」
「えっ何?そんな呼び方されてたの?」
「いや、何世界チャンプしれっと連れてきてるのかな」「世界チャンプゥゥウ?!初耳なんだけどそれっ!。あとラストサムライの説明っ」「いやテレビでラストサムライはいたって特集で金属バット斬ってたし」
「ウェーイ。小さい時金属バットが真っ二つになって帰ってきたと思ったらそれだったのかよ」
「他にもたこ焼きの鉄板とか実弾とか色々斬ってたよ」「全部家に飾ってあるよ!」
「あとなんの世界チャンプかっていう質問だけど」「どうせ剣道だろ」「空手」
「はぁぁああああ?!」
「疲れたからまだ一回戦しか見てないけど鍛冶ギルド行くわ」「行ってらっしゃい」
俺は楽しみを一瞬で失った喪失感に浸っていた
いやこのままではいけない!
気合いを入れ直し歩き始める
コロシアムの外は軽い雨が降っていた




