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アジト

~76

 港町ケイベル、ハーモニア大陸の東側の入口と呼ばれるシーフォートの南に位置しシーフォートほど大きい町というわけではないがそれでも港から出る船も多く、人の往来も多い活気のある町である・・・一時期セイレムをけしかけた俺のせいでどんよりした街だったのだがね。

 結局、残りの道のりも大したトラブルもなく退屈とコリンの小言の二重苦によって俺の気分以外は平和的に完了した、おそらく俺のダメージが一番ひどかったことだろう肉体的(雷凄との戦闘)にも精神的(コリンの小言10割)にも。


「ケイベルよ、私は帰ってきた!」

「いきなりどうしたんですか兄さん?」

「いやーこのセリフ一度は言ってみたかったんだけど、よく考えたらこれ言った後の次のシーンは再現しにくいよなリアルじゃ・・・」

「また禄でもないことでも考えてるの?」

「いや?ただここら一帯廃墟にしてまで再現するべきなのか悩んでた」

「まさに禄でもにゃいことを考えてた!」

「さすが師匠!スケールが違いますね」

「褒めてもそんなことやらないぞ?さすがに後始末のこと考えたらできないよな~」

「君はホントにどうしようもないな!くそぅそれでもDランクの昇格依頼は無事に済んでしまったのは悔しい・・・」

「コリンさんは~も~少し柔軟に物事考えたほ~が人生楽しいよ~」

「私はこれでいいんです!こんなだから試験官ができているんです!」

 と騒ぎながら冒険者ギルドに向かう一行、Dランクの昇格依頼が無事済んだので報告に行くためである。

「おいおいおい?お前の使役していた魔物で回収していないのがいるけどあいつは大丈夫なのか?」

 ”ハモニアの剣”のパーティリーダーのガデムが訊いてくる、このおっさんは意外と心配性だったようだ、というか”ハモニアの剣”も一緒に報告のため冒険者ギルドに向かっている、まぁ一緒の依頼を受けたんだから報告も一緒にするよな普通はさ。

「そういや今まで興味がなかったから聞かなかったけどシーフォートでは別行動だったよな、あんたらは何してたんだ?」

「おいおいおい!聞きたいのか?」

「あっ興味失せたからもういいや」

「おいおいおい・・・もうちょい興味持ってくれてもいいんじゃ無いのか?」

「フッいい歳の若者がおっさんに興味を持つ・・・きもいな」

 等とオヤジいじめをしていたら目的地に着く、因みに依頼人のルベロさんとは門をくぐったらお別れした、商品の搬入を急ぎたいそうだ。


「はい、報告は以上ですね?」

 久しぶりに会ったノエルさんに受け付けてもらう、やっぱ顔見知りがいると話がスムーズにいくね・・・報告してるのニコルだけど。

「はい、以上になりますね」

「では、セツリンさん以外の皆さんのギルドカードをお貸しください」

 といわれたので雪鱗以外がギルドカードを渡す。

「はい、お預かりします・・・では情報の書き換えをしますので少々お待ちください」

 とノエルさんが書き換え作業をしているのをニコルの後ろから見ていると、肩をポンポン叩く奴がいたので無視する。

「おいおいおい!なんで無視するんだよ!」

「めんどい」

「いや、ちょっとひどくないか?」

 おいおいおい!「おいおいおい!」はどうした!

「おいおいおい!なんでそんなに睨んでるんだよ?まぁいいか、それよりお前らはこれからどうするんだ?」

「そうだな、俺以外は特に決めてないな」

 とこれからの予定が自分以外は空いてる事を教える。

「なんだ?お前は用事が入って、ってだからなんで睨んでるんだよ?」

「いや、気にするなこっちの事だ・・・俺はこの後ワン太郎を迎えに行ってくる予定だ」

「そうか、それじゃあ昇格祝いにお前のパーティに今晩俺らが奢ってやるよ!ってつもりだったんだがリーダーがいないのなら遠慮しといたほうがいいか?」

「いや、祝ってもらえるならありがたく受けよう、今回殆ど何もしていない俺がいないだけだし、ニコル達を盛大に祝ってやってくれ」

 全くそんな事言うためにキャラまで捨てやがって・・・馬鹿野郎が。

「おいおいおい、お前も活躍したんだろ?あの大怪我仲間をかばって受けたもんらしいじゃねーか。

 しかもそのオーガを仕留めたんだろう?」

「まあな・・・それじゃあ改めて今日はニコルたちを頼む、ニコルはまだ子供だから夜更かしは避けさせてくれよ?」

「おいおいおい!こんな家業について夜更かしって・・・お前は変わってるなぁ」

「大事な弟だからな、しっかり育ってもらわにやならんのさ」

 と話していたら書き換えが終わったようで、ギルドカードをニコルが持ってきてくれていた、俺達の会話を聞いていたのか少し照れているようだ・・・最近女性率が増えているのだがやはりニコルもかわいいと思える、俺はアブノーマルじゃないんだけどな?剣になって性別が無くなったからかな。

