王都にて
~116
砦の戦闘が終わって三日目、砦の修復などをふざけた魔力で解決したニコルによって防備などの回復に一段落のめどが立った、今回の防衛で尽力したニコルは王都に招かれることとなった。
『普通はさっさと追撃戦とかした方がいいんじゃないのかね?』
俺の疑問をニコルがそのまま案内してくれてる騎士さんに伝える、何て名前だったか忘れたがニコルには丁寧に対応してくれている。
「追撃戦をするのに必要な軍備が足りないのです、砦での戦闘になるまでの無謀な戦闘の結果ですね」
あーこの人砦の指揮とってた奴のこと嫌いだったんだな。
あいつの副官やってた人のやつれようったらなかったもんな。
3日前、撤退を始めた魔王軍と今頃になって追撃戦を開始し始めた神国軍をしばらくその場でじっと見ていたニコルに後ろから尊大な物言いの声がかかる。
「貴様はなぜ奴らを追撃せんのだ!」
ニコルが振りかえるとそこには豪華な鎧に身を包み立派な馬に跨ったちょび髭おやじが馬上からニコルを見下ろしていた。
「私は(以下略)である」
なんか長かったので省略したがちょび髭はここの指揮を執っている人間でここで一番偉いらしい。
だから自分の指揮下に入って敵に突っ込んで行け!って抜かしたので馬に”マインドハック”して馬上から落としニコルに鎧の留め具だけ切り落とさせて首を掴んで持ち上げさせる。
「あなたは誰に命令してるのか理解してるのですか?理解してたら右手で理解してないなら左手で今僕が掴んでる手を2回叩いてください。
右手以外でたたいたら死んでもらいますが」
ちょび髭は言い終わったら即座に自分の首を絞めている右手に右手でのタップを何回もして、あが!とかゴア!とか言ってるが・・・2回だって言ったのに馬鹿な奴だな。
「2回と言いましたよ?死にたいのですか?チャンスが欲しいなら先ほどと同じく右手で2回チャンスがいらないなら左手で2回」
言い終わる前に右手で2回タップする、必死だな。
「ではもう一度・・・おや?おちましたね、根性の無い」
ニコルは吐き捨てるように言うとその辺に投げ捨てる、ゴミをその辺に投げたらダメだぞ?
「貴様!仮にも総大将たるアインハルト様になんてことを!衛生兵!」
次に現れたのはそれなりに立派かな?って言える感じの鎧に身を包んだ騎士風の男だ、そいつがやつれた顔で叫ぶ。
「丁重にお運びしろ!いいな!
・・・さて君に言わねばならないことなのだが」
さて、どんな罪状を突き付けてくるかね。
「簡単な罪状だけなら戦場に乱入しての作戦妨害に今の士官に対する暴行及び殺人未遂だな」
そんなもんか?いや簡単な罪状って言ってたしまだ何個かあるんじゃないかな?
「だがそんな事、そんな事といえるほどの功績をあげてくれた・・・今ここでこうして生きているのはすべて君のおかげだ、素性が知れないために現場を指揮している私は頭を下げる訳にはいかないのが悔しいところだが。
後ほど褒章などを与える為砦に来てくれ」
そういってやつれた騎士、くたびれ騎士でいいかな?くたびれ騎士は前線の指揮に戻っていった。
数刻後、砦にて。
「小僧何か用か?」
ニコルは門番に止められていた・・・話が通ってないっぽいぞ?
「こちらで後ほど褒美を与えるために来てくれと頼まれたのですが?
話がこちらまで来てないのですか?」
「そんな話は!・・・」
「ニコル君だね!」
門番が何か言おうとした時に先ほど別れたくたびれ騎士が大声でニコルを呼ぶ。
「はいそうですが・・・なぜ名前を?」
俺理由知ってる、ニコルも少し疲れてるみたいだな。
「君は戦場に降り立った時に名乗りを上げただろう?
偽名じゃ無いならその名前で呼ばせてもらうよ。
私はカーン家のハルキという、さてこちらに着いて来てくれ」
話しながら手続きを終えたくたびれ騎士、ハルキはニコルを案内する。
名前にあれ?って気になったのもあり質問する、ニコルが。
「ハルキさんは変わった名前ですね?」
ド直球!?ニコルさんジャブ打つの最近忘れてないかな?
