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限界の把握と

~123

 ニコルたちが襲撃されて1週間ほどたちようやく神国軍がハーモの町に到着する、それなりの規模の人数での移動とはいえ正直遅いんじゃないかなと思うが気にしてたらハゲそうなので気にしない・・・髪生えてないけど。

「ずいぶん遅くなりましたね?」

 ニコルは挨拶に来たハルキに文句を叩きつける。

「行軍なんてこんなものですよ、それに言ってはなんですが錬度の高いものたちは先の戦で軒並み討ち死にしております。

 半分は新兵で構成されてる現在の神国軍ではこれでも大分早いと言えますよ。

 無理させた分、明後日までは休養を取りそれから行軍を再開します」

 とハルキはいうが、俺としてはもう相手側は布陣が済んでるだろうから急いでも戦場も変わんないだろうしもうちょい休養とってもいいんじゃないかなって思うよ?


 等と考えていたらハルキはまだ色々やることがあるのでと仕事に戻っていった、しょうがないので俺たちは適当にぶらつくことにした・・・歩くのはニコルだよ?当然だけど。

 しばらく歩いていると何やら騒がしいようで、何事なのかとニコルが近づいていくと。

「魔王軍のスパイがこんなところで何をしていたんだ!素直に吐かんか!」

 といった声が聞こえて来る騒がしいのは先ほど着いたばかりの神国兵共のようだ、とたんに興味を無くすニコル。

 何をやっているのか見たくても人ごみのせいでニコルの身長では見えないようなので俺だけで覗くかな、って言うかニコルのこの興味の無い顔に内心溜息物である。

 さてどんなスパイかね?スパイって言うくらいだしボンキュッボンのってありゃりゃ。

 俺が見たのは斬り殺されたデモン種の大人二人とその子供だろう、兵士に腕を掴まれ泣いて抵抗する娘と蹲り4人ほどの兵士に囲まれて蹴られている男の子がいる場面だった。

 あまりいい気分じゃないな、とは思うがまぁ戦時中に敵対国の人間と同じ人種がこんな所にいたんだ、こんな事があると覚悟くらいはしていただろうし仕方ないかな?

 見なかったことにしてさっさとここから離れようってニコルに言おうと思った時にその兵士たちの1人だと思うがそいつがこういった。

「お前らみたいなゴミはニコル様の庇護のもとにあるこの国には不要なんだよ!

 ニコル様の名のもとに俺たちが天誅してやる!」

 と・・・。

 おっとこいつらニコルのファンか何かかな?ニコルの名前を使ってそういうことしちゃうのかな?HAHAHA無いはずの頭に血が上る、俺も沸点低いよな。

『ニコル聞こえたか?聞こえて無くても俺の命令だ!この騒ぎを起こしている奴らをぶちのめせ!俺の気分を害した!!』

 俺の剣幕にニコルは嫌と言う暇もなく人ごみを跳ね飛ばしながら走る、飛ばされた人たちはカズハたちがあわててキャッチして転がしていたので大した怪我はないだろう・・・かな?今はニコルに説教する気は無い!あのガキどもに自分が誰の名前を汚してしまったのかを教えねばな!

 さすがに異変に気づいたのか兵士たちは駆けつけたニコルを凝視する、すると・・・。

「なんだお前?」

 謎の言葉を発してくる、ニコルに対してなんだお前?だとさ、昇る血もないのに逆立つ鱗もないのに俺の怒りは膨れ上がる。



「あなた方は何をしているのですか?」

 ニコルは若干、事の成り行きに戸惑いを起こしている。

 理由は分からないがこいつらの何かに主たるファルシオンが憤怒している・・・その何かが分からないので現状把握に徹する。

 とりあえずこの場での材料を考えれば斬り殺された大人二人かな?いや主の性格から見知らぬ犠牲者なんてゴミほども価値は無いだろう、そうなると転がってるボコボコの子供もそうだしましてや捕まってる娘でもない。

 考えればよりわからなくなったニコルは頭を抱えたくなる、なんでこんなに怒ってるの?素直に訊けたらどれほど楽だろうかと考えていると。

「貴様はこいつらをかばいたいのか?

