【第44話】首都の職人ギルドと報告
杖屋から少し離れてからオモチとこの後の相談をする。
「さて、今日はもう東の森に行く時間はないから、屋台を見て回ろうか」
「じゃあ、冒険者ギルド前の広場の、串焼きを買うにゃ」
「いつもの所のね」
「まあ・・・そうにゃ」
冒険者ギルド前の広場には3つの串焼きの屋台がある。
出す肉の種類が違うのでその日の気分で行く屋台を決めている。
そのうちの1つがオモチのお気に入りだ。
オヤジがいつもお肉をひと欠片、お皿にチョイと乗せてオモチにくれるからだろう。
なのでその屋台と、もう1つの屋台でよく串焼きを買う。
ちなみに最後の1つは人間的にも出す串焼き的にもハズレなので買わない。
2回買って、2回ハズレた。
話しかけたら人間としてもハズレだった。
「了解、じゃあまたお皿出す演技するから合わせてね」
「了解にゃ」
その後広場でオモチの希望だった串焼きと、ジュース、
サンドイッチなど、一度食べておいしいと思ったものを思い出しながら買い込む。
串焼きは、串が要返却なので、串を外して肉だけをお皿に入れてもらう。
「もう空いているお皿ないにゃ」
周りに聞こえないよう、肩に乗って来てこっそりオモチが申告してきた。
ちょっとこそばゆい。
「ふふ・・・そうか、じゃあ後は無くなってから補充に来ようか」
「そうにゃね」
二人してベンチに座りジュースを飲む。
「あ~疲れた。・・って昔なら言ったんだろうな」
オモチが飲めるようにコップを傾けながら、思わず口から出た言葉を慌ててごまかす。
もうオッサンだからか、思ったことが勝手口から出てしまうな。
本当はそんなに疲れていない。
「平気になったのにゃ?」
半分独り言だったけど、オモチがすかさずキャッチしてくれる。
よく出来た猫だ。
「うん、平気だよ。昔のクセで言っただけ」
「ふ~ん?まあいいにゃ」
オモチはジュース飲みを再開させる。ちろちろと舌を出して飲んでいる。
飲んでいるときはあまり触らないほうがいいと思い我慢する。見てるだけ。
ガチャガチャという日本では聞きなれない音で目線を上げる。冒険者だった。
武装した冒険者達が行き交う風景を眺めて今更ながら、来ちゃったなあと感慨深くなる。
「はあ・・・」
「そういえばケイタはギルドのクエストは受けないにゃ?」
「ん、そういうのはプレッシャーになるからな、今はいいかなって思っているよ」
「なるほどにゃあ。やっぱりケイタは学校で習った転移者の基本的な行動とちょっと違って面白いにゃ」
基本的な行動か。人それぞれだと思うけどね。
「面白いかな? 面倒じゃなきゃいんだけどね」
「面倒じゃないにゃ」
転移者は生きるため、ご飯を食べるため、自分を守るために、ギルドで居場所を確保したり地位を上げたりする。
そして大抵真面目に稼いでいると他の低ランク冒険者からヤジが飛んでくる。
ランクを上げると低ランクは口を出してこなくなる。
日本でもある構図だ。
あれ、そういえば俺は真面目にやっていないのに言われるな。
オッサンまだEなのかよ、本当に役に立たないなって。
あ、これがさっきの「ギルドのクエスト受けないのか」に繋がるんだろうな。
でも、もう少しゆっくりでいいかなと今は考えているからなあ・・・
苦労をかけるぜ。と口には出さない。
オモチに促された面はあるけど、俺も自分を守るためのレベル上げをやっている。
それで許してほしい。
ジュースを飲み終え洗浄を掛けてからオモチに収納してもらう。
「明日はさっそく東の森を攻略しようか」
「うに、がんばるにゃ」
「よしよし」
オモチは気持ちよさそうに目をつむる。
東の森についてちょっとだけ説明する。
俺とオモチは以前から東の森を攻略していた。
実際の戦闘や採取は俺一人でやっている。
オモチが手を出すと俺には殆ど経験値が入らないからだ。
なのでオモチは素材とモンスターの探知のみ担当してくれている。
アリがちな話だが、あの森は外側から内側に行くにつれて敵が強くなっていく。
なのでしっかりと経験を積みながら真ん中まで到達出来たらちょっとしたものになるらしい。
そして森の真ん中にはちょっとしたサプライズ的なものがあるとの事。
これは全部オモチ情報。
ギルドに東の森の事を聞いても、あんな枯れた森の事なんて知らないって態度になる。
実際には枯れていない。木や草が生い茂っている。そういう意味じゃない。
どうも首都の受付嬢さんたちはダンジョンにしか気が行っていない様だ。
悪い意味で、ダンジョンにちょっとした誇りを持っている。
他をないがしろにしすぎ。ダンジョン以外に行く人を軽くバカにしている。
そういうギルドの方針なのかって思うぐらいに徹底している。
そんなことで大丈夫なのかっていうと、問題ない。
森の資源なんて薬草ぐらいで、その薬草は確かに高騰しているけど、
安定輸入されておりそこまで高くはない。
それより南のダンジョンに入ったほうが儲けがデカい。
ダンジョンは常に一定の数のモンスターが狭い範囲で存在するので
狩り続けられ経験値もおいしい。
ドロップも魔石が確定しているので利益が薬草を上回る。
ケガなど何かあれば周りが助けてくれる。
これはどう考えてもダンジョンに行ったほうがいい。
絶えずダンジョンから資源を吸い上げるポンプのようだな。
でもそれをいうと、森から資源を吸い上げるポンプが俺か?
