14 全てが元通りに
あたしは、風を切って、足の力を最大限に入れて、走っている。
学校に、向かっている。
ちびくんを、取り戻す。
夜の道は、恐い。真っ暗で、何があるか分からない。
でも、今のあたしの恐いものはそれじゃない。
ちびくんが、いなくなることだった。
ちびくんが、いなければ、かえる劇場は、二度とできない。
もしかしたら、かえる遊びもやらないかもしれない。
それを恐れて、今のあたしはちびくんがいるであろう場所に。
学校。
夜の学校は、誰も来ないから、ちびくんはそこを選んだんだ。
さっきのあたしには分からなかった、ちびくんの気持ち。
――ぼくは、あのぼくとは違う。
一人ひとり、個性を持っている。
甘えん坊な子や、泣き虫な子、短気な子、ノー天気な子もいれば、臆病な子もいる。
ちびくんのように、実際、あたしの予想と実際の性格が違った子もいるけれど、それを言うのも言わないのも、その子の個性。
かえるにも、個性がある。
人間と同じように。
かえるだから、ぬいぐるみだから、放って置くのは間違いなんだ。
(かえるも、人間と同じなんだね。)
あたしは気付いたのだった。
学校に着くと、ひとり、校庭でうずくまっているようなものがあった。
――ちびくんだ。
(どうしたんだろう。)
「バンッ!!」
後ろで大きな物音がしたので振り返ってみた。
何も無い。
顔を戻すと、ちびくんがいなくなっていた。
「ちびくんっ!?」
それから、また大きな物音がした。
「ドシン、ドシン、ドシン――。」
「わあっ!?」
音がするほうを見ると、とても大きな物体が立っていた。
まるでロボットかと思うように、というか、ロボットである体つき。
動きも、カクカクしている。
「ロボット……?」
(こわい……。)
「それ」は、あたしの顔をじろじろ見る。
(何か用があるの……?このやつ、正体不明……。)
それから、「それ」が何なのか分かった。
ちびくん。ちびくんが大きくなったもの。
ちびくんは、静まり返ってから声を出した。
「ゼリー、ちょうだい!」
「へ……?」
いつも、あたしが演じている声だ。
あの時のちびくんと違う。
(あれれ?どうしてこんな声なの?)
「ゼリー、ちょうだいっ!!」
「分かったから……。」
あたしは、戸惑いを隠せなかった。
(それよりも、ゼリーを……って持ってないしなぁ……。)
いつものあたしのくせで、フリースのポケットに手を突っ込む。
中に、冷たいものが入っている――。
取り出してみると、それはゼリーだった。
(ゼリー!?どうしてそんなものが!?)
あたしは、駄菓子屋でゼリーを買っていたことを、すっかり忘れていた。
かえるたちを探すのに、夢中で。
(あ、そういえば買っていたなぁ……。)
ちびくんは、かなり待たされて怒っているようだったので素早くゼリーをわたした。
「あむ。ふぐふぐ。はひはとー。」
「えっ!?」
ゼリーを食べているちびくんのからだがみるみると小さくなってくる。
「はぁっ!?」
あたしの何倍もあった超巨大なちびくんから、あたしの何分の一のちびくんに戻った。
「あれ?ぼく何しているんだろう。」
「えーっ!?覚えていないの?」
「うん。」
「はあ……。」
(あたしが頑張ったことぐらい、覚えていてほしかったなぁ……。)
そしてあたしは、ちびくんを引き連れて家に帰った。
次のエピローグで完結となります。




