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異世界転生、裏から見れば  作者: 黒魔
6章 ダンジョン交渉人
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人質事件発生・根越瑛太の視点

挿絵(By みてみん)


 俺、根越瑛太(ねごしえいた)は、異世界に転生して冒険者ネゴシとして暮らしている。といってもパーティーには所属せず、誰かから声がかかったときだけ(すけ)()として一時的にパーティーに加わるスタイルだ。俺は一人でのんびりするのが好きなんだ。


 家のドアをノックする音がする。助っ人の仕事を募集する貼り紙を冒険者ギルドに貼っておいたから、それを見た冒険者が依頼に来たのだろう。ドアを開けると、まぶしい光が目に入った。派手な金髪の男がキラキラ輝いている。幼い少年を連れている。


「やあ。君が『ダンジョン交渉人』ネゴシだね」


 俺のジョブは盗賊だが、トラブル時の交渉事を請け負っているため「ダンジョン交渉人」という通り名がついている。といっても高度な交渉術ができるわけではなく、せこい(だま)しのテクニックで切り抜けてきたにすぎない。


「ああ。依頼か?」


「そうだ。僕はキザーオ。ジョブは聖騎士(ホーリーナイト)さ」


 髪に手を当ててくるっと回ってキラッと輝いた。なぜ回る、なぜ輝く、なぜ聖騎士と書いてホーリーナイトと読む。


 後ろにいた少年が言った。


「僕は弟のショタン。武闘家だよー。キザーオ兄ちゃんは頑張ってカッコつけてるんだから、あんまり冷たい目で見ないであげてねー」


 そんな擁護(ようご)されたらかわいそうになるからやめてあげてくれ。


 俺は二人を家の中に通して話を聞いた。その話によると、二人は魔法使いのアクヤと治癒師のプレーヤとパーティーを組んでいる。今日ダンジョンに潜入していてオーガに襲われたということだ。


「オーガか。俺よりもっと高レベルの冒険者に依頼すれば簡単に倒してくれそうだぞ」


 キザーオは指を組んで真剣な顔をした。


「ギルドで聞いたんだが、Aランクパーティーは今は出払っているそうなのさ。それに力ずくでの解決も難しいんだよ。奴はアクヤとプレーヤを人質(ひとじち)に取ったのさ。『刃向かったら殺す』と言って」


 わかってないな。人質がいたとしても、強い奴がいればにらみを利かせるだけで交渉が有利に進むってもんだ。まあいないので仕方ないのだが。


「普段なら僕の華麗(かれい)な剣さばきで敵を切り刻む所なのだが、奴がプレーヤの頭をつかんで今にも握りつぶそうとしてるんだ。僕はなすすべが無かったんだ」


「キザーオ兄ちゃん、人質を取られる前からやられてたよねー」


「ぐっ」


 キザーオは(くや)しそうな顔をしている。カッコつけるために話を()っているのだろう。


「それで、結局どうなったんだ」


「僕たちはねー、アクヤお姉ちゃんとプレーヤお姉ちゃんを置き去りにして逃げて来たんだよー」


 キザーオは(あわ)てて口を挟んだ。


「置き去りではない! 僕は二人を信頼してその場を任せ、必ず奪還(だっかん)するぞと(ちか)ってその場を離れたのさ。君という、数々の難事件を解決して天才と評判の、交渉のスペシャリストを迎えにね」


「難事件の解決などしていないし、天才などという評判も無いし、交渉のスペシャリストになった覚えも無いぞ。ともかく、そのオーガは何か目的が無ければ二人を生かしたままにしないだろ」


「そうそう、その目的なんだがね、奴はこう言ったのさ。『人質を返してほしければ、お前の防具と武器を、すべてワシによこすのだ』と」


「それで、渡したのか?」


「渡すわけないだろう! 丸腰でどうやってダンジョンから脱出するというのさ」


 聖騎士と武闘家と魔法使いと治癒師のパーティーだろ。全員の装備を渡したとしても、丸腰で戦えないのは聖騎士だけじゃないか。こいつ、自分がお荷物になるのが嫌で渡さなかったんだな。


「渡したところで人質を返してくれる保証は無いから、言われた通りに渡すのも良くない。だが、お前たちが逃げたらオーガは人質に用が無い。人質は今頃死んでるんじゃないか」


「いや、そこは大丈夫だ。僕たちがその場を離れる時に奴に言われたのさ。『人質は生かしておいてやるのだ。屈強な男でも連れて戻ってくるがよい。そいつの装備もワシが全部いただくのだ』とね」


 オーガが武装解除を求めた目的は、その戦闘での自分の身の安全の確保ではなかった。わざわざ人質を拘束する手間をかけてまで再戦を要求しているということは、武器や防具が目的ということだろう。


「そのオーガはどうして武器や防具を求めているんだろうな」


「あの巨体は武器防具無しでも相当強い。その上、この剣を振り回し、この(よろい)を着ていたとしたら、鬼に金棒じゃないか」


「鬼とオーガはだいたい同じだな」


 なんか冷たい目で見られた。(まと)外れな返答だったか。


 キザーオは鎧を脱いだ。やけにキラキラする装飾のある金色の高そうな鎧。ショタンがかぶってみると、ショタンの体に合わせて鎧が縮んだ。


「僕にぴったりだよー。こんなちっちゃい鎧、あのおっきなオーガが着られるわけないよねー」


「いや今明らかにその鎧が小さくなったよな! 着る人に合わせてサイズが変わる魔法が付与された鎧だよな!」


 キザーオはくるっと回って輝いた。


「そう。僕の装備は王室が特注した一級品なのさ。賢明な君なら、事の重大さがわかっているんじゃないかな」


 このキザーオという男、国家にとって重要な人物というわけか。だが態度からは小物感しかしない。


「僕にもわかるよー。キザーオ兄ちゃんはそんなすごい装備でもオーガに相手にされないくらい弱いんだよー。重大な問題だよねー」


 キザーオは苦笑いしながらショタンをたしなめた。


「重大なのはそこじゃないよ。僕とショタンは、とある国家の王子ということさ。この事件を解決できなければ、何か圧力がかかるかもしれない。さてネゴシさん、ダンジョン交渉人としてオーガから人質を取り返してくれるだろうか」


 国家の圧力? そんなの俺は大嫌いだ。ふっかけてやろう。高級な装備を自慢してるんだ、金が無いはずがない。


「なら今回の報酬はその鎧だ」


「えっ? いやそれはだめだ、この鎧は本当に大事なものなんだ」


「じゃあこの話は無かったことにしてくれ」


 相手は切実な状況だ、こうすれば鎧に準じるくらい高額な報酬を出さざるを得ない。


「キザーオ兄ちゃん、お姉ちゃんたちよりもその鎧のほうが大事なんだ」


 ショタンの悲しそうな顔に、キザーオはたじろいだ。


「鎧というわけにはいかないが、これくらいの金額なら出せるさ」


 冒険者への依頼としてはかなりの高額を提示してきた。この辺りで手を打とう。


「わかった。交渉成立だ」


「まさか交渉の依頼人にこんな交渉をしてくるとは思わなかったよ」


 俺はオーガに渡しても良さそうな装備を買いに町に行った。オーガに似合いそうな(おの)。戦闘用ではなく安い(まき)割り用でいい。それと安っぽい中古の鎧。回復役がいないから回復薬は多めに買っておく。それから釣り糸。キザーオの剣と鎧に仕込んでおくためだ。こんなものでいいだろう。準備は整った。


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