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騎士になりたいんですが、闇属性の私には難しい  作者: アイム


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ドワーフから聞いた、“二体の悪魔”の話。

一体は、ひたすら瘴気を撒き散らす悪魔。

そしてもう一体は――生命を喰らう悪魔。

『その二体は繋がっておる』 『もし本当に存在するなら、わしもその竜骨を一目見てみたいもんじゃ』

あの時は、ただの昔話だと思っていた。

だが今なら分かる。

「ガロ!! あれ、吸収してる!!」 「アレを止めないと終わらない!!」

レンが叫ぶ。

「はぁー……だりぃ」

ガロが巨大な剣を構える。

次の瞬間。

レンとガロの纏装が、同時に炸裂した。

轟音。

黒い口が真っ二つに裂ける。

だが。

ぐじゅり、と音を立て、再び繋がろうとした。

「ガロ! もう一回!!」 「今度はもっと小さく!!」

「……あいよっ!!」

再び斬撃が走る。

切断。

その瞬間。

レンが転移魔法を展開した。

「送れっ――!!」

裂けた半分が、マグマへと飲み込まれる。

「おお」

「やった!」

だが。

――――!!!

残された口が蠢く。

裂け目が増える。

そして。

口が、“二つ”になった。

「は?」

ガロの顔が引き攣る。

だがレンは止まらない。

「まだ小さくなってる!!」 「いける!!」

何度も。

何度も。

ガロが斬り刻み。

レンがマグマへ送り込む。

黒い口は増殖しながらも、確実に縮んでいた。

「っ……うぅ……」

レンの身体が揺れる。

「嬢……レン!!!」

鼻血が溢れる。

前半戦を走り切った身体に、転移の連続使用が限界を超える負荷を与えていた。

それでも。

レンは口元を拭い、顔を上げる。

「……ガロ」 「小さくなってる……」

やれる。

そう言いたかった。

後方では、ロイドの雷が幾度も空を裂いていた。

遠く離れたエリア十五。

腐瘴竜へ向けて。

「お願い……ロイド様っ……」

レンは目を閉じる。

痛い。

苦しい。

視界が霞む。

でも。

これを消さないと、皆が死ぬ。

父を思い出す。

家族を思い出す。

そして、ウィルの言葉が脳裏を過った。

――安全な場所にいてくれると安心する。

今、自分は安全か。

違う。

違う。

アレを倒さないと駄目だ。

本能が叫んでいる。

「ガロ!!」 「切って!! どんどん送るから!!」

ドワーフは言っていた。

――どんな生き物も。 ――どんな魔物も。 ――悪魔ですら。

この星のマグマには焼かれる、と。

――――

エリア十五。

「はぁ……はぁ……」 「動き、鈍ってないか……?」

シグルドが息を荒げながら叫ぶ。

「再生が……追いついてない!!」

「マジ……!?」 「だったら、さっさと殺れぇぇぇ!!!」

マリアの目から血が伝う。

祈りの酷使。

限界だった。

「畳みかけろ!!!」

シグルドの号令と共に、騎士たちが一斉に攻撃を叩き込む。

そして。

ロイドが空を見上げた。

――レン。

お前なのか。

再生が止まった理由。

あちらで何をしているのか、理解した。

「……下がってくれ」

静かな声。

次の瞬間。

天を裂く超雷撃が落ちた。

轟音。

瘴気ごと。

大地ごと。

腐瘴竜を消し飛ばすほどの稲妻。

一撃。

二撃。

三撃。

光が消えた時。

そこにあったのは――

砕け散った骨だけだった。

「………やったのか」

誰かが呟く。

腐瘴竜は、動かない。

そして。

――黒い沼が、消えた。

増援部隊が到着し、瘴気から現れる魔物を次々と討ち取っていく。

だが。

ロイドは空を見た。

――レン。

嫌な予感しかしなかった。

「セオン!!」

「分かってる!!」

セオンがルークを降下させる。

ロイドを乗せ、二人はエリア三十へ向かった。

頼む。

無事でいてくれ。

レンは強い。

ガロも強い。

それでも――

胸騒ぎが止まらない。

――――

到着した瞬間。

二人は言葉を失った。

静かすぎた。

あまりにも。

そこには。

エリア三十を任されていた兵士たちの死体がそこにあった。



「……っ」

セオンが即座に本陣へ報告を飛ばす。

ロイドは火魔法を灯し、周囲を照らした。

「レン!!!!」

どこだ――!!

海岸へ向かって駆ける。

通信越しにセオンの声が響く。

『ガロは重症の状態で本陣に転移された!!』

――レン。

胸騒ぎが止まらない。

そして。

倒れているレンを見つけた。

「……っ!!」

ロイドは駆け寄り、その身体を抱き上げる。

軽い。

嫌になるほど。

「――レン、起きろ!」

反応がない。

「――レン!!!」

「……っ」

唇がわずかに動く。

何かを言っている。

だが、聞き取れない。

そのまま、再び動かなくなった。

身体が冷たい。

ロイドの喉が詰まる。

「……レン?」

セオンも駆け寄る。

そこで二人は気づいた。

レンの両腕。

黒い痣のようなものが、肘まで広がっている。

「この黒いのは……」

ロイドが眉を寄せる。

「……魔力欠乏症か?」

――!!

次の瞬間。

ロイドはレンへ口づけた。

深く。

深く。

魔力を流し込むように。

セオンが息を呑む。

「―――」

「―――」

反応がない。

セオンは息を止めたまま見守る。

……頼む。

……頼むっ。

この子を連れていかないでくれ。

すると。

すうっと。

レンの身体が、ロイドの魔力を吸い上げ始めた。

「……っ」

ロイドの肩が揺れる。

レンの身体に、少しずつ熱が戻っていく。

やがて。

「……うっ」

セオンが大きく息を吐いた。

静かに、ロイドが口づけを離す。

耳を澄ませば、小さな寝息が聞こえた。

生きている。

だが。

黒い痣は、まだ肘まで残ったままだった。

ロイドが低く呟く。

「……これでは埒が明かない」 「このまま連れていく」

「あー……了解」

セオンは気まずそうに目を逸らす。

それでもすぐに動いた。

レンを慎重に抱き上げ、ルークの背へ乗せる。

近くの転送装置へ向かい――

二人を本陣へ送り返した。

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