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遭遇

57.59.60.61話分です

 5日目の昼頃に目的地であるシーフォートに到着した。

 ゛ハモニアの剣゛やルベロさんたちとは入口をくぐった所で分かれ俺達は冒険者ギルドに向かう、ツーサン太郎は外に放って自由時間、呼んだら来るように言っている。

「確認しておきますね?ここの通行税は僕たちの分を依頼人であるルベロさんが纏めて払ってくれました、ですが宿や帰りの自分たちが使う消耗品などは自分たちで用意してほしいと言われたので、今から冒険者ギルドでもろもろの情報の確認をしに行くということです」

 とニコルが説明する、なんで今から冒険者ギルドに行くのかを・・・ニナに。

「そんなこと確認しにゃいでも自分たちですぐ見つけられるんじゃにゃいの?」

「確かにそうかもしれませんが冒険者ギルドであれば今からでも泊まれるおすすめの宿や次の出発に備えての買い物先の紹介などに信頼ができるからですよ、それとも自分の足で無駄な買い物、汚い宿を探し当てますか?」

 割と冒険者ギルドも便利だったんだなと内心でギルドの評価を改めてると。

「むーニコルはこういう時にゃんか言葉が冷たいと思う~」

 とニナがニコルの言い方に不満の声を上げる、まぁ確かに言葉は丁寧だから嫌味を言うと際立つけど。

「ニナ、そういってやらないでくれ、ニコルに悪気はないから・・・多分」

 自分で言ってて自身が無くなる、ニコルはいうときは俺にも嫌味言うしな~。

「レッドさん~そこは自信もって言ってあげなきゃニコル君が不憫ですよ~」

 ライカに注意された、ふむ話題を変えてしまうか。

「まぁそのことは置いといて、件の冒険者ギルドが見えてきたぞ」

「話の変え方が雑すぎるわね・・・」

「兄さん・・・」

 サラとニコルの非難の視線を無視してケイベルのと同じような酒場兼用な建物の扉をさっさと開けて中に入った。


「ようこそ!この冒険者ギルド・シーフォート支部へ、本日はどのような御用でしょうか?」

 と一番近くにいた受付をやってる職員に声をかけられる、お昼も過ぎたこんな時間だからかあまり人がいないようだ。

「はい、僕達は先ほどこの町につきまして、まず宿を探さねばならないのでこちらで今からでも泊まれる中でもお勧めできる宿の情報などを訊きたいなと思い来ました」

 とニコルが受付さんに話す。

「それでしたらこのギルドを出て右手に見えるウミネコ亭などが宜しいかと思います。

 そちらでしたら料金も高くなく食事も2食分が料金に含まれている為朝夕の食事もいただけます、今からなら十分夕食に注文も受け付けてくれるでしょう」

 受付さんが紹介してくれる、今更だがウミネコとかカモメとかいるんだなこの世界。

「なるほど、では宿はそこにしようと思います。ではもう一つ・・・」

 ニコルが他の質問を始めようとした時に後ろから見守っていた俺に絡んでくる奴が来た。

「なぁ~あんた、あんただよあんた」

 といって声をかけてきたので無視することにした・・・あんたって名前じゃないからな!

「なぁ~なぁ~、なぁ~ったらなぁ~!もー!無視すんなよ!」

 耳もとで叫んできたそいつの頭に軽くチョップをしてやろうかと思って・・・やめといた。

「お!こっち向いたね!あんた名前は?ウチは雪鱗、あんたは?」

 そこには長い髪を纏めて額や頬なんかに鱗があり背中からは蝙蝠のような羽が生え腰あたりから鱗に覆われた尻尾が生えた少女が立っていた、何より目を引くのは鱗や髪の色が白銀なのだ、因みに服装は背中が大きく開いた水着みたいなそう競泳水着みたいな服(?)の上に鎖帷子に革の胸当て下はスカート、足には革製のブーツと太ももまで伸びた靴下を穿いていてそれらをを黒一色で纏めているなかなかの白黒具合だ。

 こんな目立つ奴に気づかなかった俺にちょっとがっかりしつつチョップからでこピンに変更して軽く攻撃する・・・チョップをやめた理由は角が刺さりそうだったからだ。

「いた!なに!いきなり攻撃してくることないじゃん!」

 と雪鱗と名乗ったパッと見ドラゴニュートの少女は赤い瞳に涙を浮かばせて抗議してくる。

「いや、今のは攻撃じゃないぞ。でこピンといって俺に住んでた地方で流行っている挨拶の一つだ」

 と嘘八百を並べる。

「あーそうなの?なら先に言ってよ!知らないから焦っちゃったじゃないか!」

 おや?信じたのか、この子もニナ枠だな。

「それじゃあこっちからも!」

 と雪鱗が俺にでこピンをしようとしたのでそれを躱す!