「まぁいいか、それじゃあちょっとワン太郎を回収して来る!

 明日には戻ると思うからそれまで引率のおじさんに迷惑をかけないようにな?」

「おいおいおい・・・引率のおじさんって、悪くないな」

 あれ?これはいいんだ。

 というわけで一旦冒険者ギルドの外でみんなと手を振りながら別れると俺はさっさと町を出てツーサン太郎と一緒にワン太郎たちのいる盗賊のアジトに向かう。

 港町ケイベルを出てゴーレム馬車に乗り込み、ツーサン太郎と合流してからワン太郎がいる盗賊たちのアジトに向かう。



「さて、盗賊のえ~とモブ吉だったかな?あいつに一任しておいたけど、どうなってるかな?」

 どうなっているかが気になってしょうがない俺は考えてなかったある可能性に思い至る。

 考えてみたらワン太郎は真面目で勇敢な性格をしている為、多分先に送っておいた雷凄(ライセイ)を見たら襲い掛かるだろうな~って。

 で多分手加減はするだろうけど雷凄は軽くワン太郎を無力化してアジトをどうにかして抑えていたモブ吉に不幸にも反乱の魔の手が迫り・・・無いな。

 とりあえず合掌をしておく・・・まぁあくまで可能性、そんなことになってるかもしれないな~って程度だ、問題ない!って思う多分。

 そんな事を考えながらもノンストップでゴーレム馬車を走らせる、ついでにツーサン太郎も乗せておいた、さすがにここ数日走り通しだから疲れてるだろうという俺の素晴らしい配慮からだ。


 そんなこんなでアジトの近くまでゴ馬車(ゴーレム馬車)がたどり着く、さすがに道なき道だったのでアジトの位置を知っている俺が御者をして走らせた、今回はちゃんと働いているだろ?この姿をあの説教眼鏡に堪能させてやりたいもんだな。

「さってっとっ、此処からは歩きだな」

 そう、ここからは馬車が通れる幅の無い森・・・ケイブ森林だ。

 少し歩くと目的の場所が見えてくる・・・。

「知識として情報があるとはいえ・・・これはなかなか、実際見てみるとちょっと感動するな・・・まぁアジトのせいで台無しになってるんだけど」

 木々が連なり重なり自然が作り出した巨大な台の上に申し訳程度に偽装を施した盗賊たちのアジト、その木の根元でで森林浴を楽しむかのように惰眠を貪っている雷凄とワン太郎の二匹・・・。

 現在、日も傾きもうすぐ夜の帳が落ちようとしている今、俺は寝ている二匹を起こす。

「起きろお前ら!出迎えくらいしておけよ!

 とまでは言わないがその待つ姿勢は許しがたいな」

 という俺の言葉にはね起きるワン太郎とまだまどろむ雷凄。

 俺は近くの石を拾い雷凄の鼻の穴に転がし入れる・・・しばらくしてカッと目を見開き鼻に入った異物を取り出そうと首を振り回す雷凄をそのままにして木の台に登っていく・・・ツーサン太郎はワン太郎と共に外で待機だ。


 巨木の上に立っている下手なカモフラージュを施した盗賊たちのアジトに入っていく、まぁあの数の盗賊どもがアジトにしてただけあってその巨木はデカかった。

 梯子が昇る途中で終わり横穴を何度も通りまた梯子を昇るその繰り返しを4度ほどしてようやくアジトの中枢に着く、横穴を通る間に何ヵ所か生活感が残る部屋もあった・・・今はもう主がいないようだが。

 と、この木の上で最も大きいであろう建物から一人の男が扉を開けてこちらを見つけると即座に走って近づいてくる。

 見覚えはあるんだが名前を思い出せない・・・ていうか俺と別れた時に比べたら異様に小奇麗な格好になってるし、黒い髪を綺麗に7:3に分け黒いシャツに黒いズボンにブーツ姿だが、新品みたいだな。

