【第52話】モノづくり職人展覧会(4)
前回のあらすじ。
許された。
「よかった。ええとじゃあなんだっけ」
「今イスの付与が終わったところにゃ。次はテーブルやってみるにゃ」
「ああ、そうだな・・・」
俺は付与を終えたばかりのイスにコンコンとノックするように叩いてみた。
表面が硬くなったような・・・よくわからなかった。
イスをオモチに収納してもらってから、テーブルを受け取り、一旦下ろす。
このテーブルも椅子と同じで、かなりしっかりとした作りで、
付与を掛けるまでもなく頑丈そうなんだけど、それは家の中で使うならだ。
このテーブルセットは野外で使うつもりなので小さな傷が絶えないと思う。
状況によっては壊れてしまうだろう。
テーブルは魔石3・・・いや4つかな。
何となくそんな感じを受ける。
「このテーブルは下位魔石4つかな」
「了解にゃ。どうぞにゃ」
「どもども」
「では・・・」
俺は両手に2つづつ魔石をもってその上からテーブルを指部分でつかんで持ち上げた。
何となくだけど、地面から放した方が成功する気がしたのだ。
「洗浄、魔石洗浄。・・・付与」
魔石が多いとそうなるのか、付与対象が大きいとそうなるのか。
まあまあな時間が経過して、やっと魔石と付与の魔力がテーブルに浸透し終わった。
鑑定を持っている訳ではないけど、このおしゃれな木のテーブルは、
金属並みの耐久力を持ってしまったように感じた。
手触り、温かみは木そのものだ。
冬にテーブルの上に腕を置いたときにキンキンに冷えていて、冷たっ!とはならなそうだ。
まあ冬なら長袖だろうけど・・。
「あ~。とうとう俺にもチートが来てしまったかあ」
「それはチートじゃないにゃ。普通の職業スキルに分類される無属性魔法にゃ」
オモチがたしなめるような口調でそう言った。
「いいかにゃ? ケイタは元が弱いのにゃ。
だから付与で固めてやっと他の転移者と並んだ、
ぐらいで考えた方がいいのにゃ!」
「なるほど・・・」
そんなにか~って思いが顔に出ていたのかオモチは続ける。
「この世界は、別に転移者が最強って訳でもないにゃよ?
ダンジョンの深部には、信じられない強さを持った通常沸きするモンスターだって
沢山いるのにゃ」
「ああ、わかったよ、ごめんオモチ」
別にチートは強さだけの事をいう訳ではないんだけど。
オモチは俺が無謀にモンスターに向かっていかないか、
心配しているんだろうなと分かった。
だから謝る。
「心配してくれてありがとう、オモチの為にも、俺は生き残ることに重点を置くよ」
「うに。ケイタは二人の女性の夫であり、たぶん沢山の子供の親になるのにゃ」
「ああ、そうだな」
実際には夫ではないんだけど、何かの折に正式に妻になってほしいと言おうかな。
前の世界では冴えなかった独り身のオッサンだったけど、
こっちの世界では、冴えたカッコいいオッサンになりたい。
「俺はイケてるオヤジになるぜ、オモチ」
俺は親指を立て、サムズアップサインをオモチに送る。
「そうにゃね! 今からでも遅くはないのにゃ!」
ん?
「あれ? やっぱり今はイケてないって事じゃないか。
前に俺の事カッコいい、カッコいいって言ったくせに!」
「にゃ!? そういう意味じゃないにゃ!
ケイタが本気を出したら、もっと、もっ~とすごくなるって意味にゃ><」
オモチが目を >< こんな感じにして否定してきた。
まあ。よし・・そういうことにしておいてやるか。
「わかったよ、最近魔法がいい感じで、調子に乗っていた。
ゴブリンはモンスターの種族では最弱・・・なのにな。
さっきの命大事にって話とか色々と俺の事考えてくれてて嬉しかった。
ありがとうオモチ! 全部オモチのサポートがあってのことだ」
俺はオモチをぎゅーっとしてほほをぐりぐり押し付けた。
オモチはびっくりしていたけど俺の手から逃げ出すことはなかった。
俺は勢いで今まで考えていたことを全部伝えられて、ちょっとすっきりした。
帰り道も特にモンスターとは遭遇しなかったため、普通に首都の城下町に入った。
◇◆◇◆◇◆
「そういえば、付与をするんなら防具をどうにかしようかな」
俺は町の中を教会に向かって歩きながら腕の中に納まっているオモチに話しかけた。
「そうにゃね。今の鎧が重いとかだったらもっと軽めのものにしてもいいと思うけど、
でも急に変えると慣れるまでが大変になるにゃよ」
「まあそうなんだけどな」
俺はちょっとボロボロになってきた皮の鎧を見る。
「ずっと新品であるよりは、今のボロの鎧は悪目立ちはしないだろうけど、
ちょっと貧相過ぎないかな」
「ああ・・だったらこの前の、かっこいい鎧をかうのはどうかにゃ」
「ああ~ あのお腹が出ている人は逆にカッコ悪くなるやつね。
いやいや、悪目立ちしないようにって話だから。
街用のおしゃれ鎧なんか来て外をうろついていたら逆に目立つよ。」
「ケイタお腹だいぶ引っ込んできたのにゃ」
「ありがとう、でもまだ出ているけど」
とりあえずは今ある装備を強化しておくことにしよう。
今の体形に合わせて調整してもらっているからな。
魔石もまあまあある。
そんな話をしながら教会まで歩いて行った。