 バシュウ!

 慣れ親しんできたでこピンの音ではなかったな、当たってたら悶絶していただろう。

「ちょっと!なんで躱すのさ!」

「これを躱したのはお前に為だ」

「どうゆうことさ」

「このでこピンは男から女にしたら軽いあいさつで終わるんだが、女から男にでこピンをしてしまうと『番になりたい』っていう求愛行動になってしまうんだ」

 どこまでも嘘をつく俺、だが何とかこの場は治まりそうだな、雪鱗の顔は真っ赤っかだ。

「そそそそそそんなこと知らなかったし!ウウウウチただ挨拶しようとしてただけだし!」

 盛大にきょどりだす、ふっちょろいな。

「だと思ったから俺は躱したんだ、分かるか?俺はお前のためにわざわざ躱したんだぞ」

 どこまでも傲慢に!嘘をついたら墓までだ!

「そうなんだ・・・ありがとう!うちのことを思ってくれて、ウチこの大陸に来たばかりでそんな風習あることも知らなかったよ」

「そうか、よかったな!気が付いたら『婚約者がたくさんできてました!』なんて状態にならなくて!」

「そうだね!あんたは恩人だね・・・それで~あんたの名前は?」

 ちっこのまま別れれば名前を言わないで済んだのにな・・・まぁ別に教えたっていいんだけどここまで来たら教えないでいたいかな・・・別に意味はないけど。

「それは言えないな!」

「なんで?」

「それを聞いたらお前に求婚せねばならなくなっ痛!」

 何者からか後頭部にダメージを与えられた!

 ばかな!俺の”サーチレーダー”に反応しない敵だと!

「いいかげん馬鹿やってないで名前くらい教えてあげればいいじゃないの!」

 まさかサラが俺の敵だったとは・・・と、さすがにもう十分楽しんだしまあいいか。

「ゴホン!雪鱗よ、よおく聞けよ?俺の名前はブレド・ファルシオン、敬意と親愛を込めてレッドと呼ぶがいい!」

「あれ?教えちゃだめだったんじゃないの?」

 うん、この子は面白いな。

「さっきのは概ね冗談だ」

「え?どこからが冗談?」

「そんな事より俺になんか用があって話しかけたんじゃないのか?」

 無理やり話を変えてみる。

「あっそうそう、そういやそうだった!」

 何回『そう』を言うんだか、このチョロインは。

「あんたウチを仲間にしない?」

「構わんが俺のパーティ全員に挨拶しとけよ?」

「まぁいきなり言われても『はい、いいですよ!』って言いにくいと思うけどさ、ウチのセールスポイントを聞いてくれたら・・・」

「だから構わんぞって!言い方が悪かったか?仲間になってもいいぞ!」

「きっと仲間にしたく・・・?えっ・・・今なんて言ったの?」

 キョトンって音がするんじゃないかと思えるほどキョトンとする雪鱗。

「だからいいよって、分かりにくいか?仲間になってもいいですよって言ってんの!」

「ほんとにいいの?」

 なんだこいつ急にめんどくさくなったな?

「いやなら他のパーティにでも行けばいい、お前は面白そうだからOKしたんだけどな」

「嫌じゃないよ!こんなに簡単に仲間にしてくれるから逆に疑っちゃった、面白そうだからか・・・なかなかいい理由だね!」

 いい理由かな?こいつこのままじゃきっと騙されてひどい目にあうだろうな、このまま一人だと・・・俺みたいに剣にされたりするかもな。

「それじゃあよろしくね!ウチは雪鱗!ランクはFだよ!」

「え?うちのパーティ、ランクDの昇格試験中だけどいいのかな?」

 やばい早速問題が発生したかも・・・。

 まぁ何とかしてみるかな?