 まぁ”ライブラリ”を使えば一発では思い出すんだが謎のプライドがそれを許さない。

 遂にそいつが俺の許に来て片膝をつき右コブシを地面に突きたてて左手を胸に当てて頭を軽く下げる・・・そういやなんか仰々しい奴だったなぁと思いだす。

「ご多忙のところこのような場所にまで来ていただいたのに出迎えもできず申し訳ありません」

 別に多忙ってわけじゃないが、まあいいか。

「挨拶はそれくらいでいい、中に案内しろ」

「はっ!こちらです」

 といって案内させる・・・しまった名前を訊くタイミングを逃したかも。


 

「牢に入れておいた者たちですが、いまだに私に裏切ったなどと訳の分からない世迷いごとを言ってきますね・・・多少気にくわない者たちですが、死なせないようにとの事だったので、衣食はきちんとしております」

 想像以上に真面目だな。

「また男女共にして入れておくと無駄に消耗すると思い男女分けて牢に入れてあります、またここに捕まっていた者などはひどく消耗しておりましたので別室にて療養をしております・・・衰弱が激しく食事も無理やり口に入れねば喉を通してくれないので大変でしたが」

 想像以上な奴だな、この盗賊。

 と一つの扉の前にたどり着くと配下の盗賊が扉の前で立ち止まり扉を開ける。

「まずは捕らえられていた者たちの紹介からさせていただきます」

 いや、まずお前の名前が知りたいんだけどな?

「体の具合はどうだ?」

「・・・あっファイルさん・・・」

 そこには薄手のぼろをまとって虚ろになった眼の金髪のエルフが、俺の配下の盗賊を目にしたときに少し生気を取り戻すといった、その、なんだか、なんだかなぁって場面に遭遇したのだが・・・俺はこいつの名前を思いだせた喜びにそれどころじゃなかった。

 自力じゃない?何を言ってんだか、俺が”ライブラリ”を使わなければ俺の勝ちさ!・・・何の勝負か知らんけどね。

 配下の盗賊ファイルの名前を思い出し一人でテンションをあげているとファイルが。

「このエルフはレインという名でここを取り仕切ってたアベルの・・・」

「あー『ここのボス』でいい、もしくは『頭』だ、イチイチ名前を覚えておくのも面倒だ・・・死んでるんだし」

 正確には殺したんだしかな?まぁどうでもいいことだが。

「失礼しました、ここのボスのお気に入りでした。

 ただここのボスの異常な性欲の対象になっていた事と長期間それが続いたことで心身喪失気味でして、今は若干回復の兆しが見えてますのでしばらく療養が必要になるでしょう」

 こいつ、ちゃんと診断とかまでできる奴とはな。

「分かった・・・まぁ今回はこのアジトにいた連中を処分する気は無いからそんな心配そうな顔はしないでいいぞ?」

 ファイルの表情は説明中ずっと辛そうにしていたのでこいつが懸念しているだろうことを先に否定しておく。

「ご配慮感謝いたします」

 やっぱ処分する気だと思っていたらしい、まぁいいんだけどさ。

「それでは次の部屋に向かいます」

 と次の部屋に案内される、隣の部屋だ・・・鍵をかけていたようでファイルは俺が預けた道具袋から取り出したカギを鍵穴に差し込む。

「こちらに入ってもらっている者は武芸者でしたが、ここにいた者たちに罠にかけられてさらに数の暴力で捕まった者です・・・ボスはすぐに飽きてしまった為配下の者たちにいいように弄ばれたため心を壊してしまい、自由にしておくといろいろ問題を起こしたので部屋を分けておりました」

 と鍵を開けると中には、ベッドの上で服も着ないでひどく息を荒げて、なんというか一人で大人な行為にふけってるビーストの女性がいた。

 このままではいろいろまずい気がしたので声もかけずにファイルと部屋を後にする。

「ああいうのってほんとに起こるもんなんだな・・・」

 つい声に出して呟くと。

「ああならないと耐えられない、いえ、耐えられないからああなっていくんです。まだああなれた方が幸せだったでしょう・・・さんざん玩具にされた挙句大概は衰弱死か冗談まじりでこのアジトの近くに放り捨てて魔物のエサにされたものもいます」