「ははは、まぁ珍しいかな?実は私の家は勇者と関わりがあってね。
私の名前もその勇者がつけてくれたんだよ」
なるほど、まぁハルキさんは見た感じ40代ってとこだし前回の勇者が召喚されたのが70年ちょっと前らしいから無い話じゃ無いのかな?
そんな簡単な話をしながら一つの部屋の前に着く。
「すまないがニコル君、少し気を悪くするような相手と話すことになるのだができれば穏便に事を進めてほしい」
そういいながら扉を開けて部屋の中に入る。
そこは玉座の間でも真似たかのようなつくりの豪勢な部屋だった。
そして偽玉座にふんぞり返っているちょび髭、アインハルトだっけな?がしゃべる出す。
「ハルキか、入れ」
「はっ!」
続けてニコルが入ろうとすると。
「待て!貴様武器を預けんか!」
ちょび髭がニコルに絡む、ウザいな。
「これはシツレイシマシタ」
ニコルさん最近沸点低くない?
ニコルが返事するのと同時にちょび髭に傍らに控えていた文官みたいなやつが俺を持ち去ろうとする。
「ナニカッテニサワッテイル?」
ニコルさん怖いです、ニコルから半ば強引に俺を引きはがした文官から奪われまいと俺をガシッと掴むニコル、仕方ないので。
『ニコル、今回は我慢だ』
とニコルだけに聞こえるように伝える、不服を表情に表しながらニコルが俺を離す。
「よし、では入れ」
「失礼します」
「入る前に名を名乗らんか部外者!」
入ろうとしたニコルにまたも怒鳴りつけてくるちょび髭・・・めんどくさい
「ぴぎ!」
突然の事に場の全員が固まる、俺を持っていた文官が突然俺を抜きちょび髭の首をはねたのだ。
まぁ俺が”ソウルハック”で体をのっとってやったんだけど、こいつの体を奪う前にニコルには段取りを伝えている。
「くひゃひゃひゃひゃひゃ・・・」
文官は狂ったように笑いながらちょび髭の体をめった刺しにする、演技だぞもちろん。
「なっコレは!」
ようやく落ち着いたハルキが剣を抜く前にニコルが動き文官の首を360度回転させてねじ切る・・・これは気持ち悪いとしか言えん体験だな・・・。
「僕の剣に不用意に触れたからでしょう、この魔剣は魅了の魔剣。
僕のようにしっかり意識を保てない人間は例外なくこうなります。
今回はせっかくなのでそれを理解してもらうために少し悩みましたがこの方に預けました。
まだ誰か預かりたい方はいらっしゃいますか?」
ニコルが見渡すと皆首を横に振る、当然だな。
「さて、少し騒ぎが起きましたがさっさと要件を済ませるとしましょう。
僕は何をいただけるのですか?」
ニコルは文官の返り血を浴びた顔でにこやかに笑みを浮かべてそう言い放った。
相手に畏怖を与える教育でもうけたんだろうかなニコル君は?