「まぁ問題ない」

 一通り考えを巡らせてそんな結論が出る。

「何をそんなに悩んでたの?」

 能天気に訊いてくる雪鱗、こいつは・・・。

「お前は今はまだFランクだな?」

「そだよ?」

「パーティが受けることのできるランクの決まりは知ってるか?」

 という質問に雪鱗が首を傾げる、しょうがない。

 溜息を吐きながら説明する。

「パーティで受ける場合パーティメンバーの平均ランクで受けていい依頼のランクが決まるんだよ、で今俺らのパーティはDランクの依頼を受けている」

「その平均ってどうやって決めるの?」

 説明の途中で質問が来たのでついでに説明する、

「パーティランクの平均の取り方だな?まず冒険者のランクはFからSまである」

「ふんふん」

「でSが数字の1としてFは7になる」

「ふんふん」

「で~例えばEランクは6になるんだが俺のパーティはEランク5人編成だから合計30のなるんだ?」

「ふんふん、5人もいたんだ」

「そう5人いたんだ、でその30を人数で割ると6になり適正のランクは6、つまりEランクになる、だがお前が入ると合計が37になり人数で割ると?」

「37を7で割ると・・・割れない!」

「まぁそんくらいの計算はできるか、そう約6.1になる」

「6より多いよ?」

「そう!多くなる!そして小数点がついたらその数字は繰り上げることになってる、つまり?」

「7になる!」

「そう!7になる!つまり受けられる依頼のランクが下がっちゃうんだ」

「あれ?でも今Dランクの依頼を受けてるんだよね?」

「そっ!昇格依頼の真っ最中になる、だからパーティランクを下げるわけにはいかないんだが」

 そこまで言うとさすがに察したのか雪鱗が涙目になる。

「そんな~やっとウチを仲間にしてくれる人達に会えたと思ったのに~」

 よほど嬉しかったのか反動が大きかったようだ、かなり落胆している・・・やっぱり面白いなこいつ。

「まぁしょうがないから今から俺が付き合ってやるからFランクの討伐依頼を受けるぞ!」

「へっ?」

 俺の言葉に目をぱちくりさせる雪鱗。

「そうゆうことなら私たちの同行しといたほうがいいわね」

 今まで黙ってたサラが急にしゃべりだす。

「でしたら僕は宿などの手続きをしてきますね?では宿で合流しましょう」

 とニコルが受付から聞きたいことを聞き終えたらしく宿に単身向かう。

 というわけで雪鱗の依頼を手伝うのは俺、サラ、ニナ、ライカの4人となった。

 討伐依頼を受けるのに必要な人数もクリアである。

「じゃあFランクの討伐だからろくなもんにゃいだろうけど一緒に頑張ろうね!」

 ニナがあっけに取られている雪鱗に明るく話しかける。

「時間が限られてるから~急ぎましょ~」

「えっ?あっはい」

 ライカの言葉にやっと我に返った雪鱗が受付に行って依頼を受けてくる。


 ここはシーフォートの近くにある大森林、ケイブ森林である。

 ケイブ森林はこの広大なハーモニア大陸にある3つの国の国境線を担うほどの広さを持っており馬車で移動して5日もかかるケイベル・シーフォートの街道にそって・・・逆だケイベル・シーフォートの街道はケイブ森林に沿って施工された街道である、要するにこの森林は広いのである。


「よりによってこの依頼とはね・・・」

 誰ともなくつぶやきが聞こえる、それも仕方ない雪鱗が受けた依頼は2つ一つは薬草採取、もう一つは。

「団体さんが着たな~」

「ゴブ---!」×たくさん

 3人娘の苦い思い出ゴブリンの討伐である・・・甘い思い出っていうか俺にとっちゃピンクな思いでだかな・・・。


「ゴブ---!」×たくさん

 ゴブリンがスクラム組んで突っ込んでくる、こちらもタックルで遊びたかったがものすごい目で俺を睨んでいるお嬢さんがいるのでやめといた。

「ハイハイ”メニードル”」

 一瞬で片付ける、あとは耳を切り取るだけのお仕事です。


「それにしても」

 とニナが俺のほうに近づいて。

「その剣便利だよね!にゃんでレッドしか使えにゃいのかにゃ~」

 と腰にさした俺の本体であるファルシオンにつんつんする、これはある意味スキンシップか?

「しょうがないでしょ?レッドの家に代々伝わる不思議な魔剣で使用者を自分で選ぶらしいじゃない、奪い取ってもその便利な能力は使えなくなってただの切れ味のいい剣になるだけらしいし・・・けどそれだけでも十分価値がありそうなのよね」

 といっていたサラの眼が怖い。

「へーその剣ファルシオンっていうんだ!見して貸して触らせて!」

 雪鱗が奪い取りに来たとっさに躱す!