「まぁ捕らえた男たちは、ほとんどがエサコースだったようだしな」

 その辺は”ライブラリ”で確認している、内容までは知りたくもないので見てないが。

「次の部屋にいる者達で捕らえられていた者は最後です」

 と扉を開く、鍵はかけてなかったようだ。

 部屋の中にいた者たちは、一言でいうとひどい状態だった。

 この部屋にいたのは3人、今までの部屋の者もベッドに一応横たわっていたがこの部屋にいた者は基本的に足がない、腕もない・・・切り取られていた。

 他にも多数の人為的につけられたであろう傷や欠損が目立つ。

 ”ライブラリ”では、後2人ほどいたと思うのだがここ数日で力尽きたのだろう。

「何人か死んだみたいだな?」

「はっ申し訳ありません!私の知識や医療の技術ではあの子らを救うことができませんでした」

 あの子らね、”ライブラリ”で確認した人間で今欠けている者達は・・・子供だ。

「まぁ、仕方ないな。こいつらもダメだろうと思っていたくらいだったし、よくここまで持ったものだなと感心しているくらいだ」

「それだけこの者たちの生きる意志が強かったのです」

 さっきから思ってたんだけどファイルもこいつらに酷い事していた一員なのによくここまで他人事みたいに喋れるな?・・・”マインドハック”って記憶を魔力で刻み込むだけのはずだけど、そん時色々削り取っちゃったのかな・・・まぁいいけど。

「まぁいい、こいつらを今のうちに治療することにする・・・死にたくないんだし治しても問題ないよな?」

 ベッドに横たわる者たちが顔をこちらに向けるのもやっとなのだろう、が、それでもこちらに向けて口をパクパクさせる・・・喉元にも切り傷がある、すでに潰されてるんだろう・・・まぁ何言ってても治療という名の改造を施すつもりだけどな。

 俺は”ライブラリ”で俺をこの世界から呼び出しやがった爺さんのとある術を行使する。

「”カスタマイズ”」

 ”カスタマイズ”魔力を行使して対象を作り替える錬金術師が何かを作り替える時によく使う魔術を使う、これを人などに使うのは禁忌とされてるらしいが俺にはどうでもいいことだし、こんな場面でも力を発揮するのならいくらでも使うべきだと俺は思うので遠慮はしない。


 どうやらうまく欠損部が創れたようだ。

そう、創ったのだ・・・さすがに”カスタマイズ”でも0から何かを作り出すことができないため道具袋の中にあった何らかの肉や骨などを彼女たちの手足に作り替えて繋げていく。

 欠損部との結合が終わり手足が戻るという面白い経験をした彼女たち、だが付けた手足がうまく動かないらしい。

「今の術はなんでしょうか?」

 術の行使が終わるとファイルが訊いてくる。

「”カスタマイズ”という錬金術師が用いる対象を作り替える術だ・・・うまくいったと思うんだが何故か動かんらしいな?

 まぁ何が悪いか予想はつくが”ソウルスキャン”」

 とSPを確認してみると案の定SPが減っていた・・・まぁ魂がすり減ってしまうような経験してたようだししょうがないか。

「エス・・・魂の魔力量が減ってるようだ、それで欠損していた部分に魂が馴染まず感覚すらないのだろう。」

 と俺はファルシオンを抜き手足の動かない彼女たちに向ける。

「なにをなさるのですか!?」

「動くなよ?”ソウルブリーダー”」

 剣先から限りなく細くした棘を三人の肩に順番に差していく、一度に3人のSP供給をするのは正直難しいので一人ずつだ。

「あっ・・・てっ」

 一人がうめき声のような物を上げる、うん、感覚が繋がってきたようだ。

 あとは新しくできた手足や欠損していた部分に魂が馴染めばこんな目に合う前のように動けるようになるだろう。

 実はついでに”マインドハック”で既に配下にしてあったりする・・・ファイルの様子を見てトラウマとか消えないかな?消えてたらいいなって思って試してみたけどうまくいってるといいな。

「んじゃあ次はさっきの二人にも試しておくかな」

「試すとはどういうことでしょうか、何か危険なことをなさるのですか?」

 ・・・まぁいいや、こいつも加害者側だったはずなんだけどなぁ?