 一冒険者風情が俺達神国の兵、ひいてはニコル・ファルシオンと事を構えるというんだな?」

 その兵士の言葉にニコルは思考停止する、あまりにまわし過ぎていた頭がいきなり答えという壁にぶつかった為に急停止してしまった。

 結果、聡いニコルの頭の中には何故自分が自分にたてつかなきゃいけないんだろうという訳の分からない思考がグルグル回る。

「ふん!所詮は一介の冒険者かニコル様の威光に足がすくんで声も出ないようだな!それにしてもニコル様の名前さえ出していたら割と何でも許されるな。

 こいつらも素直に俺たちの命令を聞いていればこんな事にはならなかったろうにな!」

 どんな命令をしたのかはこの際いいかな?そんな考えでニコルの頭が再起動に入ろうとした時に。

「ペッ!」

 ニコルの顔に何かが飛んできた、目に直撃するコースだった為に横に躱すとほっぺたに付着する。

 まぁ説明するまでもなく唾を飛ばされたのだ、その事実にニコルのコブシは唾を飛ばした兵士の頭を消し飛ばす。

「へっ?」

 間の抜けた声が誰かからの口から洩れたが気にせずニコルは残りの兵士に襲い掛かろうとしたが、カズハとフタバに捕まえられて動けなくなる。

「離しなさい!こいつらが殺せないでしょう!!」

 ニコルも頭に血が昇ってしまったらしく冷静さが無くなっている、因みにニコルをとめるように命令したのはキレたニコルを見て一瞬で冷静になってしまったファルシオン、俺である。

 

 まさかあのバカ兵士ここまでバカ兵士だったとは思わなかったわ。

 でもこれでこいつらはこの国にはいられまい、そっちの方がボコボコにするより面白そうだし殺すのは勿体ない、ニコルはカズハとフタバに任せて残りの兵をミツバに無力化させ地面に押し付けている、ヨツバにはハルキを持ってこいと命令する。

「貴様ら俺たちのこんな事してただじゃ置かないからな!

 俺たち神国の守り神ニコル様にたてついたってことなんだ・・・」

『黙れよゴミ屑が』

 いいかげん聞くに堪えないので俺の声で脅す、どうせ王城で声出したんだしこの際喋りまくっちゃおう。

「今のこ・・・」

『黙れと言ったはずだな、ミツバ顎をちぎれ』

「はっ!」

 ミツバは命令を即座に実行・・・一番近い奴に、そいつの顎じゃなかったのだが。

『ミツバ・・・いやまあどっちでもいいかこの際、そいつの血は止めてやれ。

 ・・・さて、三下どもお前たちは誰の許可を得て誰の名前を勝手に使っている?』

 何かを喋ろうとするが口をパクパクさせるだけの三下兵士、言いたいことがあるならさっさとってそうか。

『発言を許可してやる、言葉に気を付けろよ』

「こんな扱いをして俺たちの守護者ニコル様が黙っていないぞ!」

 というバカの叫びにとある人の声が響く。

「この馬鹿どもが!」

 その叫び声と共にヨツバに背負われて現れたのは神国大将ハルキ、叫び声とは裏腹にその顔は真っ青だ、きっとヨツバのスピードのせいだろうな。

「お前たちは誰に何を言っているか理解して声を発しているのか?

 お前たちは誰のおかげで今生きているのか分かって息をしているのか?」

 そこまで言ってハルキがニコルの顔を見るとほっぺたに唾がついているではないか。

 失神しかけるハルキ、だが耐えた。

 ハルキの胃が心配になってくるが内心で頑張れとしか言えないな。

「お前たちはハーモニア王国を亡ぼしたいのか?」

 ここまでくると三下たちも自分が誰に何を言っていたのかがわかってきたようで顔が青ざめて真っ白くなる。

『ハルキ俺のことは王城からの報告で聞いているな?』

「この声は?報告に会ったニコル殿の主殿か?」

 と訊いてきたので。

『その通りだ、まぁそれはいい今はそんな事よりも重要なことがある』

「重要なこと・・・ですか・・・」

 ハルキの胃が心配になるのをぐっとこらえて俺は言葉を続ける。

『俺は確かハロルドにニコルを貸しはしたが・・・こいつらの守護者にした覚えはないぞ?

 ましてやニコルの名前を使ってやたらめったにケンカを売ることも許可した覚えもない。

 だが、こいつらはニコルの名前を使えば好き放題出来ると言っていたぞ?