ニコルの微笑みの後、結果的に総指揮官のちょび髭と文官2名の殺害に関与したニコルの行為を副官ハルキが場の全員に、文官がニコルの忠告を無視して魔剣に魅入られた結果起きた事件とし、ニコルも犠牲者ながら早期に解決してくれたという体にしてその場は抑えるそうだ。
無理がある内容な気もするけどその辺はハルキが何とかするだろうってことで知らないところで世話になるようだから砦の修復くらい手伝ったろうとニコルと話し”カスタマイズ”を使いまくり軽く修復してやった。
術名を口に出したらまた魔倫会に目を付けられるかもしれないので無詠唱で、まぁ詠唱なんてしたことないんだけどね。
そういえば魔倫会か・・・。
ここ数日の回想を終えて目の前にある王の間にニコルは目を向ける、回想してたのは俺なんだけどね。
道中あったイベントは俺を預かろうとした一般兵が案内の騎士にすんごい剣幕で怒られて話が通ってないことを知った騎士が慌ててどっかに行って、その間はその場でじっと立たされてたニコルを遠巻きでいろんな人が足を止めてみていた事くらいかな。
帰ってきた騎士がめっちゃ謝っていたが・・・まぁどうでもいい。
「それではこちらです、私に着いて来てください」
と騎士がニコルにそういうと豪勢な広間に入っていく、ニコルもそれに続く。
こういう時にレッドの体を捨てててよかったなって思うな、こんな固っ苦しいことしたくなかったし。
そんなことを考えてると玉座に座る王っぽい・・・あれが王さんか、なんかオーラがあるな、街角で偶然見かけた芸能人みたいだ・・・見かけたことないけど。
「ニコル・ファルシオン、参上の要請にこたえてここに参りました」
ニコルがそういうと片膝をつき頭を下げる、最低限の礼は尽くさんとね。
「面をあげよ、私が神聖ハーモニア王国、現国王ハロルド・ハーモニアだ。
そなたの此度の戦での活躍を耳にし直接声をかけたいと思い参上を要請した」
「はい」
「はっきり言うとそなた一人で一軍を退けたというのは半信半疑であるが・・・
事実魔王軍は戦線を下げイージス砦が未だに健在であることから嘘は少ないのだろう、多少の誇大報告はありそうだが」
ふむ?なるほどね、呼んどいて信用はしてない・・・と。
『ニコル』
「はい」
ニコルは立ち上がり王に背を向ける。
「どういうつもりだ!」
周りの人間が騒ぎ出す。
「愛想が尽きました、これ以降この国が亡びるまで傍観者となることにします」
ニコルの言葉に嘲笑が走るが・・・案内の騎士だけが蒼い顔をしている、いや?何故かふざけたことを言った王もか。
「まっまて!まだ余の話は済んでないぞ!」
「チャンスを逃しましたね、王よ。
僕の主はあなたの僕への対応に酷くご立腹です、もはや僕の意志ではこの国に干渉することはできません。
残念ですが・・・はい?そうですね・・・魔王軍に僕はこの国を見捨てましたと伝えるのも面白そうだと主は言っております」
ニコルが電波なことを言いだしたがこれは一応予定していた演技の1つだ。
「まて!そなたの主とは誰だ!
せめてその主と話をさせてはくれぬか?」
主に食いついたか、まぁこの国に突き付けられたナイフを払える存在をちょっとした言葉で失うなんて馬鹿げてるよな。
でもな・・・。
「先ほどまであなた方のやり方に付き合って分かったことがあるのですが」
「なんだ?」
「なぜ僕があなたに従わなければならないのですか?
僕は主の気まぐれで今回この国を救いましたが・・・あなたの民ではありません。
貴方はこの国の王ですが、僕の主ではないんです。
先ほどから何を頭から話しかけてるんだ?おっさん!』
最後の方は俺が声を出し周りの人間をビビらせる、まぁ演出だな。
『俺の使徒たるニコルに貴様ら先ほどから無礼が多いな?
俺の代理たるニコルに信用ならぬと貴様らが言うなら!
俺の力を使うニコルに見捨てられても仕方ないだろう?』
いい感じで言葉が出た、ちょっと自分をほめたい。
「まて、まて!そなたは何者なのだ?
我らの対応が気にいらないからと見捨てるのか?」
王も混乱しだしているようだな、こんなこと初めてだろうし・・・ん?
「この痴れ者が!」
何人かの騎士っぽい奴がニコルに斬りかかる・・・遅いな。
「僕はゴブリンほど弱くないのでそんな剣にあたってあげられませんね」
と振り下ろされる剣の横に手を添え自分に当たらないように軌道を逸らす、ついでに他の剣にぶつけながら。
唖然とする騎士たち。
「この程度の腕の者しかいないなら傍観者でいる期間は少ないでしょうね。
ではさらばです、亡国の王よ」
これでもかと嫌味を言い場を後にしようとすると目の前に。
「この国を守るためなら恥も外聞もこれからの人生すらも捨てよう!
この国を救ってくれるなら何にだってすがろう!