 何とも言えない気持ちを持ちつつ先の二人に”マインドハック”を施した、先の三人はまだうまく喋れないためにどうなったか分からなかったので、こっちで効果が見れたらうまくいっているだろうという腹積もりだったんだが。

 

 簡単にいうとビーストの娘には襲われかけた・・・精神は少し治ったようなのだが体がいうことをきかず発情状態が止まらなかったらしい・・・仕方なしに取り押さえて”カスタマイズ”で体の調子を無理やり抑えた、レインは特に問題もなく意識がはっきりと戻った。

 戻ってファイルに罵詈雑言の嵐・・・俺に縋りつき泣きはじめここのボスやファイルにされたこと等をつらつらと伝えてくる、まぁここのボスとファイルの記憶は持って無いから知らないこともあったようだ。

 ここで衝撃の事実になるのだがファイルはここにいた盗賊団の参謀だったりする。

 参謀とはいえ俺からしたら軽くつぶした盗賊団の参謀なので少し頭がいいくらいだろうと思っていたんだけどなかなか使えそうなやつでラッキー。

 そしてレインにがっしり掴まれて涙や鼻水まみれにされたのもファイルのせいだと考えればアンラッキーってとこかな?

 ”マインドハック”でも恨みやらなんやらは消えないようだな~、俺に向けられたもの以外は。 

 さて、何とかレインに解放された俺は頬に赤い紅葉マークを付けたファイルを伴い盗賊たちの残党を入れてある牢に向かう。

「なぜ私は叩かれたのでしょうか?」

 未だに、なぜ叩かれたか理解してないファイルに俺はため息つきつつ。

「いくら覚えて無かったからって、あのタイミングであの言葉を言えば叩かれるべきだと俺も思うな」

「そうですか・・・でしたら必要なことだったのでしょう」

 ちなみにレインが罵詈雑言を言って俺に抱き着き泣きじゃくった後にファイルが。

「ところで私はそんな事してたんですか?」

 って訊いてきた、タイミング考えろよ・・・ファイルの記憶が欠如しちゃったのは俺のせいみたいだけどその辺とかレインは知らないんだからそりゃ起こるさ。

 というかファイルはどうもおかしい気もする”マインドハック”がまだ使いこなせてないのかな・・・何となく”ライブラリ”でこいつの情報探ってみたけどはっきり言って別人だ。

 ・・・まぁいいか、使える人間になったみたいだし。


 そしてファイルはアジト奥で壁に付いたボタンを押す。

 魔力の流れがあるので魔術的な仕掛けらしい、それが作動して床が一気に開く・・・俺の立ってる床が。

「これは予想してなかったな・・・」

 といいながら落ちる、ファイルの慌てた声が聞こえる・・・あの野郎、後ろ見ないで押しやがって。

 浮遊感を楽しむ暇もなく床に着地する、3メートルってとこかね?

「申し訳ありません!」

 上からロープを垂らして降りてきたファイルが即座に土下座をする。

「仕掛けを自慢したかったんだろ?今回は許してやるよ、ここでなんか言っても話が進まんからな」

 とりあえず頭をあげさせる、俺も不注意だったし。

「はっありがとうございます!・・・ではこちらになります」

 と案内を再開するファイルについていく・・・けっこう長そうだな。

 落ちた先に廊下のような道が続いており、等間隔で扉がつけられているようだ、何個目かの扉の前で。

「こちら側の扉に頭の娘と世話係、反対側の扉に他の若い連中を牢に入れてあります」

 と説明されたのでちょっと悩む・・・先に娘に会っとくかな。

「あー先にこっち、娘の方と話すことにする」

「分かりました、ではこちらに」

 ファイルが扉を開けて中に案内する、すると。

「てめぇファイル!どの面下げてここに来やがった!」

 元気な恨み節が響く、元気のいい娘は茶髪に黒目のヒューマンでなぜアジトにあったか知らないがボーダーの入った囚人服に身を包んで檻の中で鉄の棒にしがみつきながら叫んでいる。

「貴様の裏切り・・・絶対に許さん・・・」

 静かに怒っている娘も同じ囚人服を着ている、種族はヒューマンで黒髪黒目だ。

 今頃気づいたけどヒューマンって黒髪黒目って多い気がするファイルもだし、まぁ今はいいか。

 檻から吠える娘たちの言葉にファイルが応える。

「裏切り?何を言ってるのかわかりませんね?

 私はこのブレド様に仕えることにしたんです。

 あなた方を裏切ったのではありません、見限ったのです」

 ファイルの言葉に俺は頭にハテナマークが浮かぶ・・・こいつ何言ってんだろ。

「どっちも一緒じゃねーか!手のひら返しやがって、この蝙蝠野郎!」

「必ず・・・その息の根止めるから」

「やれやれ・・・私はこのブレド様に仕えているのです。

 これは運命だったのですよ!

