新しい出会い
「まったく、あんなところで、しかも一人で夜を明かそうだなんて・・・あなたイイ神経してるわ」
そう呆れるような咎めるような口調で言いながら、優奈に豆を煮込んだような物が入った椀を渡してくれたのはつい先ほど会った女性だった。
白い布にすっぽり覆われていた彼女は、布に覆われた状態ではわからなかったが、かなりスタイルのよろしい美女だった。赤茶けたウェーブのかかった髪に意志の強そうな青い瞳、唇はふっくらとしており全体的に見るとスタイルの良さも相まってとても艶めいた美女に見えた。
彼女は優奈が一人だと知るや否や、優奈をほぼ強制的にラクダに乗せここまで連れて来てくれた。
日暮れ前に到着した場所は、見た目魔の森の村とそう変わらないであろう小さな集落の様だった。
優奈はそのまま引っ張られるようにして女性-クランの寝泊まりしている集落の端に設営されたテントへと連れてこられた。水と砂によって汚れた服はクランによって取り上げられ、優奈は今クランによって貸し出されたアラビアンチックな服を着せられている。
椀を受け取りつつ、優奈は軽く頭を下げる。
着る物から、寝泊まりするところ、食事までお世話になってしまっては頭を下げるしかないだろう。
「・・・すみません」
ついつい感謝の言葉よりも先に謝罪の言葉が出てきてしまうのはのは日本人ゆえだろうか。
「別に謝ってもらう必要はないわ。・・・でも、あなたも一応女の子なのよ? もう少し自分の身を大事にしなさい」
クランは優奈の前に座ると、この辺りがどういう場所なのか優奈が聞くよりも早く説明し始めた。
曰く、ここはガイアレンの南方に位置する砂漠の国クェールという国だそうで、魔の森と近いためか北の砂漠には夜になると魔物が現れるそうだ。
ちなみに、優奈がいた場所は思いっきり北の砂漠だったらしい。
うっかり夜まであそこにいれば魔物の餌食になっていたであろう。
「それに、最近は治安だって良くないんだから。盗賊なんかもうろついてるのよ? もう少し気をつけなさい」
そう言われ、優奈はいかに自分がいかに危険な場所にいたのかを思い知った。
「ま、わかったならいいわ。これからは気をつけなさいよ?」
顔色を悪くした優奈にクランはお説教モードは終了、とばかりにニッコリと笑った。
優奈はそれに素直に頷きを返し、かさねがさねクランにお礼を言った。
次の日、目が覚めると見慣れない天井に一瞬驚いたが、すぐに昨日までの出来事を思い出し一人納得した。
ふと見回すと、クランはもう起きているようでテント内に姿は見当たらない。
起き出してクランを探しテントの外へと顔を出す。
「あら、起きた?」
既に身支度を整え、朝食の準備をしていたクランに目をとめ、優奈は慌てて手伝いを申し出る。
が、もう終わるからと断られ、優奈自身の身支度を整えてくるようにとテントに押し戻された。
クランの言に大人しくしたがって、優奈は自分の身形を整える。
テントに押し戻されるときに渡された服を着る。
ついでにテントにあった櫛を借りて髪を整える。本当ならば結んでしまいたかったが、結ぶゴムどころか紐もないので諦める。
支度を終え、もう一度クランの元へ顔を出せばすっかり朝食の準備が整っていた。
「さ、座って。食べましょう」
「ありがとうございます」
優奈はクランに礼を言い、向かいに腰を落ち着ける。
「ねぇ、あなたこれからどうするつもり?」
朝食を終えたところでクランがそう切り出してきた。
それは優奈自身が昨夜からずっと考えていた事だった。
ロアン達とはぐれてしまった今、優奈は自分の身は自分で守り、自分の生活は自分で何とかしなければならなかった。
まぁ、いい歳した大人なのだし、当然の事だろう。
今までが甘え過ぎていたのだ。
「できれば、どこかで働いてお金を稼ぎたいな・・・と思っているんですが・・・」
優奈がそう答えると、クランは明らかに渋面になった。
「・・・そう言うってことは、帰るあてがないのね。・・・まぁ予想していた事だけど・・・」
優奈は何となく申し訳なくなって首をすくめた。
「すみません・・・」
「謝る事じゃないわ。・・・まぁ、これも何かの縁ね」
クランはそう言うと優奈にニッコリと笑いかけた。
「私と一緒にいらっしゃい。面倒みてあげるわ」




