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調理部の恋愛事情  作者: 春隣 豆吉
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5. クリスマスの珍事

 クリスマスシーズンに合わせて、一本の映画が公開されることになった。どこかしらでつながっている登場人物たちが繰り広げるクリスマスにぴったりのハートウォーミングな物語・・・


「唯さん。この映画見たいって言ってたよね」

 裕介くんが私の前に前売り券を出した。それは確かに私が見たいと思っていた映画だった。

「裕介くん、どうして分かったの?」

「前に唯さんが“この俳優さん、けっこう好きなの”って言ってたでしょう。この人がイギリス首相役でメインキャストの一人だってテレビで見たから、どうかなと思って」

「行きたいけど・・・でも裕介くん。勉強はいいの?」

 裕介くんは受験勉強の追い込み時期で、最近はもっぱらメールのやり取りが多い。今日は久しぶりのデートだ。

「孝介が“俺は明日デートだ。お前も明日だけはのんびりしろ”と言ったんだ。駿介兄ちゃんも武内とデートだし」

「なるほど」

「でも唯さんが家で一緒にいてくれるってのもいいなあ。誰もいないし」

「・・・・映画にしよう。前売り券があるんだから」

「・・・・そういうと思った。」

 裕介くんはそういうと、残念そうな表情を浮かべたものの、すぐに話題を映画の話に変えてくれた。



 映画館はカップルや家族連れで混雑していた。特に私たちが見ようとしている映画はデートムービーとしてもぴったりなので、観客の8割がカップルだった。

「お兄さんたち、この映画を見に来てたらすごい偶然よね」

「やめてよ~。笑えないって」そういうと、裕介くんは周りをきょろきょろし始めた。

 私はそんな裕介くんの様子に思わず笑ってしまった。

 そして公開予定の映画の予告編が始まり、スクリーンが暗くなる・・・・


「面白かった~!見てて幸せな気分になれる映画って最高よね」

「復帰を狙うロッカーの話がよかったなあ・・・」

「私はやっぱり首相の話がよかったわ。だけど病気の弟を持つ女の人の話は切なかった」

 二人で映画の感想を言い合いながら話していると、裕介くんがなぜか「唯さん、あっち行こう」と私の手をつかんだ。

「え?だって、レストラン街ってこっちじゃ・・・」私がびっくりしていると、前方から「裕介~。兄ちゃんから逃げるのか?」と、にこやかな声がした。

 いつのまにか近くまできていたのは、裕介くんにどことなく似ていて、もっと世慣れた感じのする男の人と、隣でやれやれ・・・といった感じでその男の人を見てる涼しげな顔立ちをしキリっとした雰囲気の美人さんだった。

「なんで、ここにいるんだよ」

「なんでって。俺らも映画みてたの。出口でお前見かけてさあ、まさか同じ映画を見てると思わなかった。兄ちゃんは驚いたぞ」

 兄ちゃん・・・・ということは二人のお兄さんのどちらかか。はて、どっちだろう。

 私がそんなことを考えていると、今度は別方向から「孝介兄さん、裕介??なんで二人がここに」とまた声がした。

 声の方向を振り返ると、そこにはやっぱり裕介くんに顔立ちはにているものの、どちらかといえば武士のような男の人と、武内さんが立っていた。

「駿介兄ちゃん??」

「駿介。偶然だなあ~~」

 この武士みたいな人が駿介さん・・・武内さんの彼氏かあ。ということは2番目のお兄さんだな。そうなると、この世慣れした人は一番上の孝介さん。


「二人とも、クリスマスだからって映画デートか?もっとどっか違うところに行けばいいのに」

「兄さんには言われたくない」

「そうだよ、孝介兄ちゃんに言われたくないよ」

 今度は3人で会話を始めてしまった。なんとなく手持ち無沙汰になってしまったのは私だけではないらしく、孝介さんと一緒にいた彼女さんが「ごめんね、私は邪魔するなって言ったんだけど・・・内藤ってああいう性格だから」と謝ってくれた。

「い、いいえ!謝罪なんてしないでください・・・それにしても、すごい偶然ですね。ね、武内さん。」

「はい。あの・・・はじめまして、武内苑子です」

 そういえば、私も孝介さんの彼女とは初対面だった。あわてて「はじめまして、川田唯です」とお辞儀をする。

 女の人は「そういえば自己紹介してなかったよね。はじめまして、小野奏です。川田さんと武内さんは知り合いなの?」と微笑んだ。

「はい。同じ高校なんです。あと所属している部が交流があって・・・」

「そうなんだ。・・・・それにしても、あの3人には困るわよね。」小野さんはそう言って苦笑した。

 私も武内さんも、思わずうなずいてしまう。3人は私たちの存在を忘れているみたい。

「いつまでも、ここに突っ立てるのは通行人の邪魔よね。私たちだけでどこかでお茶しましょうか」

 そういうと小野さんは私たちをお茶に誘った。


 数分後、カフェで席待ちをしているところに3人それぞれの携帯に電話がかかってきたのは言うまでもない。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!


小野さん、書いてて楽しい!!

クリスマスだというのに甘さの欠片もない話になってしまいました。

ちなみに出てきた映画は「ラブ・アクチュアリー」・・・のつもり。

公開年度を無視かよっ!!

大好きな作品なのです。ヒュー・グラントも好きです。

クリスマスにぴったりですよね!


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