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9話 魔族との出会い


 リッチが使ってきた火玉ファイアーボールを無効化したところで、ロイドがこちらを向いて言ってきた。


「助けろなんて言ってないだろ! 俺一人でも何とかなった」


「......。悪い」


 ソフィーやシャーロットが嫌な顔をしていたが、ここで言い返しても意味がない。言い返したところでロイドの士気が下がるだけだと思う。それなら俺がグッと堪えるのが最善だ。


 それにリッチが火玉ファイアーボールを使う前に魔法無効化キャンセリングをすればよかったこと。それを今回は反応が遅れてしまったから魔法が発動してしまった。


 今回に関しては俺のミスだ。これからはリッチが魔法を使ってこようとした時に魔法無効化キャンセリングをすればいいだけだ。それに今回戦場にいるモンスターは、比較的魔法を使うことが少ない。強いて言えば、オーガの身体強化とゴブリンマジシャンだ。


 でもゴブリンマジシャンは今のところでて来ていないし、オーガに関しては身体強化を使われたところでロイドたちは苦でもないだろう。だから今のところリッチに専念できる。


(もう前衛なんだ)


 そう。後衛にいた時の気持ちは捨てなくてはならない。後衛では少し気を緩んでもよかったが、今は違う。俺のミス一つで仲間が死ぬ可能性だってある。


 自分に言い聞かせて、気を引き締めたところで戦闘に集中する。先ほど同様、リッチが使おうとした魔法を魔法無効化キャンセリングで無効化しつつ、シャーロットやソフィーに攻撃を仕掛けてくるゴブリンなどを風切エア・カッターで倒したり、氷床アイス・フロアで動きを鈍らせたところでロイドに倒してもらう。


 そうこうしているところでモンスターがソフィーやシャーロットに標的を合わせ始めた。


(クソ)


 こうなったら俺も先程までの余裕がなくなる。そう思っていたところでイワルとソフィーが言う。


「俺が二人は守るからロイドとレオンは目の前の敵に集中してくれ」


「うん! イワルさんと一緒に私も戦うから」


 二人がそう言ったところで後衛からミルシェが言ってくる。


「私もカバーするからレオンしかできないことに専念して!」


 仲間を信じて、ロイドと一緒に周りにいる敵を倒し始める。二人で徐々に前に行きつつ敵を倒して行く。リッチの魔法を魔法無効化キャンセリングしつつ、ロイドを前にしながらロイドが漏らしたモンスターを倒す。この動きがうまく刺さりことごとく倒すことができた。


 そしてある程度モンスターを倒したところでモンスターが徐々に左右に轢いていき始めた。


(どうする!?)


 左右にも冒険者はいる。モンスターがこの場から消えたところで結局のところ、他の人たちに迷惑が掛かってしまう。そこでロイドが言う。


「おい雑魚、モンスターを追うぞ!」


「え?」


「このままここにいてもモンスターの数を減らすことはできない。だったらモンスターを追って、できる限り倒した方がいい」


 ロイドの言う通りモンスターの減らすのが最優先だ。でもそうしたら仲間たちの負担が......。そう思った。なんせ俺たち二人が消えたらここにいるメンバー全員、戦闘がきつくなる。


 その時、この場所から左方向から悲鳴が聞こえた。


(なんだ?)


 そちらを向くと、まがまがしい魔力を感じた。


「この感じ......」


 ソフィーたちに伝えて、ロイドと悲鳴が聞こえた方向に向かった。二人で走って到着したときには、冒険者が1人腐食して死んでいた。周りを見る限り、他の人たちはまだ死んでいないが、全員が怯えていた。


(クソ)


 できる限り死なないようにって目標だったのに、すでに1人死んでしまった。そう思うと、自分への葛藤が出てくる。もっとうまく指示を出していれば。時間を決めて撤退させれば。もっと早く援護しに行ければ。そう頭によぎった。


 でも今そんなことを考えてもこの人は生き返らない。自分に言い聞かせ一旦深呼吸をして、目の前の死体を眺める。すると思っていた通り、渓谷で見たあの光景に近かった。その時、森林奥からまがまがしい魔力を持った男? が出てきた。


「あれ! まだ強そうなのが残っているではありませんか!」


(こいつ......。魔族か?)

読んでいただきありがとうございました。


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