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【第92話】ケイタの恩返し1(2) 贈呈

「はい、では次の方」


「よ、よろしくお願いします!」



衝撃の、謎の五体投地(ごたいとうち)のあとにはみんなすっきりした顔で、プレゼントを受けとると言ってくれた。

今はさっきと打って変わり、ニコニコ顔で指輪の個人認証の列に並んでいる。



俺はというと、今はジュースを小さなコップに(そそ)いで配る機械になっていた。

あと、さっきからニヤニヤとした視線が時折くるが、頑張って見ないようにしている。


空いている最後のコップにジュースを(そそ)いでから周りを見渡す。


認証が終わった人達は、いろんなものを収納しては出すというようなことを繰り返している。

終わっていない人達は、それを羨ましそうに見ている。



「はい、以上ですね」


「お。皆さん認証やられましたね? やっていない方が居たら教えて下さい」


そういうとみんながきょろきょろした後に、やったーとか、やったよとか、私も終わりましたとか口々に報告してくれる。


「わかりました、では最後に杖屋さんの、ご主人に、お礼を言いましょう」


はーい と手を上げるシスターさん。

このシスターさんが仕切りたいようだ。


「では号令をお願いします」


「こほん。では、杖屋のご主人、お手伝いさん、ありがとうございました」


杖屋のご主人と言ってからご主人に体を向け、お手伝いさんと言ってお手伝いさんに体を向け、と若干のあざとさを見せながらシスターさんが号令をかける。


「「「ありがとうございました」」」


「いえいえ、こちらも楽しくやらせて頂きました。

 またよろしくお願いしますね」


最後のまたよろしく・・・は俺を見ながらだった。


「はい」


まあ、その予定は、あります。



みんなでゾロゾロと、門のところまでお見送りをする。


「それでは」


お互いに手を振って別れた。



「みなさん、指輪について説明しますので、一度食堂に戻って頂けませんか?」


「「「はーい」」」



◇◆◇◆◇◆



「・・・ではみなさん席に着いたようなので、この収納の指輪の特徴を、簡単に説明して行きたいと思います」


「「「よろしくお願いします!」」」


「はい。 まず、この収納の指輪ですが、思っているほど沢山の物は入りません。

 実際には、この寝袋を入れる袋1つ分ほどだと考えて下さい」


俺はオモチに目配せをして、寝袋が専用の袋に入って、俵型(たわらがた)になっている状態の袋を取り出した。


高さ100cm、横幅50cmほど。

ちなみに夏用なので、ちょっとコンパクトだ。


杖屋さんからは大きな杖が2本と、中型の盾が1枚ほど入ると言われていたが

限界まで水を収納して、桶に出したら大体このぐらいだった。

確かに大きな杖2本と中型の盾1つを溶かしたら、このぐらいの体積かもしれない。


なおこの収納の指輪の、魔石の中の空間は、決まった質量を超えていなければ形状は何でも大丈夫のようだ。


「夏用の寝袋1つで終わりか~」


「へぇ~。 もっと、いっぱい入るんだと思ってました」


「ですよね。 だからほら、俺はいくつも付けていますよ」


「そう言えばそうでしたね」


「はい、なので、今までよりはちょっとだけ余計に持てるようになるぐらいだと、考えた方がいいです」


「なるほど」


「まあこの少しが、冒険者にとっては大事だったりしますが。」


「おお~」 「確かに」 「発言が冒険者」 


「実は一応冒険者もやってます」


ちょっとした笑いが起きる。


冒険者っぽい!→一応冒険者です。

ここまでがセットだろう・・・。



「後は、液体が入ったコップを収納した場合、どんなに手を振っても、液体はこぼれませんけど、どんどん劣化はしていきます」


「どういうことですか?」


「例えば、熱いお茶とか、スープを入れても、数時間後には冷めてしまっているという事です。

 そして更に時間が進むとカビが生えたりします」


「うええ・・」


「あれ? ケイタさんのジュースとか、ご飯はどうなっているんですか?」


オモチの収納を知らない神官さんが聞いてくる。


「あれはスキルです。スキルの収納は時間が止まるんです」


「なるほど~」 「それすごい便利!」


俺はメモ帳を開く。

説明しようと思っていたことはこれで・・・あ。


「今回、みなさんには、認証をして貰いました」


「さっきのやつね」


「はい、あれをやっておけば、もうその指輪は自分だけのものです。

 自分だけしか出し入れが出来なくなります。

 たとえ指輪を奪われたり、落としたとしても勝手に中身を取り出されることはありません。

 でもそうなると、出せと脅されるかもしれないので、辛いところですが。」


「中身は見えないんですか?」


「中身は見えません。自分しか分からないようになっています」


「「へぇ~」」



「あと、皆さんに収納してもらいたいものがあるので、並んでもらっていいでしょうか」


「「「はーい」」」