 これは俺に対する裏切りだよな?』

 兵士たちは自分たちが何をしてしまったかのことの重大さに完全に気づいたのかガチガチと歯を鳴らし始める・・・うるさい。

『ガチガチうるさい、ミツバヨツバガチガチ言わせてる奴の顎をちぎれ、そのあと止血だ』

 兵士たちの顎の音の処理が済むとハルキが。

「この失態に対してはただ謝ることしかできません。

 今回のようなことが起きないようにニコル殿の立ち位置を明確に全軍に周知させた後に私の首でお許しください!」

 とハルキが両膝をつき土下座を始める、まぁハルキいじめはもういいか。

『今回は見逃してやる、それと貴様の首なんぞ要らんぞ?

 ただしケジメはつけろ、ハルキよこのゴミ共がこの子らの親を殺している。

 お前はこの子らを責任もって育てろ。

 それからニコル、落ち着いたか?』

 ここいらでニコルに状態を聞く。

「はい、だいぶ落ち着いて来ました」

 ふーむ、仕方ないか。

『ニコル、このゴミ共を斬れ!

 2人とも、ニコルを解放しろ』

 という俺の命令に2人がニコルを離すとその瞬間に問題を起こした兵士たちの首が吹き飛ぶ・・・斬れって言ったけど蹴り飛ばしたよこの子。

『少しは気が張れたか?』

 俺の問いに答える前にニコルは更に蹴りの反動で起き上がっていた体を細切れにする・・・どんだけムカついたらそんな芸当までできるのかね?

 見物人の中には吐いている者たちもいるようだ・・・顎をちぎらせた辺りからちらほらいたっちゃいたんだけどね。

「少しは気が晴れましたが・・・ハルキさん、次は無いですよ?」

「すまなかったニコル君・・・いやニコル殿、今回の非礼は完全に私の落ち度だ。

 後のことはワタシに任せてくれ、本当にすまなかった」

 そういうとおなかを抱えて若干猫背になりながら立ち上がる、これ完全に胃が逝ったな。

 かわいそうなのでヒールで治療しといてあげたがまぁ今回は向こうが悪いんだししょうがないよね?



