6 ゼリー
「輝石ちゃんを返して!」
「だから……」
店長の口答えにもお構いなしにあたしは答える。
「返しなさい!」
そして店長が遂にマジギレした。
「黙れ!こいつを店の外へ連れてってやれ。」
(「こいつ」ですって?)
あたしもキレたが、もう店の外へ出されていた。
(輝石ちゃん……。)
あたしは、輝石ちゃんのことを思い出した。
(どこ行こう……。)
輝石ちゃんを助けたい!けれど、もうペットショップに入ることは許されないだろう。
(何か、別の方法が、あるはず。)
ポケットに手を突っ込んだ。案の定、ゼリーが入っていた。
(ゼリーね……。)
あたしは、ゼリーを食べようとはしなかった。
(後で、何かに役立つかもしれないし……。)
空を見上げると、ゼリーの形の雲と、かえるの形の雲があった。
(ゼリーと、消えたかえるたちはやっぱり関係があるのかな。)
あたしは、もう一回ペットショップに行こうと思ったけれど、さっきと同じことになりそうだったので、引き返した。
――本当は戻りたくて戻りたくて、うずうずしていた。
もう一度、ゼリーを取り出す。
ゼリーの容器には、「魔法のゼリー 仲直りの魔法がかかっています」と書かれている。
(魔法、あるのかな……。)
魔法なんてインチキだ、誰かの作り物だ、といつも思っていた。
けれど、今は、なぜかそんな感じはしなかった。
魔法が本当にあるのかと、証拠もないのに感じた。
(使ってみようかな、このゼリー。)
使おうと思って、店に入ろうとしたけれど、戸惑った。
まるで天使と悪魔が、もう一人の自分として、戦っているよう。
(でも、「仲直りの魔法」でしょ……あたしと店長はもともと仲いいとか、悪いとか、ないじゃん。初対面だもん。)
もう一人の自分が言う。
(初対面だろうと、関係ないよー。早く店に入って、店長をぶん殴っちゃえ!)
そして、ほんとうのあたしが悪魔に呼びかける。
(ぶん殴るって……さすがにそれはダメでしょ。店長もあれは仕事だもん。)
そして、あたしの中の悪魔は、言い返す。
(「あいつ」って言われた時、ムカついたでしょ?ぶん殴りたくなったでしょ?)
(確かに、ムカついたけど、今はダメ。あたしにだって、プライドは守りたいもん。)
そして、悪魔は黙った。
そのあと、天使が話しかけてきた。
(今入っても、店長は怒りでいっぱいだから、違うところで別のやりかたを探しましょ。)
あたしは、天使に賛成した。
(そうね……!手がかりがあるかもしれないし、他のところへ行ってみよう。)
そしてあたしは、美容院に行くことにした。
願い事をしながら。
(輝石ちゃんを助けられますように!)




