エピローグ
「ぼくは、本当はあんな風に思っていなかったよ。」
ちびくんが言った。
「え?」
(えー、まさかあれは嘘だったのぉ……。)
「本当は……かえる劇場が大好きだったんだ。」
(じゃ、じゃあなんであんな事言ったのよ。あれが無ければ、あたしは苦労しないですんだのに……。)
「あの時のぼくは……あれは全部芝居。」
「はぁ……。」
あたしは、失神しそうになった。
(何よ!変なこと企んだんでしょ。)
「芝居っていっても……、ぼく、操られていたみたいなんだ。」
(操られていた……!?)
「あの時のぼくは、偽りのぼく。本当のぼくじゃない――。」
ちびくんが、呪文を唱えるように言った。
「じゃあ、本当のちびくんって……。」
「本当のぼくは、このぼく。姫蘭ちゃんが創り出していたぼくと同じだよ。」
「えっ。」
(じゃあ、あのちびくんは操られていたちびくんなんだ……。)
思わず、ため息をついてしまった。
「ゼリー……。」
「え?」
突然、ちびくんが喋りだした。
そして、ひらめくように言った。
「ゼリーが、操りの魔法を……解いたんだよ!」
「ゼリーが!?」
(駄菓子屋で偶然買ったゼリーが、魔法を、解いた?)
頭がこんがらがる。
(そんなもの売ってはいけないんじゃ……。「仲直りの魔法」は、宣伝でしょ?)
「ゼリー、大好き。」
あたしは、なぜ、ちびくんがゼリーを食べただけで魔法が解かれたのかが分かった。
ちびくんが、ただゼリーを好きなだけではなかったから。
ちびくんは、その魔法を、解いてほしかったのかもしれない……。
それから、何日か、何ヶ月か、何年か経って――。
あの時の思い出は、あたしの心の引き出しに刻まれていた。
そのことを思い出すように、かえる劇場をやっていた。
「ぼくのゼリー、返して!」
「だめぇ。」
あの時と、おなじパート。
「じぇりー!!!!」
遊んでいるあたしの声が、子供部屋に響く。
『かえる劇場、大好きだったんだ。』
今日も、あの時のちびくんの言葉が、頭によみがえるのだった。
ちびくんの声は、もう聞けないけれど――。