 あなた方はその道に至る途中の石ころにすぎません・・・石ころに興味はもってもそれを捨てたからといって裏切ったことにはならないでしょう?」

「あーそういう受け取り方だから”裏切ってない”か!なるほどな~」

「何納得してやがる!ていうかお前は誰だよ?」

 元気のいい方が俺に気づく・・・って遅くない?俺もファイルと同じタイミングとは言わないけど割かしすぐ入ったよね?

「きさま!我が主に何ということを!主の命令なくばこの場で切っていたぞ」

 とファイルは腰に下げた剣に手を乗せる。

「はーん、そいつがお前が信仰している自称万物の主さん(笑)かい?」

「何その呼び方?」

 俺は何やら身に覚えのない呼ばれ方に驚くが。

「まぁそれでいいや、といっても万物は言いすぎだが・・・これからお前たちの主ではあるからな」

 俺は口の端がつり上がっていることを自覚しつつ言い放つ。

「チッ」×2

 盛大に舌打ちされる・・・めっめげないんだからね。

「とりま”マインドハック”」

 さっと腰からファルシオンを抜き魂に俺に従うよう刻み込む、見た目の歳は17,8歳くらいかな?そんな子を洗脳とか・・・俺も忌避感が無くなっているな。

「さてお前たちの簡単に自己紹介」

 というと先に元気な方からしゃべりだす。

「あたいはここのボスをやっていた・・・」

「STOP!」

「へ?」

「ここのボス、でいい死んだやつの名前なんか今更覚えてやる義理はない、お前たちの胸の内にでも秘めておけ」

 俺は今更ここのボスの名前を聞きたくない、そんなどうでもいい拘りを持って自己紹介を聞くことにした。

「まぁいいけどさ・・・あたいはここのボスの娘で名はレベッカ、歳は17子供はいない、夫はいたけど旦那の弟に真っ二つにされたみたいだね」

 ニコルったら手加減しなかったのね、偉いな。

「そんくらいでいい、次」

 と次の娘に話すよう促す。

「私はライラ・・・レベッカの死んだ夫の妹でレベッカとは幼馴染、歳は17で主人は主に殺されたって話ね」

「ん?そうなのか・・・ああこいつか、確かに俺が殺したな」

「そう」

「憎いか?殺したければかかってきな、同じ場所に行けると思うぞ?」

 俺の腹の中にね、的なことを冗談交じりで言ってみる・・・まぁどうせ結果は。

「いえ、今は素晴らしい主に仕えられるから消えてくれてよかった」

 浮かばれないね、まぁ所詮人を食い物にして生きてきたゴミに同情する気は無いからいいか。

「じゃあ牢から出すが・・・顔面一発くらいで勘弁してやれよ?」

 というと鍵をファイルに開けさせる、出てきた二人はファイルに向かって助走をつけて跳び・・・ダブルドロップキック!

 ふっこいつら、いい物持ってるじゃないか・・・。


 意識の飛んだファイルが回復するの待っている間にレベッカとライラにファイルが道具袋に入れておいた服を渡して着替えてもらう・・・目の前で。

 いや違うよ?「これに着替えておけ」って渡したらその場で着替えだしたからしょうがないじゃん・・・うっかりじっと見てたぜ。

「そんなにがっついて見なくても見たけりゃ好きなだけどーぞ」

「主、こっちもどうぞ」

 どーぞと言いながらせっかく着た服を脱ごうとしたので慌てて止める、恥じらいがないのかこの娘たちは、全く少し説教だ。

「よせ、恥じらいがない」

 ・・・伝えたい言葉だったと思うんだけどなんか違う気が。

「なるほど、旦那はもっと初心な子が恥ずかしそうにたどたどしく脱ぐ感じが好きなんだね」

「分かった要望に応える」

 あれ?なんでここで俺の好みの話のなんの?