 上空から一連のやり取りを見ていた者は唸りながらともに飛んでいる5人に聞いてみる。

「今の剣捌き見えたか?」

「全然」×5

「これは難易度が高すぎる依頼だな・・・俺達じゃ手に余るぞ」

「それでも挑むんでしょう?」

 空を飛ぶ者達”ドラゴントゥース”の紅一点水龍族のリーネがグランにそう訊ねる。

「これも一度引き受けた依頼だ、引き受けた以上は一度はぶつからねばな。

 幸いあと数日はこの町に滞在するらしい、チャンスはまだいくらかありそうだから根気よく行くぞ!」

「応!」×5

 返事と共にその場を離れる6人のドラゴニュート達、着々と襲撃の準備をしているようだが果たしてニコルに通じるのか。



 未だに怒りが完全に収まらないニコルと共に近くの魔物の巣窟になっている未開の山脈、ウェスモニア山脈へと赴く。

 ここはハーモの町から西に向かうと見えてくる山脈でこの間、冒険者ギルドでドラゴンを見かけたという情報があった為ニコルの八つ当たりに使えるかもと思いやってきたのだ。


『と言ってもすぐ見つかるモノでもないか・・・。

 4人とも”装着”後に空からドラゴンかそれに近い個体でもいいや、とにかく強そうなやつを見つけたら報告にこい』

 と俺は指示を出して散開させる、これでなんか町を出てからつけてた連中も手を出しやすくなっただろう。

『行ったみたいだな、ニコル』

「はい、気づいています」

 ニコルが返事すると即座にこの間の襲撃と同様に魔法と矢の襲撃が起こる。

 しかし。

「”抜刀”タイプドラン」

 深紅の竜を模した甲冑を身にまとい飛んできた攻撃をことごとく対応する。

 今回はさっさと片付けるためにニコルは魔法と矢の降り注ぐ雨の中を駆け抜ける。

「ヒィ!」

 短い断末魔をあげてドンドン蹴散らされていく襲撃者たち、飛び道具の数が減れば一発一発狙わなければならないのだがニコルは狙えるほど遅くなく、また。

「ヒギャ!」

 襲撃者が隠れていてもニコルを敵と認識している為に高速で動くニコルに合わせて動く俺の”サーチレーダー”に引っ掛かりその数はすぐにゼロとなった。


 その有様を上空で見ていた”ドラゴントゥース”は。

「これは手を引いてもいい気がするがな」

 気分屋の風竜族のフランがそう零すと。

「右に同じく」

 赤竜族の赤牙も同意する。

「その意見は俺も賛成したくなってきたが・・・どうも俺達も見つかってるようだ」

 というグランの見る先に全員が目を向ける。

「マスターニコルを見ていたようですが何か用事ですか?」

 グランの視線の先には散開した4人の護衛の1人カズハがいた。

「チッ!でも一人なら」

 と雷竜族のライトンがカズハに武器を構えると。

「質問に答えないのでしたらフタバも戦闘に参加しますよ?」

 という言葉が後ろから聞こえる。

「馬鹿な・・・」

 氷竜族のコルドンの視線の先にはミツバまでいた、というよりも”ドラゴントゥース”のメンバーがニコルの戦闘に注視するあまりに4人の護衛に囲まれていることに気づけなかったのである。

「これは覚悟を決めて仕掛けるしかないな・・・」

 グランの言葉に全員が頷き。

「いくぞ!」

 掛け声とともにグラン、赤牙が急降下をし残る4人はカズハたちに牽制をして後を追わせないようにする。


『ニコル!なんか降ってきた』

 という俺の言葉ははっきり言って遅く、急降下してきたドラゴニュートが放つ”ブレス”にニコルはかろうじて反応する。

 限界探知範囲が半径5メートルの俺の弱点が浮き彫りになってしまう一撃だったなと俺が思う間もなくもう1人のドラゴニュートが途切れた”ブレス”の陰に隠れて突撃して来ていた。

 ニコルはそいつにも反応したがそいつも直前に”ブレス”を吐いてきた、さっきの炎属性の”ブレス”と違い可視出来ない何かを放ってきたのだがとりあえず魔力波を感知した俺は先ほどの”ブレス”と同様にとりあえず吸収を試みる。