考えすぎても仕方がないという事が分かった。うん。
「行こうか」
「うにゃ」
◇◆◇◆◇◆
帰るにはまだ早かったので、職人ギルドの場所を確認しに行く。
職人ギルドは南門のすぐ近くだった。
看板もわかりやすく、職人ギルドという文字以外にも
金づちやポーションなどのマークが描かれている。
「中に入ってみようか」
「そうにゃね」
王都の職人ギルドに初めて入る。
王都の職人ギルドはメルスの町の複合施設のものとは違い、
職人ギルドだけで1つ建物になっている。
話によるとギルドの建物以外にもいくつか倉庫を持っているそうだ。
扉は冒険者ギルドと同じで開け放たれている。
「こんばんは、どういった御用でしょうか」
入り口にいた男性職員に声を掛けられた。
穏やかな感じ。
「はい、首都の職人ギルドには今日初めて来ました。
今後ポーションの納品でお世話になろうと思っているので下見です」
「ご丁寧にどうも。職人の方ですか。今後ともという事であれば施設を案内しますよ」
職員さんは面倒がることなく施設を案内してくれた。
●正面にあるのが受付カウンター。
大きく4つの業務があり、1つは素材の納品。
依頼で納品したり、常時依頼の素材などの買取を行ってくれる。
2つ目は素材の取り寄せ。
ギルドの売店に無い素材はこのカウンターで相談して
「他拠点へ取り寄せ」か、「このギルドの依頼ボードへ張り出す」を選ぶ。
3つ目は相談業務。
困ったらとりあえずカウンターに相談してくれれば、いいようにしてくれるそうだ。
4つ目はギルド内の施設を利用したい場合の受付。
●依頼ボード。
出入口の両側に設置されていて、カウンターから見て、
左側が「これ買います」のボードで、
入り口をはさんで右側が「これ売ります」のボードになっており、
今も未完了の紙が複数貼ってある。
ここに勝手に紙を貼ってはいけない。
カウンターのお姉さんに専用の用紙を貰って記入して、
お金を払ってギルド職員に貼ってもらう必要がある。
ちなみに売買のネタは実際のモノだったり、情報だったり色々あるようだ。
●ギルド売店
カウンターの右手には職人ギルドがやっている売店がある。
大きさは教室二つ分ほど。
沢山の乾燥した植物が透明な大きな瓶に入れられている。
ポーションの棚はしっかり在庫が確保されている。
初級より高いポーションは奥の部屋に保管されているので
店員さんに声を掛けて買う意思を伝えて買うらしい。
ポーション瓶の大量購入受け付けますの張り紙あった。
雰囲気としては最高だった。
錬金術師や魔法使いが使う材料などを売っていそうなファンタジー感がある。
●貸し調合室
カウンターの左右には奥へ続く通路があった。
入り口横にそれぞれ同じ立札があり、
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「1F 貸し調合室1~10、応接室1~10
2F 貸し作業室1~20」と書かれていてる。
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この貸し調合室等を使いたいときはカウンターで受付をしてもらう。
1時間で1500円、室内に調合用の器具が一式揃えてあり使えるそうだ。
ちょうど通路から若い女性が出てきて売店で何かを買って戻っていくのを見送る。
「今の方みたいに材料が足りないときはあの売店で補充できるので、環境はいいと思います」
「いいですね」
まるでゲームのチュートリアルのような光景だったな。
●資料室
こちらもカウンターで資料室への入室申請をして、お金を払ってから入室する。
料金は1日のチケット制で3000円、貸出はやっていない。
この世界の専門書は貴重品で、本当にけた違いの価格になる。
1日読み放題で3000円は破格と考えていいだろう。
どんな情報があるのか一度は入ってみたい。
全体的に静かで、ゆっくりとした雰囲気だった。こころが落ち着いた。
案内してくれた職員さんにお礼を言って職人ギルドを後にした。
「同じ首都のギルドでも、全然違うな」
冒険者ギルドの受付嬢さんは、なんというか有無を言わさない感じがあったり
対応がとてもそっけなかったりしてあまり気分が良いものではない。
だからあまり行きたくない・・・
「う~ん。荒くれものを毎日相手にしている冒険者ギルドだから
受付嬢さん達もあんな感じになっちゃっうのかもにゃ」
「え~。・・・まあ、女の子だと怖いもんな。それで対抗する為、
舐められない為とかで悪女的なのを演じているのか?」
「演じているというか、そういう性格になってしまったとかかにゃ?」
「確かにそうかもね」
入ってきたばかりの時はもっとまともな人たちだったのかもしれない。
いつも忙しそうだもんな。
考えても仕方ないので今日の夜にする話でもまとめようかとオモチと
旅に出ていた今までの事を振り返りながら教会へと帰っていった。
◇◆◇◆◇◆
夕食後の雑談タイムではほとんど俺が喋ることになったが
事前にまとめをしておいたので何とかなった。
帰りに走ってきた事を伝えた時はみんな笑った。
馬車よりかなり早く着いたことがおかしかったらしい。
エフテさんを巨大トレントから救った話をした時には
英雄を見るような目で見られた。
そして沢山のありがとうを言われ拝まれた。
その内数人は最初こそ悪乗りで祈る仕草をしていたが、
皆で祈りのポーズをしているのに気づいて本気で拝み始めてしまった。
困った顔をしていると
「ケイタさんが通りかからなかったら、もし馬車で帰ってきていたら
エフテさんはダメだったかもしれません、本当にありがとう、
家族を救ってくれて。」
そう本気で言われて思わず、
「まあ俺にとっても、友人であり、家族でもあると思っていますから」
と言った。
おお~とみんなが口をそろえて言って、その後笑った。
ここで拾えてもらえて本当に良かったなと思った。