◇◆◇◆◇◆
教会に到着して、まずクリフトさんを探した。
複数の人に聞いて、自室で書類を書いていたクリフトさんを見つけ
報告したいことがあると伝え時間を貰う。
クリフトさんは手を止めて自ら紅茶を入れてくれた。
「どうしましたか?」
最近は冒険者ギルドの雲行きが怪しくなっている関係か、心配そうな顔をしてそう聞いてきた。
「いい報告です、夕食後にみんなに話す前に、まず相談してからと思いまして」
「おや、どんなことでしょうか」
そういうとクリフトさんは表情を緩めた。
「さっき、付与を覚えることが出来ました」
「なんと。・・・本当にケイタさんは多芸ですね、この前の火魔法といい」
クリフトさんは珍しく少しだけ、興奮したような表情をした。
「ありがとうございます。この事はみんなに言っても大丈夫でしょうか」
「はい。みんなには口外しないよう伝えますから大丈夫ですよ」
「了解です。それで練習がてらなんですが、教会で補強したいものがあれば言って下さい」
「・・・いいんですか?」
「はい、練習させて下さい」
クリフトさんは意図をわかって苦笑した。
「ありがとうございます。 あなたは本当に。 しかし補強ですか・・・」
急に言ったから思いつかないようだ。
確かに普通付与は武器、防具に対して行うもの。
イメージが結びつかないのは分かる。
「さっき、外で使うようにテーブルとイスを買って、それに強度を上げる付与を行いました」
「ああ、なるほど・・・確かに教会のイスなど、足を削ったりしながら調整して使っていますね」
「ある意味アンティークで、いい味でてますけど」
「う~ん、新しくできていないだけ、とも言いますが・・・」
クリフトさんは遠慮しているのか、あまり手を入れてほしくないのか考え込んでしまった。
「あまり手を入れないほうがいい感じですか?」
「いえいえ、・・・では食堂のテーブルとイスをお願いしてもよろしいでしょうか」
「はい、わかりました」
「あ、では最善の状態にしてからお願いしたいので、
ドンタスさんにテーブルとイスの調整をしてもらいます、お待ちください。」
クリフトさんはにっこり笑いながらそういった。
ドンタスさんはこの教会たっての日曜大工好きな神官さんだ。
俺とクリフトさんはドンタスさんのもとに向かい事情を話した。
色々直したいところがあるとの事で、付与は数日後に行うことになった。
◇◆◇◆◇◆
「ケイタ、これ」
ひとまず離れの部屋に戻ってきた俺にオモチが指輪を渡してきた。
オモチは夜以外は普通に部屋についてくる。
「さっきの付与体験の指輪か」
俺は親方からのメモを広げた。
色々とまとまらない文章だったが要約すると以下の3点。
・物理と魔法の両方を中程度だが防ぐことが出来るすごい防御性能をもった指輪だ。
初級冒険者が出入りするような場所でだったら無敵になれる。
※上のこのくだりが本当にまとまっていなくて解読に時間が掛かった。
・この指輪の事は誰にも話さず、売らず、渡さず秘匿した方がいい。
後ろ盾がない人間がそういう力を持っているとろくな事にならない。
・才能があるのでお前をスカウトしたい。
「おおお、この指輪やばいらしいぞ」
「ケイタ早くつけるにゃ」
オモチがてしてしと俺の手をたたいてくる。
「ああ、ええと、どの指につけたらいいかな」
「どこでもいいけど・・・この指?」
オモチは左手の中指をちょいちょいとつついてきた。
かわいい。思わずにっこりだ。
オモチがジト目で見つめてきたので
俺は速やかに指輪を左手の中指につけた。
「これで低級モンスターの攻撃を受けても大丈夫ってことかな?」
「そういった付与装備は連続で来る衝撃、攻撃に弱いから、
最後の切り札的に思っておいた方がいいのにゃ」
「障壁は少しすれば治るの?」
「オモチが知っているのはそうにゃ。ゆっくり周りの魔力を吸い取ってまた障壁を貼るにゃ。
自分で指輪に魔力を流してやるともっと早く復活するはずにゃ」
自動回復機能付きのバリアだな。
「へぇ~。あの本にはこういった事は書いていなかったな」
「そうにゃね」
「うん。本当にさわりの部分、入門部分の話だけだったのかも」
俺は本棚の「付与魔法のいろは」を手に取る。
「しかしこうなると、この本では知識がたりないよね
付与って言っても、一概には言えない、いろんなタイプがありそうだし」
武器と防具でもかなり違いがある。
防具1つとっても耐久性アップ、と防御力アップなんかで別れていく。
「確かに。まあ3000円だったし、付与についての簡単な紹介本という位置づけだったのかもしれないにゃね」
「じゃあ本を探したり、後はもう一度親方の所には行っておこうか」
「ケイタはスカウト受けるにゃ?」
「う~ん・・・」
「スカウト受けたらきっと、王城に軟禁状態にゃ」
「だね、スカウトは無しだ。
もっとこの世界を探検してみたいからね」
俺はオモチを抱きしめながらそう言う。
「いっしょに行くにゃあ」
オモチがすりすりしてきた。
「もちろん、嫌がっていたって、無理やり連れていくぞ」
「うに。しかたがないにゃあ」
オモチは俺に顔をすり寄せながら嬉しそうにそう言った。