 すると突撃してきたやつは驚きながら。

「土属性は吸収できないというのはやはり間違いか!」

 という言葉を残しニコルに両断される、その姿を見たもう1人が。

「おのれ!」

 という言葉と共にもう一発”ブレス”を放とうとして首を飛ばされる。

 一段落してカズハたちも上空で戦ったドラゴニュートの手足を引きちぎって降りてくる。

 必死に命乞いをしていたようだが俺は今それどころじゃなかったので止める間もなくニコルが首をはねてしまった。

 俺の動揺は意外と俺って上空から高速奇襲されたら脆いということが分かったからだ。

 ひとえに俺の能力が原因になっている、”サーチレーダー”を過剰に信頼しすぎている為に普段認識外にある上空への警戒が疎かになりすぎているのだ。

 ニコルなら5メートルも距離があればある程度上から降ってくるものを躱せるが今回反応できたのは大分運がよかったとしか言えなかった。

「どうしました兄さん?」

 俺が深刻に考え事をしていることに気づいたニコルが俺に訊いてくる。

『俺の能力に重大な穴があった、元々どうにかしようとしていた穴だったんだが、事ここにいたって重大な弱点になりつつある』

 深刻な声でニコル達に説明する。

「それは、確かに今回は少し危なかったですが、多分防がなくてもこの鎧なら弾き返してましたよ?」

 という楽観的な意見に。

「マスターニコル、今回は運がよかっただけかと」

 カズハが指摘し続ける。

「もし今回の相手がグランドマスター並に切れ味のある武器を持っていたならマスターニコルは死んでおりました」

 と、実際その通りである、前提に少し無理があるがもし敵に俺がいたらさっきの強襲は成功していただろう。

 これは本格的に”サーチレーダー”範囲を広げなくてはならないな。



 そんなニコル達の映る水晶玉を見てカノンは呟く。

「強襲は有効か、だがあの護衛達はなんだ?一対一でドラゴニュートを弄べるなんて、化け物が増えてんじゃないか。

 赤牙おかげでもう一つ面白い情報が得られたのにこれじゃあプラマイゼロじゃねかよ!やってらんねえや・・・」

 後半やけくそ気味に喋るカノンだが。

「まぁ手土産は二つ、上空からの高速強襲は有効だということと、魔法によって起きた副次効果は消せないって事だな」

 と言ってカノンはニコルの周囲にピントを合わせると”ブレス”で起きた熱風で焦げた植物がニコルを挟んで赤牙の死体の反対側に在った・・・。



 視点はこちらに戻りファルシオンは考える

 俺には自分に5メートルの限界範囲があるのがなぜなのかを考える。

 キリがいいから?阿保か。

 剣になる前にそういう制限を自分に掛けた?覚えがない。

 というか自分の中には5メートルという単語での関わり合いがでるモノが皆無なのだ。

 となると考えられるのは・・・。

 即座に”ライブラリ”でアーノルド、自分の本体の基礎を作ったあのジジイの記憶を探る。

 正直あのジジイの記憶だと思うだけでイライラするからなるべく見ないようにはしていたのだが今回は必要なことなので仕方なく深く見ることにした。

 で、はい・・・ありました。

 実は俺も見てました、原因を。

 この世界に来た時の最初の部屋、その広さは大分広く縦横22メートルくらいあったらしい、そんでもって俺が乗ってた魔法陣の書かれていた布、あれが半径5メートル、俺が粒子になった時も魔法陣の光が俺を集めて剣に誘導した感じだったようだ、ここは俺自身粒子になってて認識ができなかったから爺さんの記憶だが。

 つまり俺の5メートルの制限はすりこみ見たいなもののようなんだが、解除の仕方が分かんない・・・。

 因みにこのすりこみはあの魔法陣の正式な作用の1つだったらしい、というのも爺さんの知識にあったが爺さんはそのすりこみに関しては自分に関係ないってことで完全に無関心だった為、正式な解除の方法が全く分かんないのだ。

 なので正式にじゃなく力ずくですりこみを・・・リミッターをぶち壊すことにする。



『ニコル俺を地面につきたてて少し離れていろ』

 という唐突な指示に困惑するニコル。

『”納刀”はしないでもいい、これから俺にかかっている制限を俺の中に在る魔力をぶつけてぶち壊すことにした、剣内部で起きることだが使用するであろう魔力の量が量だから外にどんな影響があるか分からん。

 無理をするつもりだから、お前たちを巻き込んでしまうことに気を使えば失敗するかもしれん、だから離れていろ』

 と説得するとニコルは渋々とだが了承し俺を地面に突き立てる。

『では離れて上空で待機していろ』

 と指示を出し充分離れるのを待ちあのくらいなら大丈夫かな?って思った時に余計な客が沸いてきた。

「ようやくこの魔力の塊をいただけそうだな!」

 ・・・誰だろう?見た目はこの間鎧の素材に使った悪魔に似たタイプっぽいのだが。

「意志持つ剣よ初めまして、我が名はヨトゥン貴殿の内にある純度の高い魔力を貰いに来ました」

『寝言は寝て言え、それから見逃してほしかったら失せろ』

「所詮は剣の分際で持ち手もいない貴様に何ができる、言葉に気を付けろよ!」

 とヨトゥンは声を荒げてこちらに跳びかかろうとして急停止する。

 ヨトゥンの額に触れる寸前の距離に”ニードル”で作った棘があった。

「これが貴様の切り札か?所詮は無機物の浅知恵だな、こんなもので我らグレーターデーモンをどうにかできると思ったのか?」

 やっべー見切りやがったのかよ、あれ?もしかしてピンチ?