「ダメだ!」

「え~なんで~ケチー」

「いけず~」

 何故かライカまでなんか言ってきてるが無視してサラたちに事前に説明している嘘設定を雪鱗にも教える。

「この剣が魔剣だってのは今聞いたよな?俺の家系はこの魔剣に魅入られてて代々こいつを引き継ぐものがウチの家系から出る、というより魔剣に指名される」

「魔剣がしゃべるの?」

 不思議そうに雪鱗が訊いてくる・・・まぁ喋れ無い事も無いのだが。

「いや、ウチの家系のモノは突然魂を抜かれたような状態になる、んでその魂が抜かれた状態の奴が魔剣に魅入られた奴ってわけ」

「へっ?」

 割と予想外だったのか間抜けな声を出す雪鱗、

「で魔剣を持たせたら、まあ今みたいに魂がある状態っていうの?こうやって人として活動ができるんだが・・・そうだな試しにこの剣から距離を取ってみせる。サン太郎!」

 といってサン太郎を呼ぶと少し離れたところから「ワンワン」言って走り寄ってくる

 雪鱗が警戒したが。

「そう警戒するな、こいつは俺がティムした下僕だ、サン太郎こいつをもって離れてしばらくしたら俺の許に戻してくれよ?」

 といってサン太郎にファルシオンを鞘ごとあずける、

「大丈夫なの?」

 心配そうに聞いてくるサラに。

「まぁ少しくらいなら大丈夫だろ?じゃあサン太郎頼むぞ」

 と適当に返事をしサン太郎に指示を出す。

 

 ファルシオンが5メートルを越えて離れると俺の視界がファルシオンサイドに移動する。

 さっきまでの俺の体だったフレッシュゴーレムのブレド・ファルシオンがボーっとして立っている。

「ちょっと?レッド!レッド!」

 ニナが大声でレッドを呼ぶが俺との魔力リンクが切れているため反応しない、ついでに言えばマスター権限で他の人間の命令も耳から耳に出ていくようにしてある。

「これは初めて見せてもらったけど・・・ほんとに抜け殻みたいになるのね」

 といって頬を叩いたり抓ったりするサラ・・・ひどくない?

「レッドさ~ん?レッドさ~ん?ここまで無視されると凹みますね~」

 ライカは何言ってんのかわかんない、あれ?説明聴いてたよね?

「・・・」

 口を開けてポカンとしている雪鱗、こいつも魂が抜けたんじゃない?

 などとくだらない感想を抱いていたらサン太郎が唸りだす。

「ぐるる」

「へっ?どうしたのサンちゃん?」

 突然警戒しだしたサン太郎の視線の先を4人が向くと、ちょっと離れた場所から大量のゴブリンが迫っていた。

 サン太郎の警戒した視線の先には先ほど”メニードル”で片付けたゴブリンの倍にはなるだろう数のゴブリンの群れが走ってきていた。

「ゲッ!ゴブリンの群れじゃにゃい!サン太郎早くレッドに剣を!」

 ニナが叫ぶとサン太郎は思い出したように咥えている剣をレッドに渡そうと動くが。

「ぐぅおおおお!」

 地の底から響くような唸り声を耳にしてサン太郎は硬直してしまう。

「何?今の鳴き声っていうか咆哮?」

 雪鱗が慌てて周囲を見回すとゴブリンの群れの後方にいる者たちがはじけ飛ぶ。

「ゴブ---!」×たくさん

 ゴブリンたちは血相を変えて・・・顔色とかよくわかんないが血相を変えて走り続けてる、どうやら吠えた魔物から逃げているようだ。

「取り敢えず隠れて様子を見ましょう!そこの木の陰へ、急いで!」

 サラが急いで指示を出すと、ライカと雪鱗がレッドを運び近くの木の後ろに隠れサラとニナが硬直したサン太郎を叩いて正気に戻すと別の木の後ろに隠れる。

 ・・・そして俺の本体、ファルシオンはサン太郎が正気に返ったはずみでその場に落とされている。

 結果、走ってきた大量のゴブリンに足蹴にされるという悲劇に見舞われる。

 サン太郎め~覚えてろ~!


 ゴブリンたちの群れはやり過ごせたがそのゴブリン達を追いかけてた奴は弾き飛ばしたゴブリン達や俺が仕留めて耳を獲っただけのゴブリンの死体を食べ始めたようだ。

 サラたちは木の後ろに隠れて身を動かさないようにしているから見てないようだが俺は丁度見える位置に転がされてしまっている。

 そいつらの肌は緑色で髪は茶髪が黒くすすけた感じで額に2本の角を生やしその巨躯は2メートルをゆうに越しており盛り上がった筋肉はその身体能力の高さを窺わせる。

 そいつらの真っ赤に染まった口には鋭く丈夫な歯が並んでいて手に掴んだゴブリンの死体を頭からゴリゴリ音を響かせかみ砕いている、顎も丈夫なようだ。

 どうやらオーガの狩りの場面に居合わせてしまったようだ、流れ的に昨日の雷刃竜でも出るかとドキドキしたが違ったようだ。

 それでもEランクの冒険者からしたら格上の相手には違いない、ランクで言えばオーガはBランクにあたる・・・この森での討伐依頼って危険すぎるんじゃないかな?って思ってしまっても仕方ないと思う、因みにオーガは5体ほどいて個体ごとに差があるようだが・・・どれも3メートル近いボディビルダーのようだ、そう考えると奴らの肌がてかって見える気がしてくるから不思議だ。