 なんて思ってるうちに二人は恥ずかしそうな演技をしながら服を脱ごうとし始める。

 なんか間違って伝えたってことは分かったので止めようとしたらファイルが起きてきた。

「ブレド様・・・私の意識がないからってこんなところで始められると困ります、まだ最後の者たちまでの案内も終わってないですし」

「いや、お前が起きるのを待っていたんだが。まぁいいや二人ともさっさと服を正せ」

「はーい」×2

 脱ぎかけの服を着直した二人を確認して。

「んじゃあ次に行くかね」

「はっこちらです」

 ファイルに連れられて向かいの部屋の扉に向かう、これでこのアジトにいる奴らとの対面が終わる、妙に長かったな。


 扉をくぐると案の定ファイルに恨み言の数々が飛んできたが1つ1つ聞いてやる筋合いもないので入るなり”マインドハック”使う。


「お前らはこのファイルの直轄の部下だ、ファイルに危害を加える事や命令に背くことを禁じる。またファイル、お前はこいつらは俺から預かってる者たちだと肝に命じ決して使い捨てるなよ?」

「はっ」×6

 牢にいた盗賊の残りものは5人いずれも若く上から順に14歳1人12歳1人8歳1人5歳2人全員黒髪黒目、ファイルに訊いてみたところこの国のヒューマンは基本黒髪黒根で隣国の神聖ハーモニア王国から移住してきたヒューマンたちが金髪とからしい。

 まさかここにきてこの大陸に複数の国があるとか言われるとはね、あえて触れたくなかったのに・・・。

 因みにここケイブ森林を含む港町ケイベルなんかを収めてる国の名はハーモニア共和国・・・名前かぶってんじゃんって思ったがこの大陸にある国は「自分たちこそこの大陸の盟主だ!」って主張しあって創られた国ばっからしくて今現在この大陸にある国は大きく分けて3つ、さっきの神聖ハーモニア王国とここハーモニア共和国、あとは神聖ハーモニア帝国である。

 細かい歴史などは機会があれば説明を聞くことにして、今は眷属にしたこいつらだ。

 


 俺たちは一旦地下室から出てアジトの一階にある大広間に全員を集める、もちろん捕まっててさっき俺の治療を受けた連中も一緒にだ。

 ・・・案の定一方的な諍いが起きたがある程度好きにさせてからSTOPをかけ話を進める。

「さて、さっそく本題から入りたい。今回俺がお前たちを生かしておいた理由だが」

 ここにきて自分たちの生殺与奪を俺に握られていることを再確認させておく、何人かがゴクリと喉を鳴らす・・・そんなに脅したつもりはないんだけどな?

「俺はこのアジトが気にいってな、ここを俺の拠点として使おうと思っている。

 んで、お前らにはここの維持をしてもらうために俺に仕えてもらうわけだが」

 と一旦区切り全員を見回す殴る蹴るされたのはほとんどファイルのようだな、などと無駄に感想を抱きながら次の言葉を考える・・・いや~こいつらの役割分担とか全く考えて無かった。

 しょうがないからあの方法で行くかね。

「ここにいる者全員が不満に思うだろうが、これからはファイルの指示のもとにここを維持していってくれ・・・その不満を抱えてでも俺に尽くしていることで俺への忠義を見せてもらう」

 フッ完璧だぜ。

「かしこまりました、その重役この身が砕けようとも受け止め果たしてゆきます」

 まずはファイルが応える、砕けられると困るんだけどな。

「不満に耐える姿が忠義の証明・・・なんか言い回しがかっこいいな!」

 レベッカが納得してくれたようだ、微妙に不安はあるが。

「私たちはブレドさんと一緒に行きたいんですが・・・」

 捕まっていた被害者たちはNoと答える、まぁ気持ちは分からんでもないけどね。

「そうだな・・・うんダメだ、お前たちもここで俺の留守を守ってもらう」

「そんな!」

 レインが叫ぶ。

「なぜですか!私たちでは役に立てないからですか!」

「まぁそれもある」

 とりあえずそれも理由の一つではある、精神なんかが回復している今冒険者ギルドに保護してもらう必要もないから以前のゴブリンみたいな事にはならないだろうけどさ。

「一番の理由が明日ここを出て明後日また帰ってくる、その時に俺のパーティメンバーから同行してもいいか聞いてもらわないとな・・・また俺一人で決めたら怒られる」

 絶句したのはこの場の全員、ここにいる全員の生殺与奪を握っている者に怒ることができる存在がいるのか?という疑問と共に固まっている。

「というわけで今日はもう遅いから全員休め、明日からお前らの上司はファイルだ。ファイル!一応こいつらを預けるが勝手に死なせたりするなよ?」

 そして長い一日が終わる。

 俺はこの拠点の新しい名前を考えながら日を跨ぐのだった・・・。

新技

カスタマイズ

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