「では今度はこちらから仕掛けさせてもらおうか?”ソウルスティール”」

 ヨトゥンはこちらに手をかざして呪文を唱えると俺の内にあった魔力が徐々に減っていく。

『な!なんだ?』

「これは極上な魔力だ!我が”ソウルスティール”は相手の魔力を奪いその魔力をわがものとする技、このままだと上位存在に進化できそうだ!」

『馬鹿め!急激な魔力の増加は身の破滅を呼ぶことを知らんのか!』

「おやぁ?ご存知なんですねぇ?ですが心配はいりませんよぉぉ、俺は悪魔だからねぇぇ」

 言われて以前吸収した悪魔の情報を”ライブラリ”検索する、とその情報が嘘ではないことは分かる、しかし。

『ここまで急激に魔力を奪う悪魔なんて知らんぞ!』

 そう”ライブラリ”の検索結果に出た悪魔たちはここまで強力な吸魔の力を持つものなど知らなかった。

「そりゃ俺が特殊個体だからさ!」

 なるほど、珍しい個体だってことか。

「このまま進化できそうだな!クククありがとよ!」

 ヨトゥンは喜びながら進化がはじま・・・らない。

「なに?魔力の流れが止まった?」

『いやなに、あまりに魔力の吸収が遅いから飽きてきてな?』

 という俺の言葉を聞いたヨトゥンは。

「まさか抵抗できるとはな!だが俺の力をなめるなよ!」

 と更に”ソウルスティール”の力を強める・・・だが。

「くうぅ吸えない何故だ?剣ごときになぜここまで抵抗ができる!」

 やれやれ馬鹿な奴だ。

『種明かしの前にヒントをやる、俺の魔力はどうやって集めたモノか分かってるのか?』

 俺の質問にヨトゥンは何言ってるんだ?という表情になる、まぁこの程度だよな。

『お前はせっかく俺の攻撃を躱したのによりのよって俺と魔力的な繋がりを作っちまった・・・その時点で俺の勝ちなんだよ』

 といった俺の言葉にもいまいち理解が及んでないヨトゥンに俺は容赦なく。

『馬鹿な奴だな・・・”ソウルイーター”』

 一気に奪われた分の魔力を吸収しヨトゥンの魂すら喰らいその先にいる何者かの魂をかじってやる・・・ギリギリで喰い尽す前にリンクを切られたか。

 どしゃっと倒れ伏すヨトゥンだが俺はそれよりやらねばならないことがあるので剣内部にある魔力を荒ぶらせる。

『ぐううう・・・』

 いつもと違う声質の声が漏れる、荒ぶる魔力に自分の中に在る魔術式が垣間見える、その魔術式にありったけの魔力を叩きこんでみる。

『あぁぁぁぁぁぁぁ!!!』

 もしこの魔術式が全く関係ないモノだったらやばかったんじゃないかと後になって思ったがやったもんは今更どうにもなるまい、まぁ今回はうまくいったようだし。

 と、俺は周りの景色がさっぱりしていることに気づく。

『ありゃ?隕石でも落ちたのか?』

 俺の刺さっていた場所は少なくとも雑草くらいは生えていた気がしたがいつの間にか俺を中心に半径50メートル程のクレーターができていた、俺はそれを即座に理解し、隕石が落ちたのに俺ってば丈夫なんだなと照れてしまう。

 俺が一旦落ち着いたのを確認したニコルたちが上空から降りてきた。

「兄さん!大丈夫ですか?」

『ああ、まさか俺に向かって隕石が落ちるとはな』

「隕石が落ちてきたんですか?」

「マスターニコル、この周辺では今のところ隕石が落ちたという情報はありません」

「落ちてないそうですよ?と、そんな事よりあの悪魔っぽい奴と何やらやり取りがあったようですが大丈夫ですか?」

『ああ、あのバカなら自分から俺に喰われに来たから焦ったわ』

「敵じゃなかったんですね、それからその後ものすごい光を放ったかと思ったら次の瞬間景色が変わっていたんですが」

 心外だな、その言い方だと俺がこのクレーターの原因みたいじゃないか!って言いたいが。

『まぁ俺の限界を超えるための尊い犠牲さ』

「まぁ景色のことはこの際いいですが、ついに限界を超えたんですか?」

 嬉々として質問をしてくるニコルに。

『超えたみたいだ、認識範囲が大分広がっている』

 と答える、今の俺の認識範囲は現在半径50メートルくらいだがどうやら任意で範囲を広げたり狭めたりできるようになった、因みに使用した魔力は内にあった魔力総量の4割近くだ、戦場に参加してなかったら消滅してたかも・・・後は。

『ニコル俺を持ってあの岩に向けてくれ』

 とニコルに頼む、件の岩は70メートルほど離れているが。

『”メニードル”』

 俺が得意の”メニードル”を使うと穴だらけの岩が出来上がる・・・70メートル先の岩なのに。

「射程がものすごく伸びましたね?」

『このくらいの長さを目安にしといてくれ、これ以上は一瞬で伸縮出来る自信がない』

 まぁできるだろうがここから先は全開で当たる相手なんて出ないだろう。

 とりあえず弱点だった”サーチレーダー”の狭さに一つの解決ができたので一安心だ。




 サームスギ某所。

「きゃああああああああ」

 絹を引き裂くような女性の痛々しい悲鳴を聞きその女性を世話している女官たちが慌てて駆けつける。

「いかがなさいましたかソフィア様!」

 しかし、女官たちの声は彼女に届かないかのように彼女は意識を無くしていった。

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