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【第90話】職人ギルドでオーダーメイド!

フトコロさんのお店からの帰り道、職人ギルドの前を通る。


「やっぱ、ギルド長のスケールさんにも帰還の挨拶をしておくか」


「そうにゃね。 というか行かないつもりだったの?」


他人であり、この王都の職人ギルドの(おさ)に、

「帰った」とだけ言いに行くのも、なんだか変な感じがする。


でも、今後の事も一緒に確認しておきたいので許してくれるだろう。


「んなこたぁ無いですよ」


「怪しいにゃ・・・」


オモチを撫でつつギルドに入る。



「お。こんにちは、ケイタさん。無事に戻られたんですね。

 今日はどのような御用ですか?」


職人ギルドに入ると、いつものように入り口に待機して居た男性職員のキースさんから声を掛けられる。


「ただいまです、ギルド長、空いてますか?」


「確認してきましょう、ではこちらへどうぞ」


キースさんに連れられてカウンターへ向かう。

受付嬢さんに手早くギルド長の所在を確認する。


ギルド長のスケールさんはいつも通り、ついたての後ろにいた。


「こんにちはケイタさん。無事なようで安心しました」


「ご心配おかけしましたか?」


「少しだけ。 この後少しお時間いいですか?」


「はい。 そちらは大丈夫でしたか?」


「ええ、私の方は問題ありません。

 むしろこちらから、色々とお話したいこともありますので」


ギルド長のスケールさんは受付嬢さんから応接室のカギを受け取り(みずか)ら部屋へと案内してくれた。


「まずは、無事に帰還されたようで良かったです。

 お疲れさまでした」


「ありがとうございます」


「考えていたよりずっと早いですね。

 メルスの町へは無事にたどり着けましたか?」


「ええ、この腕輪のお蔭で」


俺は速度増加の付与がされている革の腕輪を取り出し、机にコトリと置く。


「・・・こちら、鑑定しても?」


ギルド長のスケールさんは腕輪から目を離さずにそう言った。


「どうぞ」


ギルド長は収納から眼鏡ケースを取り出し、銀縁(ぎんぶち)の眼鏡をかけてから、腕輪をしげしげと眺めた。

フトコロさんのとは大分デザインが違うけど、これも鑑定眼鏡(かんていめがね)なのだろう。


「おお。これはすごい。これはケイタさんがご自分で付与されたものなのでしょうか」


「はい。これを6つ付けると、すさまじい速度で走れますよ」


「ははは、それなら納得です」


俺は返してもらった速度増加の腕輪を収納にしまう。


コンコン。


「失礼します」


「ああ、ありがとう」


受付嬢さんが紅茶セットを持ってきてくれたようだ。


「では、何かあればお呼びください」


「ああ、よろしく」


受付嬢さんはきれいなお辞儀をしてドアを閉めた。



「オモチも何か好きなものを飲んでいいよ」


「う~ん、じゃあお水がいいかにゃ。ケイタの。」


「了解、ウォータークリエイト」


オモチ用のお皿を出し、おいしい水を作り出す。

まったく、かわいいヤツめ。


俺とギルド長のスケールさんは紅茶を、オモチはおいしい水を飲んでから一息ついた。


「実は、お願いしたいことがあるんです」


「なんでしょう」


「はい、それは”ゴブリンの魔石集め”です」


「付与に使う魔石ですか?」


「はい、集めて頂いた魔石を一旦(いったん)、こちらで買い取らせて頂き、それを今度の付与装備の材料として、改めてお渡しするという形にしたいんです・・・」


「問題ないですよ」


「ありがとうございます。 ケイタさんならそう言ってくれると思っていました。

 はあ・・・。実は今、伝手(つて)で魔石を集めているのですが、数がまるで足りていないんです」


「そうなんですか?」


「はい、この前話したように、冒険者がダンジョンの入り口付近の敵しか倒さないので

 ゴブリンの魔石が手に入らないんです」


「ゴブリンは少し下なんですか?」


「はい、浅い階層では殆ど出現しませんね、居るのは弱い虫型とか、植物型です」


「そうでしたか・・・」


相変わらず首都の冒険者はあまり冒険をしていないらしい。

普通、強い冒険者ほど首都に集まっていそうだけど。



「付与装備が行き渡ってきたら、少しは深い階層に行ってくれるんですかね」


「そこは冒険者ギルドが呼びかけと、訓練などを行う予定ですね」


「へぇ」


「下層にいるモンスターの特徴や対応方法とかをレクチャーして

 ちょっとした練習も実践でやる予定です」


「それはいいですね、俺も受けたいかも」


「冒険者ライセンスを持っているなら資格はありますが、

 当分は前衛職、剣や槍をもった人向けの内容になるはずですけどね」


「そうなんですね」


「というか、もう本当にギリギリの所まで来ているんですよ・・・」


ギルド長は憂鬱(ゆううつ)そうに溜息を吐いた。


「何かあるんですか?」


「ええ、今のまま行くと、スタンピ、という現象が起こる可能性が高いんです」


「スタンピードですか?」


「ええと、スタンピです。

 ケイタさんのいた場所ではそう呼ぶんですか?」


「ああ・・・いや、まあ、略してスタンピという人も、居るかもしれないですね」


「ほう。なるほど。それが正式名称なのかもしれませんね。

 まあこの地域だとスタンピが一般的かもしれませんが」


「そうなんですね」


「はい。じゃあ意味は分かると思いますが、スタンピというのは、ダンジョンでのモンスターの討伐がうまく行っていない時に起こる現象で、モンスターがダンジョンから出てきてしまうというものです」


