盗賊
屋敷を出てから、深い森に入った。
進めば進むほど、道はどんどん悪くなっていく……。大きな水たまりがあちこちにあって、泥もひどい……。
馬たちが苦しそうに歩いている。
隣では、お嬢様が退屈そうに馬に乗っている。
俺はというと……馬から落ちないように、ユレの腰にしがみついている。
「いったい、どこまで奥に進むんだ?」
もう、ここまで来ただけで疲れた……。
お嬢様はあきれた顔で俺を見た。
「国境まで行くわよ」
「もう半日近くも道を進んでいるし……戻ったほうがよくありませんか?」
「文句言うな」
俺の弱音にうんざりして、ユレはそう言った。
馬に乗るのは絶対に嫌いだが、こいつがいなければ今頃俺の靴は汚れていたはずだ……。
帰ったら馬たちを洗ってやろうと思う。
思わず微笑んでしまった。ユレはすごくいい匂いがする——俺のおかげなのに!
本人は何も知らない。
「この先に何かある」
ユレが突然そう言った。お嬢様はユレの方を振り向いた。
「何だ?」
「わからない……。たぶん、一番いいのは……」
ユレが話し終える前に、馬たちの足が沈み始めた。
ユレは素早く俺を抱きかかえて、飛び退いた。 一番驚いたのは、お嬢様も同じように素早く動いたことだ。
「あれは何だったんだ、ユレ?」
「たぶん盗賊だ。隠れるのが一番いい」
「ああ」
二人は走り出した。
一番恥ずかしいのは、ユレが俺をお姫様抱っこしていることだ。
ああ、馬たちが……。
馬たちが泥に沈みながら、必死にいなないているのを見ていた。
「どこへ行く気だ?」
その声を聞いて、少女たちは走るのをやめた。
木々の間から、盗賊のような男が現れた。
「おー……今日は美味そうなもんが釣れたぜ」
「お嬢様を守れ」
「はい!」
ユレは俺を地面に下ろすと、その男に向かって飛びかかった。
ここに来るのは危険だと分かっていたのに!お嬢様の手を引いて、走り出した。
「行くぞ!」
「あぁ!」
早く離れなければならない。
あいつは一人じゃないはずだ。警戒しながら周囲を見回した。
「どこへ行くんだ、お嬢様?」
「とりあえず、できるだけ遠くへ逃げよう」
「うん……ユレは一人で大丈夫かな?」
「心配しないで。私たちは離れていた方が、ユレの足手まといにならないから」
えっ? 突然、木の根につまずいてしまった。
「何をやっているんだ!?」
「ごめん、ごめん、走るの苦手なんだ」
「みっともねえな」
誰かがばかにするような口調で叫んだ。
最初に目に入ったのは、太った男の大きな腹だった。
待て、待て。あいつはすごく危険そうだ。
「ん? ガキと、可愛い娘だな」
男はいやらしい笑みを浮かべ、唇を舐めながら俺のお嬢様を見た。
「お嬢様、俺の後ろに下がってくれ」
「うん」
太っているのに、あいつは素早く近づいてきた。
溶かせを使おうとした時、突然、別の声が聞こえる。
「中断!」
誰かに魔法を妨害された!
男はもう近くにいた。剣の柄で後頭部を殴られ、目の前が真っ暗になった。