頼む!この国を救ってくれないだろうか!この通りだ!」
場は騒然となる、俺も息をのんだ・・・飲めないけど。
ニコルの前に飛び出して両手両膝を地面につけ頭を地面にこする王の姿に一同が動揺する・・・ニコルを除いて・・・。
ニコルはそのまま歩き王の肩に右足の裏を乗せ。
「邪魔ですよ?歩いにくいでしょう?」
と言って止まる、足は乗せたままで。
「貴様!」
冷静になった騎士の1人がまた切りかかろうとするが。
『すっこんでろ三下が!』
俺が大声をあげる、よっぽどビビったのかその騎士は尻餅をつく。
『ニコル足をどけろ』
俺の言葉にニコルは従う。
「た・・」
『まだ顔はあげるな』
「わっ分かった・・・」
なかなかどうして面白い奴だ。
俺の知識にある王は生涯決して他人に頭は下げないもんらしいがこいつはどうだ?
国の為なら自分の在り方なんて安いと全身で物語ってるようだ・・・ふむ、気にいったな。
『貴様の覚悟、気にいった。
俺の剣、ニコル・ファルシオンを貸してやる。
我が剣を用いて国土を取り返すといい。
だが肝に命じておけ?
ニコルは貸してやるだけだ。
貴様のモノじゃない!ということを。
わかったら顔をあげろ、俺の貸し与える剣に礼を尽くせ』
と話をきると王、ハロルドは声にならない声でありがとうと、国を救ってくれとニコルに足に縋り呟いている。
それに対してニコルは眉間に皺を寄せ。
「あの・・・汚いので離れてくれません?」
と鼻水を垂らしているハロルドを引きはがした・・・。
ニコルは冷静だなぁ・・・。
「立場上、玉座からの言葉になるのは許してくれ」
「話が進まないのでいいですよ?」
ハロルドが恐る恐る訊いてきた言葉にニコルはサッサと喋れと要求する・・・破天荒な子だなニコルは。
「すまぬな、では卿に頼みたいのは他でもない。
イージス砦にいるハルキを副官にして奪われた国土を奪い返してほしい」
「なるほど、嫌です」
「ではおって・・・え?」
「だから嫌です」
ニコルが駄々をこねだした、まぁニコルと同意見だが。
「何故か訊いてもよいか?」
当然の質問にニコルは答える。
「僕にとって軍を率いて戦うことはマイナスにしかならないからです。
軍を率いるのはハルキさんに任せた方がいいでしょう。
僕はハルキさんの立てた作戦の決定打の1つとして戦場に投入したほうがいいです」
そう、ニコルに指揮なんてできないのだ・・・頭もそれなりにいいのだがね。
ニコルはまだ子供で自分の力が他を逸脱しているということは分かっていても残念ながらどれだけ逸脱しているのかは分からない・・・一般的な実力が分からないのだ。
そんな人間が指揮を執るのは危険だということでハルキに避雷針になってもらう、頑張れ苦労人!
「なるほど、確かに陣にこもって指示を出させるだけでは卿の実力の無駄遣いになるか、では卿にはハルキの指揮のもとに戦線に参加してもらいたいがよいか?」
「それでいいかと思います・・・せっかくですし指揮下に入る前に魔王軍の戦線をもう少し下げさせておきましょう」
「へっ?」
ニコルの言葉にハロルドは間抜けな声を出す。
「では話はハルキさんにしっかりつけてください、僕はこれから魔王軍に挨拶をしてきますから”抜刀”タイプドラン!」
ニコルがそういうとハロルドたちの目の前に深紅の竜鎧に身を固めたニコルが現れた。
「では失礼します」
そういうとニコルは走り出し近くにあるベランダ?から跳び皆の視界から消える、というより俺たちの視界からハロルドたちが消えたのかな?
ドラン時の飛行スピードは実は雷凄より早く、魔王軍が下げた前線地には日が沈む前に着いた。
「”チェンジ”タイプシャイたん」
その日、魔王軍の被害が全体の2割を超える損害を受け前線の維持が絶望的となり大きく後退することとなる。
これによって深紅の悪魔に対する対策が魔王軍のフォウルにとっても戦争の行く末を傍観していた諸外国にとっても急を要する必須事項となる出来事だった。