 ゴブリンの死体を半分くらい喰い終わったあたりでオーガたちは満足したのか他の死体を集めて布のようなモノに載せて運び始める。

 余った1匹のオーガが俺の近くに転がってる死体を拾おうとして俺に気づく、やばいかな?


 オーガが俺に手を伸ばしてきたときに赤い影がオーガの前を横切った。

 サン太郎が俺を咥えてオーガを睨みつける・・・あれ?さっきこいつらの咆哮にビビってたのに、主人のピンチに勇気が出ちゃったのかね?愛い奴よ。

「サンちゃ・・・」

「ニナ!シッ!」

 とっさに叫んでしまいそうになったニナの口をサラが塞ぐがどうやら見つかったようだ。

「ぐぅおおおお!」

 オーガが咆哮を上げる。

 獲物がまだここにいるよと他のオーガに伝えようと叫ぶ!

 その咆哮に他のオーガは気づかない。

 聞こえないものは気づけないよね。

 オーガがこっちに気づいた時に俺を中心に5メートル範囲で防音結界”サイレントサークル”を張っといた、対象物の内と外に防音機構を施す結界だけど範囲指定までできちゃった優れもの、他のオーガはさっさと自分たちの巣に帰ってったみたいだったのでこいつが咆哮をあげなかったら気づかないかなーと思ってはっといた、俺の機転の勝利である。

 サン太郎が素早く俺を口から離し叫んでるオーガの足に食らいつく、俺的にはさっさと体に俺を届けてほしかったのだがね。

 噛みついたオーガにサン太郎の特殊能力が反映される噛みつかれサン太郎に触れられた部分が火傷のように爛れる。

「グおおおおおお!」

 痛みに吠えるオーガが噛みついたサン太郎にコブシを叩きつけようと構えた時に。

「”ファイアボール”!」

 直径150センチほどの大きさの火球がオーガの胴体にあたる、サラの得意技の”ファイアボール”だ、普通ならバスケットボールくらいの大きさの魔法なのだがサラは派手好きらしく「小さいより大きいほうがいいでしょ?」と純真な俺にはよくわからない言い回しで自分の魔法について語ってた・・・気がする、覚えてない。

 その隙にサン太郎が離れようとする。

「サンちゃん!大丈夫!」

 叫びながら手持ちのショートソードで切りかかるニナだがその刃はオーガの硬い皮膚に弾かれる!

「堅っ!」

 弾かれた弾みでの手のしびれと体制の崩れが致命的な隙を作ってしまう。

「グおおおおおお!」

 標的を一度離れたサン太郎から突っ込んできたニナに変えそのコブシを叩きつけようとして。

「は~い、ざ~んねん」

 ライカがオーガの膝裏に渾身の蹴りを叩きこむ、痛そうな膝カックンを受けて体勢を崩したオーガに。

「くらえ!」

 追い打ちにと雪鱗がわき腹めがけて槍を突き立てる!

「グおおおおおお!」

 痛みに叫ぶオーガが反撃といわんばかりに腕を振るうが全員ヒット&アウェイで器用に躱しながら攻撃を続ける。

 

 危なげな場面も多々あったが何とかオーガを追い詰めていく4人と1匹、いいかげん俺を体に持っていってくれないかなーと思っていると、突然巨大な影がオーガに激突した。

 俺もオーガばっかり見ていたとはいえ”サーチレーダー”の範囲外からの強襲には面食らう。

「グゥルオオオオオオオ!」

 ビリビリと空気が震える。

 あまりの大音量に全員耳をふさぎうずくまる。

 そしてその咆哮がやむと大きく鼻息をたて全員を睨みつける、いやただ軽く視線を送っただけなのかもしれないが・・・ただその視線を受けただけでニナは失神し倒れサラとライカは腰を抜かし失禁してしまいサン太郎は尻尾を巻いている。

 まともに武器を構えているのは雪鱗くらいだ・・・白目をむいてはいるが。

 俺は急いで本体を鞘から脱出させてブレド・ファルシオンの所まで本体を移動させる、間に合うか?

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