俺が手をかざすと、それに合わせてオモチがテーブルの上に、小さなカバンで出来た山を作ってくれた。

俺は皆が並び始めるまでオモチの頭を撫でた。


「では手前のかたから」


長方形の机の端っこに俺とメリーさんが立ち、左右から来る人達に、小さなカバンを1つづつ渡していく。


「お、意外とずっしり来るな、これ」とキャンパーな神官さん


「重い~」と、楽しそうに笑いながらシスターさんが叫ぶ。


「すぐに収納すれば大丈夫ですよ」


「本当だ、すごいな」とキャンパーな神官さん


「先に言ってくれ~」と席まで持って行った神官さん。


「軽い~」と、楽しそうにシスターさんが笑う。


「はい、全員に行き渡りましたね。

 この通り、収納してしまえば、どんな重さのものでも重量0になります」


「すごー」


「じゃあ、重いものをもって移動しないといけない時に便利ね」


「そうですね、入れば。

 では自分の席で、一度テーブルに今の袋を出してもらえますか?」


「「「はーい」」」


みんなが自分の前に袋を出してこちらを見る。

クリフトさん、フローラさんも含めて皆が楽しそうだ。


「・・・では、この袋の内訳を、発案者で、販売元のメリーさん、お願いします」


「はーい」


「メリーのなの?」とシスターさん


「そうだよー」


「完全に業者だ」と赤毛のシスターさん


「ふふ。じゃあ袋を開けてね。中身を説明するわ」


「了解ー」


「この袋の名前は、”冒険者セットD 遠征”といいます」


みんなが袋を開けるのを見ながらメリーさんが説明を始めた。


「冒険者?」と赤毛のシスターさん


「そうよ」



さっき言った通り、これはメリーさん発案。

俺が指輪を贈ることを伝えた時に思いついたことらしい。


「”冒険者セットD 遠征”は名前の通り、冒険者が遠征するときに必要となりそうなものが詰められているセットです」


メリーさんはそう言いながら、カサカサと内訳が書かれている紙を広げる。


「じゃあ、今から読み上げるから、抜けがないかチェックするよ~」


「「「はーい」」」


事前に開封してチェックはしてあるが、みんなに内容を説明するためにも確認してもらう。



”冒険者セットD 遠征”

------------------------------------

・携帯食料×4食 +5食

・タオル 大1枚、中2枚、小5枚

・ナイフ

・防刃・防熱グローブ

・小型浄水器

・小型ランタン、燃料×3

 ※燃料1つで丸1日もつ。

・簡易雨具

・魔よけのお香×20 +20

着火棒(ちゃっかぼう)

------------------------------------


携帯食料と魔よけのお香は俺がそれぞれ追加した。

この冒険者セットのシリーズは、どれも自分が足したいものが少しだけ入るよう、カバンが少し大きめに作られている。

メリーさんから携帯食料5食分と、魔よけのお香20個を入れると丁度良いというアドバイスを受けてその内容で追加しておいたのだ。


「ケイタさん、これちゃんと受け取るから、これの値段教えて?」

シスターさんが聞いてきた。


「値段は・・・すいません、そもそも覚えていないです」


「「ブルッジョワー」」


「ふふ。これは1つ、39.800円よ。

 ケイタさんがそれに色々追加したから、本当はもう少し高いのよ?」


「それを21個も。 うわあ・・」


39.800×21=835.800円。

プラスもろもろ。


だいたい90万円だ。

こんなものをパッと出してしまうなんて、昔の自分では考えられないな・・・。



「・・・と、いう事で、何かあったらそれで生き延びて下さい」

皆の手が止まっているので冗談めかしにそう言って現実に引き戻す。


「はは、了解です」


「後は皆さんが自分の部屋で保管してるポーションを入れたら完璧ですね」


「確かに」「割れるの怖いけど、これなら安心だね」


「そうですね、指輪に入れたら、いつでも使えるし」



「じゃあ、中身は全部揃っているようだから、最後に着火棒(ちゃっかぼう)がちゃんと使えるか、試してくださ~い」


メリーさんがそういうと、みんながカチカチやり始めた。

これも実は事前に確認している。

使い方が分かっているか実践でやってみてもらったのだ。


「オッケーね。じゃあ袋に戻してください。 戻し方は・・・」


メリーさんが戻し方を説明する。

無事、みんなカバンに収められたようだ。


「携帯食料は1年ごとに入れ替えますので、その時はまた集まってもらいますね」


「はーい」「捨てるの?」


「それはえーと・・」


「じゃあそれまでに、何か料理に使えないか確認しておきましょう!」


「そうね」


料理自慢の神官さん、シスターさんが気合を入れてレシピ開発をやってくれるようだ。


「それは俺も楽しみにしたいかな・・・」


思わず本音が漏れる。

みんな笑って、自分も、自分も、いや自分が一番と手を挙げ、自分が一番楽しみにしていると主張し合った。

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