「だったら、俺の知っているスタンピードと同じですね」


「そうですか。 一応、上級冒険者達を出来る限り潜らせているんですけど、たった十数人では全く追いついていないようで、このままいけば、早くて来年あたりやばそうです」


「まじですか」


「ええ・・・」


「ここ、ダンジョン近いですからね・・・嫌だなそれ」


「北のトレント、南のスタンピ。 この数年で、城でホットな話題です」


「なるほど。では付与装備は急務ですね」


「ええ。と言っても、タダで配るわけではありませんけど」


「まあ、タダで施したら、甘えが出ますね」


「ええ、一番いいのは自分たちで経験をたくさん積んで、そのうえで足りない部分の補助、補強としての付与装備という立ち位置です」


「そうですね、実力が(ともな)っていないと、あんまり意味がないですからね」


「はい。今後ですが、フトコロさんから定期的に納品がありますので、その度に使いを出させて頂きます。

 なのでケイタさんも、出来れば手が空いている時にどんどん魔石を集めておいてほしいです」


「分かりました、丁度また、東の森へ行く予定もありますので沢山集めておきますね」


「よろしくお願いします」


ギルド長のスケールさんが手を出して来たので、俺も手を差出し、固く握手をした。



てちてち。


「ケイタ、船や小屋のお話・・・」


俺が背もたれに体重を預けたところでオモチが、てちてち。して来た。


「ああ、そうだったな。 スケールさん、すいません」


「ええ。こちらは大丈夫ですよ」


「ありがとうございます、実は小舟や、小屋、あとハシゴを作ってくれる職人を探していまして」


「なるほど。職人を紹介するのは職人ギルドの仕事でもありますが、そうですね」


ギルド長は何かを考えながら紅茶を注いでくれた。


「あ、どうも」


「いえ。ちなみにどういったものを考えておられますか?」


「はい、まず小屋ですが、ぶっちゃけると収納して持ち歩く予定です」


「おお」


「大きさは、小屋ですね。ええとこの部屋より少し広いぐらいかな?」


「なるほど」


「なので、土台を固定せず、底がしっかりしているものが欲しいんですが、どうでしょうか」


「ええ。いろんなニーズがありますから、移動を前提としたものもあります」


「おお、そうなんですね」


「はい、まあ、丸ごと収納というものではないんですが、例えば組み立て式だったら組み立てた状態で収納すればいいし、後は馬車タイプも車輪部分を固定してやれば小屋と言えなくも・・・いやそれは無理があるか」


「馬車タイプは目立ちそうだし、それだと組み立て式が一番近いんですが、組み立てというと、強度が心配ですね」


「そうですね、ではオーダーメイドという事になりますが、丸ごと収納するというなら、顔が割れないようにした方がいいですね」


「そうですね、念のため」


俺はオモチを撫でながらうなずく。


「では土台ありのカタログから、大まかな形状を選んで、色々カスタマイズしていく感じでやってみましょうか」


「すいませんね、ギルド長なのに・・・」


「いえいえ。ふふ。

 実はケイタさんと知り合って、最近は楽しいんですよ。

 なので何かあったらすぐ対応できるよう、ギルド長としての仕事も速攻で終わらせるようにしているんです」


ギルド長のスケールさんは、しーというポーズをしながらそう言った。


「はは、そうなんですね」


「はい。で、これがカタログ・・・です!」


ギルド長のスケールさんは、自分の収納からA4サイズの大きさで、百科事典ほどの厚みがある本、カタログをどん、とテーブルに出した。


「とりあえずは、他の要望も聞いてからカタログをめくることにしましょう」


「はい」


「では次に船の要望を聞いていいですか?」


「はい、小舟は川や(みずうみ)などで使えるのを考えています」


「なるほど、その用途なら小舟に関してもカタログを見ながら、よさそうなのを選ぶか、カスタマイズする感じで行けそうですね」


「あるんですね」


「ええ、この首都には船を使うような環境はないので、他の拠点からの取り寄せになりますが、小舟は意外と沢山の商品があります」


「いいですね、すごいですね」


「ですね。ちなみに、このカタログにあるものは、ある程度の作り置きもしているはずなので、手元に届くのにも、そんなに時間はかからないでしょう。

 カスタマイズを沢山すると、もちろん時間も料金も増えますが」


「そうですね。もしかして、ハシゴもあります?」


「ええ、ハシゴもカタログにありますよ。

 ウチの倉庫にも数種類置いてあるので、物によってはすぐにお出し出来ます」


「おお・・・そうだったんですね・・・」


求めていたモノはずいぶんと近くにあったようだ。



カタログを見ながら話を詰めていく。

どれも完成度は高く、小舟に関してはカタログのまま3(そう)注文した。

魔力で動くエンジンがついており、なかなか快適らしい。

波が穏やかであれば海も行けるそうだ。


ハシゴは最大3mまで伸びる金属製のものを2(きゃく)購入した。

これはこの後倉庫から持ってきてもらえる。


小屋は、地面に設置するタイプの小屋をカスタマイズして、

まず地面に固定されていない土台を作り、そこに立ててもらうようにした。

人が入れるドールハウスのような感じだ。


今回作ってもらうのは、大きさが学校の教室くらいで仕切りなしの1ルーム。


外側にはシートを固定できるバーをいくつかつけてもらう。

これは、小屋自体に耐久性アップの付与を掛けるのは無理だと思い、

耐久性アップの付与をしたタープか何かを外側に張れるようにと考えたものだ。

見栄えは良くないだろう。


中に入れる家具も買った。

ベッドを予備を含めて3つと、テーブルセット、イスは3脚だ。


小屋は現在空いているギルドの貸し倉庫の1つを1月ほどレンタルして、その中で建築作業をして貰う事となった。


ちょっとワクワクしてきた。

小屋の大きさを調整しました。

教室の1/4 →教室くらい


誤字報告ありがとうございます。

反映させて頂きました!

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