『黒歴史ノート』 其の六
3日目、城下町宿屋。
またも廃人達の手により、廃人使用の武器が完成していた。
聖女のロングソード+99(パリィ成功率UP、装備条件緩和LV制限無し)
今回は伝説級では無かった為、徹夜にはならなかった。
「ところで、華音さんと香織の装備・・・っていうか、スキル構成とかすら知らないんですけど・・・」
3日目にして、今更な感じもする。
「あ、そうだったかしら?」
「私と華音さんは、香奈の構成わかってるし、お互いの構成も大体わかるのよね。」
「うむ、この辺りで説明しておこう。」
華音は、LV200/200の大魔道士/クラフターで、攻撃魔法は大概使えて、特に闇魔法が得意。
武器は無し、アクセサリーの『神言の指輪』(伝説級)で魔法を使う。二つの名は《真なる深闇》
香織は、LV200/200の賢者/エンチャンターで、攻撃魔法、回復魔法など広く使え、特に炎魔法が得意。
武器は『華恋鳳凰”結”』(伝説級)。二つの名は§紅蓮の魔術師§
「香織ちゃん、賢者なのに二つの名は魔術師なの?」
「まあ、そこは前作と同じ二つの名にしたかったからなのよね。」
「凍夜兄ぃもそんな感じよ。」
「ところで、香奈。」
「LV50以上になったな?」
「LV50を超えたら、サブ職業が持てるぞ?」
「ほぇ?そうなんですか?」
「メインの職業にボーナスが付くサブ職業もあるから、取っておいて損は無いわ。」
「どんなのがあるんでしょうか?」
「メニュー画面から、サブ職業選択で見てみて?」
「一覧に説明も出るから。」
「・・・ほんとだ。」
「いっぱいありますね〜」
「ただし、一回選択したら、面倒くさい転職クエをやらないと変えれないから気を付けろ。」
ぽち。
「え?」
はっとして、二人を見る香奈。
「え?」「え?」
「あ、あはは・・・選んじゃった・・・」
「ちょおま・・・香奈!? 何を選んだのよ?」
「これは結構重要なんだぞ?」
「『ブラックスミス』か?それとも、『レンジャー』か?」
「・・・『花屋』。」
「え?」「え?」
世の中にはネタ職業と呼ばれるものがある。
この『ファンタジースターオンライン』においても同様だ。
『花屋』はその一つ、その存在自体が『謎』。
分かっている『花屋』の能力は、造園や花の採取、フラワーアレンジメント、花の販売ができる。
という事である。
あまりの使えなさに、誰も手を出さなかったのだった。
こうして・・・
香奈 LV53/1 戦士/花屋が爆誕したのだった。
この日の香奈の受難はまだまだ続いた。
それは、宿屋から出てすぐの事である。
「今日はどうするんですか?」
しかし、華音、香織とも宿屋から出ていなかった。
その意味はすぐに分かる。
「あのお方が、『ベータ前線基地』を攻略してくださった方だ!」
「ええ、あんなに可愛らしい方が・・・」
「”聖乙女だ・・・」
「おお、”聖乙女”様!!」
「え??」
「えええ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!?」
城下町のNPC達が香奈を取り囲んでいた。
口々に”聖乙女”と叫びながらである。
「何?何!?」
「”聖乙女”って何!?」
「香奈ー頑張ってー」
「一度は通る道だ。」
「って、なんでそんな所にいるの!?」
華音と香織は宿屋の窓からニヨニヨしていた。
まるで”こうなる”のを知っていたかの様である。
・・・30分後。
漸く、香奈は解放された。
「やーおめでとう♪ 香奈。」
「赤飯炊くか?」
「二人とも・・・知ってて放置したよね?」
「うん。」「うむ。」
「即答ーーーー」
・・・
・・・
・・・
「さっきのは、何だったんですか?」
「香奈、自分のステータス画面を見てみろ。」
「はい・・・ん?・・・んんっ!?」
香奈にも二つの名が付いていた。
『聖乙女・香奈』
「条件満たしてたから、付くと思ったのよね〜」
「あのイベントには最初驚いたな。」
「・・・恥ずかしいってーーーー」
ちなみにその後、『ベータ前線基地』を二つ潰したのだが・・・
・・・香奈にとって、こっちの方が苦行だった。




